毎年12月22日、日本武道館でスペシャル・ライブを開催するのが恒例となっているスキマスイッチ。さまざまな形態、企画によるライブにチャレンジしてきたその取り組みも今年で5年目を迎え、今回はとくに昨年大好評だった『POPMAN'S Year-end Party!』と題したベストセレクション的セットリストで贈るステージの2025年版ということで、ファンの期待感も最初から高かった。

 それを証明するように、チケットはアリーナもスタンドも立ち見も含めてすべてソールドアウト! ステージの際まで迫ったお客さんの入り具合は壮観だ。会場内にはウィンターソングがこれでもかとかかり、いよいよ今年を締めくくるスキマスイッチによる“大忘年会”の始まりだ。

 2025年のスキマスイッチの活動絵巻としても楽しめるアニメーションによるオープニング映像に続いて、1曲目は「スフィアの羽根」。シティポップ的な軽快なリズムとメロディにオーディエンスは自然とクラップを打ち鳴らして体を揺らす。今年もいろいろあったけど、今ここで最高の生の音楽を全身で浴びている――っていうことで2025年もよくがんばりましたと多少強引にでも思ってしまえる音楽の力を実感する。試行錯誤しながら、結局はもっともシンプルな答えに辿り着いた、この『POPMAN'S Year-end Party!』がまさにそうだったように、年末はしのごの考えずに自分も周りも褒めて終わればそれでいい。

 冒頭3曲が終わって最初のMCで、大橋卓弥が「ありがとうございます!」と言うと、拍手と歓声が降り注ぎ、降り注いだままずっと終わらない。言葉ではない会話のようなものが交わされているかのような長く幸せな間。

 「今年もやってまいりました! 『スキマスイッチの“POPMAN'S Year-end Party! 2025”』へようこそ! 毎年、年末は武道館でスキマスイッチを観て終わろうぜ、みたいになってくれたらいいなと思っています」(大橋)

 ここからのセットリストが圧巻だった。有名曲だけでなく、普段はあまり披露されない楽曲も含めて、今この場で聴いてほしいという彼らの体温が直に感じられるような選曲になっていた。そういう意味で“ベストセレクション”だと言える。

 まず常田真太郎のピアノが大橋のボーカルをそっと導くように始まった「藍」からのブロックは、「life×life×life」「SINK」「Lovin’ Song」と、まるで変わりやすい天候のようにタイプの違う楽曲をあえて並べていた。とくに「SINK」でのフィルムリーク的手法を用いた映像表現とのコラボレーションは、楽曲の世界観をさらに深める効果を担っていた。そこで改めて気づかされたのは、スキマスイッチ楽曲における歌詞の緻密さだ。

「SINK」では、たとえばAメロ冒頭“途切れた共鳴 千切れた証明 歪んでいく情景”と韻を踏みながら名詞を重ねていきつつ、それぞれの言葉に引っ掻き傷のような修飾語をのせることでイメージを重奏的にしている。そうして言葉を積み重ねていくことに徹したこの曲は文字だけを読んでいると筋のようなものがあるわけではないが、そこに音が加わることで一気に「SINK」というタイトルの物語が開けていく。
さらにスキマスイッチの本領が存分に発揮されたのが、「奏(かなで)」から始まる、セットリスト全体のヘソに当たるブロックだ。

「奏(かなで)」はもちろん誰もがよく知る名バラードであり、歌唱の難易度の高い曲としても知られている。そこから「雨待ち風」「ボクノート」「ラストシーン」と、まるで自らを限界まで追い込むような楽曲が並び立つ。とくに歌唱面で要求される表現力は楽曲ごとに自らの形を瞬時に変える、くらいの違いが求められ、テクニックの面においても音の高低の振れ幅、転調、言葉の間隔などどれかひとつをミスしても致命傷になるというほどのものだ。この後のMCで「これでもかってくらい(笑)」と大橋が一息つくように言えば、「ドキドキした(笑)」と常田も本音を漏らしたことからもわかるとおり、大橋はもちろんバンドにとっても相当ハイレベルな技術戦が詰まった攻防が随所にあったことを物語っていた。そして肝心なのは、そうしたチャレンジをこの“大忘年会”だからこそできるという点にあるだろう。つまり、その1年の総決算として何を見せるか?ということそのものが次の1年への布石となるからだ。

スキマスイッチのライブでは恒例となっている大橋と常田の掛け合いによるフリートーク的長尺MCに続いて本編ラストを飾るブロックは、聴きようによってはクリスマスっぽくも聴こえる、という楽曲を中心にセレクト。
「惑星タイマー」「ゴールデンタイムラバー」、さらには「デザイナーズマンション」と壮大かつゴージャスに彩りながら、「逆転トリガー」のイントロブレイクでは銀テープの特効がオーディエンスを盛り上げる。そのままの熱狂で「ユリーカ」「全力少年」と駆け抜けた。
「仲間っていいな!(笑)。僕らが(みんなに)何をあげられるかはわからないんですけど、勝手に全部持っていってください(笑)」(大橋)

本編最後を締めくくるのは、もちろんこの曲。今年配信リリースした現時点での最新楽曲「あの日の虹と僕らのアンセム」だ。満を持してこの日、ライブでは初披露となった新曲の、印象的なサビの掛け声がオーディエンスの声で響くと楽曲に新たな命が吹き込まれたように感じた。
アンコールでは「未来花(ミライカ)」、そして「Ah Yeah!!」で最後のひと盛り上がり。また来年の開催を約束して――2025年のスキマスイッチと1万人による“大忘年会”が幕を閉じた。

Text:谷岡正浩
Photo:岩佐篤樹

<LIVE Information>
「スキマスイッチ “POPMAN'S Year-end Party! 2025”
開催日:12月22日(月)
会場:日本武道館
時間:17:30開場/18:30開演
https://www.office-augusta.com/sukimaswitch/live/?page_no=1&id=428

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