──昨年、『Sweet Home Tour』で、初のZepp公演も行いましたが、いかがでしたか?
浜口 飛雄也(Vo/Gt)「これまでより確実に会場は大きくなりましたが、お客さんとの距離感は遠くならずにライブができたのが一番よかったです。いつも“お客さんを全員抱きしめる”という気持ちでライブをやっているので、その意識は普段と変わらずにできました」
清水 琢聖(Gt)「サポートにキーボードの方にも入ってもらったりして、いつもとは違うmoon dropを届けられたと思います。でも、心持ちは、飛雄也が言ったとおりのことをメンバーみんなが思っていました」
──大きな会場になったからといって、変に気負うことなく挑めたんですね。ではZepp公演も含めて、ツアーとしての手応えはいかがでしたか?
浜口「アルバム『Sweetest』をリリースしてからのツアーだったのでアルバムの曲を中心にしたセットリストでどこまでできるか?ということを考えるのが面白くて。ツアーの序盤と後半で全然違う場所に置いた曲もありましたし、“ここでやったらこの曲はこういう表情になるんだ”という発見もあって面白かったです。もちろん序盤には序盤の良さもありますし、その感じが、“ツアーをしているな”という感覚になりました」
清水「アルバムに収録しているmoon drop初のウェディングソング「みよじ」では飛雄也がアコギを弾いています。イントロではピアノと飛雄也の歌とアコギだけ。そういう新しい一面も見せられましたし、曲と曲の間につなぎを入れてみたり、試行錯誤しながらツアーファイナルのZepp公演で集大成を見せられました。いいツアーだったと思います」
──その後、映画『アオショー!』の主題歌「ブルーフィッシュ」の書き下ろしを経て5月13日に新曲「アイライン」がリリースされました。ライブでは以前からやっていた楽曲ということですが、ファンの方の反応はどのように感じていましたか?
浜口「僕たちはリリース前の新曲をライブでやるということがあまりなかったので、お客さんもそこにまず驚いていて。“何、この曲!?”とざわついていました。そのうえで、SNSなどで反応を見ていると“あの新曲がずっと頭に残っている”という声が多くて、「アイライン」が持っている力を感じました。自分たちでも“この曲はいい曲だ”と思っていたので、その感覚は間違っていなかったんだと確信しました」
──リリース前の楽曲をライブでやることをあまりしてこなかったということですが、この曲をライブで育てるやり方を選んだのはどうしてだったのでしょうか?
浜口「“1年に1枚、フルアルバムをリリースする”というやり方を4年くらいやってきましたが、少し違うやり方でやってみたいと思って。そこで、“リリースまでにどれだけ育てられるのか?”というやり方はどうかと思って始めてみました。1つの完成したドラマというよりは、受け取った人たちそれぞれの中でドラマを作ってもらいたいと思っていて…ちゃんとリリースしていないからこそ、聴く状況によって感じ方が変わってくると思うんです。“どういう曲なのか?”を考察する人もいるでしょうし。そうやって一人一人の中でドラマが出来上がったうえで、リリースしたときに答え合わせができるのが素敵だと思いました」
──この曲を初めてライブで披露したのはいつ頃ですか?
清水「今年の1月末だったっけ?」
浜口「そうだね」
──初めてライブで披露したときのことを覚えていますか?
浜口「覚えています。バラードって、音源で聴くのは良いと思うんですけど、ライブでやったときにどうなるのか…アップテンポの曲よりも想像しにくくて。だけど、実際にライブでやってみたら、すごくライブ映えする曲で、“こういう伝わり方をするんだ!”と手応えを感じました。しかも、ライブでやっているときに、“多分、メンバーも手応えを感じているな”というのが伝わってきました。それがよかったです」
──皆さん、手応えを感じましたか?
一同「はい」
清水「ライブ後に“新曲をライブでやるの、いいな!”って、みんなで話をしたよね? ライブでの初披露って、だいたいぎこちなくなったり、“伝わっているのかな?”、“キャッチボールできているのかな?”と感じることが多いですが、「アイライン」は、“最初からこれってヤバい!”という話をしました」
──「アイライン」はmoon dropの真骨頂とも言える失恋ソングですが、着想はどのようなところからだったのでしょうか?
