Saucy Dogが26年1月4日、京セラドーム大阪にて自身初となるドーム単独公演『Saucy Dog DOME LIVE 2026“A NEW DAWN”』を開催した。現メンバーとなって10年という大きな節目のワンマンライブに、彼らが舞台として選んだのはバンド結成の地である大阪。“A NEW DAWN=新たな夜明け”と名付け、3万5千人を動員してソールドアウトとなった本公演の模様をレポートする。
ふるさとに帰省した時のような温かい空気に包まれてドーム公演が開幕
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開演を待つ場内にはモーター音ともダクト音とも区別のつかない重低音が響いていた。開演予定時刻の16時ちょうどに、不意に新幹線の到着チャイムが鳴り響く。「重低音」の正体が新幹線の走行音だったことが判明するやいなや、駅のホームに降りてスーツケースを引く音、雑踏の喧騒、カラスの鳴き声といった「日常の音」が靴音とともに響き、やがて点灯したスクリーンに一人の主人公が実家の扉を開け、両親に迎えられる映像が映し出される。まるで誰かの帰省を疑似体験しているかのようだ。主人公が自室の机に置かれた懐かしいゲーム機「ゲームボーイ アドバンス」の電源を入れると、公演タイトル『A NEW DAWN』の文字が! 並んだコマンドの中から“さいしょからはじめる”が選択され、主人公の成長記録が走馬灯のようにスクリーンに駆け巡って会場は暗転。せとゆいか(Dr&Cho)のカウントが響くと、石原慎也(Vo&G)の「Saucy Dogです! よろしくね!」という快活な第一声とともに、ライブは「スパイス」で幕を開けた! 柔らかなオレンジの光がステージを包み込み、3人が呼吸を合わせて丁寧に音を紡いでいく。かつて石原が“苦しいことも人生の味付け(スパイス)になる”とインタビューで語っていたその曲の温かなメロディが、ドームという巨大な空間を“観客の一人ひとりを迎え入れる実家”のような安心感で満たしていく。
華美な演出はなく、サウシーの音だけで魅了した前半戦
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秋澤和貴(B)が手で観客を煽る中で「シーグラス」へ突入し、紙飛行機や白い鳩が舞う青空の映像を背に、エモーショナルなアンサンブルを披露! 石原が満面の笑顔で「ありがとう! でもみんな、少し緊張してない?(笑) ワクワクしてる?ドキドキしてる? 今年が最高の一年になるように!」と、まだ少し緊張の残っていた観客の心をほぐすように叫ぶ。続く「優しさに溢れた世界で」ではスクリーンに映った歌詞とともに3万5千人の美しい合唱が響き、石原が「アリーナ! スタンド下段! 上段! 毎日学校頑張ってる人! 家事育児頑張ってくれてる人! 仕事頑張ってる人!」と次々に呼び掛けると大きな歓声が飛び交った。メンバーそれぞれが「あけましておめでとうございます!」と新年の挨拶をした後、石原が「ここからはサウシーらしい曲のオンパレードで行きます!」と宣言して「あぁ、もう。」「今更だって僕は言うかな」「魔法にかけられて」を立て続けに披露。過度な装飾を削ぎ落とした3人だけの真っ直ぐな音で届けていく。石原の弾き語りから始まった「コンタクトケース」では、レーザーで作られた幾何学模様や光が“恋人を失った主人公の心模様”を視覚的に描き出し、新曲「奇跡を待ってたって」では、秋澤の骨太なビート&せとの可憐なコーラスとドラミングが石原の儚げなボーカルを支え、観客の心を深く抉っていく。ドームという広大な会場であっても、彼らのスタイルは変わらない。ここまで派手な演出は一切なく、楽曲の世界観を彩るわずかな照明と3人だけの音で、ドームという巨大なキャンバスにさまざまな日常の瞬間を切り取ってリアルに描き出していた。
リラックスムードと静謐な空気が交錯したライブ中盤戦
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ライブ中盤、3万5千人の視線が集まるステージには椅子に座りリラックスした表情を見せるメンバー3人の姿が。まるでライブハウスの楽屋のような親密な空気が流れる中、箕面や堺など地元・大阪の地名を挙げながら観客の出身地を問うと、関西圏のみならず、北海道や熊本、さらには海を越えた韓国・台湾からもファンが駆けつけていることが判明! 彼らの音楽がいかにボーダレスに愛されているかを物語る一幕となった。そんな温かい空気の中で最初に演奏されたのは、コロナ禍にせとが作詞をした「いつもの帰り道」。石原と秋澤による2本のアコースティックギターが優しく寄り添う中、せとの透明感溢れるボーカルが冴え渡る。さらにカホン、アコギ、ベースという編成で披露された「紫苑」では、アコースティックならではの素朴な音色が石原の美しい歌声を一層際立たせていた。そしてライブは後半戦へ! スクリーンに東京の街の風景や人々の日常を捉えた映像が流れた後で暗転し、暗がりの中で静かに始まったのは「東京」。天井からフロアに向かって垂直に伸びる無数の光の柱が、ドームの圧倒的な広さを視覚的に強調している。その光の檻のような空間の中で歌われる「東京」では、歌詞に滲む孤独感や覚悟のようなものが心の奥深くまでダイレクトに突き刺さってきた。
ドームならではの演出が炸裂して盛り上がりは沸点に!
