──2年の活動休止期間を経て、昨年12月28日に開催された『COUNTDOWN JAPAN 23/24』で活動を再開しました。あれから3ヶ月あまりが経っていますが、まずは活動再開から今日までを振り返ってもらえますか?
すぅ「活動再開が決まってから本当に一瞬でライブを迎えて、一瞬でライブが終わって、一瞬でライブから3ヶ月が経ったという感覚です。2年間の活動休止がありましたけど、その間に自分たちで会社を設立して“YOUTHFUL TUNE”というレーベルを立ち上げたり、常にこのメンバーで動いていたので、あまり休んでいた感覚がありません。ただ、音楽活動は久々なので、今はすごく楽しいし、これからにドキドキしている感じです」
山内あいな「表立った活動は休止していましたけど、初めてのことに試行錯誤しながら、意味のある2年間でした。自分たちで会社を立ち上げて、最初はマネージャーさんもいない状況だったんです。全部自分たちでやるから、毎日が目まぐるしくて、『CDJ』の余韻に浸る暇もなく、やるべきことがずっとある状況でした。今は、あらためてすべてのことに感謝しながら活動再開後の日々を過ごしています」
黒坂優香子「活動再開のライブで『CDJ』のステージに立たせていただいたんですけど、ワンマンライブと違ってほかのアーティストのファンの方もいらっしゃるので、果たしてどれぐらいの方が私たちのライブを見に来てくれるんだろう?って、不安も正直ありました」
すぅ「トップバッターで、お昼12時スタートだったしね」
黒坂「でも、ずっとサイサイを待ってくれていたファンの方たちも、初めましての新しいお客さんも、入場規制がかかるほどたくさん集まってくれたんです。あの景色、あの歓声は一生忘れられないくらい、今もずっと心に残っています。自分たちも大好きなサイサイを待ってくれていた人が、こんなにもいたんだって。そこに至るまでも含めて、いろんな思いやりや愛を感じていたので、あらためて感謝をしています」
すぅ「後ろのほうまでギューギューに入ってるのが、ステージからも見えてね」
──そして、活動再開後初のCDとなるミニアルバム『YOUTHFUL』が3月31日にリリースされました。タイトルは、最初に決めた形ですか?
すぅ「最後の最後です。候補は、20個ぐらい?」
山内「ずっと迷っていて、最後の最後に“どうしよう?”ってなったときに、“『YOUTHFUL』は?”って」
──直訳すると“若々しい”という意味の英単語ですが、どんな想いを込めたのでしょうか?
すぅ「新たに立ち上げたレーベルの名称が“YOUTHFUL TUNE”で、そこには“一生青春”とファンとの間で合言葉のように言い続けてきた私たちなんだから、これからも年齢とか性別とか環境とか関係なしに、好きなことに正直に向き合っていきたい…私たちにとって大事なことはもちろん音楽なので、そういう想いであらためて“一生青春”という言葉を掲げて、それを表現するレーベルでありたいという想いを込めました。それで、タイトルを決めかねているときに1周回って、自分たちのレーベルから最初に出るアルバムのタイトルはこれだ!って。文字面的にも、今回のジャケットデザインにぴったりだと思ったんです」
──その『YOUTHFUL』について、ここからは収録順に全曲解説をお願いできればと思います。1曲目は、『オンリーワン』です。愛犬家が揃っているサイサイらしい、“愛犬ソング”になっていますね。
山内「“愛犬ソング”って、なんかかわいい(笑)」
すぅ「これは一番最後にできた曲で、収録曲をあらためて聴いたときに、“「チェリボム」みたいに爆発的にポップな曲がないなー”って。それで、“そういう曲が欲しいよね?”って話になって、(作曲の)クボ(ナオキ)くんが悩んだ末に作ってくれたデモが「オンリーワン」です。で、かわいくてポップでもありつつパンチがあって、“すっごくいいじゃん!”ってなって。そこから、今のTikTokとかでバズる系の曲はサビ前にフックがあったり、サビ自体がキャッチーだったりするので、“サビ前に何かフックをお願いします”というオーダーが制作スタッフからあって、“じゃあどうしようか?”って思ってできたのが、最初の<ちょっと待て!お手!>というフレーズなんです(笑)。ワンちゃん目線の曲ってあんまりないと思うし、遊び心のあるサイサイっぽい曲になりました」
