横浜、仙台、福岡、名古屋、大阪の5都市を巡るツアーは、昨年11月にリリースした3枚目のEP「LOVEGO」に由来する、「Prologue -EGO-」「Prologue -LOVE-」という2つの異なるサブタイトルが付けられており、初日の横浜公演は「Prologue -EGO-」バージョンである。

開演時間となり、紗幕越しにAile The Shotaのシルエットが浮かび上がると、満員のフロアからは割れんばかりの大歓声が上がった。そして、紗幕が落ち、サングラス姿のShotaが登場するとオーディエンスの手が一斉に上がり、波の上をハイスピードで疾走するシンセウェイブ「IMA」でライブをスタートさせた。最後のサビ前にサングラスを外し、<居場所ならここに>とステージを指さしてパフォーマンスしたShotaの「Prologue、始めようか」という一声のあと、フィーチャリングで参加したMAT「DAWN」、続く「so so good」ではオーディエェンスはビートに合わせてジャンプし、フロアは冒頭の3曲で早くも熱狂の渦に包まれていた。

ノスタルジックな風景を引き連れてくるメロウなR&Bナンバー「常懐」のイントロでは「会いたかったです。今日、ここで素晴らしい物語の始まりを作りたいと思います」と語りかけた後は、まるでコラボステージのような展開が待っていた。「Mermaid」ではKia VellaとJs Morganを迎えてフロアの温度を上げると、「1週間前に作った」という新曲で最新のトレンドであるジャジークラブのビートをフィーチャーした「Surfing」をJs Morganと二人で披露。そして、「お客さんが数十人しかいないライブハウスで歌ってた曲です。Alie The Shotaになってからは初めて歌います」と紹介したR&Bバラード「Eve」では無雲ともに朝帰りの倦怠感をリアルに伝え、「愛してるよ」と言い合いながら握手とハグを交わし、「仲間も連れて、まだまだ上に上がっていこうと思います」と宣言。このブロックに登場したKia Vella、Js Morgan、無雲の3人はHIP HOPアーティストではあるが、ジャズやR&B、ソウルからJ-POPまでも自由自在に行き来し、ジャンルというラベルを必要としていないという点ではShotaと共通する部分があると感じた。

同じ目的を持って新しいスタイルを追求してきたポッセ感たっぷりのステージから再びソロへ。ハイトーンからファルセットへの移行も心地よく美しい「Like This」、フードをかぶり語るようにフロウした「夢宙」、スツールに腰かけて<何者にもなれない>という葛藤を吐露した新曲「Utakata」、<透明なんて求めないで>と項垂れながらも透徹した歌声で高らかに歌い上げた「無色透明」。「好きなように身体を揺らしてくれ」というMCから始まったブロックでは、浮遊感漂う幻想的なトラックに乗せて、オートチューンのエフェクトがかかっていないShotaのヴォーカリストとしての生の魅力を存分に味わうことができた。

ラップから歌、そして、ダンスへ。Dot.(Takumi&Ryusei harada)のショウケースを経て、「Deep」ではDot.と3人でオリジナリティあふれる歌とダンスで魅せると、「僕の大きなルーツのひとつとしてダンスというものがあります。ダンスがあったから、僕は今、この音楽をやれていると強く思っているし、ダンスを通して出会ってくれた仲間たちのおかげで僕は今、ここにいます。僕の音楽を持ってして、日本のダンスカルチャーごと盛り上げていこうと思っています」と語り、「DEEP」と同じくA.G.O.プロデュースによるGANMIの新曲「M.L.N.D feat. Aile The Shota」では、なんと11人組のダンスクルー、GANMIがスペシャルゲストとしてステージに登場。ハイレベルなパフォーマンスを繰り広げてオーディエンスを圧倒すると、フロアのテンションは最高潮に上がり、その興奮と驚きはなかなか冷めやらぬなか、「Aile The Shotaになる前に作った曲」だというR&Bナンバー「Sweet」を初披露。3枚のEPに収録された楽曲を中心にフィーチャリングで参加した楽曲や、未収録の過去曲やリリース前の新曲を加えることで、Aile The Shotaの過去、現在、未来をつなぐセットリストとなった記念すべき1stワンマンツアーはいよいよ終盤へと向かっていた。

