──s**t kingzは、昨年秋ライブツアー『s**t kingz Dance Live Tour 2023「踊ピポ」』とワークショップツアー『s**t kingz Workshop Tour 2023』を経て、10月25日に日本武道館でのライブ『Dance Live in 日本武道館 THE s**t』を開催されました。これらの公演を経て、ダンスやダンサーというものに対する意識の変化があれば教えてください。
kazuki「変化という変化は感じませんでしたが、実感したことはあります。あの日、ファンのみんなはもちろん、ダンサーの友達や先輩後輩がたくさん集まってくれました。終わった後には素直な感想を伝えてくれて、ダンサーみんな、願っていることは同じようなことなんだなと思いました。もっとダンスやダンサーというものが世間に認められるべきだって。それを実感した日でしたね」
shoji「ダンスを始めたときはもちろん、つい最近まで、ダンサーが武道館でライブができるなんて思っていなかったので、ダンサーが武道館公演をやって、しかもチケットが完売するくらいの人が見に来てくれたという、その事実を作れたということがすごくうれしいし、大事なことだったんじゃないかなと思いました。この先、他の人たちが“s**t kingzでもできたんだから、俺たちでもできるんじゃない?”と思ってくれたり、何かを企画する人が“s**t kingzが武道館をやってたから、ダンスでこういう企画をやったら集客できるんじゃないかな”と思ってくれたり、“ダンスで何かをする”ということに対してポジティブに考えるきっかけになってくれたらうれしいです」
Oguri「これは、自分たちが事務所に所属しているからこそ実現できたことでもあると思っていて…というのも、やっぱり自分たちの力だけでは絶対にできないことっていっぱいあると思うんです。でもダンサーの世界だとマネジメントが付いているということはなかなか通常ではないことで。だから今回の僕たちの武道館公演を見て、ダンサーのマネジメントをしたいと思う大人たちもいっぱい増えたらいいなと思いました。“他にも面白いダンサーいるかな?”とか、いろんな目線でダンサーを発見していってほしいです。あの武道館公演にはそういう可能性があったんじゃないかなと思いました」
NOPPO「あの日、見にきてくれた人の中にはダンスをしない人も沢山いたと思うんです。それでも盛り上がってもらえたということは、サッカーや野球を見るような感覚で、ダンサーに憧れてもらったり、休日の癒しとしてみて楽しんでもらえたり、いろんな見方をしてもらえる可能性があるということだと思っていて。以前インタビューで“私は全然ダンスを踊れないんですけど、『見る専』で応援させてください”と言ってくれている方がいて。そういうことができただけですごくうれしいかったです」
kazuki「アーティストのファンの方で『見る専』なんて当たり前じゃないですか。でもダンスは“踊れるか踊れないか”という目でどうしても見てしまう…そこがまだ他とは違うものなんだなとも思いました。“ダンスはダンサーのもの”という考えが、少しずつなくなってきているのかな?とは思いますけど、ゆくゆくは完全になくしたいですね」
──その武道館公演で開催を発表したフェス『s**t kingz Fes 2024 ももたろう』の開催が今月に迫りましたが、その前に、新曲「MORECHAU feat. edhiii boi, Janet真夢叶(ぺろぺろきゃんでー), JIMMY(PSYCHIC FEVER)」がリリースされました。本作は作曲を韓国の音楽プロデューサー・GRAYさんが手がけ、フィーチャリングゲストとしてedhiii boi、ぺろぺろきゃんでー、JIMMY(PSYCHIC FEVER)が参加した豪華コラボ作品ですが、この曲の企画はどこから立ち上がったものだったのでしょうか?
Oguri「ずっと「Oh s**t feat. SKY-HI」に続く、めちゃくちゃ攻めた曲を作りたいと思っていたんです。ただ、アグレッシブで勢いのある「Oh s**t」とは違う攻め方をしたくて、それをJ.E.T. MUSICの代表に相談したら、GRAYさんに曲を作ってもらえることになりました。曲を作る上でのテーマとして“踊っているのか? 踊らされているのか?”というものを考えていたところだったので、“このテーマを若いアーティストはどう考えるんだろう?”というシンプルな興味があって、若い人たちと一緒に作れたら面白いものになりそうだなというところから、彼らとのコラボにたどり着きました」
──“踊っているのか? 踊らされているのか?”ということについて考えていた、というのはどういうことなのでしょう?
