──前作『うた弁4 you』から約3年ぶりの新作『うた弁5』がリリースされました。アルバムが完成するまでの3年間を振り返ると、どんな時間だったと思いますか?
「いろんなスタイルがありますけど、私自身は“アルバムをリリースしてツアーをする”というより、“1年を通して各地に歌を届ける”という活動…それも、自分自身のツアー以外にイベントや学校での公演、ショッピングモールなどいろんな形で活動しています。なので、アルバムという一つの作品を生み出すことは、もちろん大事な軸の一つですけど、それを基軸に活動を計画していくというよりも、いろいろな活動の中で生まれた曲たちを1枚にまとめたという感覚です」
──活動の内容によっては1度で完結せず、何回も同じ土地に通うこともあって、しかも、そういう場所が全国各地にあるんですね。
「そうですね。今回の『半﨑美子コンサートツアー2026〜地球へ〜』がスタートした宮城や故郷の北海道、能登など、各地で深まっていくつながりがたくさんあります。そういう出会いから生まれた歌が一つの作品になって、その作品がまた新たな出会いを運んでくれます。そういうリズムの中で活動しているので、“この日にアルバムを発売しよう”とか、楽曲の制作自体も“こんな歌を書こう”というような形で生まれるものがほとんどなくて」
──となると、どのように制作をされるのでしょうか? 以前に“メロディと歌詞が同時に出てくる”とおっしゃられていた記憶があるのですが。
「メロディと歌詞が同時に出てくるというのは本当です。だから、歌詞を書き溜めたりすることも一切ないです。スタジオでピアノに向かったときに、歌詞がメロディを伴って出てきて、それをボイスレコーダーに録音して、あとから文字起こしするという作り方です」
──そうなんですか!
「活動を通して出会った人たちの想いや、誰かの言葉や思い出、涙みたいなものが自分の中に降り積もっていって、それが溢れて歌になります。なので、Aメロをこうして、Bメロをこうして…というような意図もなくて、作る段階でアレンジのイメージも含めて1曲丸々できることが多いです」
──それはすごいですね! 逆に文字起こしをしてみて初めて、“あ、ここの曲はあの時の、あの瞬間を曲にしたものだったんだ”と気づくこともあったりしますか?
「そう! 本当にそうです! なんだか、思い出したら涙が出てきました…(涙)」
──その涙のきっかけとなった楽曲は今回のアルバム『うた弁5』に収録されていますか?
「「命が咲く日まで」がそうです。この曲は、宮城県で私がメジャーデビュー前からずっと交流を続けてきた阿部良助さんという方への想いが溢れて生まれた曲です。阿部さんは、2011年3月11日の東日本大震災のときに津波で甚大な被害があった石巻の大川地区という地域で、犠牲になられた方たち269名の命を偲んで、同じ本数の桜を植え、最終的に280本の桜を植樹された方です。私も一緒に植樹した桜が今年も見事に咲きました。ご自身もお孫さんを津波で亡くされて、深い悲しみを抱えながらもいろんな方の悲しみに寄り添って桜を植え続けただけでなく、大工さんでもあったので、家を失った方たちの住まいを建て続けて、最後にご自身の住まいを建てられて…。私のコンサートにも何度も来てくださっていたんですけど、昨年9月にお孫さんの元に旅立たれてしまいました。それから半年経ってこの「命が咲く日まで」という歌が生まれました。この歌ができたときに、やっと思い切り泣けたんです」
──それを聞いて少し安心しました。半﨑さんは人の想いを受け取ることが多いと思いますが、それを受け止め続けると今度はご自身が辛くなることもあるのではないかと思っていたので…。でも、ある意味ご自身のためでもあるような楽曲が生まれることもあると知れて、よかったです。
「確かにそうですね。私の歌を聴いて涙を流してくださる方の中には、“悲しみが極まって泣けなかったけどやっと泣けた”という方もいらっしゃって。私もこの曲ができたときに、それに似た感覚を覚えました」
──そこまで想いが溢れていると、レコーディングでも泣けて泣けて歌えない…なんてこともあったりしますか?
「私の場合は楽曲を作るときにすごく泣いているんです(笑)。「命が咲く日まで」も泣きながらボイスメモを録りました。レコーディングで涙することもないわけではないですけど、泣けて泣けて仕方ないというのはどちらかというと歌が生まれる瞬間なんです」
──半﨑さんは今回のアルバムを、“自分にとって船出となるような作品”と位置付けているとのことですが、どんなところからそう感じられたのでしょうか?
