場内が暗転すると、MINI(INIファンの呼称)の持つペンライトが武道館いっぱいに広がる。スクリーンにソースコードのような文字が次々と流れ出し、一気にその世界観に誘われる。緊迫感が最高潮に達した瞬間、ステージが火花を散らして上昇。豪快な演出に目を奪われていると、上昇するステージの下、火花の向こう側にINIメンバー11人の姿が。そしてライブはグループ最初の活動曲「Rocketeer」で幕を開けた。黒い衣装に身を包んだ11人のパワフルなダンスと歌声は、まさにこの会場を“BREAK”しそうな勢い。同日は昼公演もあったはずだが、11人は疲れを全く見せず、最初からフルスロットルだ。


人数を生かした次々と入れ替わるフォーメーションが印象的な「Cardio」、大きな動きは少ないものの足先や手先の細かな動きが必要となる「BOMBARDA」と、彼らは序盤からスキルフルな楽曲でMINIたちを圧倒していく。一方で、MCになると愛嬌全開。表情を緩ませ、客席を見渡しながら「MINI〜!」「会いたかったです!」「来てくれてありがとう!」と口々に話しかける。「マップを開いたときに武道館のところが金色に輝くくらいホットスポットにします」(後藤威尊)、「(毎朝飲んでいる)白湯なんか必要ないくらい、皆さんに会うと心も体もあったまります」(田島将吾)など、この日の意気込みやMINIへの思いを、個性あふれる言葉選びで伝えていくのも彼らの魅力だ。前日含めこの日本武道館公演が新年最初のパフォーマンスになることから、卯年の藤牧京介が代表して、今年の抱負を「もっとたくさんのMINIのみんなに会うことが目標」と宣言した。
「RUNWAY」「ONE」とオーディション(「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」)時代の楽曲も披露。ダンスやボーカルの技術はもちろん、自信も持ち合わせたパフォーマンスで成長を感じさせたあとには、11人が“友達になる方法”を模索するというVCRへ。彼らのキュートな姿や自然な表情に、客席からは笑みがこぼれる。VCRが終わると、淡い色味の衣装に着替えたメンバーが再登場し、空気感そのままに「Do What You Like」「KILLING PART」「AMAZE ME」と、ポップなナンバーを続ける。「AMAZE ME」では佐野雄大と許豊凡のポーズをメンバーが真似をするという武道館限定の演出もあり、11人は2人の思いつきに振り回されながらも楽しそうにパフォーマンス。序盤の息もつかせぬステージングから一転、和やかでかわいらしいINIが見られるブロックとなったわけだが、このような緩急をつけられるのも、各々のスキルが上達しているからこそ。ステージ上を自由に行き来しながらもしっかりと歌やラップを聴かせ、わちゃわちゃしながらも会場すべてのMINIに目を配る。初のツアーでありながら、誰一人として置いていかないステージングは、ファンミーティングはもちろん「KCON 2022 LA」や「Mnet Asian Music Awards」など国内外でのステージ経験を糧にしてきている証拠だ。さらにMINIへの想いを歌った「Brighter」、船の進んだ道に花が咲き誇るという映像と共に披露された「STRIDE」では美しい歌声を響かせ、INIらしい温かく柔らかなムードが武道館を埋め尽くした。




木村柾哉、後藤威尊、松田迅によるダンスパフォーマンス「DANCE #1」、池﨑理人、田島将吾、西洸人によるラップ曲「How are you」、尾崎匠海、佐野雄大、許豊凡、髙塚大夢、藤牧京介によるバラード「Mirror」と、それぞれの魅力を最大限引き出したユニット曲パートのあとには、尾崎が「またツアーがあったら違うユニットもやりたい」と意欲をのぞかせる場面も。そして池﨑が「普段生活していると、つらいこととかうまくいかないこととかいっぱいあると思う。そういうときに立ち向かうことも大切ですけど、僕は逃げるという選択肢も間違いじゃないと思っていて。心を大事にしてほしいし、僕たちがMINIの逃げて来られる場所になれたらと思っています」と優しく告げ、武道館公演のために用意されたという「Runaway」を披露。11人はスツールに座り、<果てなき旅路を 同じ波に乗って><やっと君見つけられたこの手 繋ぎ>と、まっすぐにMINIへの思いをメロディに乗せて届ける。彼らの後ろのスクリーンには、事前にファンから募集していた“INIに愛を伝える11文字”が次々と映し出され、メンバーはそれらのメッセージと目の前のMINIを、うれしそうに見る。許が、のちに「Runaway」のパフォーマンスを振り返り「披露していて泣きそうになった」と話していたが、観客も同じ。11人の優しい歌声と共に、場内には感動的なムードが広がった。