浜口「仮タイトルは「メイク」でした。というのも、バンドが少しずつ大きくなってきて、メディア露出も増えてくると、メイクさんにメイクをしてもらう機会も増えて。家に帰ってメイクを落として…という生活を繰り返していたときに、パッと洗面所の排水溝の周りを見たらメイクの跡がすごくついていて。しかも全然落ちないんですよ」
──確かに水だけでは落ちないですよね。メイク落としなどを使わないと。
浜口「そうなんです。僕はメイク初心者だからそういうこともわからなくて…“全然落ちねえ!”ってなっていたときに“ちょっと待てよ?”となって。離れてしまった元恋人への、自分の中に残っている気持ちとか思い出とか、そういうことがリンクしていって、“曲を書こう”と決めました」
──歌詞の通り、実際に排水溝に残ったメイクの跡からの着想だったんですね。
浜口「そうです」
──毎回そうですが、今回は特に“飛雄也さんはどうしてこんなに女心がわかるんだろう!?”と思いました。<君好みに変えたメイク 気づいて欲しかった>とか、<会いたいがうまく⾔えなくて 通知が来れば落とした後でも またメイクするから>とか…。
浜口「嬉しいです。<君好みに変えたメイク>は、僕自身も、ファッションなどを好きな人の好みにあわせるところがあって。遡ってみると、昔と今とで全然違っていて…自分でも気づかないうちに“好きになってほしい”という気持ちが出ていたんだと思って、歌詞にしました」
──ご自身の経験がそのまま楽曲に反映されているんですね。
浜口「はい。「アイライン」は<僕>とは歌えなかったんです。女性目線の歌詞になっているのも、排水溝にこびりついているメイクの跡を見て、いろんな思い出を重ねた自分のことを直視できなくなってしまって…思い出してしまって。だから自然と<私>と歌っていました」
──これまでもご自身の経験を楽曲にしてきたと思いますが、それでも今回はちょっと違ったのでしょうか?
浜口「はい」
──いつもとはまた違う感情でご自身の実体験を楽曲にしてみていかがでしたか? 曲にして感情が昇華されたりとかありましたか?
浜口「自分としては、今のところそんなに“昇華した”という感覚はなくて。むしろ、この曲があることによって、より思い出してしまうんですけど(笑)。でもリリースして、聴いてくれた人が“自分の今の気持ちにリンクして昇華できているかもしれない”と言ってくれたりしているのを見て少し救われています」
──この曲に関して、坂さんがSNSで“4人の音を大事にすることを意識して作りました”と書かれていましたね。
坂 知哉(Ba/Cho)「はい。この曲は“バンドサウンドだけで成立するようにしよう”ということを大前提で作り始めました。原点に立ち返って、メンバー4人だけの音で作ろうと。だから“一人一人の音を大事にしよう”という話をしていました」
──“一人一人の音を大事にした”ということですが、この曲を演奏する際に意識したこと、大切にしたことを教えてください。
清水「僕は最初、ギターソロにトレモロをかけて揺らしたり、いろいろなことをしていました。でも、ライブを重ねて、みんなのフレーズやアレンジを聴いていくうちにどんどん引き算をしていって。音数がこんなに少ないのも久しぶりです。だけどラスサビはガーっと上げていくようなものにしたりして、聴いている方と近い感覚になれるようなギターになっていると思います。飛雄也のギターとの兼ね合いも話し合いましたし、メンバー間のディスカッションも多かったかと思います」
──それこそライブで育ててきた曲だからこそ、曲への理解度や曲に対する想いも、皆さんの中でどんどん募って行ったんでしょうね。
清水「そうですね。(坂のほうを向いて)どうでしょうか?」
坂「僕もこの曲はギターソロが一番好きです。すごくカッコいい! ギターのレコーディングのときも聴きながら“いいなぁ”と思っていました」
清水「ベースもソロを作ったら?(笑)」
坂「いや、無理(笑)」
──ご自身のベースについて、意識したことや大切にしたことはありますか?
坂「イントロとアウトロでギターのアルペジオの上に乗っかるフレーズがあって、そこは本当にベースとギターしかいないから…ライブですごく緊張します」
──何年もバンドをやっているのに!
坂「はい。めっちゃ緊張します。“来る! ヤバい!”って思います(笑)」
──原さんは、ドラムに関していかがですか?
原 一樹(Dr)「ドラムは変に難しいことはしないで、どしっとしたビート感を意識しました。レコーディングでは、左手だけスティックを上下逆に持って叩いてみたんです。そうすると重心がスティックの先に行くので、どしっとした音が出て。曲をより良くしたいと思いながら叩きました」
──スティックの重心が変わると、普段とリズムの取り方が変わったりはしないですか?
原「そうですね、叩きにくくはあります。だから慣れるのには少し時間がかかりました。でも、音がいいので」
──新しい武器を手に入れたんですね。
原「はい。この先、他の曲にも使ってみたいと思いました」
──ボーカルはいかがですか?
浜口「moon dropの楽曲で、ここまでサビでファルセットが出てくることがあまりなかったので、そこはチャレンジでした。難しいですけど、意外と声ともハマって良かったです」
──変な話、ご自身で作ったメロディなので、地声で出せる音程に変えることもできたと思うのですが、あえてファルセットでのキーにした理由はありますか?
浜口「ファルセットが入っていたほうが悲しさが出て、この曲がよくなると思ったので、あえて挑戦しました。しっとり聴いてもらいたいです」
──久しぶりの新曲となる「アイライン」ですが、moon dropにとってはどんな1曲になりそうですか?
