第二回
進化するギターと、ギタリストたち

ジミ・ヘンドリックス以降、数多くのギターヒーローが登場してきた。その後、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジやヴァン・ヘイレンのエドワード・ヴァン・ヘイレンなど、奏法テクニックはもちろんのこと、それに加えて優れたソングライティング力を持つギタリストの出現によって、彼らが不動の地位を確立したのは第1回で触れた通りである。では、あれから30年が経った現代において、ジミー・ペイジやエドワード・ヴァン・ヘイレンに次ぐ新たなギターヒーローは出現したのだろうか。
「2000年代に入って新3大ギタリストと言われているのが、ジョン・フルシアンテ、デレク・トラックス、ジョン・メイヤー。ただ、これはあくまでも海外の雑誌(※1)が選定したものであって、賛否両論あるのですが、彼らが高いテクニックの持ち主であることや優れたソングライターであることは間違いありません。デレク・トラックスはスライド・ギターの名手として有名ですが、コンテンポラリーなテクニックも含め全般的なプレイスキルがハイレベルです。ジョン・フルシアンテはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリストとして作曲面で多大な貢献をしましたが、そのエモーショナルなプレイもまた特筆点です。ジョン・メイヤーはジミ・ヘンドリックスやスティーヴィー・レイ・ヴォーンなどから影響を受けた情熱的なギタープレイはもちろん、シンガーとしても高い評価を得ているんです」

上田氏によると、以前と今とではギタリストの在り方が変化してきているという。
「それこそ昔はヴァン・ヘイレンのライトハンド奏法に誰もが驚きましたが、今となっては周知のことですもんね。そういう、誰でも知ってることが今の時代は増えて、新しい“ワザ”みたいなものが出にくいし、同様に“ギターヒーロー”も、出にくくなっているんじゃないでしょうか。リスナー側が細分化されたというのも、大きいと思います。60年代、70年代に比べて、ムーヴメントが起きづらいという状況もある気がしますね」

では、ロックギターに未来がないのかと言えば、決してそうではない。ジミヘンやヴァン・ヘイレンが当時次々と新しい奏法で人々を驚かせたのと同じように、現代にも私たちをあっと驚かせる手法にチャレンジしているギタリストがいる。
「実は90年代に一度、ギターソロがかっこ悪いとされる時代があったんですが、2000年代に入ると再びギターソロに対する注目度が上がってくるんです。また、90年代中頃からは、通常は6本の弦を7本や8本にした多弦ギターと呼ばれるものが普及し、よりヘヴィな音を鳴らすギタリストたちが登場してきました。多弦ギターを弾くギタリストいわく、7弦ギターは通常の6弦のギターの延長線上にあるものだけど、8弦以上になるともう別の楽器という感覚になるらしいんですね。結果、それを弾きこなすために新しい奏法も生まれ始めているんです。こうした7弦、もしくは8弦ギターを駆使した音楽の中には「ジェント」(※2)と呼ばれるスタイルもあり、ムーヴメントを起こしつつあります。その代表的な存在が、ペリフェリー、アニマルズ・アズ・リーダーズといったアメリカのバンド。ペリフェリーには6?8弦ギターを使うギタリストが3人いて、アニマルズ・アズ・リーダーズは8弦ギターを使うギタリスト2人とドラムというベースレスのバンドなのですが、どちらのバンドも非常に高度で緻密に構築されたギタープレイを特徴としています。彼らは多くの音楽誌やギター誌で表紙を飾ったりもしていて、新しい時代のギターヒーローと言って差し支えないと思います」
(つづく)

編集部注:
(※1)アメリカの『Rolling Stone』誌
(※2)「ジェント(Djent)」は、スウェーデンのエクストリームメタル・バンドであるメシュガーのギタリスト、フレドリック・トーデンダルによる造語。2000年代初期頃から使用されている。プログレッシブ・メタルから派生した一ジャンルと位置付けられ、エレキギターの“ズギューン”という歪んだ音が語源と言われている。メシュガーのほか主なバンドとして、ペリフェリー、アニマルズ・アズ・リーダーズ、ボーン・オブ・オシリスなどが挙げられる。

取材協力
「YOUNG GUITAR」
1968年創刊。ハードロック、へヴィメタルを扱うギター専門誌として、長年にわたり支持を受け続けている。海外の有名ギタリストが飾る表紙・特集企画と連動したDVDによる奏法解説など、多面的な企画が好評。毎月10日発売。9月号はマシュー“マット”タック&マイケル“パッジ”パジェット(ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン)の表紙で絶賛発売中。公式ウェブサイト

Animals As Leaders(アニマルズ・アズ・リーダーズ)

Animals As Leaders(アニマルズ・アズ・リーダーズ)

PERIPHERY(ペリフェリー)

PERIPHERY(ペリフェリー)

3大ギタリストのひとり、ジミー・ペイジが在籍したレッド・ツェッペリンの後期3作品のリマスター盤が7月31日から発売された。ギターテクはもとより、ソングライティング能力にもぜひご注目を!

『プレゼンス』

『プレゼンス』
スーパー・デラックス・エディションWPZR-30664/8 20,000円(税別)
スタンダード・エディション WPCR-16684 2,000円(税別)
デラックス・エディション WPCR-16685/6 2,800円(税別)
(画像はスーパー・デラックス・エディション)

『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』

『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』
スーパー・デラックス・エディションWPZR-30669/73 20,000円(税別)
スタンダード・エディション WPCR-16687 2,000円(税別)
デラックス・エディション WPCR-16688/9 2,800円(税別)
(画像はスーパー・デラックス・エディション)

『コーダ(最終楽章)』

『コーダ(最終楽章)』
スーパー・デラックス・エディションWPZR-30552 20,000円(税別)
スタンダード・エディション WPCR-16690 2,000円(税別)
デラックス・エディション(3CD)WPCR-16691/3 3,300円(税別)
(画像はスーパー・デラックス・エディション)

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