Oguri「全部自分たちでやってきているアーティストだったら、胸を張って“踊っている”って言えると思うんですけど、僕たちはいろんな人たちが関わっている中でダンサーとして活動しています。だから、関わっている人たちに喜んでもらうために踊っているときもあるかもしれないし、クライアント様が笑顔になるようにダンスを作っているときもあるんです」
shoji「名前を知ってもらうために何かをすることもあるよね」
Oguri「そう。じゃあ、“果たして自分たちの意思で自分たちのやりたいことをやっているのか?“と考えると、そうじゃないときもあって。”それってもしかしたら踊らされている?“とも思ったんですけど、振り返ってみると、その中で、想像を超える作品を作ってブチかましてきたから今があるんだと思えたんです。これからもそれを続けていくしかないんだという、気づきと決意が見つかったんですよね。だからそれをテーマにしてみました」
──フィーチャリングボーカリストの3組はどのように?
shoji「みんなで、若くて面白いアーティストを出し合って決めました。男女をミックスして、いろんな人が歌っているような楽曲にしたいというところから始まって。ぺろぺろきゃんでーはNOPPOが“カッコいいよ”って教えてくれた2人組。JIMMYとedhiii boiは、振り付けなどでもともと関わりがあって。edhiii boiのとにかく勢いのあるラップと、JIMMYのチルいけど意思のある感じという対比もカッコいい良さそうだなと想像して。“この3組が集まったらやばいことになりそうだね”と言いながらオファーしました」
──制作の工程としては、まずGRAYさんのトラックが上がってきたのが最初ですか?
Oguri「そうです。もともと俺らが“こういう曲調がいい”というリファレンスを出したうえで、2パターン作ってくれたんです。実はもう1パターンのほうがイメージにはぴったりだったんですけど、なんか直感で“こっちだ!”と思って、リファレンスとは違うパターンのものを選びました」
──歌詞は皆さんで相談しながら? それとも基本的にはそれぞれにお任せで?
shoji「奇跡的にみんなが日本で集まれた日が1日だけあったんです。GRAYさんが、“こっちのパターンでお願いします”と伝えた翌日くらいに日本に来てくれて。そこにs**t kingzと、歌う3組が集まって、なんとなく全体の流れを作っていきながら、その場で細かい歌詞を話し合っていきました。kazukiは来れなかったんだけど…濃厚な1日だったよね」
Oguri「ほんと、そう!」
shoji「edhiii boiが歌って、その声にあわせてGRAYさんがトラックを触っていく。それにあわせてJIMMYが歌って、それを聴いて、別のところで使おうと思っていたメロディを持ってきて、みたいな感じでどんどん曲が出来上がっていくんです。音楽をみんなと一緒に作るのは初めてだったんですけど、みんなが言いたいことを言い合って、すごくいい時間でした」
──ではまず歌詞について、特に気に入っているものや好きなフレーズをお一人ずつ教えてください。
Oguri「俺はedhiii boiの<この⾝体で伝えるメッセージ 俺ら存在⾃体がまじ ランゲージ>。僕たちは普段ダンサーとして言葉を使わずに表現しているので、それをedhiii boiが代弁してくれた気がして気に入っています。あとは<まじ ランゲージ>っていう言葉が気持ち良い! edhiii boiの抜けた感じの歌い方もカッコ良くて好きです」
kazuki「俺は<いいとこ突くでしょ?>がすごく好きです。<いいとこ突く>って表現に、僕はドラゴンボールのフリーザみたいな、圧倒的なパワーを持っている奴が指一本で世界を終わらせるみたいな自信を感じるんです。一撃で抑える感じ。がむしゃらにボコボコにするんじゃなくて、ワーワー言ってるやつをポンっと押すだけで黙らせるみたいな。このフレーズは初めて聴いたときから“カッコ良!”と思いました」
shoji「俺はサビの頭の<ダル着にサンダルでも盛れちゃう>。ぺろきゃんの2人と話したときに“s**t kingzさんもリハ着はTシャツにスウェットで、言ったらダル着みたいなもんですけど、リハ着で踊っててもカッコ良くて盛れてるのって、ダンスがカッケーからっすよ”みたいに言われて。ダル着にサンダル“だから”カッコいいんじゃなくて、ダル着にサンダル“でも”、ダンスがカッコよかったらカッコよくなっちゃうよねって。その考え方がすごくいいなと思いました。ビジュアルじゃなくて、中身があるからカッコいいんだってことだから。うれしいですよね。そもそも<ダル>って言葉から曲が始まるんですよ?ギャルいですよね(笑)」
NOPPO「そこを歌う真夢叶ちゃんの感じも良いよね」
shoji「そう!」
NOPPO「JIMMYの<踊らされてやってもいいが カマしすぎてて盛れてる>はこの曲のテーマを言ってくれた気がします。しかもここ、リズムも良いんだよね〜」
shoji「振りも思わず速くなっちゃうよね」
Oguri「ここの振り、速すぎてわけがわかんないんですよ(笑)」
shoj「ここは絶対に速く取らなきゃいけないところだって思いました。JIMMYからのメッセージです(笑)」
──“踊っているのか? 踊らされているのか?”の結論が<踊らされてやってもいいが>なのって、カッコいいですよね。
shoji「で、実際、音に踊らされて速くなっているわけですからね(笑)。でも結果、“カマせりゃいいでしょ”っていう」
──実際、ここのフレーズだけでなく、曲全体として振り付けはs**t kingz史上最⾼難易度だそうですが、最初から最高難易度でいこうと思っていたんですか?
