今年319日(水)にリリースしたメジャー2枚目のアルバム『my space my time』を携えた今回のツアー。開演時間となり、バンドが定位置につくと、星が輝くステージに有華が登場。オープニングを飾ったのはアルバム『my space my time』の収録曲で、恋の病に落ちてしまった女の子が主人公の胸キュンポップな片想いソング「LOVESICK」。<1番の特効薬はあなたのsmile>と歌いながら笑顔でハートマークを描く有華の身振り手振りの大きいパフォーマンスに、まるで久しぶりに会った“友達”から近況を聞いているような親近感を覚えた。おそらく、会場に集まった観客にとって、彼女は心の深い部分を分かり合える“友達”のような存在なのだろう。鏡に向かってネガティブな自分を励ます「#Me」ではステージを右に左に動きながら観客の近くに行って<キラキラキラめく私たち>というフレーズを共有すると、SNS上の総再生回数が80億回を突破した「Baby you」では、一人一人としっかりと目を合わせるかのように歌う有華の<ねぇ>という呼びかけに<愛してる>という特大のコールが湧き起こり、冒頭から場内は心地よい一体感が生まれた。

「泣いても笑っても今日が最後やからさ。今日はとびっきり楽しんでもらって。日頃の嫌なこと、嫌な人、全部忘れて、全部ここに置いて帰ってもらったらと思います」と挨拶すると、会場全体から温かい拍手があがった。「アルバムの曲を1曲1曲、丁寧に届けていきたいと思ってるから、全部思い出に変えて楽しんでください」と語り、ニューアルバムの1曲目に収録されていた「Bad boy」へ。ミュージカル調のスイングナンバーに自身の最大のヒット曲を<“Baby you Baby you”なんて実際上手く言えんから>と関西弁で引用しながら、これまでにない怒りを込めた強い歌声を披露。矢継ぎ早に「新生活始まったばかりやけど、私はいつでもどこでもそばにいます! 忘れないでね!!」と呼びかけた「ミラクル」ではモータウンビートに合わせて<不器用でいい やってみるが大事>というフレーズを観客と一緒に歌い、カントリーポップ「告うた」のサビでは会場一体となったワイパーで盛り上がった。「6年前の曲」と紹介した「Hey girl !!!!」では盛大なクラップに加えて、コールも上がる盛り上がりと共に、柔らかくも深みのあるロングトーンの響きに強く惹きつけられた。エレキギターの伴奏で歌い上げた「ミラクル」の落ちサビでも感じていたのだが、みんなで一緒に楽しめるライブである一方で、しっかりとクオリティも共存共栄しており、シンガーとしての魅力がはっきりと伝わってくるステージとなっていた。

特にもっとも心に残ったのは、椅子に座り、「日々の中で嬉しいことがたくさんあったらいいなと思うけど、そうもいかないのが人生ですね。苦しい時も、寂しい時も寄り添いたいなという気持ちがあって。みんなにはどうか幸せであって欲しいの。でも、そうじゃない時も私はそばにいるという心を込めて」と語ったあとで、ピアノの伴奏のみで歌い始めたバラード「レモネード」だった。思い出がもたらす甘さと寂しさがぐるぐるめぐる思考の果てに、<もう友達には戻れないのです>というフレーズに辿り着く。自身のリアルな感情や恋愛観を刻みつけた楽曲をエモーショナルに歌いあげる姿はまさに圧巻。さらに、「ピータパンシンドローム」ではアコースティックギターを基調としたバラードで優しく温かいムードで満たし、「嬉しい感情であっても、悲しい感情であっても、人と人で感じる気持ち、ハートが大事なんやなと思った。そんな気持ちをこれからも歌にしたいし、同じ気持ちの子を歌で救いたいな」という言葉に導かれた失恋ソング「嫌いになれたら」は、有華自身によるキーボードの弾き語りで届け、有華のボーカル表現をじっくりと堪能できる時間が続いた。

