──「なにやってもうまくいない」がTikTokでバズり、この曲でメジャーデビューを果たしましたが、キャッチーさと中毒性を持ったダンサブルなナンバーですね。

「ほぼほぼ歌詞からできていった楽曲です。以前、TikTokで1曲だけ軽くバズった曲があったんですけど、それをきっかけにユニバーサルミュージックの人に声をかけてもらいました。だけど、なかなかうまくいかないんですよね。目標を決めて頑張る上で、結果を早く出さないとやばいという焦りもあって……とにかくさらにバズる曲を作らないといけないと思って、たくさん曲を作りました。ただ、どれもバズることはなくて」

──まさに「なにやってもうまくいかない」状態だった?

「本当にそうです。どうすればバズる曲になるか、かなり研究もしました。1日8時間TikTokを見て、その合間にも結局YouTubeを見たりして(笑)」

──その研究の成果が出たってことですね?

「TikTokで流行している曲をたくさん聴いている中で、バズるにはやっぱり中毒性が必要なんだなとあらためて感じました。なので、自分で書いた曲を朝起きたら聴いて、電車の中でも聴いて夜にも聴いてって、何度も何度も聴いて。そうやって、中毒性があるかどうかのチェックをしたりもしていましたね。ハマったら1ヶ月も2ヵ月も同じ曲を聴き続けるぐらい、もともとリスナーとしても中毒性がある曲が好きなので、そこは自分の感覚を信じて。あとは、音数ですね。ギターとかも入れず、歌が、歌詞がちゃんと聴こえるように極限まで少なくしました。それも、TikTokでバズる条件の1つだなと思ったので」

──タイトルや歌詞は、どんなところから生まれてきたんでしょうか?

「この曲を書いていたときの、自分の気持ちですね。いろいろ研究して、なんとか自分の曲をバズらせたいと努力しているのに、結果が出ない。レコード会社から声がかかって、あとちょっとだと思っていたのに、それでもうまくいかない。これは無理だな、人生厳しいかもしれないって、だいぶ思いつめていましたね。だから、「なにやってもうまくいかない」って自分の気持ちが、そのまま歌になって」

──これまでも自分が感じたことを歌にしてきたと思うんですけど、「なにやってもうまくいかない」は、今までで一番本当の気持ちを歌った曲だったりしますか?

「本当に、まさしくその通りです。無意識で作っていたので、結果的にですけど、「なにやってもうまくいかない」がTikTokユーザーに広がっていくうちに、この曲はめっちゃ自分の人生歌ってんなって気付いて」

──自分の人生をそのまま歌ったら、これまでで一番の反響を得て、メジャーデビューを果たすことになったわけですね。

「出来すぎだなって思います。すごいことだなって」

──「なにやってもうまくいかない」という感覚は、人生でずっと感じていた?

「音楽活動を始めてからは、その感覚がずっとどこかにあったのかもしれないです。僕、努力して失敗することが嫌なんですよ(笑)。だから、ずっと挫折しない生き方をしてきたんです。しかも、運はいいほうだと思っていたし、実際に最悪のことまでは起きなかったですね、そういう生き方をしていた中で。だから、音楽を始める前まではむしろ人生うまくいってるなぐらいの気持ちでした。でも、音楽を始めて、別に売れもせずに八百屋のバイトを10年も続けていくうちに、これは今までのようにはいかないかもしれないって、うっすらと気づき始めたんです。オーディションとかでいいところまで進んでも、最終的には勝てないし。そういう状況が続いていく中で、もしかしたら努力してないから、本気で頑張っていないから、本音で歌っていないからダメなのかなって思うようになっていったところはあります。それまでの僕は、飄々と生きていたいと思っていたし、別に本気じゃないし頑張ってないよっていうのがかっこいいと勘違いしていました。でも、それで離れていった人もいたし、本気で頑張っている人からしか出ないオーラがあるんじゃないかなって思うようにもなって。自分は、そういうオーラがないから売れないのかもしれないなって」

──そうした紆余曲折だったり、オーラのなさを含めて、いまバズっているということは、「なにやってもうまくいかない」と感じている人は今の世の中には多いということなんですかね?