山内「この曲を聴くと愛犬に会いたくなって、すぐ家に帰りたくなっちゃいます(笑)。犬を飼っている方は、聴いたらTikTokに愛犬の動画を投稿したくなる曲だとも思います!」
すぅ「ぜひ撮ってほしいです! ライブで盛り上がるし、やるたびに成長していく曲なので、今からライブで披露するのが楽しみです。掛け声とかも掛けられるので、一緒に盛り上がってほしいです!」
山内「裏テーマは、第2の「チェリボム」です!」
──2曲目は、「Sus4」。再始動後、最初に発表された楽曲になります。この曲には、ワクワクすることや好きなことに対する気持ち、そして今のサイサイの気持ちがダイレクトに表現されていますよね。
すぅ「“再始動して1曲目に出す曲を何にしよう?”って、みんなですごく悩みました。悩んだ末、私たちが2013年に発表した「stella☆」の続編のような曲をリリースしようって。「stella☆」は、初めて“絶対にこの曲をリリースしたい!”って言い続けて、自分たちの意志を貫いた楽曲で、ファンの方たちと大事に育ててきた曲で、夢に向かってむずかしいこともあるけど、どうにか夢の場所までたどり着けるように頑張っていく気持ちを歌いました。その「stella☆」を踏まえて、「Sus4」ではメンバーの脱退などのいろんな困難を乗り越えた、今の自分たちの気持ちを表現しました。いろんな困難があって、この2年間には葛藤もあったけど、私たちは絶対に負けないし、絶対にいい展開に持っていく自信も今はあるし、“今、サイサイには追い風が吹いてるよね!”という気持ちで作りました。タイトルの“Sus4”は音楽用語で、あるコードの名称なんですけど、曲の中で何か展開が起きる前にフックとして使うことが多いコードなんです。これからのサイサイには何が起きるんだろう?っていうワクワク感が自分たちにはあるし、ファンの方にもそれを感じてほしいという思いも、「Sus4」というタイトルには込められています。あと、“Sus4”は4度の音から3度の音に下がったりするコードなので、メンバーは4人から3人になったけど、これからよりいい音楽をみんなに届けたい。そんな思いもタイトルに込めました」
黒坂「初めてデモを聴いたとき、“うちのボーカルは、なんていい歌詞を書くんだ!”って、あらためて思いました。2年の活動休止期間があったからこそできた曲だし、再始動1曲目にふさわしい曲だったと感じています。今まで応援してきてくださったファンのみんなも、私たちと一緒につらい思いや苦しい思いをしてきて、一緒に乗り越えて、ともに歩んできてくれているので、「stella☆」の歌詞と比べて聴くとより一層エモいと思います」
山内「初めて聴いたとき、本当に感動して泣きました。2013年当時の気持ちもよみがえってくるし、自分たちが“好き”って音を貫くことができない状況もある中で、すぅも言ったように「stella☆」は自分たちの意志で絶対にやろうって通した曲なんです。その曲の続編というか、新しい形で曲ができたことが本当にうれしいです」
すぅ「あいにゃんが泣くなんて、かなり珍しい(笑)」
山内「確かにね(笑)。でも、そのぐらい本気で突き刺さったから! イントロのコーラスも3人で歌っているんですけど、“3人でもこんなに最強なんだよ!”って表現できたと思います」
すぅ「ミュージックビデオも、絶対に同じ場所で撮りたかったので、「stella☆」のミュージックビデオを撮った場所で撮りました」
──続けてきたからこそ、乗り越えたからこそ生まれた曲なんですね。そんな「Sus4」の歌詞には、<棘棘の道を歩いた>とか<終わりそうだったストーリー>といったドキッとするフレーズがあります。
すぅ「ここまでいろいろありましたし、もう戻ってこないんじゃないかって思っていたファンの方もいると思います。「stella☆」もファンの方が私たちの道を照らしてくれる星のような存在なんだって歌なんですけど、「Sus4」もみんながいたから再始動できたし、もう1回SILENT SIRENになるって覚悟ができたので、ファンのみんなに対するメッセージソングでもあります」
──バンド活動に限らず、1度止めたことをまた始めるのは想像以上のエネルギーが必要だと思います。今の話でファンの存在がその原動力になったことがわかりますが、それ以外に自分たちを突き動かしたものは何でしょうか?
