●2月24日(土)
amazarashi、sumika、BLUE ENCOUNT、miwa、緑黄色社会
●2月25日(日)
北澤ゆうほ(the peggies, Q.I.S.)、崎山蒼志、SIX LOUNGE、SUPER BEAVER、Little Glee Monster
ライブイベント「ANI-ROCK FES. 2024 僕のヒーローアカデミア PLUS ULTRA LIVE」が2024年2月24、25日に神奈川・横浜アリーナで開催された。
2016年7月に初めて開催された「ANI-ROCK FES.」は、人気アニメ作品の主題歌を歌った歴代のアーティスト達がその作品の名のもとに集まる音楽フェス。今回はアニメ「僕のヒーローアカデミア」シリーズの楽曲を担当したアーティストたちが出演し、熱気と興奮に溢れたステージを繰り広げた。
イベントの幕開けは、amazarashiのステージ。〈虚実を切り裂いて〉というフレーズで始まった1曲目は「空に歌えば」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第2期 第2クール オープニングテーマ)。ステージに架けられた紗幕にはリリック、両サイドに設定されたスクリーンにはヒロアカの映像が映し出され、聴覚、視覚を同時に刺激される。「2024年2月24日、横浜アリーナ。青森から来ました、amazarashiです」(秋田ひろむ)という挨拶から、「季節は次々死んでいく」を演奏。続いて菅田将暉に提供した「ロングホープフィリア」(劇場版『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~』主題歌・第3期 第2クール エンディングテーマ)を放ち、〈故に咲くどん底の花/友よ、末永い希望を〉というフレーズが高らかに響き渡った。
さらに「“ヒロアカ”に出会い、たくさんの素晴らしい景色を見ることができました。今日もそのうちの一つです」というMCから「ごめんねオデッセイ」、そして「夜の隅っこで泣いてたあなたへ どうか、どうか、生き延びて」という言葉から強い願いを込めた「アンチノミー」を披露。真摯にして普遍的な言葉を軸にした、amazarashiの本質を叩きつけるようなステージだった。
2番手として登場した緑黄色社会はまず、新曲「Party!!」をライブ初披露。〈君のためのパーティーだ!〉というラインによって、客席はまさにパーティー状態に導いた。続く「サマータイムシンデレラ」の爽やかなバンドサウンドも最高に気持ちいい。
「みんな、“ヒロアカ”好き?!」と笑顔で語り掛けた長屋晴子(Vo,Gt)。彼女自身もこの作品に力をもらっていることを告げた後、「“ヒロアカ”の世界にどっぷり浸れる曲をやります」という言葉から、前向きなアッパーチューン「Shout Baby」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期 第2クール エンディングテーマ)。そしてポルノグラフィティの「THE DAY」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第1期オープニングテーマ)のカバーを披露し、カラフルなペンライトに彩られた会場の高揚感はさらに上がっていった。
イントロが始まった瞬間、大きな歓声が上がった「花になって」で心地よい一体感へと結びつけた後、ラストの「Mela!」へ。歌詞を〈今日はANI-ROCK FES.のヒーローになりたいのさ〉と歌うシーンはもちろん、この日だけの特別な演出。〈La la la, la la la〉の大合唱も心に残った。
続いてステージに上がったのは、miwa。1曲目の「アップデート」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第3期 第1クール エンディングテーマ)は、仲間との絆、自分の居場所を大切にしながら、“絶対、楽しい未来にする”という思いを込めた楽曲。鮮やかで力強いボーカル、歌詞のメッセージとリンクしたヒロアカの映像も素晴らしい。続いて披露されたのは、「だってアタシのヒーロー。」(LiSA/ TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第2期 第2クール エンディングテーマ)。曲が始まった瞬間に会場全体のテンションがさらにアップ。「みんな一緒に歌おう!」というmiwaの言葉に反応し、〈wow-oh-oh フレーッ フレーッ フレーッ〉のシンガロングが発生した。
MCでは、「さらに向こうへ!」「Plus Ultra!!」というヒロアカの名セリフをコール&レスポンスする場面も。その後も、観客がタオルをブン回しながら盛り上がった「chAngE」、miwaがフライングV(ギター)で煌びやかなフレーズを演奏した「ヒカリヘ」など代表曲を次々と披露し、アーティストとしての個性をしっかり見せてくれた。「ここにいる一人ひとりの個性が輝くように、心を込めて歌います」という言葉に導かれた「Sparkle」も、すべての観客の心に刻まれたはずだ。