「いくつか理由はあるんですけど、まず、私は2017年にメジャーデビューする前に、17年間どこにも属さずに自分のレーベルで活動していたんです。そして、今回のアルバムから、また改めて自分のレーベルに戻って、新たなスタートを切るという意味もありますし、このアルバムを携えて巡る『半﨑美子コンサートツアー2026〜地球へ〜』も自分史上最大規模でもあるので、自分の中での大きな一歩…まさに新たな船出のタイミングだと思っています」
──改めて収録曲を見ると、「さざ波」や「波の間」、「白帆」など海にまつわるタイトルの楽曲も多く、目の前に広がる大海原に出ていくような印象も受けます。
「「さざ波」や「波の間」もそうですけど、私の元にいろんな想い…それこそお手紙とかがメッセージボトルのように漂着するんです。時を超えて流れ着いたものを受け取って、そこからまた歌が生まれるという循環があって、自然とそういう感じに流れ着いたんです。「白帆」も、例え同じ船に乗っていなくても、離れていても、あなたもきっとこの海のどこかで今日も、雨や風に耐え、日照りをしのぎ、途方もない大海原をゆくだろう。私たちは共に揺れながら日々を生きている…そう思い合える曲を目指しました。それを一つのアルバムにしたくて。意図せず生まれた歌ではあるんですけど、自分の中にそういう想いがあったんだと思います」

──先ほど、“自分史上最大規模のツアー”というお話が出ましたが、『地球へ』と題されたツアーは現在開催中で年末まで続きます。さらに、そのツアーとは別に『人生案内と私』と題されたツアーも並行して行われますが、違いを教えていただけますか?
「『地球へ』は今回のアルバム『うた弁5』をはじめ、私の歌で構成するコンサートです。一方、『人生案内と私』は、読売新聞で110 年以上続く読者からのお悩み相談『人生案内』とコラボした2 部構成のステージとしてお送りするもので、『人生案内』に届いたお悩みとその回答に対して、私が1曲の歌を結んで歌う内容になっています」
──というと、半﨑さんの楽曲以外の歌を歌われることもあるのでしょうか?
「そうです、そうです。お悩みと回答から選ぶものなので、私の曲ではない歌もあります。今回で3回目を迎えるんですけど、来てくださる方もお悩みがご自身の現在地と重なることもあり、もう涙、涙で…。実は、今回のアルバムの最後に“おかわり”として収録している「最後まで」は、昨年の『人生案内と私』で歌ったことがきっかけで、今回のアルバムに収録したいと思った曲なんです」
──どうしてそう思われたのでしょうか?
「40代の方からのお悩みで、“初期の乳がんが見つかり、自分見失いそう”というお悩みでした。そのお悩みと回答に触れ、この歌を選んで歌ったことがきっかけです」
──この曲で歌われているのは、“最後まで”付き合っていく自分の身体や心を大切にしようというメッセージです。
「はい。実はこの曲は、インディーズの頃に書いたものなんです。だから、すごく昔の歌なんですけど…でも、これは私自身にも言えることですけど、どうしても自分のことって後回しになってしまうから。そういう意味では、昔の歌ではあるけど、今改めて自分にも歌うべき曲だとも思いました」

──そんなふうに、時を経たことで感じ方や捉え方が変化してきた歌もあったりしますか?
「それで言うと「ぼくはぞうきん」もそうです。この歌は2018年にリリースしたシングル「明日への序奏」のカップリングに収録したもので、それから時折コンサートで歌うこともありました。その中でみなさんがこの歌を聴いたご自身の想いを打ち明けてくださるタイミングがいくつもあって…。この歌はタオルが雑巾になっていく物語。新しいタオルだった頃は顔を拭いたり、熱が出たら冷えた体でおでこに乗ったり、時には涙を拭いたりできていたけど、雑巾になってからは涙も拭いてあげられない。だけど、周りをピカピカにできるし、真っ黒になるまで使ってほしいという「ぞうきん=ぼく」からのメッセージ。それを描いた歌なんですけど、それをご自身の人生と重ねて聴いてくださっている方が本当にたくさんいらっしゃったんです。歳を重ねてできないことが増えたり、役割が変わったり…。でも、ずっと変わらない愛や気持ちがあって。それは歌っていくうちに、みなさんの想いを受け取るにつれ、感じたことでした」
──半﨑さんの歌は本当に人生のいろんなタイミングに寄り添ってくれるので、コンサート会場が涙、涙になるのも頷けます。現在は新たな船出となるツアーの真っ最中ですが、そんな半﨑さんが今後挑戦してみたいことがあったら教えてください。
「私の長年の夢だった“自分の歌が教科書に載ること”が、2024年に「地球へ」が教科書に掲載されて叶ったという大きな転換点がありました。そこから“特別授業”という形で全国の小学校を巡って、子供たちとこの「地球へ」のメッセージを一緒に考えたり、分かち合ったりする授業をしています。また、デビューしたときから、シングルに必ず“合唱ver.”を収録していて、コンサートでもいろんな合唱団の方たちを招いて歌っていただいていました。そういう積み重ねの中で、私の歌をみんなで合唱していく合唱祭の開催しが一つの夢となり、それをデビュー記念日の4月5日に『HANZAKI合唱祭2026』として開催しました!」
──既に夢を実現させたんですね!