山内「これはたぶん3人とも同じだと思うんですけど、“サイサイが好き”っていう気持ちです。ファンの方が背中を押してくれたのももちろん大きいんですが、その気持ちに負けないぐらい自分たちもサイサイの曲が大好きなんです。2年というブランクがあったので不安ももちろんあったんですけど、“再開してうまくいかなかったらどうしよう?”っていう気持ちよりも、“やっぱりサイサイの音楽をやりたい!”っていう気持ちが強かったんです。どこかでふとサイサイの曲が流れてきたときに、3人で“うわー! いい曲だなー”って言い合えるのって最高だなって思います」
黒坂「“サイサイの曲っていいよね”って、自分たちでよく言うんですよ(笑)」
──3曲目は、「衝動」です。
すぅ「リアルに衝動的に書いた歌詞で、曲が上がってきたその日の夜に書きました」
山内「早かったよね!」
黒坂「びっくりした!」
すぅ「自分的ギネス認定、みたいな(笑)」
──そこまで早く歌詞を書けたのは、どうしてなんですか?
すぅ「いつかこういう歌が書きたいと思っていた部分と、曲がハマった感じです。たまにあるんですよ、そういう曲が。だから、すぐに歌詞を書けました。サイサイってキラキラして見えるかもしれないけど、泥くさくいろんなことを乗り越えてきたバンドなんだぞ!って気持ち、自分たちの葛藤を詰め込められた曲だと思っています」
──すぅさんの中にもともとあった思い、言葉が、クボさんの曲に触発される形で紡がれていったんですね。
すぅ「活休になる前のどこにも吐き出せない気持ちだったり、“ここでやめてたまるか、何が何でも私たちは幸せになるし、待ってくれているファンの人にも絶対に後悔をさせたくない”って思っていたので。以前、ある取材で“サイサイはいい意味でしぶといね”ってインタビュアーさんに言われたことがあったんですけど、私はその言葉がすごくうれしくて。バンドをやめるのは簡単だったかもしれないけど、続ける選択をして間違っていなかったと思うし、やっぱりサイサイは強いなって思いました。だから、「衝動」は“見とけよ!”って気持ちの表れです(笑)」
──4曲目の「最愛の君へ」は、待っていてくれたファンの人たちへの思いを感じる曲です。
すぅ「マインド的に最新作が最高傑作なので、その時その時の新しい曲を入れたいんですけど、「最愛の君へ」だけは5年ぐらい前の曲なんです。シンプルにすごく好きですごくいい曲だし、“再会”がテーマの曲でもあるので、活動を再開する際には“絶対に出したい!”と思っていました。私たちにとって、サイファミ(SILENT SIRENのファン)は最愛の人たちですしね」
山内「5年ぐらい前の曲だけど、むしろ発表するのは今だったと思います」
すぅ「各々のパートも5年前よりもブラッシュアップされて、より今っぽく、でもサイサイっぽいサウンドになっていると思います。Aメロは1番をゆかるん、2番をあいにゃんが歌っていることで、“再会”や“再開”を表現している部分もあります」
黒坂「リハで演奏し終わるたびに浸るぐらい、本当にいい曲です。サイファミにもたくさん届いてほしいし、まだ私たちを知らない人にもいっぱい聴いてほしいです」
山内「かわいくてポップだけど、演奏的には何気にむずかしいことをしていて、そういうやりがいもすごくある曲です。あと、男性目線の歌詞も新しい!」
すぅ「曲を聴いたときに見えた景色の目線が男性のイメージだったので、男性目線の歌詞を書きました。でも、もちろん女性の方にも聴いていただきたいです!」
──ラストは、「揺揺」。切ない思いを赤裸々に歌ったすぅさん作詞作曲のナンバーです。
すぅ「「揺揺」と書いて、“ゆらゆら”と読みます。ゆったり聴けるけど、乗ることもできるバラードです。ラジオでいろんな恋愛相談を受けたことがあったんですけど、“みんな、こんなに切ない恋愛をしてるんだなー”って思いました。それで、“みんなの想いを私が歌にして成仏させるよ”って、想像もしやすくて誰かに寄り添える曲になりました」
──男女問わず、性別問わず、シンパシーを抱く歌だと思います。