インターバルの時間には、スクリーン上でヒロアカのキャラクターのトークが繰り広げられ、会場を沸かせた。文化祭のシーンで使われた名曲「Hero too」が流れ、観客が一斉に立ち上がり盛り上がる場面も。イベント全体を通し、ヒロアカの楽曲の良さを改めて実感することできた。
そして、ここからイベントは終盤。ド派手なSEとともに登場したBLUE ENCOUNTはエモーショナルなロックナンバー「FREEDOM」からライブをスタートさせ心地よい熱狂を生み出してみせた。
「今日この場所を選んでくれたこと、この時間にそこにいてくれてること。マジで後悔させません。誰が何と言おうと、俺たちはあなたに歌を届けます」(田邊駿一/Vo,Gt)というMCを挟んで届けられたのは、米津玄師の「ピースサイン」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第2期 第1クール オープニングテーマ)のカバー。さらに“対決”をテーマにした「VS」、飛び跳ねるようなダンスチューン「バッドパラドックス」へ。田邊は花道に移動し、アリーナを横断。観客のすぐそばで歌い、圧倒的な一体感を生み出した。
「明日から物語の主役はあなたです。俺たちは胸を張って、これからもあなたへの主題歌を歌っていくバンドです」(田邊)という言葉に導かれたのは、「ポラリス」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期 第1クール オープニングテーマ)。ヒロアカのストーリーと観客の人生を結びつける、素晴らしいシーンだった。
「ANI-ROCK FES. 2024 僕のヒーローアカデミア PLUS ULTRA LIVE」初日のファイナルを飾ったのは、sumika。「ヒロアカと“個性”(キャラクターたちが持つ能力)、音楽に愛情を込めて。ラストバッター、sumikaはじめます!」(片岡健太/Vo,Gt)という晴れやかな挨拶とカラフルなポップチューン「フィクション」によって、瞬く間に横浜アリーナをsumikaの色に染め上げる。「Starting Over」は冒頭から大合唱。〈喜びや悲しみや/苦しみも全部持って〉という大サビの歌詞がスクリーンに映し出され、楽曲のメッセージがすべての観客に手渡された。
ライブアンセムの一つ「ふっかつのじゅもん」で会場を熱気で包み込んだ後は、「Glitter」。片岡が両サイドの花道に進み、オーディエンスと至近距離でコミュニケーションを取る。さらに「イコール」ではメインボーカルを小川貴之(Key,Vo)が取るなど、幅広い表現で観客を魅了した。
「ヒロアカの好きなところは、“いいもん”も“わるいもん”もないなってこと。少数派が間違ってて、多数派が正しいってこともない。自分が好きだなと思えるものを信じる。それが大事だと思うんだよね、生きていくうえで」(片岡)。ヒロアカとオーディエンスへの思いが強く感じられるMCの後は、ラストの「ハイヤーグラウンド」(劇場版『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』主題歌)。〈僕ら向こうまで/ずっと向こうまで〉というフレーズが大きく広がるなか、イベントの初日はエンディングを迎えた。
二日目は波乱の幕開けとなった。この日トップバッターを務める予定だったSIX LOUNGEがインフルエンザのため急遽キャンセル。「ANI-ROCK FES. 2024 僕のヒーローアカデミア PLUS ULTRA LIVE」DAY2のオープニングを飾ったのは、なんとSUPER BEAVERだ。
ゆっくりと歩いてステージに登場した渋谷龍太(Vo)は、どよめく観客に向かって語り掛けた。「今日、ヒロアカのライブじゃないですか。誰かが困ってるのに、なんもしないっていうのは出来なくて。俺たちがSIX LOUNOGEの代わりになれるなんて思ってません。ただ、あなたの“楽しい”や“ワクワク”を作れるのは俺たちしかいないんじゃないかなと思って、出てきました」
凄まじい拍手と歓声のなかで放たれたのは「ひたむき」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期 第1クール オープニングテーマ)。予想外のオープニングによって、観客のテンションは早くもピークに達した。ニューアルバム「音楽」の収録曲「切望」を披露。「今日という1日をあなたなりに楽しんでくれたら嬉しいなと思ってます。フロアにいるあなたの気持ちが音楽になったらいいなと思ってる。そんな曲を声高らかにやりたいと思います」(渋谷)という言葉から「小さな革命」(アルバム「音楽」収録)へ。オーディエンスの手拍子とSUPER BEAVERの音が共鳴する、最高のスタートだ。
2番手として登場したのは北澤ゆうほ(the peggies/Q.I.S.)。DISH//の「No.1」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第5期 第1クール オープニングテーマ)、KANA-BOONの「スターマーカー」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期 第2クール オープニングテーマ)とヒロアカの楽曲を続けてカバーし、会場を埋めたオーディエンスがペンライトを振りまくって盛り上げる。凛とした佇まいとキュートな雰囲気を同時に感じさせるボーカルも印象的だ。
