――3月20日に「brave」、4月10日に「春色」と連続リリースがされましたが、全く違うタイプの曲となりましたね。まずは、「brave」について聞かせてください。
「「brave」は2024なでしこリーグ公式テーマソングのために書き下ろしました。自分自身が選手になりきるのではなく、選手の皆さんが思わず走り出したくなるような パワーのある曲にしたいと考えながら制作しました」
――“なでしこリーグ”と聞くだけで、新たなフレーズもたくさん浮かんできたのではないでしょうか?
「そうですね。私自身は、小さいころから合唱団に所属していたので、部活を経験していなかったんです。でも、放課後に練習をしているサッカー部のことをよく見ていて、スポーツができる人に対して憧れを抱いていました。今回、このお話を頂いて、YouTubeなどでなでしこリーグの映像を拝見させてもらい、同じ女性として、あんなにカッコいい世界があるんだと深く感銘を受け、選手を応援する気持ちはもちろん、応援している人達の気持ちなどを想像しながら歌詞を書きました。さらに、春にリリースということで、環境が新しくなった方たちへのエールソングになると嬉しいですね」
――合唱団と部活の兼任は難しかったんですか?
「コンサートや練習で休まないといけなかったので、兼任は難しかったです。なので、私はプレイヤーにはならずに、野球部のマネージャーになろうと思ったんです。でも、私が通っていた高校は女子のマネージャーを取らないという決まりがあって、それも叶わなくて…放課後に運動部のみんなが頑張っている姿を眺めているだけだったので、今、歌でスポーツを頑張っているみなさんを少しでも支えることができるなら、すごく嬉しいです」
――そうだったんですね。ちなみに歌詞には、サッカーを彷彿とさせる言葉がたくさん入れ込まれていますよね。
「はい。<ゴール>や<グラウンド>などは入れ込みましたが、やりすぎることなく、どんな場面でも通じる歌詞になるように、意識して書かせていただきました」
――ラブソングとはまた違う気持ちでレコーディングをしたと思うのですが、いかがでしたか?
「今回、なでしこリーグのみなさんの頑張る姿を見て、私自身、“もっと挑戦していこう!”という気持ちが湧いてきたんです。だからこそ、積極的に作曲に参加したり、2番でラップ調や英語などの歌詞を入れてみたり、今までとは違う挑戦をさせてもらいました」
――たしかに、新しいまるりさんが見られる曲になりましたね。
「そう捉えてくれたら嬉しいです。実は、以前リリースした「ily」という曲と同じトラックの音が入っているんです。なので、よく聴いてくれている方には“あれ?”って思ってもらえるはずなので、その遊び心も楽しんでもらいたいです」
――こういったエールソングは、歌っていると自身も勇気づけられると思うのですが、いかがでしたか?
「先日、この曲を初披露する機会があって、私自身、スポーツをやってこなかった分、スポーツをやられている方達にものすごく憧れがありました。なので、よりその方達に気持ちが届くよう、意識して歌いました」
――実際になでしこリーグの方達からメッセージはもらいましたか?
「はい、いただけたんです! “この曲で練習を頑張ります”、“応援しています”というメッセージを頂いて、私が応援しようと思っていたのに、そのような言葉を頂けて本当にありがたかったし、嬉しかったです」
――きっと、選手のみなさんには共感できる歌詞が多かったんでしょうね。
「本当に、そうなっていただけたら嬉しいです」
――そして、その3週間後に「春色」がリリースされました。こちらも、素敵なエールソングになりますね。
「ありがとうございます。この曲は私がずっとやらせていただいているZIP-FMのラジオ番組と、金城学院大学の応援ソングプロジェクトとして誕生しました。このプロジェクトは毎回いろんなアーティストさんが参加しているんですが、今年はありがたいことに私が関わることが出来たので、学生の方にインタビューをしながら制作をしていきました」
――「brave」と「春色」、応援というコンセプトは同じですが、全く違う曲になりましたね。
「そうなんです。スポーツで頑張る方も、新生活を頑張る方にも、どちらも届いてくれたら嬉しいです。実は、私自身、福岡から上京してきたのが4月1日なんです。上京してから8年が経った今、こうして、新生活を応援する曲を作れたことに、深い縁を感じています」
――毎年4月になると、上京した頃を思い出しますか?
「思い出しますね。その時に入った事務所が、桜が満開の目黒川沿いにあったんです。なので、桜が咲くと、あの頃の自分に引き戻される感覚があります。この曲にも<桜>という歌詞がたくさん出てくるのですが、春が来る=お別れの時期が来るからこそ、桜は咲いてほしいけど、咲かないでもいてほしいという葛藤も表現しました」
――たしかに、日本にいると、桜からは逃げられないですしね。
「そうなんです!(笑) きっと、これからもずっと桜が咲くとあの時の気持ちを思い出し続けていると思います」
――ちなみに、学生さんにインタビューして、どんなことを思いましたか?