すぅ「お互いに好きなんだけど、絶対に重ならないもどかしい感じを音楽的にも絶妙に表現したかったんです。すごくウェットにしたかったので、かなりリバーブを強くしたサウンドになっています」
──サウンドからも揺らぎを感じる楽曲だなと思います。
山内「音の作り方がほかの4曲と全然違うんです。ドラムの跳ね返りが回ってくる感じとか…」
黒坂「本当、5曲目で一気に世界観、雰囲気がガラッと変わると思います。もどかしい、好きだからこそ忘れられない経験って、みんな絶対にあると思うんです。だからこそいろんな世代の人に沁みるし、響くんじゃないかな?って思います」
山内「最初、すぅがこういう恋愛してるのかな?ってちょっと心配になりました(笑)」
黒坂「私も、実体験かと思った(笑)。でも、直接聞くのは野暮かなーって(笑)」
山内「だから、ラジオの恋愛相談の話を聞くまでソワソワしてました(笑)」
──ここまで話していただいたことを踏まえて、『YOUTHFUL』はどんな1枚になったと感じていますか?
すぅ「私は、“うわー! サイサイだー!”って思いました。あのときの青春が詰まっている感じもするし、でも“今のサイサイだ”っていう新しさもあるので、懐かしさと新しさの両方が感じられるアルバムだと思います」
山内「旬の音楽も時代とともにどんどん変わっていく中で、でもサイサイはサイサイだし、これまでやってきたサイサイを貫いたほうが、絶対にいいものが生まれると信じてできた5曲です。これを聴いたら“もっとサイサイの曲が聴きたいな”って思うだろうし、“やっぱサイサイっていいな”ってみんな思ってくれるんじゃないかなと思います。“一生青春”を感じることができる5曲になりました」
──この記事が公開された直後、4月6日から名古屋、福島、東京を巡るライブツアー『I’m Home』が開催されます。
すぅ「『YOUTHFUL』の曲はもちろんやるので、予習してきてくれたらうれしいです。『I’m Home』というタイトルで、アットホームな雰囲気もありつつ、ライブハウスっていうみんなのお家にやっと集まれるということで、みんなで羽目を外して騒ぎたいです!」
山内「めちゃくちゃ楽しみです! 『YOUTHFUL』の5曲は最強すぎるし、ライブ映えする5曲だからこそセトリがすごくむずかしくて…。みんなが“うわー!”ってなる懐かしい曲もやるので、楽しみにしていてほしいです!」
黒坂「私もとにかく楽しみですし、みんなに直接“ただいま!”って伝えに行きたいです。活動再開後は『CDJ』とファンクラブ限定イベントでしかライブをしていないので、再開後のライブを見たいけどまだ見られていないという声も多くいただいています。なので、そういう方にも活動再開後のライブを見に来ていただきたいです。これまでのファンの方だけじゃなく、活動休止中にファンになりましたという方もいるので、そういう方にもぜひ来ていただいて、誰も置いてけぼりにしないで全員一緒に楽しめるライブにしたいです!」
──気は早いですが、ツアー後の展開などもすでにイメージされているんですか?
すぅ「正直、自社レーベルになってから目の前のことでいっぱいいっぱいなので(笑)、すっごい遠い未来じゃなくて、今を全力で重ねていく感じですね」
山内「ぼーっとしてたら“衣装が間に合わない!”、“グッズが間に合わない!”って(笑)。自分たちで発注をかけているので、恐怖です(笑)」
(おわり)
取材・文/大久保和則
写真/中村功
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION
SILENT SIREN LIVE TOUR 2024 『I’m Home』
2024年4⽉6⽇(⼟) 愛知 名古屋ボトムライン Thank you Sold Out!
2024年4⽉13⽇(⼟) 福島 HIPSHOT JAPAN Thank you Sold Out!
2024年4⽉20⽇(⼟) 東京 Zepp DiverCity(TOKYO)