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――聴き手が竜人さんを知ったタイミングによって捉え方が違うというか。シンガーソングライター的なデビュー当時のイメージで捉えてる人もいるでしょうし、清 竜人25きっかけの人もいると思うのですが、ご自身は、アーティストとしての特性をどう捉えてますか?

「僕もよくわかんなくなってきてますけど(笑)。清 竜人25と清 竜人TOWNをやって、僕の今回のギアとしては、この感じでドン!みたいな感覚はそんなになくて。ある種、原点回帰的な側面もありつつ、ちょっとオーソドックスな歌ものをやりたいなって、結構ニュートラルな気持ちでやってるんです。さまざまな捉えられ方をされていて、“あ、次はこうきたか”というような見方もあるでしょうし、僕のカメレオン的な一部の顔が出てきたなという見られ方もしていたり。それはそれでもちろんいいんですけど、新しい作品を出すと変にハードルが上がるというか、何かしら変化を求められてて、ちょっと面白いなと思ってます」

――ぱっと見は両極に見える25とTOWNですけど、作品に関わっている人が多いという意味では、そういうタームだったのかな?と思えるんですが。

「ああ、そうですね。やっぱりずっとひとりでものづくりをしてきてたので、ちょっと辟易してて。25やTOWNの時期は、たぶん人数感のあるプロジェクトをやりたかったんでしょうね。まさにそういうタームだったと思います」

――で、やっぱりその反動が出ますよね。

「常に無い物ねだりみたいなもんで、やっぱりああいうのやってると、やっぱりひとりになって、ソロやろうかなっていうのはもちろん気持ち的にはありましたけど、自分のアーティスト年表で考えた時にも、ソロに戻って何かをしようかなと、少しずつ考えてはいましたね」

――この数年間の竜人さんからインフォメーションがあるたびに驚く感じで、今回ももれなく驚いたわけですが(笑)。平成が今年で終わることは去年わかってたじゃないですか。

「もちろんそういう狙いはありましたし、平成が終わるということで、何かしら平成をテーマにした楽曲をやりたいなと。いわゆる昭和って元号にはある種の世界観があって、その時代の作品もアイコニックな表現になってると思うんですけど。平成を冠に持った作品ってあんまりないなと」

――現時点でまだ平成ですしね。

「そうそう。なので、次の元号になって懐古的に平成が語られるときのために、何かしら意味を持ったものを、この平成最後の年に作っておけると面白いかなと思ったんですね。一応、第一弾としてこのタイトルと、このテーマと、あとは音楽性もそうですけどね。昭和から平成、そして次の元号へ、ある種の橋渡しとして、オーセンティックな日本の歌謡曲でもありつつ、平成の匂いもするようなものを次の世代にも聴いてもらえるように残せたらなっていう、大げさにいうとちょっとした使命感みたいなものも感じながら作りましたけど」

――この「平成の男」に関してはラブソングというか、男性から女性に向けた内容になってますが、その中に現代ならではの生き方の価値観などももちろん含まれてますね。

「うん、そうですね。やっぱり時代は進んでいて、今回僕がやろうとしてることにもつながりますけど、J-POPも1970年代、80年代前半から平成に変わっていって……ていう変遷があるじゃないですか。だからその変遷を経て、いまこういうアプローチが、どう作用するのかな?という興味への答えがこの曲であり、今後リリースする楽曲たちであるかなって感じですね」

――オーセンティックな日本の楽曲というだけではない、まるでシナトラとやしきたかじんさんが邂逅したような世界観を感じたんですが、今回のソロはどういうイメージだったんですか?

「最近のJ-POPシーンを見てると――それが進化でもあると思うんですけど――だんだん複雑化していって、それは過去になかったものを生み出そうと努力してる結果でもあると思うし、十把一絡げに語るつもりはないですけど、よくない部分もあるなと。やっぱり日本ならではの歌もの、歌謡曲っていうオーセンティックさって、言葉では簡潔に説明できないけど、必ず日本人のDNAにはあるような気がしていて。ある種、新古典主義的な発想で作れたら面白いかなと思っていたんですね」

――なるほど。

「70年代、80年代の歌謡曲も、もちろんアメリカ音楽からインスパイアされて作っているので、さっき言っていた日本だけのイメージではないというのはそのとおりだと思うんですけど、ただ、やっぱり日本人が歌う日本の歌謡曲としての落とし込み方がその当時はすごくうまかったなという気はしてるんですね。なので、ただのアメリカンミュージックの模倣ではなくて、それを日本ならではの文化――例えば哀愁だとか――そういうものと結びつけるセンスに優れた人が多かったイメージはあって」

――洋楽を消化した先人のスキルを感じると?