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石原が「今まで言われて一番悔しかった言葉!」と叫んで「煙」が始まると空気が一転して祭典ムードへ! 疾走感溢れるロックサウンドに突き動かされるようにフロアから歓声や手拍子が沸き、続く「エデンの部屋」でのタオル回し、ガレージロック調の「poi」での炎とレーザーの演出、そしてパンキッシュな「よくできました」と、終盤に向けてボルテージは加速していく。「夢みるスーパーマン」ではカラフルな電飾、炎やレーザーに火花も飛び出し、ドームならではのド派手な演出が炸裂! 場内は最高潮の熱気に包まれた。“さぁ自分らしく/走り出して行け/走り出して行け“と一人ひとりの生き方を肯定する応援ソングの「現在を生きるのだ。」を3万5千人の大合唱で分かち合った後、石原がドーム公演後に半年間のライブ活動休止期間に入ることを改めて報告すると「メンバーは家族みたいな存在だからこそ、パーソナルスペースがほしくなったんだよね。休み明けは生まれ変わったような気持ちで、ゼロからやっていきます!」と前向きな決意を言葉にした。白いスポットライトが3人を照らす中で「まっさら」を奏でた後、彼らの名を世に知らしめた原点の楽曲「いつか」をプレイ! 時おり掠れながらも全身全霊で届ける石原の歌声が心を強く打つ中、ライブ本編が終了した。
“A NEW DAWN=新たな夜明け”から“NEW GAME+ =強くてニューゲーム”へ
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アンコールは、観客が携帯電話のライトを点けて満天の星空が場内を彩る中、白のツアーTシャツに着替えた3人が珠玉のラブソング「結」を丁寧に鳴らしてスタート! スクリーンに再び「ゲームボーイ アドバンス」の画面が映ると、冒頭の映像にはなかった“強くてニューゲーム”というコマンドが選択されるや、26年の秋から始まるアリーナツアー『NEW GAME+』が発表されて大歓声が! せとが「今日は私たちの中でこっそり10周年記念ライブでもあって。昔はバイト先に向かう途中に京セラドームの前を自転車で通ることもあったりして、身近にあるめちゃくちゃ遠い会場でした。出会えたみんなのおかげで、3人が変わることなくこのステージに立てています!」と話して大きな拍手が送られる。秋澤は10年前にバイト先の人に“音楽でご飯が食べられるわけがない”と言われて悔しい想いをしたことを語り、「一年後どうなるかも分からない状況でずっとやってきたけど腐らずにやってこれてよかった。今、とても前向きな気持ちです!」と明るい表情で語った後に石原が「今日はメンバー3人だけじゃなく、スタッフを含めてみんなと一緒にライブを作っているんだなと感じました。少し休むけど、すぐに帰ってきます!」と力強く約束をしてバンドのアンセムソング「犬も喰わない」へ。“A NEW DAWN”という文字が朝日のようにスクリーンの上方へ昇っていくのを見届けた後、ラストナンバーの「グッバイ」を全力で掻き鳴らして2時間40分に渡るサウシー初のドーム公演が終了した。
会場がどれだけ大きくなろうともSaucy Dogの音楽はどこまでも個人的で、一人ひとりの心に寄り添う“優しさ”に満ちていた。何よりもドーム公演でありながら、彼らの名を広く流布した「シンデレラボーイ」やライブでの定番曲=「雷に打たれて」「雀ノ欠伸」「ゴーストバスター」はセットリストに入れず、また中盤以外は華美な演出もなく、あくまでも主役は“彼らの今の音”であることを強調するかのような強い意志を感じるライブだった。“強くてニューゲーム”はロールプレイングゲームでよく現れる“一度クリアした後に選べるコマンド”なのだけど、バンド活動を一旦休止するサウシーが強くなって新たにゲームを始めるのだと思うとワクワクが止まらない。バンド結成の地で迎えた“A NEW DAWN=新たな夜明け”は彼らにとってのゴールではなく、より強く、より自由に音楽を楽しむための最高のスタートラインとなったに違いない。
※テキストクレジット:前田由香
※カメラマンクレジット:日吉”JP”純平、toya、山川哲矢
『Saucy Dog DOME LIVE 2026“A NEW DAWN”」』
2026年1月4日(日)
京セラドーム大阪
テキスト=前田由香
撮影=日吉”JP”純平、toya、山川哲矢
SET LIST
01. スパイス
02. シーグラス
03. 優しさに溢れた世界で
04. あぁ、もう。
05. 今更だって僕は言うかな
06. 魔法にかけられて
07. コンタクトケース
08. 奇跡を待ってたって
09. いつもの帰り道(Acoustic)
10. 紫苑(Acoustic)
11. 東京
12. 煙
13. エデンの部屋
14. poi
15. よくできました
16. 夢みるスーパーマン
17. 現在を生きるのだ。
18. まっさら
19. いつか
《ENCORE》
01. 結
02. 犬も喰わない
03. グッバイ