shoji「はい、最初から難しい振り付けでブチかまそうというのは決まっていました」
Oguri「実はコラボしたアーティストからヒントをもらった動きも結構あります。取材のときに真夢叶ちゃんがギャルいポーズをしていたのが印象的だったので、思わずそれを振り付けに入れてしまったり。“inspired by コラボアーティストたち”って感じで、楽しいです」
shoji「ジャケットに描かれている、この手もギャルいと思うんですけど、振り付けにこの手のポーズも入っているんです。今回、気がついたら全体的にちょっとギャルっぽい振り付けになっていて。男性ボーカルグループの振り付けのときには出さないような女性的なシルエットや動きも、この曲だったら入れられる気がして。s**t kingzではあまりやらないような女性っぽい音の取り方やノリも入っていてすごく新鮮です」
Oguri「ちなみにジャケットのこの手はNOPPOの手がモデルです」
NOPPO「そう、アタシの手です」
──では、振り付けで気に入っているところを教えてください。
Oguri「最初のサビのビートが入った瞬間です。みんなでやっているステップがあるんですけど、それがめっちゃかわいいです。“かわいいイカつい”というか…なんかクセになります。そこは注目してほしいし、なんならちょっと真似してみてほしいですね」
shoji「最後のサビも特徴的です。膝のあたりに手を置いてお尻を振っていて、あまりs**t kingzではやらないノリなんですけど、この曲との相性がすごく良くて。踊っていてめちゃくちゃ気持ちいいです」
NOPPO「俺は1サビ。“shojiお姉ちゃん”のギャルが爆発しています(笑)。ファンの方が見たら“ウェーイ!”ってなるし、身内が見たらギャル過ぎてムカつくっていう(笑)」
shoji「立ち位置が変わりそうになって、NOPPOがそれをやるかもしれなかったんですが、断固として拒否してました(笑)。ギャルいshojiに注目してください」
kazuki「俺は最後の終わり方です。ドーンって終わらない感じがおしゃれでかわいいんですよね。ただそこにたどり着くまでが地獄のようですが(笑)。でもだからこそ、自分たちの気持ち的にもホッとするポイントです」
shoji「難易度の高いところを誰もお気に入りに挙げないっていう…(笑)」
Oguri「今、挙げたところの前後は全部難しいです(笑)」
shoji「必死過ぎてまだ愛せないんだよね(笑)」
──振り付けの難易度もそうですし、様々なアーティストとのコラボということもそうですし、「MORECHAU」はs**t kingzにとって挑戦の1曲になったかと思います。この曲が出来上がった今の心境はどのようなものですか?