メンバーが去ると、スクリーンには11人が“パスワードを探す”というミッションに立ち向かうストーリー仕立ての映像が流れる。それまでの温かな空気から一転、場内は緊迫感に包まれる。再びメンバーが登場し、視線がステージに戻ってくると、ワイルドでクールな「Password」で再び場内のテンションを引き上げる。続く「CALL 119」ではワイルドなサウンドの中にも適度なラフ感も垣間見え、さらにはニヤリと笑うメンバーも。彼らは表情でも楽曲の世界観を表現することを忘れない。ここまでで1時間半ほど経っているのにも関わらず、さらに彼らはラストスパートとばかりに「Shooting Star」「Dramatic」「BAD BOYZ」と激しいナンバーを続ける。一切疲れを見せないどころか、西がふと「今までやった曲、もうこのステージで踊らないんだぜ」とこぼしたように、寂しささえ滲ませる。名残惜しさはもちろんMINIも同様で、メンバーの言葉に応えるように送られる拍手が鳴り止まないほど。本編最後は「SPECTRA」。はち切れんばかりのパワフルなパフォーマンスで本編を締めくくった。


アンコールでは「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」のテーマソング「Let Me Fly〜その未来へ〜」を披露。オーディションの最後に、メンバーが決定した際に披露した同曲を、INIというグループ名と「INI 1ST ARENA LIVE TOUR」と冠された日本武道館で披露されるのは、あまりにもエモーショナルだ。その感慨も相まってか、その後の挨拶では全員感情が溢れ出す。
後藤が「MINIのみんなの前でパフォーマンスしている時間が本当に楽しくて、本当に幸せです。好きなことして生きるって当たり前じゃないんだなって思いました。INIもMINIもみんなが幸せでいることが僕の今年の目標です」と丁寧に言葉を紡げば、佐野は「MINIの皆さんのこともめちゃくちゃ大好きやなと思ったし、何よりもほんまにメンバーの…」と言いながらメンバーの顔を見渡し笑顔に。「ほんまに毎日めちゃくちゃ幸せで」と破顔しながら隣の後藤、池﨑と手を繋ぐと、そこからメンバー全員が手を繋ぐという温かな連鎖が。
池﨑はMINIの掲げるうちわや“紙”に触れ「いろいろ書いてくれてるけど全部逆なんですよ。こちらこそ、僕たちを支えてくれて、見ていてくれて本当にうれしい。MINIの皆さんは本当に大切な存在です。もっともっと大きな舞台に連れて行って、推していてよかったと思ってもらえる存在になります」と宣言。
かねてより「支えになれるようなアーティストを目指している」と言い続けているという尾崎は「たまに支えになれているのかなと(心配に)思うこともあるのですが、ライブで皆さんが幸せな笑顔を向けてくれているのを見るとちゃんと支えになれているのかなと思えて、すごくうれしいです。この気持ちをブレることなくずっとずっと夢に向かって突き進んでいこうと思いますので、僕たちについてきてくださるとうれしいです」と改めて自身の覚悟を噛みしめる。
開口一番「MINIー!」と声を張り上げた松田は、MINIへの感謝を述べたあと、「そして今日まで支えてくれたお父さん、お母さん……」と声を震わせ、「自慢の息子やなぁ!」と両親への想いを吐き出した。
藤牧は、アーティストになるという夢を追い続けてきた自身のこれまでを回顧。「自分は中学のときに好きなアーティストさんのライブに行って、ステージでパフォーマンスするという職業に憧れて。一度諦めてしまったんですけど、でもこうして自分たちの初めてのツアーをやらせていただいて、もう一度夢にチャレンジしてよかったなって心から思いました」と想いを述べた。
田島は客席を優しく見渡しながら「このツアーを通してまた皆さんとの距離が縮まったんじゃないかなと思います」と言う。続けて「皆さんはどうですか?」と問うと客席からは盛大な拍手が贈られた。
