デビュー15年、結成20年を数えるアニバーサリーイヤーである2024年。この4人が現在進行形のロックンロールを鳴らせば、時代や国境を越えるものになり得ることは今年のオリジナルアルバム『POPCORN』でも証明済みだ。そしてさらに今回はアナログレコードカルチャーで育ってきた彼ららしくメンバーのベスト選曲とファン投票からなるアナログ4枚組『20th&15th ANNIVERSARY VINYL COLLECTINOS』がリリースされた。ファンアイテムなだけじゃなく、アナログで聴く楽しさに満ちた楽曲の数々がここにある。
――ベスト盤をアナログでリリースするというのがTHE BAWDIESらしいですよね。
ROY「これまでもアナログはずっと出してはいるんですけど、それは自分たちがアナログの音楽から影響を受けたようにお客さんに手に取ってもらいたいし、アナログの魅力を伝えたいっていうのがあって。あと、自分たちの歴史を自分たちで針を落として聴きたいというのもあったり。ベストアルバムは以前、『THIS IS THE BEST』を結成15周年目、デビュー10周年目のタイミングで出しているので、今回は、メンバーがセレクトしてお客さんにも選んでもらうっていうところも含めて、コンセプトを変えてみんなで作るベスト盤を作りたかったんです」
――結成20周年にしてすごくフレッシュだというのはオリジナルアルバムの『POPCORN』で証明されたところがあると思いますし。
TAXMAN「そこは意識はしていなかったです。“20周年だから20周年っぽいアルバム作ろう”っていうことではなくて、THE BAWDIESって常に今が一番フレッシュで濃いっていう気持ちでやっているので、たまたま今年が周年でアルバムのタイミングだったっていう感じです。ただこのバイナルコレクションはROYが言ったように改めて15年、20年やってきたときに自分たちだけじゃなくて、スタッフのみんなだったり支えてくれるファンの皆さんの存在の大きさに気づいた部分があって、だったら、“みんなで作ったら面白いんじゃないかな?”っていうので芽生えてきた周年感なんです」
――すごくいいですよね。参加感があると思います。
TAXMAN「レコードプレーヤーも今まで何度かグッズだったり特典で話には持ち上がったことがあったんですけど、なかなかタイミングもあって実現できなくて。それで、今回またそういう話になった時に“このタイミングじゃないともうなくない?”となって、Limited Editionとしてレコードプレイヤーが実現できました」
――片面に5曲ずつ入るんだ!?っていう驚きがまずありました。収録曲は、どうやって決めていったんですか?
ROY「“それぞれが自分の好きな曲を5曲選ぼう“って、収録曲を発表するまで(他のメンバーに)どの曲を選んだか聞かなかったです。バランス合わせたりするとコンセプトがずれてくるので」
MARCY「いろんな思い出もあるので5曲を選ぶのは結構難しかったです。レコードになるっていう、レコードに入れたいっていう思いもあったので、かなり悩んで決めました」
――自分の選曲ももちろん、他のメンバーの選曲を見た時にどんな感想が?
ROY「僕自身の選曲は多分みんなもそんなに驚きがないのかなって思います。ロックンロールで縛りそうなタイプの人間なんで。“やっぱね”みたいに言われたのはあまりいい気分ではなかったですけど…」
TAXMAN・MARCY「(笑)」
ROY「TAXMANの選曲は僕からすると“まあそうなるか”っていう、自分が歌っている曲だけを選んだっていうことですね」
TAXMAN「アナログ盤のレコードにした時に、こういうベスト盤とか昔のバンドとかでもいろんな編集盤あるじゃないですか。で、“このベストだと俺の好きな曲がいっぱい入ってるんだよな”ってアナログ盤が必ずあって、そういうのにしたかったんです。もうめちゃくちゃ偏った自分だけのにしてやろうと思って。誰も文句も言えないだろうし、こんなことはこの機会じゃないとないので、やらしてもらいました」
――自然とギタリストらしい美味しいリフ満載の曲が揃いますよね。
TAXMAN「そうですね。中でもTHE BAWDIESでの“自分の歴史”みたいな5曲を収めようと思って選曲をしました」
――TAXMANさんのこの“俺面”に関してどんな感想を?