「もちろん同じことをやるつもりもないし、パロディをやるつもりも、オマージュをするつもりもないんですけど、日本人ならどっか引っかかるような、哀愁のあるメロディだったり、DNAに訴えかけるようなあの感じは不変であって、どの時代に聴いても、たぶん50年後に生まれる子供が聴いても響くメロディっていうのがやっぱりあると思うんですよね。それを探し求めたいなっていうのがあって、昭和を踏襲しつつ、平成生まれの僕が、いまのこのセンスで、いまの日本の歌謡曲っていうものをオーセンティックに作り上げられたら、これはこれで面白いかなっていう試みですね、今回は」

――そういうDNAって、触れて初めて気付くこともあると思うんですが、それを確かめてみたい気持ちはあったんですか?

「確かめてみたい……まあ、そこまで上から構えてる訳ではないですけど、今回は自分がメロディメーカーとしての意識が強い。いままでは、それ以外で評価されることもありましたけど、今回はまず第一にメロディがあってというものづくりをしてるんで、メロディメーカーとしての自分の現在地みたいなものも知っておきたいというか、今回のものがあまり人の胸に届かないとちょっとショックではありますね」

――25のようにエンターテインメントな活動があったわけですし、「平成の男」に違和感はないんですよ。リスナーとしては自然と段階を踏んでいるんだなと思いました。

「なるほどね。いままでの僕を知ってくれてるファンだったりリスナーの方たちに受け入れてもらえることももちろん嬉しいことなんですけど、やっぱりここから初めて聴く、明日僕の音楽を初めて聴くっていう人に向けてのものづくりはすごく大事だなと思っていて。やっぱりファンだけに向けてものづくりしてると、絶対新しいものって生まれないので。それは常々意識してます」

――ちなみに竜人さん自身が自分の中にもともとあると感じる歌謡曲って?

「なんですかね?ものすごく聴いてきたわけじゃないんで、じゃあカラオケで歌えるか?って言ったら、2番のここのメロディわかんないなってレベルだとも思いますけど、でもやっぱり中島みゆきさんとかはすごく好きで。世代が変わっても受け継がれる名曲ってあるじゃないですか。不思議ですけど、どの歳の子が聴いてもいいって思えるメロディって、日本の歌謡曲のオーセンティックさだと思っていて。そういうものを自分のアーティスト年表のどっかで挑戦したいなっていう気持ちはありましたね」

――今回のシングルは、複数のアレンジャーが関わっていますが、「平成の男」でのミッキー吉野さんに関しては、彼のどんな曲や仕事からのインスパイアが大きかったですか?

「ゴダイゴのサウンドはもちろんですけど、それこそ布施 明さんの「君は薔薇より美しい」もメロディを聴いてみると難しいし、布施さんのボーカルもレンジが広いし、すごく上手だし。けどやっぱりキャッチーで誰もが聴いて気持ちよく、BGMとしても聴けるようなアレンジメントになってるんですよね。ていうのはやっぱりセンスなので、誰もが持ってるものじゃないと思うんです。もちろん意識的にされてる部分もあると思いますけど、たぶんその人が持つ先天的なセンスによるところも大きいと思うんですよ。ミッキーさんは、僕が理想としてるJ-POPのひとつの答えみたいなものとリンクしたので、ミッキーさんだけじゃなくて、他の方々も含めてそういう意味で、僕の中の音楽像みたいなものとシンクロした人にお声がけしました」

――「平成の男」の歌詞は、男の生き方、女の生き方の現代的な表現ですね。これ、女性目線に置き換えてもあんまりニュアンスが変わらない気がするんです。

「ああ、そうかもしれないですね」

――同じではないけれど、社会性という意味では、ちゃんと自立していて、ひとり生きていける女性なんだけど、それでも守ってあげたいと思うというテーマですね。

「うん。それがいまの道徳観なのかもと思いつつ、ただやっぱり昔から変わらない、何かしてあげたいとか、男としてのプライドだったり、女としての自尊心みたいなものももちろんあるはずで。それをどう表現していいのか難しい時代にはなってきたけど、その気持ちは持っときたいよねっていうころをうまいバランスで書けたらいまっぽいし、なんか伝わるものがあるかなっていうところが狙いですかね」