有華の歌声に耳を澄ませ、ゆったりと心を揺らしていたが、ここからライブは一変。<午後のbeach堂々と駆けてく>というサマーソング「Darling Darling」では浮き輪を体に通したままで、時に泳ぎながら歌い、場内が赤と緑のライトで照らされた「Our Xmas」ではぬいぐるみを抱えて季節外れのクリスマスを祝い、ローソクがついたメガネをつけた「バースデーソング -2022 ver.-」では<ハッピーバースデー! おめでとう>の大合唱となり、会場全体をパーティーのようなムードで包んだ。そして、「いけんのか〜い!」という煽りから始まり、コールやクラップが生まれた「リングノート」からライブは後半へ。観客に手を振り、しっかりと目を合わせながら<こんな私だけどよろしくね>と歌いかけたウエディングソング「Partner」で会場全体を多幸感いっぱいに満たすと、ベストフレンドである観客に感謝の気持ちを込めて歌った「Bestie」で<いつでもそばに居るから/帰る場所がここにあるから>というフレーズを分かち合った後に<WOWWOW>のシンガロングが起こり、ステージとフロアの距離をさらに縮めると、最後は鶴の舞のポーズで締めて、観客の笑いを誘った。

本編の最後は、20代を終え、30代が始まるまでの1年間の焦りや葛藤から生まれた「2930」。「ないものばかりに目を向けていたけど、これからはあるものにたくさん目を向けて、みんなにありがとうって感謝を伝えながら歳を重ねていきたいと思います。下を向かず、後ろを向かず、みんなに、前に、上に、届けたいと思います。そんな曲を披露する場があるなんて、私はとっても幸せ者です。これからも、どんなことがあっても、ほんまにそばにいたいと思っています。いろんなこと、一緒に乗り越えていきましょう。30代の私をどうぞよろしく」という言葉から「2930」へ。<自分で進むの>という決意にも似たフレーズとともにピースサインを高々と掲げ、ポジティブな雰囲気が広がる中でライブはエンディングを迎えた。

アンコールは5年前、コロナ禍に書いた「うたでつなごう」をキーボードの弾き語りで歌うと<ラララ>の大合唱となり、タイトル通りに楽曲を介した心地いい一体感を作り出した。最後に、「小さい頃の私が、こうやって歌手になって、ライブができる日がこんなに続くなんて思いもしなかったし、これからも続いていけたらいいなと思っています。これからもいろんな思い出を一緒に作りましょう」と語りかけ、「またね」で“さよなら”ではなく、“また会いましょうね”という約束を交わし、何度も観客に感謝を伝え、手を振りながらステージを後にした。『my space my time』は一人の部屋で一人の時間に聴きたいアルバムだが、この日のライブは、「この気持ちわかる」、「私と似ている」と感じることのできる、共感という名の感情の連鎖によって“個”が集まった“our space our time”となっていた。お互いに“私”のままで、ふと気がついたときに、そばにいてくれる存在と関係性はなかなか見つからないもの。終演後のフロアには彼女とのミート&グリートを待つ長い行列ができていたが、観客のとても充実した表情や弾ける笑顔からも、“ありがとう”と“愛してる”を伝え合えた、明るく楽しい思い出が作れたことを物語ってるようだった。

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/山川 哲矢

YUKA 「my space my time」 TOUR 2025 - SET LIST

M01. LOVESICK
M02. #Me
M03. Baby you 
M04. Bad boy
M05. ミラクル
M06. 告うた
M07. Hey girl !!!!
M08. レモネード
M09. ピーターパンシンドローム
M10. 嫌いになれたら
M11. Darling Darling
M12. Our Xmas
M13. バースデーソング -2022 ver.-
M14. リングノート
M15. Partner
M16. Bestie
M17. 2930
En-01. うたでつなごう
En-02. またね
@日本橋 三井ホール/2025年4月12日(土)

セットリストプレイリスト >>>

RELEASE INFORMATION

有華『my space my time』

2025年3月19日(水)発売
COCP-42470/5,500円(税込)

有華『my space my time』

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