©NOAH ROBERTO

3月4日(月)~10日(日)の特集はジェイソン・デルーロ

マルチ・プラチナム・スーパースターのジェイソン・デルーロが約9年ぶりとなる最新作『ニュー・キング』をリリース。自身の息子の名前を冠した本作は、マイケル・ブーブレ、デヴィッド・ゲッタ、ニッキー・ミナージュ、タイ・ダラー・サイン、メーガン・トレイナーとの豪華コラボレーション楽曲を含む全27曲という豪華ボリューム!これまでのキャリアの集大成だという彼の言葉どおり、アルバム全体がまるで1本の映画のような雰囲気を持つ大作に仕上がっています。特集では、最新作『ニュー・キング』に加えキャリアの代表曲や有名曲などを交えてお届けします。
「A56 アーティスト特集 WEEKLY 洋楽」担当ディレクター



放送予定/毎日 0:00~(シャッフル放送)

ジェイソン・デルーロ『ニュー・キング』DISC INFO

2024年2月16日(金)配信
ワーナーミュージック

ジェイソン・デルーロ(ワーナーミュージック)

3月11日(月)~17日(日)の特集はリアル・エステート

■TOPICS
結成から15年、その機知に富んだ名前(Real Estate=不動産業)のもと、すでに6枚ものレコードをリリースしているリアル・エステートは、メディア・サイクルの必然的な流れを知っている。どこかの誰かがようやく、彼らの曲が何を語るべきか、どう聴こえるべきかを悟った。だから――少なくともこのような簡潔なバイオによると――彼らはついにキャリア最高のアルバムを作ったのだ、と言うであろうことを。しかし、重要なのはここからだ。リアル・エステートはこの15年間、郊外の倦怠感の呪術的な輝きを完璧に映し出す燦然たるインディー・ロック・シャッフルでもって、一貫して目の離せない存在であり続けたわけで、彼らはその事を理解している。そう、彼らは知っているのだ。グルーヴに潜む陰鬱さにもかかわらず、あるいは陰鬱さゆえに、きらめきと輝きを放つ曲を書いてきたことを。つまりそれは自己認識の、そして子供時代からの固い絆の賜物であり、同時に呪縛でもあるのだ。

ということもあって、今回、リアル・エステートは、ナッシュビルのRCAスタジオAで、著名なプロデューサー兼ソングライターのダニエル・タシアンと、9日間に及ぶ歓喜に満ちたレコーディングにより制作された6枚目のフルアルバム『ダニエル』が、おそらく彼らのベストアルバムであることを知ってもらう必要があるのだ。耳から離れないメロディアスな11曲で、彼らは初期の作品の自由奔放な素晴らしさと、大人になってから得た視点を結びつけている。結成15年のリアル・エステートにこれ以上何を望むというのだ?

マーティン・コートニーは、ポップなレコードを書きたいと考えていた。例えば、最初の40秒でコーラスが入ってくるような、即座に理解できる曲のセットを。この10年間、特に『アトラス』を作ってからというもの、リアル・エステートは、愛され、瑞々しく熟成していくインディ・ロック・インスティテューション(協会)の誰もがしうる当然のことをしてきた:つまり、エフォートレスにメロディーを奏で、静かに輝きを放つバンドという称賛を、彼らは優しく押し返したのだ。色は濃くなり、テクスチャーは硬化した。曲は6分、さらに7分と伸びていった。しかし、コートニーとバンドの共同設立者のアレックス・ブリーカーが、最近よく口にしていたことがある。再び「リアル・エステートはリアル・エステートらしく」、躊躇や二の足を踏むことなく、煌めきと輝きを放つようにしたら?