浜口「改めてmoon dropの原点に立ち返れる曲だと思います」
清水「この曲が生まれたことで、セットリストもかなり変わりました。これまでは30分のステージだと基本はアップテンポの曲だけで、やれてもミドルテンポの曲が1曲という感じでしたけど、「アイライン」ができてからは、この曲ともう1曲、失恋バラードを入れたりして。ライブでのBPMはその分、落ちますけど、“アップテンポだけがmoon dropじゃないんだぞ”というところを30分のステージでも見せられるようになったのはよかったです」
──失恋バラードがセットリストに入ってくるとmoon dropというバンドがより伝わりやすくなりますよね。
清水「そうですね」
──ライブの話が出たところで、今月末から6月にかけて『concept oneman live「⽉までラブストーリー」』が始まります。バンド史上初、コンセプトライブツアーを開催しようと思ったのはどうしてですか?
浜口「琢聖が“何かコンセプトをつけてライブやりたい”と言い出したのがきっかけです」
清水「打ち上げでイベンターさんに“moon dropってアルバムを出してツアーをしての繰り返しだから、このタイミングで何か変わったこと、他のバンドがやっていないことをやってみるのもいいかもしれないね”と言ってもらって。そこで、“moon dropにしかできないことって何だろう?”と考え始めてコンセプトライブを思いつきました」
浜口「コンセプトはみんなで決めました。“初恋・⽚想い・⻘春編”、“失恋・メンヘラ・未練編”、“恋路・軌跡・運命編”、この3つのコンセプトが決まってから曲を振り分けていったんですが、もう最初の段階でほぼ均等に分かれて、“いろんな曲を歌ってきたな”とて思いました」
──確かにそれは意外ですね。
浜口「僕たちも“もっと偏るかな?”と思っていたんですが、意外と均等に分かれました」
──それぞれのコンセプトでセットリストはもう決まっていますか?(※インタビューは5月中旬に実施)
清水「はい、ほぼ決まりました」
──では、そのセットリストを持ってこれからツアーを回る心境を聞かせてください。
浜口「ライブをやっていると、曲の世界にすごく入り込む瞬間があるんですが、今回はワンマンでライブ時間がたっぷりあるので公演全体を通して表現できる内容や届けられる幅がさらに広がります。そう考えるとすごく楽しみです。」
清水「僕はセトリを作り始めたときに、“ツアー初日の東京の1曲目と、ファイナルの名古屋の最後の曲はこれだな”というのがパッと思い浮かびました。そこから、“歌詞的にもこうすると1本のストーリーができる”とか、そういうことを想像しながらセットリストを作るのがすごく楽しかったです。通しのリハはこれからですが、リハも楽しみですし、もちろん本番も楽しみです。ワンマンライブ自体も半年ぶりくらいなので、楽しみです」
──3公演で、持ち曲をほとんどやる感じですか?
清水「はい、全曲まではいかないですけど、かなりやります。3公演で1曲もかぶりがないので」
浜口「全公演に来ていただけると、moon dropの曲をほぼほぼ全曲、聴けます」
──そうなんですね!
坂「だから楽しみなんですけど、なにぶん曲数も多いので不安もあります(笑)」
──“ほぼほぼ全曲が聴ける”というのは、つまり、持ち曲のほとんどを演奏しないといけないわけですしね。
坂「そうなんです。だから頭の中ぱんぱんで! でも楽しみです」
原「頑張って(曲を)思い出したので、いいライブがしたいです(笑)」
──最後に、好きな人との思い出を歌った「アイライン」にちなんで、これまでのmoon dropの活動の中で、特に忘れられない景色や印象的な出来事を教えてください。
清水「僕は数年前、初めての『JAPAN JAM』で、ライブ中に仮歯が取れたことかな?」
浜口「それ?(笑)」
清水「やっぱりあれは強烈な思い出なので(笑)。フェスなので大きなスクリーンでアップで顔が映ったりしますよね。だけど僕は2曲目で仮歯が取れたので前歯がないから、ずっと無表情でライブをしました(笑)」
──それは確かに忘れられないですね(笑)。
浜口「忘れられない出来事はたくさんあるんですけど…今、そう聞かれてパッと思いついたのは、地元・三重の松阪M'AXAでワンマンライブをしたことです。M'AXAは地元では若手バンドの登竜門的なライブハウスで、ずっと憧れていた場所で。そこでワンマンライブをしたとき、チケットがソールドアウトして…それは僕にとって、すごく特別な出来事でした」
──良いライブはできましたか?
浜口「できました! またできるように頑張ります」
原「僕は3年前くらいに渋谷のSpotify O-EASTでやったワンマンライブです。そのときもソールドアウトさせてもらったんですが、ずっとO-EASTの上の階のSpotify O-Crestに出ていましたし、3人に初めて会ったのもO-Crestだったので、そういうことを踏まえて、同じ建物にあるO-EASTを埋められたことと、そのときの景色は忘れられません」
(おわり)
取材・文/小林千絵
ライブ写真/後藤壮太郎
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION

CONCEPT ONEMAN LIVE「⽉までラブストーリー」
▼concept︓初恋・⽚想い・⻘春編
2026年5月31日(⽇) 東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO
▼concept︓失恋・メンヘラ・未練編
2026年6月17日(⽔) ⼤阪 UMEDA CLUB QUATTRO
▼concept︓恋路・軌跡・運命編
2026年6月18日(⽊) 愛知 NAGOYA CLUB QUATTRO