――とはいえMe Too運動などで最近、男女はまた敵対してますが。

「ああ、過熱してますよね(笑)」

――そういう時代にあってこの曲の歌詞はすごく清々しいですし、柔らかい表現だなと思います。

「そうですね。やっぱり大衆音楽を作りたくてやってるので、あんまり毒づきたくないんですよ。そういうのは過去にもやってきたし。すんなり誰かの心に寄り添って、けれどもちゃんとメッセージがどこかしらに隠されてるようなバランスは狙いたいなと思ってます」

――そして2曲目の「Love Letter」も、「平成の男」の説得力を裏打ちするかのような内容で。

「そうですね。自分へのラブレターですね(笑)」

――シチュエーションとしてはハードボイルドなのに。

「そこは若干ね。ある種、ハードボイルドの定型に少し寄せてますから(笑)」

――なんたってアレンジが井上 鑑さんですからね。これがいま聴くとかっこよくてですね。

「昔だったらダサいんですか(笑)」

――いやいや、ちょっと前だとどう思ったかわからないですよ。でもいま聴くとギターのフレージングとかがかっこよく聴こえるなと。

「そうですね。なんか、1周回ってるのかわからないですけど、確かに紙一重なところで。でもやっぱり芯があるんでしょうね。言葉にはしづらいですけど。だからたぶん僕らの世代が同じようなことを真似してフレーズ作ってもすごくダサくなる。やっぱり本物がやる凄みってあると思うんで、そこはもちろん狙いではありますけど。昭和、平成、そして次の時代ともコラボレーションができたらなっていう気持ちはああります」

――みなさんシグネチャー的なサウンドですが、3曲目の「抱きしめたって、近過ぎて」はシンセやエレピが出てくるだけで、原田真二さんの存在をを感じます。

「原田さんに至ってはコーラスもご自身やっていただいてるんで。彼のベースにあるのは、それこそスティーヴィー・ワンダーとかね、ああいうブラックミュージックとか、それをうまく日本の歌謡曲に持ち込んだパイオニアだと思うんですよね。その人とコラボレートして、もちろんこの時代で新しい歌謡曲を作れたっていうのはすごく意義のあることかなって思ってますね」

――今回のシングルを誰かと誰かの作品の間に挟むとしたら、誰がいいですか?

「ああ、プレイリストみたいなことですか?面白いですね、それ(笑)。なんだろな……それこそゴダイゴ、清 竜人、原田真二とかいいんじゃないですか(笑)」

――そのまんまですね(笑)。いまってプレイリストの時代なので、これまでとは全然違うコンテキストで聴くっていうこともありえるなと。

「ああ、なるほど。確かにね。そうなると若いバンドが好きな子のプレイリストには「平成の男」は入りづらいですね」

――でもJ-POPの新曲プレイリストでぎょっとされるのもありだと思いますよ。ちなみにアルバムもこういうスタイルで作ってらっしゃるんですか?

「鋭意制作中です。基本的に平成の歌謡曲的なアプローチで1枚はアルバムを作りたいなと思ってるので」

――届け方としてはいろんなことができそうですね。

「まだいまは3曲ですけど僕的にはまだ引き出しがあるつもりです。ちゃんとひとつの筋は通ってるんだけど、バリエーションに富んだアルバムにはなるかなと思いますね」

――ライブも若いバンドが出るサーキットイベントだけじゃなくて、歌謡曲や演歌の番組に出てても違和感がなさそうな……

「そうですね。先日も美川憲一さん、水森かおりさんと、ある番組でごいっしょして。過去にはなかったことですけど、そういう意味では、ジャンルのクロスオーバーは“もう始まったな”って感じでしたね(笑)」

(おわり)

取材・文/石角友香



■清 竜人ツアー 2018 夏(チケットぴあ)
7月25日(水) WWW X(東京)
7月30日(月) WWW X(東京)
8月1日(水) BOTTOMLINE(愛知)
8月2日(木) 味園ユニバース(大阪)



■清 竜人 歌謡祭(チケットぴあ)
8月26日(日) 東京キネマ倶楽部(東京) w. 吉澤嘉代子



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2018年7月25日(水)発売
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2018年7月25日(水)発売
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