最初に「改めて今日は本当にありがとうございました」との声と同時に深々とお辞儀をした木村は「僕が言えることって、本当に『ありがとうございます』しかなくて」と各方面への感謝を述べ、MINIに言及すると涙を滲ませる場面もあった。
髙塚は「今、こうして武道館という会場で、こうして皆さんに会えているのが信じられてなくて。大夢だけに大きな夢を見ているような気分です」とデビューからを振り返る。さらにオーディションの審査が進むたびに辞退しようと思っていたと告白。「あのときに決心して、この道に進めてよかったなって、ここからの景色を見て改めて思います。今、僕がここに立っているのは、間違いなく今、僕のことを見てくれている、応援してくれているあなたのおかげだと思います」と伝えた。
西も同様にオーディション時からを回想し、「勝手に俺はINIと引き換えに、いろんなものを失っちゃったと思ってた。けど全然違って。(失ったと思っていた仲間が)みんな見に来て『楽しかった』って言ってくれた」と涙ながらに語る。西の「みんなそれくらい覚悟を決めてINIをやっています」「まだまだここからだと思っているし、それくらい本気で世界に行きたいです」という言葉には、他のメンバーも頷き、つられるように目に涙を浮かべていた。
許は、単身で日本に来たことから振り返り「どうしても孤独を感じてしまうこともあるんですけど、弱かった自分を強くしたのはここにいる皆さん。皆さん一人一人に感謝の気持ちを伝えていきたいんですけど、それはなかなかできないので、少しでも自分たちのパフォーマンスで笑顔になってくれたら、最高の恩返しになります。でも恩返しだけじゃ足りない。もっともっとMINIの皆さんに与えていきたいし、もっともっと大きなステージにつれていきたし、もっともっと大きな夢を叶えていきたい」と力強く語った。
全員が想いを語ったあと、ツアー最後のパフォーマンス「We Are」へ。MINIや仲間との絆、未来への希望が込められた同曲を、11人は万感の歌声で明るく歌い上げる。パフォーマンス後には、名残惜しそうにステージの端々まで歩きながらMINIとコミュニケーションを取り、満ち足りた表情でステージをあとにした。
今回のツアータイトルは「2022 INI 1ST ARENA LIVE TOUR [BREAK THE CODE]」。池﨑がこのツアータイトルについて「僕たちのパフォーマンスで“CODE”を“BREAK”していく」と説明していたが、その言葉通り、パワフルでかつ、溢れんばかりの想いを詰め込んだパフォーマンスを見せた彼ら。<誰も止められない Go 次のchapter>と歌う「We Are」で初のアリーナツアーを締めくくった11人が、この先どのような道を進むのか楽しみだ。
text/小林千絵
「2022 INI 1ST ARENA LIVE TOUR [BREAK THE CODE]」2023年1月8日(日)日本武道館 17:30公演 セットリスト
- Rocketeer
- Cardio
- BOMBARDA
- RUNWAY(INI Ver.)
- ONE(INI Ver.)
- Do What You Like
- KILLING PART
- AMAZE ME
- Brighter
- STRIDE
- DANCE #1(ユニット曲:木村柾哉、後藤威尊、松田迅)
- How are you(ユニット曲:池﨑理人、田島将吾、西洸人)
- Mirror(ユニット曲:尾崎匠海、佐野雄大、許豊凡、髙塚大夢、藤牧京介)
- Runaway
- Password
- CALL 119
- Shooting Star
- Dramatic
- BAD BOYZ
- SPECTRA
<アンコール>
- Let Me Fly〜その未来へ〜(INI Ver.)
- We Are
©LAPONE ENTERTAINMENT

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