──新曲「そのままでいいよ」はとても素敵なバラードですが、最初にこの曲を聴いた時の印象を教えて下さい。

「最初にメロディだけを聴いたときに、ただのラブソングにはしたくないと思いました。それからはスタッフさんたちと、たくさんのやり取りをしながら、深い意味を持ったメッセージソングにしようと考えました。人生って、どうしてもアップダウンがありますよね? でも、その状況には、必ず学ぶべきことがあるということを伝えたくて。それに、本当に傷つくことがあったとしても、そこには必ず愛があるはずだから、信じて生きていこうと言うことを表現したくて、「そのままでいいよ」というタイトルをつけました。“ありのままであなたは完璧なのよ”ということが伝わると嬉しいです」

──幅広い世代の人達に伝わるメッセージですよね。

「そうですね。特定の世代に向けてではなく、世界中の人達に向けて歌いました」

──公式コメントでシェネルさんは、“「ビリーヴ」が愛された当時の世界はもっと優しかったような記憶がある”と伝えています。シェネルさんにとって、この12年の月日にどんな変化を感じていますか?

「あの頃の世界をいま振り返ると、もっと“自信を持って!”と気軽に言えた気がしています。それからパンデミックや戦争、SNSでの誹謗中傷など、いろんなことが起きてしまい、多くの人たちが混沌とした毎日を過ごして…でも、“悪いことがあれば必ずいいこともある”と思うようになったんですよね。それに、私も年齢を重ね、出産を経験し、人間として大きく変化した気がしています」

──変わった今の自分は、好きですか?

「大好きです!」

──そう言えるって、最高ですよね!

「はい。どうしてこうやって胸を張って“好き”と言えるのかと言うと、いろんなことが理解できただけではなく、覚悟ができたからだと思います。常に学ぶことがたくさんあるからこそ、学ぶことを辞めてはいけないと思っています。学ぶことは、成長の過程にあることだからこそ、自分がもっとオープンでいることが大事なんだって。それに、私には子どもの存在によって、常に“人生って大変だわ”と思い知らされています(笑)。それと同時に、やりがいも感じています」

──今日も娘さんが取材にも同行されていますが、とっても可愛いですね!

「ありがとう! 彼女はたくさんの感情を爆発させているけれど(笑)、そうやって素直に育っていることはすごくいい事だと思っています。そこを叱って我慢させることもできるけれど、素直な感情を奪うことだけはしたくなくて。そのうち、私が道しるべを与えていかなくてはいけなくなると思います。でも、まだ小さなうちは自分の感情に素直でいることはあっていいと思いますし、いずれは彼女自身が自分で感情をコントロール出来るようになれば良いと思っています。感情に良し悪しはないですから」

──出産、育児を経験することで、歌いたいメッセージなどに変化はありましたか?

「う~ん…10年前にこの「そのままでいいよ」に出会っていたとしても、今のように完全に理解できたとは思えないです。とはいえ、相変わらず今も楽しい曲は歌っていますし、性格はそんなに変わらないので、基本的にはそこまで変化はないように思います。ただ、「そのままでいいよ」は、生きることをいろんな角度から歌っているので、その芯が届いたらいいと思っています。それに、10年前から比べたら、女性として、人間として、かなり強くなってきていると感じていて…」

──どんな時に感じますか?

「子どもを見ていると感じますね。子どもって、鏡のような存在なんです。だからこそ、そこに映るものは、自分が見たくないものだったりもしますけど、その反面、“それなら、そういう自分も愛してあげないと“と思うようになるんです。そんな私生活すべてが歌にいいように反映されているように思います」

──歌声はどう変化してきたと思いますか?

「そうですね…変化してきたかもしれないです。ただ、以前ほどパワフルではなくなったかもしれないので、そろそろボイストレーニングを再開しないといけないと思っています」

──シェネルさんもボイストレーニングをされるんですね。

「もちろん! ジムに行くような感覚と同じで、行かないと筋肉が落ちたり、安定しなくなってしまいます。また先生に習って、いい歌声を目指したいです」

──楽しみにしていますね。

──シェネルさんは日本での活動もかなり長くなってきましたが、母国語ではない曲をこれだけコンスタントに歌い、メッセージを届けるのは大変なことだと思うのですが…。

「私も、これだけ日本で活動しているなら、もっと日本語を話せてもいいと思うんですよ(笑)」

──でも、歌はすごくキレイな発音ですよね。

「話すのは苦手なんですが、歌うと日本語が安定するんです。それも自分で不思議だと思っています。子どもの頃、父親がカラオケに行くと、必ず谷村新司さんの「昴」を日本語で歌っていました。日本との繋がりって、それくらいだったんですよ。だから、大人になってから日本に来て、日本語で歌うようになるとは思ってもいませんでした。ただ、今は、こうして日本語で歌うことが私の使命なんだと思って歌っています」

──お父様はなぜ「昴」を歌っていたのでしょうか?

「それが分からないんです(笑)。ただ、好きな曲だったんでしょうね。この曲に感情移入をしている姿を見ていると、歌詞の意味が分からなくても気持ちが流れ込んできました。そこに感動したんだと思います。今、私が日本で活動しているのを見て、父親は“俺の夢が叶った!”と喜んでいます(笑)」

──いつかシェネルさんの「昴」のカバーも聴きたいです!

「ナイス・アイディア! 絶対に歌うべきですよね。実は谷村新司さんとは、生前にお会いしたことがあって。いつかルーツミュージックとして歌ってみたいです」

──改めて、「そのままでいいよ」に込めた想いを教えて下さい。

「なによりも、このタイトルが気に入っています。すべてがこの言葉に込められているんですが、“ありのままで完璧だよ”ということを伝えたいです」

──シェネルさんがご自身に“そのままでいいよ”と言ってあげるとすると、何ですか?

「なんでしょう!(笑)…“自分の不完全さも、すべてが完璧である部分と同じくらい美しいということなんだよ“と言いたいですね。人間って、どうしてもいい人であろう、上手くやろうということにフォーカスを絞りがちですよね。親も、子どもをそう育てると思うんです。でも、人間ってミスを犯すし、失敗もします。でも、それにも理由があると思っていて。生きていく中で、上手く行くことだけではなく、イマイチなこともたくさんあるけど、ダメなところも含めて人間だってこと、ふざけた部分、おかしな部分も含めて完璧になるというメッセージをこの曲に乗せて歌っていきたいと思います」

──本当に素敵なこの曲を、生で聴きたいと思う人がたくさんいると思うのですが…。

「もちろん、考えています。もっとライブで歌いたいですし、ツアーもやりたいと考えています。あと、子供向けの本も今、作っているんです。歌も、本も、自分の感情を表現するものとして、しっかりと取り組んでいきたいです。2026年も楽しみにしていてください!」

(おわり)

取材・文/吉田可奈
写真/中村功

RELEASE INFORMATION

シェネル「そのままでいいよ」

2025年1210日(水)配信

シェネル「そのままでいいよ」

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