昨年11月に上海から始まった「渋谷すばる ASIA TOUR 2025-2026『Su』」が、4月26日、NHK大阪ホールでついにファイナルを迎えた。最新作「Su」を引っ提げて海を渡り、そして日本各地を沸かせてたどり着いた故郷・大阪での最終公演。その白熱の約2時間をレポートする。

開演前から大モニターに映る映像に合わせたファンの歌が聞こえるなか、バンドがたっぷりと鳴らし、一瞬の闇から光を背負って渋谷が登場。劇的な幕開けで着火すると、まずは「繋がる -Su ver.」、「Nekonome」と続けてアルバム「Su」の世界へ。体の深部に轟くロックは心地よい緊張感も漂わせる一方、ポップナンバーではボーカルもチャーミングに。ダンサーも加わりたくさんのペンライトがご機嫌に回れば、さらに「アオ」でハッピーを増幅させ、クラップ&ワイパーも発生。早々に渋谷のガッツポーズも飛び出す。だが、印象的なピアノのイントロから一転。重厚な「人間讃歌」では“世界はこんな美しい”と耳に焼きつけて拍手に包まれる。と、ここで小休止。渋谷は今ツアーを“非常に楽しい時間”と振り返りつつ“せっかくやるなら、とんでもないのをやりたいね!”と今宵の意気込みを口にして今度は「ダンデライオン」へ。

照明で描く天井のタンポポのもと、さわやかなメロディと歌声を隅々まで広げたら、次はギアを上げて「with U」。ミラーボールもダンサーの衣装もきらめき、バンドは時にジャジーに。渋谷もファルセットを交えて伸びやかに歌い、だれもが気分上々だ。すると次の「POPEYE」では何度もシャウトして勢い十分。舞台上を行き来し、スピードもテンションも上げて煽り、さらに疾走の時間へ。「ルピナス」では“愛は欲しいかい”と前方を指さし声を届け、「ストライクゾーン」では客席に降りて一人の少年をステージにご招待。彼と一緒にタオルを回し、肩を抱いてのパフォーマンスに、大観衆もバンドもダンサーもヒートアップ。無数のタオルがスピンし、スモークが噴火するように上れば大熱狂の光景となり、曲の最後も少年がジャンプで締めくくって会場には大歓声が。渋谷が“学校でいっぱい自慢するように(笑)。ありがとうな”と少年を送り出したら、MCタイムでクールダウン。

開口一番は直前の様子に“ヤバいっすね。アホばっかりってことがわかりました(笑)”という愛ある憎まれ口だが、アルバム「Su」の話になると“人となにかを作るっていうことが楽しいです……本当に。一人ではできないことでも、だれかと一緒ならやれたりするし、たどりつけないとこに行けたりするし。楽曲がツアーやライブを重ねることで客席のみなさんと一緒にどんどん変化していくのも改めて楽しい”と語り、“もう止まらないぜ!”と思いをあふれさせる。

加えて“大阪から始まったんで、僕は。いろんな所から来てくださってると思いますけど、今の自分の姿をここ大阪のツアーファイナルで見ていただけるってことがうれしいです”と述べると、今年の芸能生活30周年イヤーについては“いつも応援してくださっているみなさん、周りで一緒にやってくださっている方々のおかげ。できる限り感謝をお伝えできる年にしたいなと思ってるんで楽しみにしていてください”と期待を高め、“このバンドならでは、このツアーならではのアレンジで聴いていただきたいと思います”と「マリネ」で後半戦へ。

まぶたを閉じて放つボーカルと、アコースティックギターの温もりは、ゆったりと曲のストーリーを描き出し、徐々に熱を帯びて“愛は続いていく”と脳裏に刻んだら、続くバラードの「月と東京」では胸の奥をつかむ旋律や飾り気のない声で大都会での痛みを心に残す。

すると滑らかなギターの音色でシームレスに「Jam Jam Jam」へと移行。清涼感と躍動感をともなって突き抜ければ、アンセミックなコールも大きくなるばかり。“地球外でまた会おうぜ”のリリックどおりスケール感も大だ。