Oguri「この曲でいっぱい遊んでほしいですね。とにかく聴いたままに動いてみてほしいです。オリジナルの振り付けを作って踊ってくれてもうれしいし、俺らの振り付けにチャレンジしてくれてもうれしいし。この曲を聴くと、根拠のない自信が生まれると思うので、この曲を聴いてテンションを上げてほしいですね。渋谷センター街とかで流れてほしいな〜」
NOPPO「この曲、大きな音で聴くとさらにカッコいいもんね」
shoji「“海外にも届いてほしいな”ってすごく思います。JIMMYが最近海外でも凄い人気で、日本語のラップが耳障り良くて新しいという反応もあって。そういう新しい可能性もJIMMYが見せてくれたから、この曲も世界に広がってくれたらと期待しますし、海外のダンサーも踊ってくれたらテンションが上がりますね」
──そして7月27、28日には『s**t kingz Fes 2024 ももたろう』が開催されます。そもそもなぜフェスを開催することになったのでしょうか?
shoji「ずっと“お祭り的なことはしたいよね”という話は出ていて。“武道館の次は何をしようか?”という話になったときに、スタッフさんが“フェスやりたいって言ってましたよね?”と言ってくれたところから動き出しました。で、どんなことやろうかと話していたら、kazukiが“ももたろう”と言い出して。そのときはみんな“ももたろう??”ってなったんだけど、“ストーリー性のあるものをやったらどうか?”という話だったので、面白そうだねと構想が膨らんでいきました」
kazuki「ただ良いアーティストを集めて、出番になってそれぞれがパフォーマンスをしていくだけじゃつまらないと思ったんです。“s**t kingzがプロデュースするからこそのフェス”をやりたいと思ったときに、ストーリーを軸にして、いろんなアーティストと出会っていくというお話が展開できたら面白いのかな?って。しかもみんなが知っている話だからこそ、その話に沿うことはもちろん、“ももたろうなのにそんなことが起こるの!?”っていうひねくれたアイデアも活かせるし。最初“ももたろう”って提案したときは、スタッフ含めて全員ぽかんとしていましたけど、強行突破で話を進めていくうちに戻れなくなって、こうなりました(笑)。作戦成功です(笑)」
──当日はどんなものが見られそうですか?
kazuki「ここでしか見られないコラボはもちろんのこと、s**t kingzが大忙しでございます。僕らが自信を持って声をかけさせてもらったアーティストのみんなや、ダンスを生業にしているみんなが一堂に会する、他では見られない2日間です。何よりもみんなダンスが好き。実際には踊らなくても、音で踊らせたい人や、気持ちで踊りながらパフォーマンスをしてくれるアーティストがいて、いろんなダンスの形を見られるフェスです。見に来てくれるお客さんも、そこに身を委ねていれば楽しめるはずです。めちゃくちゃ楽しい2日間になりますよ」
NOPPO「とてもハッピーなコラボが待っています。あとはs**t kingzらしい温かさのあるフェスになると思います。カッコよかったり、面白かったり、“これ、何の時間?”っていうような変な時間があったり(笑)、よりどりみどりなので、ただただ楽しむ気持ちで来てほしいです」
Oguri「踊る人も踊らせる人も見に来る人も、とにかくダンスが好きな人が一堂に会するフェスです。ダンスの楽しさを全身で浴びて帰ってほしいし、帰ったあと、自分の身の回りの人たちにもダンスの楽しさを広げていってもらえるような、広がりのあるフェスになったらいいなと思います」
shoji「フェスって普通は転換の時間があると思うんですけど、このフェスではその時間に話が進んでいったり、楽しいことがたくさん起こります。皆さんには、“トイレに行く隙間がない!”という困った経験をしてほしいですね(笑)。常にいろんなところで何かが起きるので、それも楽しんでほしいです」
(おわり)
取材・文/小林千絵
写真/野﨑 慧嗣
RELEASE INFORMATION
s**t kingz「MORECHAU feat. edhiii boi, Janet真夢叶(ぺろぺろきゃんでー), JIMMY(PSYCHIC FEVER) Prod. by GRAY」
s**t kingz「MORECHAU feat. edhiii boi, Janet真夢叶(ぺろぺろきゃんでー), JIMMY(PSYCHIC FEVER) Prod. by GRAY」
LIVE INFORMATION
s**t kingz Fes 2024 ももたろう
7⽉27⽇(⼟) 16:00開場 / 17:00開演
7⽉28⽇(⽇) 14:00開場 / 15:00開演
会場 神奈川県 横浜BUNTAI
■出演者:
【27⽇】
三浦⼤知 / 在⽇ファンク / MAZZEL / RIEHATA / パワーパフボーイズ / カズキのタネ / s**t kingz ももたろうダンサーズ / s**t kingz
【28⽇】
三浦⼤知 / C&K / Da-iCE / QUICK STYLE / パワーパフボーイズ / カズキのタネ/ s**t kingz ももたろうダンサーズ / s**t kingz