コートニーの娘が愛聴していたケイシー・マスグレイヴスのアルバム『Golden Hour』をプロデュースしたのがタシアンであったことから、コートニーはこのプロデューサーを知ることになった。バンドは、タシアンに連絡をとり、両者――数々のヒット作を手がけた、グラミー賞受賞歴のあるナッシュヴィルのカントリー・ポップ・ミュージシャンと麻酔性のギターを奏でる北東部インディー・ロックの5人組――は、全く異なる領域にいるにもかかわらず、即座につながりを見出した。リアル・エステートは、友人ではない人と仕事をしたことはなかった。デイヴ・コブの有名なナッシュビルの隠れ家で、タシアンはこの曲を、あるいはあの曲をどう盛り上げるかについて、アウトサイダーでありながらも大胆にアドバイスし、時折ふざけてキャンディー・バーを投げつけては、もっと聞かせてくれ、と強調した。リアル・エステートは、R.E.M.の『オートマティック・フォー・ザ・ピープル』や90年代の "ソフトロック・ラジオ"など、彼らの青春時代のBGMについて考えていた。タシアンは、彼らをその方向へと導く手助けをし、初期の自意識の少なかった頃のバンドの改良版へと導いていった。

『ダニエル』は確かに古典的なリアル・エステート・サウンドで、ポップ・パワーハウスの中で実際に生きてきたプロデューサーの微細だが臆しないタッチでシンプルにレベルアップしている。チャイムのようなギターと悲壮感のある詩節が特徴の "Haunted World "で、コートニーは、実存的な混乱(生きる意味、なぜ我々は存在するのか)を彼自身のベストな方法で歌っており、この曲は、2009年に初めて登場し、賞賛を浴びた当時の彼らを彷彿とさせる。しかしコーラスでは、隙のない楽器のハーモニー(ペダル・スティールはナッシュヴィルのエース、ジャスティン・シッパーが担当)とかすかなバッキング・ヴォーカルが曲を新たに推進し、そのタイトなフックが瞬時に虜にする。タシアンはバンドにリフレイン(畳句)を強化することを提案したが、彼は正しかったといえる。

あるいは、驚異に満ちた鼓動が響く"Airdrop "では、ブリーカーの賑やかなベースとサミ・ニスの強烈なドラムが、コートニーがまるでハンググライダーに乗っているかのような思いにふけるコーラスへと駆り立てる。コートニーは、“The sun went down/We let it”(太陽は沈んだ/僕らがそうさせた)と4回歌い、曲の最後を締めくくるが、この部分は、基本的にオーディエンスから彼にレスポンスが返されるように作られている。“Never been so contented/I won’t ever forget it.”(こんなに幸せだったことはない/僕は一生忘れないだろう)。これは、リアル・エステートの長い間親しまれてきた、笑顔の下に隠された悲しみを、ミュージック・シティ(=ナッシュビル)・スタイルの流儀に乗っとって表現したものだ。ペダル・スティールの水銀(のような流れる響き)とウーリッツァー(オルガン・ピアノ)の煌めきが夜空の星のようにアコースティックにつまび輝く”Flowers”で、リアル・エステートのクラシック・ナッシュビル・リック(ギターで演奏される短い音符のフレーズのこと)のくねったヴァージョンを聴いてほしい。転位と不変を併せ持つ曲。これはジャンルやシーンを問わず、私たちが音楽を使って進むべき道を見つけるという共通の方法を喚起する曲なのだ。

“Water Underground” の交差するハーモニー、 “Market Street”の快活な揺れと高揚、 “Interior”の魅惑的だが欺瞞的なシンプルさ:『ダニエル』はこのような強迫的瞬間の完全な連鎖である。リアル・エステートは、すべての曲が魅力的で耳から離れないのは何がそうさせているのかを解きほぐした時に初めて分かる、曲の中に巧妙に仕組まれた華麗さとトリックの数々でもって、エフォートレスだがアートフルに聞こえるよう、稀に見るポップ・トリックをここで成功させている。

