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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN



[section heading="ゲストスピーカー"]

近藤悟史(こんどう さとし)
イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)デザイナー。1984年生まれ。2007年に上田安子服飾専門学校卒業後、株式会社イッセイ ミヤケに入社しプリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ(PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE)のデザインチームに参加する。三宅一生のもとデザイナーとしての経験を積み、のちに同ブランドの担当デザイナーとなる。2016年にはオム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISS? ISSEY MIYAKE)の担当デザイナーを兼任する。同年三宅一生がスタートさせたプロジェクト「IKKO TANAKA ISSEY MIYAKE」に参加、二次元のグラフィックを衣服として表現する企画開発に携わる。2017 年に株式会社三宅デザイン事務所へ移籍。2019 年、イッセイ ミヤケのデザイナーに就任し、9月にパリで2020年春夏コレクションを発表、新たなチームと共にデザイン活動をはじめる。

[section heading="モデレーター"]

樋口真一(ひぐち しんいち)
ファッションジャーナリスト。業界紙記者として国内外のショーや展示会を中心に、アパレル、スポーツ、素材、行政などの分野を兼任し、ファッションジャーナリストに。コレクションを中心に、スポーツブランド、アートや美術展など様々な分野を手掛けている。コレクションなどの撮影も行っており、NHK BSプレミアム渡辺直美のナオミーツ、森美術館10周年記念展「LOVE展:アートにみる愛のかたち」カタログなど、メディアや出版物にも写真も提供している。

久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。



――初めてのコレクションを終えた気持ちから。

「ほっとしました。いろいろな反響がありましたし、着る楽しみや喜びなど、自分たちが届けたかったメッセージはしっかりと届けることが出来たと思っています」

――もちろん単純に原点回帰というのは違うとは思いますが、初めてのコレクションはイッセイ ミヤケの原点に戻ったようにも見えました。

「原点回帰ではありません。ただ、イッセイ ミヤケという会社の哲学や一生さんのもの作りを本当に尊敬していますし、いろいろなことを学ばせて頂いている中で、自分がイッセイ ミヤケのデザイナーになると決まって、どうしたらもっと多くの人に伝えることが出来るのか、どうしたら若い人たちにもっと知ってもらえるのかと考えたときに、やはり1回、身体と1枚の布の関係を改めてきちんととらえ直したいと思いました。また、世界中にいるイッセイ ミヤケのお客様にポジティブなメッセージを届けたいという思いもありました。だから、デザインは布をまとうということをポイントに、1枚の布と直線的なカッティングを意識しました。一生さんの近くで働かせていただいてきたので持ち味や人となり、作る服はわかってもらっていたと思いますし、一生さんも過去のイッセイ ミヤケを表現するのではなく、強いメッセージを届けたいと考えていると思います。思い切って自分の目指す未来を表現しなさいというようなことは言ってもらっています」

――学校卒業後、「プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ(PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE)」や「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISS? ISSEY MIYAKE)」、「IKKO TANAKA ISSEY MIYAKE」、展覧会関連の仕事など、様々な仕事をする中で、一生さんから学んだことは?

「本当にすべてを教えてもらいました。一番学んだのはもの作りの楽しさですね。また、IKKO TANAKA ISSEY MIYAKEのプロジェクトなどでは、コートなどを作る中でカッティング面も学びました。イッセイ ミヤケでコートを作るというのは僕にとって非常重要なこと。分量感や布をまとったときの身体との関係性は特別にかっこいい。シンプルなカッティングなのに圧倒的な存在感を持っています。自分にはまだ出来ていませんが、そういう服を作りたいと思っています」

――これまでのアーカイブは意識しましたか?

