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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN



[section heading="「シームレス」という考え方 パート1――カラートレンドについて"]

瀧定名古屋婦人服地部門では約20名のテキスタイルデザイナーが日々モノづくりに励んでおり、6つの課がそれぞれのターゲット、指針、オリジナルな商売形態で独自のモノづくりと販売を行っています。さらに営業課のサポートチームとして「企画室」があり、カラー分析、トレンド分析、シーズンディレクション、展示会企画など様々な業務にも携わっています。

中でも特に力を入れているのは、「色の分析」と「シーズンディレクション」です。色に関しては20年以上にわたり独自の分析を行ってきました。情報源は主に欧州のコンサルティング会社で、業界1位のトレンドコンサル、トレンドユニオン(仏)を筆頭に、老舗のネリーロディ(仏)、前衛的なトレンドを発信するぺクレール社(仏)、業界最大手のファッションウェブ情報会社WGSN (英)、ライフスタイルトレンドを発信するスカウト(AUS)の5つの会社からカラー情報を入手し、「日本色研配色体系」を使用し、色の濃淡と赤、青などの色味のふたつのグループで色を分析していきます。約250の色を小さくカットし、目と手で並べていく……天敵の肩こりに襲われながら、小さなチップを並べているうちに段々と傾向が見えてくるのです。色が見えてくるとシーズン全体がぼんやりと浮かんできて、ディレクション全体への指針につながっていきます。

[section heading="カラー総括――「ダイバーシティ・イン・カラー」 色の多様性"]

2020-2021年秋冬シーズン、色は新たな転換期を迎え、多様化の波が押し寄せてきます。カラフルな色合いが一巡し、カラフルなだけでない、または単なるベーシックカラーではない新しい色の提案が求められそうです。「トレンドだから」という色付けではなく、ブランドのアイデンティティーやコンセプトに基づいた色であることが最優先となります。トレンド情報をもとに様々な色が登場するシーズンの中で明らかに他とは違う色をどう考えていくか?そのヒントは2020-2021AWの最も重要なテーマとなる「シームレス」という考え方の中にあります。シームレス=縫い目の無い、境が無い、といった考え方から、色についても「何色と判別しがたい微妙な中間色のバリエーション」が注目されそうです。グレーとベージュの中間色となるグレージュや、うっすらピンクがかったピンクベージュ、フィルターをかけたようなぼんやりとしたセピアブラウン、霞がかったグレイッシュなパステルなど。中間色という曖昧な色合いは逆に色の個性を際立たせ「真似のできない色」となり、まさにベーシックフェイクともいえる新しい色合いを生み出すことができます。ニュアンスに富み、工夫されたベーシックカラーがポストカラフルとなり、新しい色の発見へとつながります。継続的な要素として濃淡入り交じった幅のあるブラウン系の継続や秋の実りを思わせる渋みのあるイエローやアンバー、マロンカラーなど落ち着いた深みのある色合いがシーズン全体を優しく温かく包み込んでくれるでしょう。

色調の変化

色相の変化



[section heading="「シームレスという考え方」 パート2――ディレクション全般について"]

私たちは、シーズンの約2年前から、柱となるテーマを決め、色、素材、柄、スタイルなどテキスタイルの作りこみのヒントにとなる様々なアイデアを提供しています。そのテーマはシーズンの約1年前に開催する展示会へとつながっていきます。多様性という言葉が飛び交い、これまでの考え方や見方を変え、新たな時代へと踏み込んで行く時が来ました。個性と直結し、アイデンティティーのひとつであったファッションは、ライフスタイルという考え方の中にあるスタイルへと変化してきました。スポーツ、あるいはスポーティーなコーディネートの拡大はまさにライフスタイル型といえるのではないかと思います。トレンド特有の「目を見張る新しさ」よりも「ちょっとした今らしさ」に機能性があり、着回しが効いて、イージーだけど軽やかな装い感もある「シャツワンピ」といった代物も登場し、つるんと着られて、一枚で決まるカジュアルエレガンスが台頭しました。相反するはずだったファッションは時代の流れとともに自然発生的な緩やかな流れに乗って、境を超え、融合し、新たな視点のアイテム発信につながってきたのではないかと思います。この考え方は一時的なトレンドではなく今後のファッションの土台になっていく重要な考え方だと思うので今後も検証を重ねていこうと思います。

「新しい視点とは何か?」、「今の時代をどう捉えてテキスタイルに落とし込むか?」、「多様化する時代の中で何を指針に考えていけばいいのか?」……企画室のスタッフと共に、いつでも迷い、考えあぐねながら「えいやっ!」と少し先の未来を想像しながら次のビジョンを考える日々です。かつては未来だった様々な事がめまぐるしく変化、進化していく中で、ファッションにもリアルな未来がすでに動き出しています。着用感の無いゼロウエイト素材、成形されたようなフォルムと弾力性、伸縮性に富むマルチストレッチ。スポーツやアウトドアの機能がジャンルを超えてオフィスウエアやエレガンススタイルを刷新する。あからさまではない創意工夫がファッションの価値を上げる時代なのだと思います。



トレンドテーマ全体を総括すると重要なポイントが見えてきました。それは「装う」ということ。古い概念の装い感ではなく日常的で、機能的、お得な上質感とエレガンス。7月初旬のニューヨーク出張の際に訪れたThe Met(メトロポリタン美術館)で「キャンプ(Camp: Notes on Fashion)」をテーマに行われた「メットガラ2019」も長い時間をかけて変化する「装い」の歴史を辿るエキシビションでした。このエキシビションは、ニューヨークの作家であるスーザン・ソンタグのエッセイ「キャンプについてのノート」(邦訳はちくま学芸文庫刊『反解釈』に収録)に構想を得て企画されたもので、「キャンプ」という言葉には仰々しく挑発的なふるまいをするという意味があります。着ることで気分が上がるファッションの力は時代が変わっても変わらないのだということを思い出すシーズンとなり、私たちも未来の「装い」とは何かを考えていきたいと思います。

NYメトロポリタン美術館 『キャンプ』

NYメトロポリタン美術館 『キャンプ』



文/戸軽嘉代子(瀧定名古屋株式会社)
写真・資料提供/瀧定名古屋株式会社

■戸軽嘉代子(とがる かよこ)
瀧定名古屋株式会社 婦人服地企画室長 兼 チーフプランナー。1997年、瀧定名古屋入社、婦人服地企画室にてカラー分析、トレンド分析、ディレクション、展示会業務に従事。





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