MARCY「自分の曲がレコードになって入っていたら嬉しい…記念だしそれはそうかなと思っていました」
ROY「個人的な感想なんですけど、ライブでも定番のTAXMANの曲っていうと「B.P.B」があるんですよ。で、それはファン投票の方に入っていたんです。でも、その票を見てから選んだわけじゃないので、TAXMAN自身が“「B.P.B」はみんなが選ぶよね”みたいな感じで、だからあえて自分では選ばなかったのが、ちょっとどうかと思いますね」
TAXMAN「(笑)、違うじゃん!」
ROY「“どうせみんな選ぶよね”っていうなんか予想してる感じ? “みんな好きでしょ”みたいなのが、ね」
――(笑)。ROYさんの選曲には新曲の「COME ON, LET’S PARTY」が入っていますね。
ROY「そうなんです。「COME ON, LET’S PARTY」で言ってることってずっとTHE BAWDIESが言い続けてることなので。“ロックンロールを伝える気持ちはずっと変わってませんよ“っていう証明でもありますし、5曲は、基本的には同じ熱量を伝えるような歌詞の内容の楽曲を僕は選んだので。いろんな時代にこういう曲がちゃんと残っているってことで”変わらずロックンロールし続けている“っていうのを見せたかったんです」
――それを新曲でという?
ROY「はい。ギュッと1曲に集めるとこうなるみたいな」
――JIMさんはいかがですか。
JIM「いや特に…驚くことがあまりないかな。僕の選曲は僕が作曲に関わったやつなのでTAXMANと一緒で、“僕盤”に近くて、レコードの一面にそういうのがあると自分のモチベーションにもなるので。あと、2曲目の「LOVE YOU IN EVERY WAY」は母が好きな曲だったので、この曲を入れてあげたいなっていう、それぐらいですね」
――そう考えると改めて自己紹介みたいな部分もあるのかもしれないですね。
ROY「それだとMARCYの5曲がちょっとよくわかんないかもしれない。情緒が…」
MARCY「いや、なんかROYは絶対選ばないだろうなって思っていて…」
ROY「そんなことない。「I’M A LOVE MAN」は俺も一応…」
MARCY「「I’M A LOVE MAN」は昔、初めてのツアーのファイナルを渋谷AXでやった時の1曲目だったんだよね?」
ROY「かな?まあアルバム『THERE'S NO TURNING BACK』の1曲目だから」
MARCY「アルバムの1曲目をツアーの1曲目でやったのがすごく思い出に残っていて。格好いい曲だしライブでたくさんやっていたんで「I’M A LOVE MAN」は入れたかったんです。あとはもう普通にライブでやっていた好きな曲と聴いてて好きな曲を選んでいます。個人的にいい曲がすごく好きなので」
TAXMAN「MARCYはちょっとリスナーに近い感覚を持っているというか…こういうのってちょっと気をてらったり斜に構えたりしてやりがちですけど、素直に好きな曲をちゃんと入れてくる感じというか、まあ素直な子なんです」
MARCY「ははは」
――それぞれの個性が4つの面に落とし込まれたという意味ではコンセプチュアルですよね。ちなみに「COME ON, LET’S PARTY」のMVはスーツを着替えまくるビデオで、すごくシンプルですよね。
TAXMAN「めちゃくちゃシンプルなテーマのMVでしたけど、曲にも合っているし、あのわちゃわちゃ感はすごくTHE BAWDIES感が出ていて、よかったです。大変でしたけどね」
MARCY「「SUGAR PUFF」と同じ監督さんなんですけど、THE BAWDIESの4人の素の雰囲気を撮りたいみたいなことで…」
TAXMAN「監督さんと世代も割と近いし、センスもちょっと似ているっていうか。「SUGAR PUFF」の時が初めてだったんですけど撮影現場の雰囲気もすごくよくて、みんなで楽しく撮れて、その楽しさがそのまま映像にもちゃんと入っていてすごくよかったので、「COME ON, LET’S PARTY」もお願いしようと。そんなに打ち合わせもせず“スーツを着ましょう!”ってすぐ決まりました」
――そしてファン投票と選曲は間違いないラインナップです。
ROY「応援してくださっている方は長いことずっと好きでいてくれてる方もいたり、“最近好きになったよ!”って方もしっかりと初期の頃からの曲を聴いてくれていたりっていうのもあって、THE BAWDIESの歴史を刻んできたようなシングル楽曲とかミュージックビデオになったような楽曲たちが選ばれています。思い入れが長ければ長いほど投票しがちなので、長く愛されている楽曲…だから初期の曲の方がかなり思い入れが強かったりするのかな?って思っていたんですけど、「SKIPPIN’ STONES」とか「HAPPY RAYS」とか、最近の楽曲も作品として評価してくれているのが嬉しいです」
――今回の企画にちなんで、皆さんの中でバンドの歴史の中で節目として思い出すことってありますか?
