DISH//がワンマンライブ『DISH// ARENA LIVE 2023HAPPY?」』を122日・3日、ぴあアリーナMMで開催した。

今年8月にリリースされたEPHAPPY』を携えたアリーナ2デイズ公演。オープニングを飾ったのはEPの表題曲「HAPPY」だった。開演時はステージが紗幕で覆われ、紗幕上にメンバーのシルエットや歌詞のタイポグラフィが映っていたが、やがてリアルタイムでのメンバーの映像に変化。さらにメンバーの名前とバンドのロゴが表示されたあと、モノクロだった映像が色つきの映像に変化する。そんなドラマティックな演出とともに、紗幕を突き破りそうなほど力強いバンドサウンドが観客の元に届けられたのだった。

北村匠海(Vo/Gt)から観客へ贈る言葉「会いたかったぜ!」が場内に響いた直後、2曲目スタートと同時に幕落ち。メンバーも観客も笑顔の中、両者の対面が叶った。ライブの走り出しはアッパーチューンで勢いよく。「ビリビリ☆ルールブック」、「Seagull」といった4人全員が歌えるDISH//ならではのマイクリレーが持ち味の曲を、歳月とともにパワーアップを重ねる演奏とともに届け、観客も、拳を強く上げたり声を上げたりしながらバンドに加勢した。ステージ前方に出てきた橘柊生(DJ/Key)が、「今日ここにストレス発散しにきたんだよね?」と観客を煽ってから始まったのは、ライブではみんなでタオルを回すのが定番の「東京VIBRATION」。ステージで炎が上がるなか、橘が「こんな楽しいことできるの、今年最後だぞ!」とアドリブで歌詞を替えると、観客はさらに盛り上がった。メンバーは楽器を掻き鳴らして、泥臭く燃焼する。

「昨日初日が終わって、今日が本当にラスト。僕たちは全て出しきるつもりでいます。みなさんもどうぞ有り余った元気を僕たちにぶつけにきてください。準備はいいですか? ……と盛り上げたところで、一旦ゆっくりな曲を聴いてください」。MCでは北村がそう語り、次の曲「everyday life.」へと繋げた。『HAPPY』収録のミドルナンバーによって、場の空気は一転。「今日に至るまでに、みなさんがどんな日々を過ごしてきたのかは知らないけど、この曲でちょっとでも笑顔に、ちょっとでも気が楽になってくれたら」(北村)という言葉とともに、洒脱なサウンドを届けた。ギターカッティングが小気味よくリズムを刻むダンスナンバー「QQ」では、メンバーもバンドの音にノリながら演奏。「Shout it out」では緊迫したアンサンブルと北村の佇まいによって、観る人の曲の世界にグッと引き込んだ。メタル/ハードロックナンバー「Newフェイス」演奏時には、スタッフの持つハンディカメラが、集中してライブに挑む4人の姿を捉える。音からも画からも伝わってくるメンバーの気迫。2時間半のライブの中でも特にストイックだったこのブロックからは、DISH//のライブパフォーマンスの進化が感じられた。

ライブ中盤でのMCでは、観客に「みんなも、自分がDISH//のセンターで歌う主人公だと思って、どんどん声を届けてください」と伝えた。「今日はくどいくらい“幸せですか?”って聞くので、本当に幸せだと思ったら叫んでください」。そんな約束とともにMCを締め括ると、次に披露したのは、泉大智(Dr)が親友の結婚に際して書いた楽曲「ウェディングソング」だ。そして、友の幸せを祝福する気持ちを純度高く表現したバラードに、「DAWN」が続く流れも美しい。〈生まれた意味を あなたと探したい〉と歌いながら客席を指差す北村の姿からは、DISH//の音楽を愛するあなたにも幸せになってほしいのだ、それが自分たちの喜びでもあるのだ、というメッセージが読み取れた。

