今年2025年1月8日で結成10周年を迎えた福岡出身の4人組バンド”ポルカドットスティングレイ”。
10月24日(金)の金沢公演を皮切りにスタートした全国ツアー「“ポルカドットスティングレイ #逆鱗 に触れるツアー"」が、先日12月20日(土)の仙台PIT公演にてファイナルを迎えた。
当日の模様をお届けする。


 2025年、結成10周年を迎えたポルカドットスティングレイ。圧倒的なポピュラリティと孤高のオリジナリティを併せ持ち、テレビアニメ『この会社に好きな人がいます』オープニング主題歌となった「あのね、」や 現在放映中のテレビアニメ『ポケットモンスター 新章「ライジングアゲイン」』のエンディングテーマ「ねてもさめても」を手がけるなどこの1年も目覚ましい活躍ぶりで注目を集める彼女たちが12月20日、宮城県・SENDAI PITにて全国ツアー【ポルカドットスティングレイ #逆鱗 に触れるツアー】のファイナル公演を開催した。

 とにかく全力で駆け抜ける! だからみんなも一緒にね♡ のっけから、そんな気迫と覚悟、ファンへの愛情&愛嬌に満ち満ちたステージだった。もとより“出し惜しみ”なんて単語は彼女たちの辞書にはないのだろう。10月24日のスタートから約2ヵ月、ついに辿り着いたツアーファイナルだ。雫(Vo.& G.)の体調不良により延期となった福岡の振替公演が2026年1月18日に控えてはいるものの、詰めかけた大勢のファンの前で持てるすべてを出し尽くさんとするその勇姿は、全身全霊で挑んできた旅のゴールを飾るにふさわしく、実に晴々としてまぶしい。

 ウエムラユウキ(B.)、ミツヤスカズマ(Dr.)、エジマハルシ(G.)、サポートメンバーのtoriyama takashi(Key.)——すなわちポルカの男性メンバー全員によって行われた、まもなくの開演を知らせるアナウンスにやんやの喝采で盛り上がるオーディエンス。本番前から場内に渦巻く熱量はそのまま今日という日への期待値の高さを反映しているに違いない。ゆえに客電が落ち、ステージの背後に設けられた巨大なスクリーンに“SING?”の文字が浮かび上がったときの、さらに最新のアーティスト写真と同じパジャマパーティー仕様の衣装でメンバーが登場するや沸き上がった歓声の凄まじさときたらとてつもなかった。なかでもアイマスクをヘアバンドに、枕を抱えて現れた雫のキュートなビジュアルインパクトは写真で見たときのそれを超えて破壊的だ。

「【#逆鱗 に触れるツアー】、仙台公演始まるよ」

 雫がそう告げたのを合図に切って落とされる熱狂の火蓋。エジマの挑発的なギターカッティングが先陣を切ってフロアを興奮のるつぼに叩き込んだ「DENKOUSEKKA」や、アンサンブルのスリリングな抜き差しとどこかやるせなさを孕んだ雫の歌唱のケミストリーがエモーショナルに聴き手に迫る「BLUE」、曲中に「かかってこいよ、仙台!」と雫が煽って爆発的な昂揚を誘った「ICHIDAIJI」とライブでも人気の楽曲をステージが次々に投下すれば、オーディエンスも負けじと拳を振り上げては跳ね踊る。その激しさといったら「こんなキツい構成、誰が考えた?」と煽った張本人が息も絶え絶えに首を捻るも、「あなたが考えました」とウエムラに速攻でツッコまれて苦笑いで撃沈せざるを得ないほど。それでも「ツアーファイナルにバラードはいらなくないですか?」とあくまでも前のめりな姿勢を崩さず、「今日のセトリは休憩ないよ。ここからはもっとグイグイだから。みんなも覚悟しといて」と宣言してしまえる不敵さがポルカのポルカたる所以だろう。追い込まれれば追い込まれるほど輝きを放つ稀有なるバンドなのだ、ポルカドットスティングレイは。