ROY「いっぱいあります。初めての日本武道館、インディーズデビューしたタイミング、いきなりオーストラリアに行って武者修行したとか。あとフジロックのルーキーステージ、メジャーデビューしたときのドン!と自分たちが“これから行くぞ!”っていうタイミングもそうですし、憧れのソニックスと一緒にツアーをしたこととか、ヨーロッパツアーとかもあるし…」
TAXMAN「今ROYが全部言っちゃったんで。それ、やめてもらっていい?」
一同「(笑)」
――(笑)。では、その一つひとつに対していかがですか?
TAXMAN「すごいムズイですけど、やっぱりソニックスは今改めて考えても“ヤバすぎたな!”と思います。だって本当にソニックスのおかげでTHE BAWDIESというバンドが出来たので。“60年代のシアトルでソニックスってすげえバンドがいたんだ”みたいな。でもそんなに世界的に有名なバンドではないから情報もそんなにないというか、今、活動しているのかどうかもわからないし、途中で出したアルバムはハードロックっぽくなっていたし。“今、どうなってるんだろう?”みたいな話になった時にROYがYouTubeで最近のライブを見つけて、“ダメ元でいいから呼んでみよう”ってアプローチしたらまさかのOKが出て。でも俺らとやった時って、もう70歳くらいだったんです。で、空港まで迎えに行ったんですけど、全然ガレージパンクをやっている人のオーラとかがないおじいちゃん達が来て、“大丈夫かな?”と思って…」
ROY「疲れてた」
TAXMAN「本番のリハの時もあまりテンションが高くなかったんです。“もしかしたらあのソニックスはもういないのかな?”とか思っていたら、本番で凄かったんですよ。もう暴れ狂ってソニックスのまんまで。そのソニックスと今、同じステージにいるって本当に凄いことだなって。それを実現できるバンドって多分そんなにいないっていうか、憧れていてももう活動していなかったり、メンバーの誰かが死んじゃってたりとかあると思うんです。一番好きで一番影響を受けたソニックスと一緒にやれたっていう幸運なこと、それですね、1つ挙げるとしたら」
――ライブがすごかったら他のことは気にならないってカッコいいですよね。
TAXMAN「ツアーの最終日、渋谷の道玄坂で別れたんです。その時もみんな泣きながら道玄坂でハグしてね、おじいちゃんたちと」
JIM「おじいちゃんたちも泣いてたね」
TAXMAN「外国人のおじいちゃんたちと泣いてハグしてるヤツらが道玄坂にいるっていう」
――それが答えですよね。何もかも超えていく感じ。
TAXMAN「その後、久しぶりにソニックスがガレージパンク全開の新譜を出したんです。そのスペシャルサンクスには名だたる人たちの名前がバーンって載っていて、一番最後に“And THE BAWDIES”って書いてあって、鳥肌でした」
――他にも印象的な節目の話はありますか?
MARCY「47都道府県ツアーを初めてやった時は大変だったんですよね、期間もそんなに長く取っていなくて、もう“自分が今どこにいるんだろう?”と思うくらい日程詰め込みのツアーだったんですけど。でもそれをやれたことはバンドの強みになったというか、ほぼ毎日ライブをしてオフで疲れをとって、お客さんが待っていてくれてあまり行けなかった場所にも行ったので、あれだけの本数を出来たっていうのは今のTHE BAWDIESのライブの感じを作ってくれた大事なツアーだったんじゃないかな?と思っています。そろそろまたいろんな場所も回れるようなツアーをやりたいと思います」
JIM「節目ってあんま感じてないんですよ、大事なことではあるんですけど。そこで止まったりしてこなかったし、多分これからも止まらないんでしょうけど、何か節目があったらそれを経て次のためにもう次の日から動き出しちゃうので、節目っていうといっぱい出てくるけど案外節目っぽくないというか…。目にしていなくてただの節って感じなので。それこそMARCYが言った47都道府県ツアーとかも、それがあったから日本武道館があったし。日本武道館は“日本武道館”って単品で語られることも多いですけど、47都道府県をちゃんとやって全国の皆さんの顔を見てきてからこその日本武道館っていうのに意味があると思っているので、そう考えると、物事って繋がっていくんですよね。だからバンドがずっと動いているっていうことがちゃんとその次の節目とか今までの節目を大事にしている、思い入れがあるものになるっていう証明かな?と思うので、バンドが動いていることが僕の中で一番印象的かもしれないです」
――納得です。
――このインタビューが公開される頃は「NEVER ENDING STORY」の東京公演が間近です。今回のライブはどういうものにしたいですか?