しかし、これはもちろん、無邪気な理想主義時代のリアル・エステートではない。メンバーの4人は結婚しており、ニスには長年の安定したパートナーがいる。さらに、この関係性のなかには実際に彼らの子供たちもいる。そして、外の世界はこの15年の間、ここで説明するまでもなく、様々な意味で、かなり暗くなってしまった。幾度となく、『ダニエル』はその並置――対外的な疎外感と狂気、内在的な責任と希望、と格闘する。 これらは混乱の歌であり、壊れてしまった時代に、より良く存在する方法を見つけようとしているのである。 “Now and then, I can pretend the sun is shining(たまには、太陽が輝いているふりをすることもあるんだ)"。コートニーは、マシュー・カルマンのキーボードとジュリアン・リンチのギターが、彼を靄がかかったような雰囲気に包む “Freeze Brain”の中でこう認めている。 “Let’s let some light in.(光を取り込もう)"。私たちから喜びを奪おうとするあらゆる力にもかかわらず、それ(喜び)を見いだすこと、それが闘いであり、努力するということではないだろうか?

この数年、(コロナの影響で)離れ離れを余儀なくされていたリアル・エステートのメンバー5人は、狭いながらも親密な空間で、快活に遊び心満載に住居をシェアしていた。レコーディングが始まって数日後、アルバムのタイトルについて話し合っていたとき、誰かが "ダニエル "という名前を提案した。単純に、 レコードに人間の名前を捧げるのは面白いと思ったからだ。それはダニエル・タシアンのためだったのか?そうかもしれない。ザ・リプレイスメンツの『ティム』を意識したのだろうか?可能性はある。それは、バンド自体またはその認識を深刻に考えすぎることなく、自分たちの音楽を真剣に受け止められるには十分なほど長く存在しているというバンドの証だったのだろうか?まったくもって、その通りだ。

『Daniel』は素晴らしいポップ・ソングのレコードであり、 そのフックの連なりと不安の流れは、抗しがたく結びついている。そしてリアル・エステートよりこのやり方に優れたバンドはほとんどいない。しかし、おそらくそれと同じくらい重要なのは、成熟によってもたらされる自己受容の表現であり、なりたい自分になるだけで十分だと気づくことなのである。“What is it that you want to hear? There’s only so much time(聞きたいことは何?時間は限られている)” 。『ダニエル』の独創的で誇示的なフィナーレ、"You Are Here "でコートニーが口ずさむ。 “Best we can do is be happy here/Sing another line.(私たちにできることは、ここで幸せになること/別の詩を歌おう)"。それは、15年やり続けたリアル・エステートにとって、ミッション・ステートメントであり、彼らが子供の頃の夢を実現したバンドであること、そしてそれがクールであることを思い出させるものだ。つまるところ、ベスト・ニューアルバム『Daniel』は、今、リアル・エステートがリアル・エステートであることに勝るものはないというバンド最高の状態なのである。

訳/近藤麻美



放送予定/毎日 0:00~(シャッフル放送)


リアル・エステート『ダニエル』DISC INFO

2024年2月23日(金)発売
BRC752
BEAT RECORDS

©Thom Kerr

3月18日(月)~24日(日)の特集はジェイコブ・コリアー

■TOPICS
壮大な音楽の旅路を経て辿り着いたのは、歌声に満ちた世界。超豪華アーティストも多数参加し遂に届けられた、「ジェシー・プロジェクト」最終作。

本作は、ジェイコブが2018年からスタートさせた「ジェシー・プロジェクト」四部作のフィナーレを飾る作品で、過去の三作で探求された音楽的な要素も反映させつつ、人間の感情を表現するという部分にコンセプトが置かれているとのこと。今や彼の代名詞となった、コンサートでのオーディエンス・クワイアのような人間の声の力を祝福するような内容となっていて、世界各国のアーティストや音楽を網羅した、まさにプロジェクトの集大成となるような大注目の一枚と言える。アートワークは、複雑且つ幻想的なガラス彫刻やコラージュ作品で知られるブルックリンのアーティスト、ダスティン・イェリンが担当。楽曲は「ウィットネス・ミー」や「リトル・ブルー」、「ネヴァー・ゴナ・ビー・アローン」といったシングルに加え、サイモン&ガーファンクルの名曲「明日に架ける橋」のカヴァーも収録するなど、仕上がりが楽しみな内容となっている。