 ところでツアータイトルに冠された“逆鱗”とは、このファイナル公演の4日後、12月24日にリリースされたニューアルバム『逆鱗』を指す。つまり、今ツアーはまだ世に出ていないアルバムに先駆けて敢行された、ちょっと珍しいスタイルのリリースツアーということになるが、この日のMCで本人たちがぶっちゃけたところによれば「戦略的な理由とか全然なくて、普通にミスっただけ」らしい。しかしながら、先にライブという形で、タイトル通り“『逆鱗』に触れる”体験はファンはもちろん、メンバーにとっても音源への理解をいっそう深める大きな手がかりとなったのではないだろうか。聴覚や視覚のみならず、肌に感じる場内の温度や空気の振動など五感をフル稼働させて受け取った音楽はいつまでも消えない特別な記憶となってオーディエンスの心に刻まれ、また、それがメンバーにフィードバックされることで楽曲の魅力の再発見に繋がり、新たなアウトプットが生まれたりするかもしれない。事実、ライブに参加したファンがSNSを通じて感想を伝えてくれるおかげで「これはこれでよかったなと思えた」とツアーを振り返ってこの日、雫も語っていた。

 振替公演が残っているため、本稿で曲順などの詳細に触れることは避けるが、はじけるハンドクラップと“Na Na Na〜Na”のシンガロングでたちまちフロアが一つになった「Na〜Na」をはじめ、ブラックミュージックのニュアンスを含んだ性急ながらも洒脱なグルーブがオーディエンスを横に揺らした「Boy Boy」(2026年1月よりスタートするテレビ東京ドラマ25『俺たちバッドバーバーズ』のエンディングテーマを務める)、シンセサイザーのポップな電子音がかえって不穏さを掻き立てる「メゾン」(雫いわく「メンヘラの曲」とのこと)、エジマが初の作曲を手がけたセンチメンタルなオルタナチューン「透明」など披露された新曲群は、ジャンルに縛られない自由な音像を創出してきたポルカドットスティングレイらしく、なんともバラエティ豊か。それでいて、これまで以上にメンバーそれぞれの存在感とバンドとしての塊感が前面に感じられて印象的だ。特にシンプルなバンドサウンドに振り切った「推せ」には4人の音楽を鳴らす喜びやバンドの楽しさが無邪気なまでに滲みまくっていて、今のポルカのいいムードをダイレクトに届けてくれる。

 振り返れば2024年7月、それまでのチームの体制を一新し、『逆鱗』にも収録の「JO-DEKI」リリースとともに第二章をスタートさせたポルカ。「JO-DEKI」と、それに続いてリリースされた「アウト」(こちらも『逆鱗』に収録されている)は、曲ごとに主人公を設定し、自身の感情は極力介在させずにプロフェッショナルな視点で歌詞を紡ぐことを身上とする雫が初めて自身の心のうちを吐き出したアグレッシブなアッパーチューンだ。ストレスフルな状況から脱却し、自らの求める環境をその手で掴み取った彼女たちは破竹のごとき快進撃を続け、そうして『逆鱗』を生んだ。今作のキャッチコピーである「見てろ、こっちの番だ。」にも彼女たちの並々ならない意気が溢れているが、今ツアーはまさしくその体現だっただろう。

 『逆鱗』の主軸的楽曲である「キラーレコード」では公開に先んじて映像演出のなかでMVをチラ見せしたり、「ねてもさめても」ではこの日から使用できるようになったテレビアニメ「ポケットモンスター」コラボのMVをフルで流したり、また、アンコールを待つ合間にはこの日21時に公開されるという、初回生産限定盤「がりょうてんせいをかくパック」に付属の特典DVDトレーラーを先取りで一部披露するなど、過ぎるほど旺盛なサービス精神でオーディエンスを歓喜させ、メンバー同士の和気あいあいとしたおしゃべりやフロアとのフレンドリーなやり取りで瞬く間に時間は過ぎていく。本編ラストのここぞというタイミングで演奏が仕切り直しとなるというちょっとしたハプニングもあったものの、むしろそれを最高のスパイスに変えて、会場は本日イチの一体感に包まれた。これぞライブ、生で空間を共有する醍醐味というものだ。