「そうかもしれませんね。コロナ禍の影響もあると思うんですけど、みんなうまくいかないことが増えているんじゃないかな、きっと。今回、「なにやってもうまくいかない」のジャケットに「なにやってもうまくいかない」エピソードを載せるためにTikTokで募集したんです。そしたら、1,600件ぐらいのコメントが集まったんですよ。予想以上だったんですけど、それだけみんなうまくいっていないんだなって感じました」

──コメントの中で、特に印象に残ったエピソードはありますか?

「1つのコメントでは収まりきらないぐらい長文で、生い立ちから書いている方がいました。読んでいてちょっとつらくなるような内容もありましたけど、コメントに書くということは、そこでデトックスというか、ある種のエンタメに消化して、自分の気持ちを楽にしようという部分もあるんだろうなとは思いましたね」

──「なにやってもうまくいかない」は、2分半弱の中で膨大な言葉が歌詞として歌われる楽曲で、日本語の歌詞の聴こえ方としても斬新でした。

「常に大事にしているのは自分が歌って気持ちいいかどうかなんですけど、パーカッション的に聴こえる言葉選びというのは、これまでの曲作りの中でもずっと意識しています。例えば、<はっつくパンツか ひっつくパンツか くっつくパンツか むかつくパンツか>って、ちょっと流行ったボイパに聴こえる言葉遊びがあるんですけど、そういう感じの言葉選びというか。僕がもともとドラム・ボーカルだったことも、影響しているのかもしれません」

──ドラム・ボーカルの経験以外に、パーカッシブな言葉選びに影響を与えた何かはありますか?

「僕はKANさんが好きなんですけど、KANさんって歌詞にすごく言葉を詰めるんです。あと、ミスチルも好きなんですけど、歌詞で特徴的な言葉の詰め方をしているんですよね。そういうところから影響を受けた部分はあるかもしれないです。ほかには、小学生のころに好きだった音ゲーですかね。音ゲーには、早口の曲もあったりするので」

──「なにやってもうまくいかない」のベースには、サカナクションの草刈愛美さんが参加しています。

「もともとサカナクションが好きで、草刈さんのベースが「なにやってもうまくいかない」に絶対に合うという確信もあったので、まずは僕のサカナクションへの愛を伝えた上でダメもとでお願いしたところ、快諾していただきました。この曲のエンジニアもサカナクションなどを手掛けている浦本雅史さんがエンジニアとして携わってくれています。最初にプリプロでベースを弾いた音源が届いて、もうそれでOKだったので、そのイメージのまま本番テイクをレコーディングしてもらいました。“ちょっとここは……”というところが1つもなかったんですけど、今まで曲を作って誰かに参加してもらったときは、ここをこうしてほしいというアイデアが出なかったことはなかったんです。でも、草刈さんのベースは僕のアイデアが出ないほど、完璧でした。本当にすごいな、ありがたいなって思いましたね」

──メジャーデビューを果たした今、これからどんな存在になっていく未来を思い描いていますか?

「今のところ打ち込み系の曲を評価してもらうことが多いんですけど、配信ライブでは弾き語りもしていますし、バンド活動もしていましたし、12年の音楽活動の中でジャンル的にもいろんなタイプの曲を作ってきました。なので、僕が歌っていればすべてがmeiyoだなと思ってもらえる、唯一無二の存在になりたい。そんな野望がありますね。それと、単純にライブがしたいです。みんなに会いたいっていう気持ちが、とても強くあります」

(おわり)

取材・文/大久保和則

meiyo「なにやってもうまくいかない」

2021年9月26日(日)配信
ユニバーサル ミュージック

配信リンク

関連リンク

一覧へ戻る