ローウェル・ジョージによって1969年にアメリカで結成されたリトル・フィートは、ニュー・オリンズに代表される米南部のR&B、ブギ、カントリー、ファンクなど様々な要素を貪欲に吸収し、1970年代のウェスト・コースト・サウンドとは一線を画す存在感を確立した。数多くのリスナーやバンドに非常に大きな影響を与えた彼らは、今なお熱狂的な信者を世界中に持っている。結成から約60年の月日が流れ、リトル・フィートが残してきた名盤たちが次々と50周年という大きな節目を迎える中、2023年に発表された初期の大傑作『セイリン・シューズ』と『ディキシー・チキン』の50周年記念デラックス・エディションに続き、彼らの中期~後期の名盤2作『アメイジング!』と『ラスト・レコード・アルバム』も、それぞれデラックス・エディションとなって発売されることが決定した。
海外では、『ラスト・レコード・アルバム』が2枚組アナログ・セットと4枚組CDセットの2形態で10月24日に発売となり、『アメイジング!』は2枚組アナログ・セットと3枚組CDセットの各形態で昨年夏に一足早くリリースされた。さらに、各作品のCDセットが日本盤として発売されることも決まり、11月12日に同時リリースされる。日本盤は輸入盤国内仕様で、英文ライナーノーツの完全翻訳や、歌詞・対訳を掲載した別冊ブックレットが付属となる予定だ。なお、『ラスト・レコード・アルバム』から先行シングルとして「ロング・ディスタンス・ラヴ」のオルタネイト・ヴァージョンが配信中だ。
▼『ラスト・レコード・アルバム』日本盤の予約と先行配信曲の再生はこちら
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『アメイジング!』は1974年8月にリリースされた4枚目のスタジオ・アルバムだ。しかし、名盤『ディキシー・チキン』を制作したラインナップ(ローウェル・ジョージ<Vo/G>、リチャード・ヘイワード<Dr>、ビル・ペイン<Key>、ポール・バリアー<Vo/G>、ケニー・グラッドニー<B>、サム・クレイトン<Perc>)で発表したアルバムとしては2作目であり、ホーン・セクションにはR&Bファンク・グループのタワー・オブ・パワーが参加をしている。このデラックス・エディションには、オリジナルのマルチ・トラック・テープと2トラック・ステレオ・テープからの音源にリマスターを施したオリジナル・アルバムの楽曲が収録となる。さらに数々のレア音源も収められ、「ロックン・ロール・ドクター」「オー・アトランタ」などのアルバム収録曲のオルタネイト・ヴァージョンや、最終的に『ラスト・レコード・アルバム』に収録された「ロング・ディスタンス・ラヴ」などの初期ヴァージョン、『タイムズ・ラヴズ・ア・ヒーロー』収録曲「デイ・アット・ザ・ドッグ・レース」の未完成ヴァージョンなどの貴重な音源もこのデラックス・エディションで聴くことができる。
ちなみに、『アメイジング!』のレコーディング・セッションの音源が残っているのは、実はちょっとした奇跡とも言える。なぜなら、バンドがアルバム制作当時に使ったボルチモアのブルー・シーズ・レコーディング・スタジオは、"はしけ"(自航能力のない運搬船)を改造したスタジオで、1977年に水没をしたからだ。実際にレコーディング・テープは海の底に沈んだが、残った音源が奇跡的にデラックス・エディションに収められることになった。CDセットの特筆すべき点は、1975年2月にパリのオランピア劇場で開催された公演のライヴ音源が収録になっていることだ。セットリストは、「スキン・イット・ブラック」と「オー・アトランタ」を含む『アメイジング!』収録曲で主に構成され、その中には「ウィリン」、「ファット・マン・イン・ザ・バスタブ」などの初期の作品からの名曲も散りばめられている。
『ラスト・レコード・アルバム』は、1975年の10月にリリースされた5枚目のスタジオ・アルバムである。今年リリース50周年を迎えるこの作品は、クリエイティヴ面において大きな転換点をもたらし、リトル・フィートの音楽性を語る上で重要な1枚と言える。前作『アメイジング!』同様のラインナップで制作され、この6名のメンバーが残したアルバムの中でも、特にソングライティングにおいては彼らの才能が際立っている。ローウェル・ジョージは切ない愛を歌ったバラード「ロング・ディスタンス・ラヴ」を書き、ポール・バリアーはファンがお気に入りの「オール・ザット・ドリーム」を共作した。またビル・ペインは長尺の大作「デイ・オア・ナイト」の制作において素晴らしい貢献を見せ、こうした楽曲たちは早々にライヴでの定番曲となっていったのだ。
このデラックス・エディションには、リマスターを施したオリジナル・アルバムの音源にくわえ、数々のレア音源やこれまで未発表だった楽曲が収録となる。特にアルバムのレコーディングの様子を深く掘り下げ、セッションから、初期ヴァージョンの音源や、作りこまれる前の粗削りなデモ音源、オルタネイト・テイクなどが収められる。こうした貴重な音源から、「マーシナリィ・テリトリィ」、「オール・ザット・ユー・ドリーム」、「ロング・ディスタンス・ラヴ」の未発表ヴァージョンが収録となっているのは、ファンにとっても堪らない要素となるだろう。また「デイ・オア・ナイト」のインストゥルメンタル・テイクが収録となっているのも貴重だ。さらにCDセットには、1975年のハロウィンの夜にボストンのオルフェウム・シアターで行われた公演の未発表ライヴ音源も含まれる。この公演は、アルバムの発表からわずか2週間後に行われたものであり、バンドがライヴ・パフォーマンスにおいて、いかにスムーズに新曲を自分たちのものにしたのかを描き出している。セットリストには「ファット・マン・イン・ザ・バスタブ」「ウィリン」などライヴでの王道ナンバーがくわえられ、「デイ・オア・ナイト」、「オール・ザット・ユー・ドリーム」、「ロマンス・ダンス」、「ロング・ディスタンス・ラヴ」が演奏された。このパフォーマンスは、後に“偉大なライヴ・アルバム”の1枚として後世に語り継がれるようになった『ウェイティング・フォー・コロンブス』に収録となった1977年の圧巻のライヴ・パフォーマンスで発揮されるグルーヴ感をすでにバンドがまとい、その勢いをもって邁進するバンドの様子を物語っている。
なお、同梱されるライナーノーツは、『アメイジング!』での解説でも筆を執っているデニス・マクナリーが手掛け、アルバムが放つダイナミックなエネルギーを巧みに語っている。また、バンドのアートワークを長く手掛けてきたネオン・パークが描いたハリウッド神話を皮肉ったシュールなジャケットが、アルバムをより印象的にしている。
【リリース情報】
リトル・フィート
2025年11月12日発売
『アメイジング!(デラックス・エディション)』WPCR-18783/5 定価 3,740円(税抜3,400円)
『ラスト・レコード・アルバム (デラックス・エディション)』WPCR-18786/9 定価 6,050円(税抜5,500円)
★輸入盤国内仕様 / 完全生産限定盤
★英文ライナーノーツの完全翻訳・歌詞・対訳付