「我々はこれまで完璧な部分しか見せない、“弱みを見せません”みたいなスタイルでずっと営業させていただいていたんですよ。でも去年からそういうのをやめたんです。そこからなんでもお客さんに開示するようになったら、ライブを観てくれたいろんな方から“よくなったね”とか“人間らしくなった”って言ってもらえるようになって」

 アンコール最後のMCで雫は今ツアーを振り返って、そう明かすと「きっと、みんなが少しずつ私たちを一人の人間にさせてくれているんだと思います」とオーディエンスに感謝を告げた。第二章が始まってから、前よりさらにファンのみんなやチームのみなさんが応援して支えてくれていること、一人相撲じゃないと強く感じられるようになったとも口にする。「だからアイデアがどんどん湧いてくる。今だって、ツアーを終えて、『逆鱗』も完成して、一段落かなと思いきや、次のツアーの企画をしていて」と嬉しい匂わせも。しかも1本だけでなく複数のツアーを並行して企画、さらには2026年にリリースする曲も作っており、MVの構想まで考えているのだと言う。「よりなんでもやるバンドになってます。いかに納期が短かろうと、やったことがなかろうと、ポルカドットスティングレイはなんでもできる最強のやつらだから」と胸を張る雫のなんと誇らしげなことか。

 オーラスはポルカドットスティングレイから仙台のファンへのラブコールを手渡して大団円。あえて曲名は書かずにおこう。「仙台のみんな、本当にありがとう。また来るよ!」と大声で叫び、満面の笑顔でステージを去った直後、終演を知らせるアナウンスを今度は雫が担当するという嬉しいおまけ付きだったところもポルカドットスティングレイらしい。年が明け、結成11周年に突入する4人が次にもたらしてくれるニュースは果たして。福岡の振替公演ではさっそく何かがありそうだ。ワクワクしながらその時を待っていたい。

TEXT●本間夕子

なお、ポルカドットスティングレイは12月24日(水)に5枚目となるフルアルバム「逆鱗」をリリースした。
今作は、前作「踊る様に」以来約3年3か月ぶりとなるフルアルバムで、タイアップ楽曲を多数含む計13曲を収録したポルカ渾身のアルバム。

CDとDVDが付属する“がりょうてんせいをかくパック”の初回生産限定盤、CDとロングTシャツが付属する”げきりんにふれるパック”の完全生産限定盤、そしてCDのみの通常盤の計3形態にてリリースとなり、CDとロングTシャツが付属する”げきりんにふれるパック”の完全生産限定盤は、UNIVERSAL MUSIC STOREのみで発売となっている。

【ポルカドットスティングレイ ニューアルバム「逆鱗」】
発売日:2025年12月24日(水)
発売形態:3形態(初回生産限定盤、完全生産限定盤、通常盤)

●初回生産限定盤 CD+DVD がりょうてんせいをかくパック
価格:¥6,000+tax/¥6,600(税込)
品番:UMCK-7290

●通常盤(CD Only)
価格:¥3,300+tax/¥3,630(税込)
品番:UMCK-1808

●完全生産限定盤 CD+ロングTシャツ げきりんにふれるパック
価格:¥9,000+tax/¥9,900(税込)
品番:PDCS-1939
※UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤
※ロングTシャツはフリーサイズのみ

「逆鱗」各チェーン店での購入はこちら
https://plk.lnk.to/gekirin_cd

ポルカドットスティングレイ オフィシャルHP

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