「何度伝えても足りないほど、あなたたち一人一人に感謝しています。Aile The Shotaとしてデビューして1年半とちょっと。それまでにも僕の人生はあって、こういう場所を夢見て歩いてきました。笑われたり、バカにされたこともあったけど、それでも夢を見続けてきて。僕は昔から根拠のない自信があって、ずっとこうなるって信じてやってきました。自分がそれを信じたことを誇りに思うとともに、マジで一人じゃ何もできなくて。僕の道のりの中で出会ってくれた全てに改めて心から感謝を伝えたいです」と何度も感謝を口にした彼は、2年前に出会ったSKY-HIに対しても、「SKY-HIが僕の人生を変えてくれました」と述べ、「そして、目の前にいる君が僕の道を見せてくれました」と続け、「一人一人にありがとうって言いたいけど、なかなか難しいからさ。これからも僕は曲に乗せてお返しして、もっともっとお返し以上のものを届けられるように歌い続けたいと思います」と決意を表明。さらに、「このまま、自分のまま、Aile The Shotaになる前から何も変わらない僕自身のままで、これからも進み続けたいと思ってます。じゃないと、あいつに合わせる顔がないんで……」と語り、デビュー1周年の記念日にリリースされた「Yumeiro」に続く「Brave Genaration -BMSG United Remix-」のフレーズ<らしさってなんだっけ?/あいつに合わせる顔がない>をアカペラで熱唱。未来に向けたときめきの中に、これまでリリースしてきた楽曲のタイトルが散りばめられたトロピカルなダンスポップでは再びオーディエンスの手が上がり、バンドサウンドによるサマーブリージングな「FANCITY」では心地よいファルセットと深みのあるロートーンでスウィートかつ立体感のあるサウンドスケープを表現すると、「AURORA TOKIO」ではクラップとワイパーに加えて大合唱が起こり、フロアは幸福感に満ちた一体感で包まれた。

「幸せです。ありがとう」と何度も感謝の言葉を繰り返したShotaは、拍手と歓声が湧き上がる中で「次は一人一人の“君”に歌いたいなと思います。一人一人を確認したいので、携帯のライトを照らしてください」と呼びかけ、優しさに溢れた「gomenne」へ。満員の観客が灯したスマホのライトでフロアが光の海となる中で、Shotaは「僕を愛してくれるあなたにLove yourselfと歌わせてください。あなたを愛してあげてください」というメッセージを届け、ラストナンバー「特別」に「あなたの毎日が今みたいに特別でありますように」という想いを込めて歌い、「僕と出会ってくれて、僕を愛してくれてありがとう。また会いましょう」という言葉とともに本編は締め括られた。

アンコールではアニメ「AIの遺電子」のオープニングテーマとして、7月5日にリリースされた新曲「No Frontier」を初披露。<境界線に愛はない>というフレーズが耳に残るアップリフティングなナンバーで、オートチューンと自身の声を交差させ、AIと人間が共生する世界を体現したShotaは、各公演に“EGO”と“LOVE”というタイトルをつけたことを説明。「今日は僕がこうありたい、ここに向かいたいというエゴを皆さんに受け取ってもらおうと思って。そして、ついてきてくれますか?という意味を込めて、エゴというタイトルにしました。僕のエゴは受け取ってもらえましたでしょうか?」と呼びかけると、フロアは温かい拍手で包まれた。そして、「今日、このステージに立ち、僕のエゴにこんなにもたくさんのラブを受けて、最後の公演のタイトルは“EGO”ではなく、“LOVEGO”に変更します」と告げ、エゴを見つめ直した結果、みんなに伝えたいことは「僕を好きでいてくれるあなたに幸せでいてほしい。それだけだった」と想いを伝え、tofubeatsプロデュースの「LOVE」でミラーボールによってカラフルな光が照らされたフロアを愛と幸福感で満たし、「生きててよかった。君もそう思ってくれると嬉しい」と感慨深げに語り、「今日が最高のはじまりの1日になりました。一緒に上にいきましょう!」と約束をしてステージを後にした。

このあと“LOVE”と名付けられた3公演を経て、“LOVEGO”を冠したツアーファイナルでどんなパフォーマンスを見せたのか?その成果はこの先の楽曲でも見せてくれるはずだ。

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/ハタサトシ

Aile The Shota Oneman Live "タイトル未定"(仮)LIVE INFO

2023年12月5日(火)豊洲PIT

チケット最速先行予約(Aile The Shota fanclub)

DISC INFOAile The Shota「No Frontier」

2023年8月9日(水)配信
BMSG / Virgin Music Label and Artist Services

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