泉と橘の漫才のようなトークのあとには、スペシャルな展開が待っていた。まず、「新曲やっていいですか!」と、日産×DISH// コラボレーション企画【Drive Letter】のために書き下ろされた楽曲で、121日に配信リリースしたばかりの新曲「Dreamer Drivers」をライブ初披露。「みんなが持っている夢を僕らは応援したいし、一緒になって笑いながら一歩一歩進みたい」(北村)というメッセージとともにパンキッシュな情熱をたたえた楽曲を届けた。さらに、「Dreamer Drivers」のあとには、ホーンカルテット&パーカッションの特別部隊が登場。サポートギタリスト、ベーシストも含めた計11名による豪華なサウンドで、「Vamping」「KICK-START」を鳴らした。そして、まだまだ終わらない。ドラムセットが上から下りてくるという驚きの演出を経て、今度はセンターステージより「GRAND HAPPY」を演奏。2014年に発表された曲だが、奇しくも今回のライブにぴったり。また、従来の持ち味も残しつつ、今の4人が鳴らすからこそ活きる曲として生まれ変わっていたのが痛快だった。

ライブ中「幸せですか?」と100回聞けるかどうかチャレンジしていた矢部昌暉(Cho/Gt)が、ステージ上を縦横無尽に駆け回りながら、とにかく自由にはっちゃけまくった「NOT FLUNKY」。矢部の型破りな行動を「あれだけ発散してる人がいたら声出したくなったでしょう。どうですか!?」(北村)と起爆剤に変えながら、コール&レスポンスとともに盛り上がった「万々歳」。北村のアカペラから始まった、DISH//からファンへ感謝を伝えるための歌「沈丁花」。ハイライトが次々と塗り替えられる中、本編ラストに選ばれたのは「エンドロールは悲しくない」だった。「あなたとのこの時間はやっぱり今しかないし、今日は終わってしまうかもしれない。でも悲しくないし、またみんなに絶対に会える。そんな“絶対”を僕も信じたいし、みんなにも信じてほしい」(北村)。そんな想いを乗せたバンドサウンドが前向きな余韻を残した。

客席からの「おかわり」コールに呼ばれてのアンコールでは、「新曲やります!」とリリース前の楽曲「いつだってHIGH!」をいきなり披露する嬉しいサプライズ。本編の温かな空気を引き継ぐような、朗らかな楽曲だ。2日間のライブで初披露された「いつだってHIGH!」は、日本テレビ「DayDay.」内の企画「WE LOVE DANCELOVEダン -高校ダンス動画フェス-】」課題曲へ書き下ろされた新曲。1213日より配信開始とのことなので、リリースを楽しみにしたい。

アンコール2曲目として「I Can Hear」を演奏したあとのMCでは、北村が「I Can Hear」を初めて生演奏で披露した2013年のZepp Tokyo公演を振り返った。また、橘は、「1年の集大成のライブを『HAPPY?』というタイトルでやれてるなんてすごく幸せだなって気持ちと、(今年は)このあとワンマンないんだ、寂しいなって気持ちがある」とし、きっとみんなと同じ気持ちだと語る。その上で「次の俺らのワンマンまで、頑張ろうな」とファンに呼びかけ、再会の約束を結んだ。

ライブのラストに演奏されたのは「HAPPY」。つまりこの日のライブは「HAPPY」で始まり、「HAPPY」で締め括られたわけだが、DISH//の音楽をたっぷりと楽しんだあとということもあり、メンバーも観客もよりポジティブなムードに包まれていた。ライブラストの「HAPPY」はセンターステージからの演奏。北村がマイクを客席に向けると、大音量のシンガロングが返ってくる。観客に囲まれ、ファンの熱量を一身に浴びながら演奏する4人は充実の笑顔。最後にもう1回、ステージから「幸せですか?」と尋ねると、客席からは大きな拍手と歓声が返ってきた。終演後、スクリーンには「HAPPY?」ではなく「HAPPY!!!!」の文字。会場を出ると再び日常が始まるが、きっと、楽しい思い出とともに幸福な気持ちも蓄えられたはずだ。

なお、ライブ中に発表されたように、DISH//は来年4月より、全国9都市11公演をまわるホールツアー『DISH// HALL TOUR 2024』を開催する。チケットは12月17()23:59までFC会員限定先行受付中のため、FC会員の方はお見逃しなく。

Text by 蜂須賀ちなみ

新曲 「いつだってHIGH!」 配信ジャケット
DISH// HALL TOUR 2024
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