そこに“心の底からアホになるで~”と「ココロオドレバ」を投下し、“アホアホダンス”で一人残らずバウンドする様子は楽しさ200%かつ壮観。しかもメンバーのソロリレーもばっちり決まり、“アホばっかり。最高です!”と渋谷も笑みを浮かべる。ところが、猛者ぞろいのバンドはそれだけにとどまらず、クールで聴きごたえ満点のインタールードでも魅了。これには渋谷もエビぞりで礼賛を表し、ボルテージが上がったまま“Are you ready?”の雄叫びで「Su」から終盤の猛攻へ。

冒頭の口上的パートで“色々あんのはな 今日のライブのためやろーっ!”とたぎってファンを高ぶらせると、まくし立て、畳みかけ、フルスロットル。会場は沸点をゆうに超えるが、“本気でぶつかって来い!”と吹っかけて「ベルトコンベアー」など4曲をつなぐメドレーに。歌で挑発し、ハーモニカで空気を切り裂き、目を見開いて言葉をぶちまけ、人々を存分に跳ねさせ、踊らせる。

ついには仰向けになるほどのハイカロリーなアクトは4曲以上のボリューム感だ。そのうえ、息を切らし絞り出すようにして“一曲一曲が青春です! 年とか関係ないぞ。自分の信じたもの、好きなものを一生手放すな!”と叫び、まっすぐ突き進む「Final Note」でさらなる高みへ。“ラララ”のシンガロングは特大で一体感も抜群。両手を広げてその声と思いを受け止める渋谷の姿は、まさに全員で形作る一曲であることを示しているよう。

演奏後は名前を呼ぶ声がやまない。

そして汗びっしょりのまま“どのライブも最高ですけど、今日が一番最高やわ。めっちゃ気持ちいいです、今”と伝え、再び30周年に関しては“感謝しかないですけど、気づいたらそんくらい経ってたっていうだけのことなんで、これからも変わらないです。一生懸命やるだけです”と気負うことはない。さらに“独立してからしんどいことの方が今んとこ多かったけど、でもここからはもうはっきり言えるわ。自分で手に取るようにわかるし……もうなんか、うん。そういうの全部越えたから”と明かし、“思い切りやるだけやねん! もし、こんなんがええなあって思ってくれたらまた来てください。今日みたいに全部吹っ飛ばしてやるから”と、アルバム「Su」同様、最終には「ひとひら」をセレクト。そのあたたかな音像は、モニターでアップになる渋谷の穏やかな表情や、再度起こる“ラララ”の大合唱とあいまって飛び切り清く美しく幸福なラストシーンを生み出した。
 
しかし興奮は冷めず“すばるコール”が続いて延長戦へ。再登場すると“え~、造花のコーナーです。アンコールやるつもりで出てきました(笑)”と、先ほどまでのムードを笑いでリセットし、“ライブに実際に足を運んでくれたみなさんとだけやる曲”という「赤い花」でリブート。

リラックスした歌声とシャッフルビートがハートウォーミングに響き、観客が手にした赤い花が大空間を埋めつくす。そして“本当に一本一本が楽しくて”と今ツアーに触れ、‟こうやってみなさんに歌を聴いてもらえる人生で本当に幸せです。長生きします!”と宣言したら、オーラスは「さらば」。高らかな“好きだよ”のフレーズや、エモーショナルで壮大なサウンドが魂を揺さぶり、サクラの花びらが舞い散るなか、すべての人が曲に没入し、約5か月におよぶツアーは感動のうちに幕を閉じた。
 
ところが、さすがのツアー最終日は特別なエピローグ。渋谷が長いおじきをして立ち去ったあと、モニターで大発表が3つも。

1つ目は今ツアー東京・日本青年館ホール公演の映像作品のリリース、2つ目はファンミーティングの開催で、歓呼とざわめきが途切れない。そして“さらに!”という映像の直後には、芸能生活30周年記念のツアー決定をコール。また、その初日は渋谷の誕生日9月22日(火・祝) で、会場は大阪城音楽堂というから関西のファンは狂喜乱舞。ビッグな置きみやげで最後の最後まで楽しませてくれた。いったい次はどんなすばらしい景色を見せてくれるのか? 

今後も渋谷すばるから目が離せない。



文:服田昌子 撮影:umihayato

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