彼女のソロプロジェクト“Q.I.S.”の楽曲「TEDDY」では、コーラスのパートを観客が合唱。鋭利にしてポップなギターロックは、現在の彼女の音楽性を端的に示していたと思う。最後は「こんなに素晴らしいイベントに呼んでもらえて、私もめちゃくちゃカッコいいヒーローになったつもりです」というMCに導かれたthe peggiesの「足跡」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第5期 第1クール エンディングテーマ)。ヒロアカのストーリー、そして自分自身と真摯に向き合って制作されたという楽曲は、観客一人ひとりの心を捉えたはずだ。
イベントの雰囲気をガラリと変えたのは、崎山蒼志。崎山、マーティ・ホロベック(Ba)、GOTO(Dr)の3ピースから繰り出された1曲目は、最新曲「しょうもない夜」。鋭利なバンドサウンドのなかで寂寥感と透明感を含んだ歌が響き渡る。ギターロックとテクノを融合した「プレデター」、美しいメロディ、誌的なラップを交えたボーカルが印象的だった「燈」を披露し、独創的な音楽性をストレートに伝えた。
「『僕のヒーローアカデミア』の祭りに呼んでいただいて、すごくありがたいです。豪華な出演陣のみなさんとご一緒できることを光栄に思っています」と丁寧に挨拶した後は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「フラワーズ」(劇場版『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』挿入歌)を弾き語りでカバー。尖りまくったギターと抒情的なボーカルが重なり合う人気曲「Samidare」を放った後は、「嘘じゃない」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第5期 第2クール エンディングテーマ)。〈これからの未来は/何処へでも/繋がれる気がしてるの〉というラインが横浜アリーナを包み込んだ。
続いてはLittle Glee Monster。華やかで前向きなポップチューン「世界はあなたに笑いかけている」、心地よいファンクネスをたたえたサウンド、パワフルな歌声によって観客のテンションをさらに引き上げた「Join Us!」を続けて披露し、心地よい多幸感を演出した。
「楽しんでますか!? リトグリとヒロアカはすごく縁があって。今日も(ヒロアカのキャラクターの)缶バッチを付けてきました」(miyou)
「今日も本番20分前くらいまで“ヒロアカ”を観てたんですよ(笑)」(MAYU)
とヒロアカ愛を語ると、会場から大きな拍手が送られた。
この後もバラエティに富んだ楽曲をパフォーマンス。炎の映像をバックに歌唱された「ECHO」、質の高いダンスとコーラスで魅了した「WONDER LOVER」、さらに米津玄師の「ピースサイン」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第2期 第1クール オープニングテーマ)のカバー、“自分の物語をはじめよう”というメッセージを込めた「UP TO ME!」を次々と放ち、幅広い層のオーディエンスを惹きつけた。ラストは「だから、ひとりじゃない」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第2期 第1クール エンディングテーマ)。ヒロアカの映像とともに〈絶対に譲れない心を叫べ〉というフレーズが鳴り響く瞬間は、このイベントのハイライトの一つだったと思う。
「ANI-ROCK FES. 2024 僕のヒーローアカデミア PLUS ULTRA LIVE」のトリを務めるのは、もちろんSUPER BEAVER。3時間15分ぶりにステージに戻ってきた渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(Gt)、上杉研太(Ba)、藤原“35才”広明(Dr)は、「ちゃんと楽しみましたか? ここからですよ!」(渋谷)と「名前を呼ぶよ」「突破口」を続けて披露。観客は拳を突き上げ、シンガロングで応え、ステージと客席の距離が一気に縮まっていく。
「何よりもあなたがそこにいてくれなかったら、このイベントは成り立たなかったとヒシヒシと感じてます。おまえが言うなよと思われるかもしれないけど、今日は来てくれてありがとうございました」(渋谷)
感謝の気持ちを言葉にした後は、ニューアルバム「音楽」から「幸せのために生きているだけさ」。“決して分かり合えない、一つになれないからこそ、人は愛を謳う”という思いを刻んだ歌を丁寧に紡ぎ出し、豊かな感動を生み出してみせた。
「あなたたちではなく、あなたに届きますように。一言いいですか?」(渋谷)という言葉に続いたのは「アイラヴユー」。“愛してる”とシャウトし、「届いてる人、手を見せてください!」というやり取りにも強く心を揺さぶられた。
ラストは「これをやらなきゃ締まんないでしょ」(渋谷)とこの日2度目の「ひたむき」。濃密なエモーションを放つバンドサウンド、一つ一つのフレーズに命を吹き込むようなボーカル、そして〈いつだって今日が人生のピーク 超えていけ〉というフレーズが響き合いイベントは大団円を迎えた。