「過去の作品をコピーするのではなく、イッセイ ミヤケの服をどう現代的にするのかは考えました。今回のデザインでは四角い布ということを重視しものづくりをしました。四角いカッティングを発展させ、もっと大きくしてストール風にしたり、四角いカッティングで扇形のプリーツを掛けたり。四角い布と対話しているような感じでした。四角い布に穴が3つあれば服になるし、それが1番きれいに見えることもよくあります。そういう意味では原点に立ち返ったとも言えるかもしれません。シンプルな考え方で、楽しいことをやりたいという思いもありました」

――演出も含めて、三宅一生さんがデザイナーだった頃を思い出すような、イッセイ ミヤケらしいコレクションでしたし、楽しいショーでした。

「楽しかったと言われるのは嬉しいですが、本音としてはそれを乗り越えていかなければという思いはありますし、それが次の課題なのかなと思っています。ただ、僕自身は自分の名前が先行するよりもイッセイ ミヤケの服をもっとたくさんの人に届けたい。イッセイ ミヤケの服の持つエネルギーや楽しさなど、根本的なものを大切にしていきたいと考えています。もちろん、素材開発などももっとがんばりたいし、あっと驚くようなものを作らなければとも思いますが、僕はデザイナーであって科学者ではないので、イッセイ ミヤケの服をもっとすてきな服にしたいし、多くの女性に着てもらいたいです」

――確かに、イッセイ ミヤケらしさが前面に出ていました。近藤さんらしさはどのあたりに出ていたと思いますか?

「自分ではわからないですが、社内からは「近藤君らしい」と言われました」

――ところで、近藤さんのコレクションの発想の源は。

「いろいろですね。旅行や本からのこともありましたし、プリーツプリーズでは友人からもらったきれいな器に感動して器や土から発想したコレクションを作ったこともあります。今回は太陽があってきれいな花が咲いているようなイメージをどういう物語に紡いでいくのか、多様性をどう表現していくのかなどを考え、キーワードを出していきました」

――ダイバーシティやサステナビリティーなど、社会の潮流に影響を受けることもありますか?

「環境問題などを語ると難しくなってしまいますが、そういうことも心がけてものづくりをしていますし、多様性はすばらしい。自分も自由でいたいし、僕自身何年も関わってきましたが、プリーツプリーズのように自由になれるような服を作りたいと思っています」

――今後はどうやって近藤さんらしさを出していこうと思っていますか。

「いろいろやりたいことはありますが、第1はカッティング。イッセイ ミヤケのカッティングをより現代的にしたいと考えています」

――仮定の話ですが、イッセイ ミヤケとは別にサトシ コンドウとしてコレクションを作るとしたらどんな服になりますか?

「イッセイ ミヤケ2020年春夏で言えば1番から17番目までは特に自分らしい服が作れたと思っています。エイポックの素材にプリントを乗せたものですが、スタイルとしては自分らしさが出ています。スケーターが着ていた服も僕らしいかもしれません。自分のブランドを作るとしてもこういうものになると思います。自分ではなくイッセイ ミヤケをアピールしたいという言葉とは矛盾するかもしれませんが、本能的には自分の中にあるもの、作りたいものは作れていると思います」

――次のシーズンに向けては。

「これからもイッセイ ミヤケらしいものづくり、1つ1つ丁寧に、生地を作るところから始めて、生地や身体と向き合いながらもの作りをしていきたいし、人々に驚きを与えるものを提案していきたいと思っています」

――東京に帰ったらすぐに仕事ですね。

「東京に戻ったら、また次かという感じです。(初めてのコレクションは)めちゃめちゃプレッシャーがありましたし、すごく緊張しました。イッセイ ミヤケとして恥ずかしくないものを作らなければいけないし、コレクションのスケジュールは決まっていたのでマリッジブルーのような感じでした。これからずっとこんな重責を担っていくということに対しては、うれしいという気持ち以上に責任感の方が強かったです。一生さんには本当にあこがれていましたから」

――途中で行き詰まったことはありましたか。

「もの作りについては、大変でしたがスムーズに進みました。試行錯誤はしましたが、最初に描いていた思いやイメージした形にはできたと思います。本番では大丈夫でしたが、リハーサルのフィナーレではこみ上げてくるものがありましたし、感極まりました」

――来年はブランドスタート50周年ですが、東京でのコレクションは。

「まったく考えていませんでしたし、予定もありませんが、もし東京でもできたら夢のようですね」

(おわり)

取材/久保雅裕(encoremodeコントリビューティングエディター)、樋口真一(ファッションジャーナリスト
文/樋口真一
写真提供/イッセイミヤケ







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