「インタビューをさせていただいた学生さんはものすごく緊張していたんです。でも、学校生活の思い出を話していくうちに、みなさんがどんどん笑顔になってきて。その姿を見ていると、みんなの学生生活がすごく充実していたことが伝わってきたんです。さらに、そこでいろんな夢を見つけたことを教えてくれて、環境の大事さを実感しました。私自身も、高校の文化祭で歌わなかったら、歌手になろうなんて思わなかったと思います。さらに、たまたま仲良くなった子が、メイクが好きな子で、そこから一緒にオシャレを楽しむようになったので、友達や環境が自分を作り上げていくことを身に沁みて実感していて…。改めて、その学生さんたちとお話をすることでそういったことも思い出し、大きな刺激をもらえました」
――この曲は、メロディがとっても素敵ですよね。
「この曲を最初に聴いたときに、“絶対に作詞をしたい”って思いました。さらに、今回の「春色」のテーマにすごく合うメロディだと感じたんです。元気になる明るさを秘めているメロディですし、聴いていると不思議と空を見上げてしまうような、すごくいい曲です。さらに、金城学院大学は、ハンドベルが有名な大学だったので、ベルの音を足してもらいました」
――さらに、「春色」の色の描写の歌詞がすごく素敵で感動しました。
「ありがとうございます。<青く染まる春色の空>、<淡く染まるオレンジの空の下>は、1日の空の色の変化をキレイに表現したいと思って書きました。この色の空を思い浮かべながら聴いてもらえたら嬉しいです」
――タイプの違う2曲のエールソングを連続して歌うことで、あらためて気づいたことはありましたか?
「私は自分のことを書くというよりも、人に興味があるタイプなので、この2曲の制作中は、すごく充実した時間を過ごしていた気がします。私には福岡に親友がいて、上京するときに、手紙をもらったんです。今回、「春色」を作るにあたって、その手紙をもう一度読み直したら号泣してしまいました。当時、飛行機の中で泣きながら読んだことも思い出しましたし、夢のために一歩を踏み出したあの頃の自分を思い出して書いた部分もあるんです」
――その気持ちがあるからこそ、より臨場感のある曲になったんですね。…飛行機で号泣したんですか?
「…しました(笑)。飛行機で号泣している動画を撮って、その友達に送りました(笑)」
――急に客観的!
「あはは。今でも、その時のことをその親友とよく話すんですが、学生の頃の友達って、やっぱり特別なんですよね。きっと、これから先何十年経っても、その親友とは学生の頃の話をずっとし続けると思います」
――さて、いま、このインタビューを読んでいる方達の中にも新生活を迎えた人たちがたくさんいると思います。あらためて、夢を目指す人達にどんな言葉をかけてあげたいですか?
「上京した当初、家族や友だちは応援してくれていたけど、不安がものすごく大きかったんです。最初はホームシックにもなりましたし、歌手になりたいから上京したのに、生活のためにアルバイトしかしていない日々に“何のために来たんだろう?”、“どこに向かっているんだろう?”って思ったり…。さらに、テレビに出たくて頑張っても出られないし、路上ライブをしても誰も止まってくれないし、“どうしたらいいんだろう?“って何度も悩みました。そんな時に、私はSNSという新しいツールを見つけたんです。そこでやっと注目してもらえるようになったので、自分に合った道を探すことがなによりも大事だと思います。あとは、なによりも、自分を信じることが一番だと思います」
――それが一番大事ですよね。
「そう思います。そこさえブレなければ、やっていけると思うんです。そして、それが一番の近道だと思っていて。どこかで“自分はダメだ”と思ったら、その瞬間にもうダメになってしまうので。なので、自分だけは自分を信じて、強い一歩を踏み出していくことが大事だと思っています。私自身、まだまだ夢を追いかけている状態なので、リスナーのみなさんと一緒に進んでいけるような関係でいたいです」
――では最後に、今後どんなライブをしてみたいですか?
「この春で、ソロでライブを始めて1年が経ちます。いまはいろんなライブハウスで歌わせていただいていますが、合唱団にいたからこそ、ホールでやってみたいと思っています。あと、まるり名義でリリースしている曲はアップテンポの曲が多くて、明るいイメージも多いと思うのですが、ライブではバラードも多く歌うので、ぜひ、そのギャップも楽しんでもらいたいです」
(おわり)
取材・文/吉田可奈
写真/中村功