ROY「THE BAWDIESの今までやってきたことの集大成のようなライブになると思います。今回、メンバーコレクションとファン投票でもあるベスト盤をリリースしましたし、感謝を込めて20年の歴史をしっかりたっぷり楽しんでくださいって感じです。もうお祭りというか…ただ、そうやって締めくくると一つ区切りでいったん終わるっていうような雰囲気が出がちだと思うんですけど、タイトルが『NEVER ENDING STORY』で、決してこれで終わるということじゃなくて、転がり続けるし、これからもこの楽しい感じが続いていくし、“自分たちにはTHE BAWDIESがずっといてくれるんだな”っていうのをみんなが感じてくれるようなライブにしたいと思います」
――東京公演のゲストにはトータス松本さん(ウルフルズ)と松尾レミさん(GLIM SPANKY)が登場しますね。トータスさんってROYさんにとってはどういう存在ですか?
ROY「自分たちのルーツにソウルミュージックがやっぱりあって。それを日本でしっかり根付かせている大先輩の一人なのですごくリスペクトしていますし、何度か一緒にステージにも上がらせてもらったりして、繋がりももちろんあったので、今回改めて周年っていうタイミングで“もう一度やらせてほしい”とお声かけさせていただきました」
――トータスさんの場合は日本人の情みたいな要素も加味されていて…。
ROY「うんうん」
――そこは開拓者でもありますね。何をやるのかも楽しみです。
ROY「はい、是非。リハーサルで一緒に合わせた感じで言うと、トータスさんに自分たちの曲を歌ってもらうとき、自分のルーツにソウルミュージックの要素もあるので、ソウルミュージックの感覚で作りながらそれを自分が歌っているんですけど、ソウルシンガーの人が歌ってくれている想像はしても、実際に歌ってくれている姿って見たことがなくて。で、それを目の前で見ると、やっぱりそのソウルシンガーの人の解釈っていうのがあって“そう! この曲ってこういうふうに最初作ろうとしてたんだよ!”っていう答えが見えるのがすごく嬉しかったです」
――松尾さんについては?
ROY「レミちゃんも自分たちとルーツミュージックで重なる部分がしっかりあるので。でも少し時代感がずれるところもあって、そこが面白いところでもあるんです。僕らは50年代から60年代、レミちゃんたちが60年代から70年代みたいな、そういったところの少しずれている部分を一つに凝縮した時に生まれるものは毎回やっていて思いますけど、面白いです」
――非常に楽しみです。今回はありがとうございました!
(おわり)
取材・文/石角友香
写真/中村功
RELEASE INFORMATION
THE BAWDIES『20th & 15th ANNIVERSARY VINYL COLLECTIONS』
2024年10月23日(水)発売
Limited Edition(THE BAWDIES CLUB):4LP+PHOTOBOOK + VINYL PLAYER
35,000円(税込) ※SOLD OUT
Limited Edition(Victor Online Store):4LP+PHOTOBOOK + VINYL PLAYER
VOSF-13086/35,000円(税込) ※SOLD OUT
通常盤:4LP+PHOTOBOOK
VIZL-2352/15,000円(税込)
streaming & download >>>
LIVE INFORMATION
NEVER ENDING STORY
2024年10月26日(土) 大阪 大阪城野外音楽堂
スペシャルゲスト:オカモトショウ(OKAMOTO’S)
2024年11月4日(月・祝) 東京 昭和女子大学 人見記念講堂
スペシャルゲスト:トータス松本(ウルフルズ)、松尾レミ(GLIM SPANKY)