そして注目すべきはフィーチャリング勢。ショーン・メンデス、クリス・マーティン、エスパ、ジョン・レジェンド、ジョン・メイヤー、カミーロ、リジー・マカルパインなど、あらゆるジャンルからこれ以上ない超豪華ミュージシャンたちがゲスト参加しており、ジェイコブがこの5年間で歩んだ音楽の旅路を祝福している。壮大な冒険だった「ジェシー・プロジェクト」の締めくくりにふさわしい、全世界大注目の傑作。

さらに日本盤には限定ボーナス・トラックとして、「リトル・ブルー (マホガニー・セッションズ)」を収録。日本で制作されたミュージック・ビデオも話題を呼んだ「リトル・ブルー」だが、ここでは急遽ファンを招いてロンドンのヘリテージ&アーツ・センターで一発録りされたバージョンとなっており、ジェイコブの弾き語り、ファンによるコーラス、そして後半繰り広げられる圧巻のオーディエンス・クワイアが感動的な内容となっている。


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ジェイコブ・コリアー『ジェシー Vol. 4』DISC INFO

2024年3月1日(金)発売
SHM-CD/UCCM-1273/2,860円(税込)
ユニバーサルミュージック

ジェイコブ・コリアー(ユニバーサルミュージック)

©Joelle Grace Taylor

3月25日(月)~31日(日)の特集はノラ・ジョーンズ

■TOPICS
これまでに9度グラミー賞を受賞し、2022年、5年振りの来日公演も大きな話題を呼んだノラ・ジョーンズ。それ以降も自身のポッドキャスト番組「Norah Jones Is Playing Along」に出演したレイヴェイ、デイヴ・グロール、ロバート・グラスパー、ロジック等とのコラボレーションや、『リトル・ブロークン・ハーツ』のデラックス・エディションなど精力的にリリースを続けている彼女だが、自身9枚目となる待望のニュー・アルバムのリリースが決定した。

本作は、2021年にリリースされたノラ初のクリスマス・アルバム『アイ・ドリーム・オブ・クリスマス』も手掛けたリオン・マイケルズがプロデュースを担当。オリジナル・アルバムとしては2020年の『ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア』以来約4年振りとなる本作では、ほぼ全てのパートをノラとリオンの2人でレコーディングしている。収録されている12曲は、自由を感じること、踊りたくなること、人生がもたらすものを受け入れることなど活気に溢れポジティヴな内容に満ちている。ダウンホームでアーシーなサウンドも印象的で、懐かしい雰囲気ながらもどこか新しさを感じさせる。これまでの作品には無かったノラの新たな一面を感じ取れる、必聴の仕上がりだ。本作、そして第1弾シングルとなった「ランニング」について、ノラは「私がアルバムを『ヴィジョンズ』と名付けたのは、多くのアイデアが真夜中か寝る直前の瞬間に思いついたからで、「ランニング」は半分眠っているのに、ちょっと目が覚めたような気分になる曲のひとつだった。ほとんどの曲は、私がピアノかギターで、リオンがドラムを叩いて、ただジャムるというやり方で作っていったの。 その生々しさが好きで、ガレージっぽいけどソウルフルな感じになったと思う。それがリオンのサウンドの原点だし、完璧すぎないというのも魅力のひとつだしね」と語っている。

日本盤には、2023年6月にリリースされたシングル「キャン・ユー・ビリーヴ」をボーナス・トラックとして収録。さらに限定盤、シングルレイヤーSACD(SHM仕様)といった形態も日本盤のみで同時発売される。




放送予定/毎日 0:00~(シャッフル放送)

ノラ・ジョーンズ『ヴィジョンズ』DISC INFO

2024年3月8日(金)発売
通常盤(SHM-CD)/UCCQ-1197/2,860円(税込)
シングルレイヤーSACD(SHM仕様)/UCGQ-9057/3,960円(税込)
ユニバーサルミュージック

ノラ・ジョーンズ





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