「はい、実現しました! 『HANZAKI合唱祭2026』では、私のさまざまな楽曲を小学生から高校生の子供たちが声を合わせて歌ってくれて、自分の声とはまた違ったみんなの声が重なったときに、より遠くまで届くもの、メッセージがもっと広がっていくことを、強く肌で感じました。“次の夢はニューヨークの国連本部で「地球へ」を歌う”とか、そういう夢を語ったりもしたんです…でも、夢が叶ってまた次の夢が生まれるというよりは、「地球へ」が教科書に掲載されたとき、それに対して“使命を持つ”という意識が自分の中に生まれるんですよね。“共に生きる”というメッセージを、歌という一つの対話の形式で分かち合っていく、響き合っていく。そこに向かって、これからもいろんな学校を巡っていくことは、コンサートやショッピングモールの活動と並行して、大事に続けていきたいです。今回の『地球へ』ツアーでも、一部そうではないところもありますが、地元の合唱団をお招きして「地球へ」を一緒に歌いますので、ぜひ聴きに来てください!」
(おわり)
取材・文/片貝久美子
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION

半﨑美子コンサートツアー2026〜地球へ〜
4月22日(水) 東京エレクトロンホール宮城
4月24日(金) SG GROUP ホールはちのへ(八戸市公会堂)
4月25日(土) 青森県三沢市公会堂
5月14日(木) 北海道コーチャンフォー釧路文化ホール(釧路市民文化会館)
5月16日(土) 北海道岩見沢市民会館
5月17日(日) 北海道北ガス文化ホール(千歳市民文化センター)
5月30日(土) 茨城県大昭ホール龍ケ崎
6月21日(日) 栃木県KOBELCO 真岡いちごホール(真岡市民会館)
6月25日(木) 福岡県久留米シティプラザ ザ・グランドホール
6月26日(金) 鹿児島県宝山ホール(鹿児島県文化センター)
7月14日(火) 福岡県大牟田文化会館
7月15日(水) 広島県ふくやまリーデンローズ
7月17日(金) 広島県広島文化学園HBGホール
7月19日(日) 広島県東広島芸術文化ホールくらら
7月20日(祝・月) 岡山芸術創造劇場 ハレノワ
9月6日(日) 茨城県ひたちなか市文化会館
9月27日(日)茨城県神栖市文化センター
10月3日(土) コスモスホール三間(愛媛県宇和島市)※ピアノライブ
10月4日(日) しこちゅ~ホール(愛媛県四国中央市)※ピアノライブ
10月22日(木) しまんとぴあ(高知県四万十市)※ピアノライブ
10月24日(土) 西予市宇和文化会館(愛媛県西予市)※ピアノライブ
10月25日(日) 西条市総合文化会館(愛媛県西条市)※ピアノライブ
10月31日(土) 滋賀県守山市民ホール大ホール
11月1日(日) 福井県ハーモニーホールふくい大ホール
11月3日(火・祝) 和歌山県民文化会館大ホール
11月4日(水) 奈良県橿原文化会館大ホール
11月25日(水) メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)
12月2日(水) 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
12月3日(木) 福岡市民ホール 大ホール

半﨑美子コンサートツアー2026 ~人生案内と私~vol.3
9月12日(土) 東京 有楽町よみうりホール
9月13日(日) 東京 有楽町よみうりホール
9月21日(月・祝) 青森 藤崎町文化センター
11月8日(日) 北海道 札幌市教育文化会館大ホール
11月23日(月・祝) 大阪 森ノ宮ピロティホール
