──昨年11月にリリースした「Love U」がTikTokでトレンドになっています。

「予想以上に皆さんがTikTokで踊ってくださっていて。“踊ってくれたらいいな”って気持ちで作ったフレーズだったんですけど、あんなに広まるとは自分でも嬉しい驚きでした」

──<あの子のストーリーは彼氏とLove Love Love>でみんな踊っています。

「もともとは、ちょっとアップテンポでかわいい、キャッチーな曲を作りたいなって思っていたんです。今バズっている部分は、歌詞を書いていたときに自分の中でも“ポイントだな”と思って。聴くと、リズムに乗っているキャッチーなフレーズだなって思うかもしれないんですけど、それだけじゃなくて。誰かのストーリーを見て、“なんか幸せそうだな”って、自分がちょっと惨めな気持ちになる場面って…特に今のSNS時代には多いよねって思うんです。リズムの心地よさだけじゃなくて、11つのフレーズに意味を持たせることを大切に書いた曲です」

──片思いですよね。

「片思いですねね。片思いでやきもきする気持ちをポップな感じで、私らしい言葉で書きたいって思っていました」

──告白直前でもありますよね。

「落ちサビで<キミの気持ちどうなの教えてよ>って、電話して今から会いに行くようなことを言っているんです。だから、私の想像の中では、告白をしに行くのかな?って想定です。みんなにも、“気持ちを伝えなきゃ何も始まらないし、頑張ってね!”っていうエールを込めて書きました」

──あの振り付けは?

「ローカルカンピオーネさんが踊ってくださったのがきっかけだったので、本当に感謝しています。私も、ダンスでコラボさせてもらいました。ローカルハウスっていう、ダンス動画でよく見るおうちに行かせてもらったんですけど、ずっと画面で見ていた背景が目の前にあったんで、“ほんとに存在してたんだ!”ってドキドキしました。でも、すごくフレンドリーに接してくださるお2人だったので、踊りを教えてもらって、楽しかったです」

──リリックビデオでも既に似たようなフリをしてましたよね?

「もともとは私がTikTokにあげた動画で、まだフリも何もない時に自然とやっていた動きだったんです。それを参考にローカルカンピオーネさんがフリを作ってくださったんです。あのリリックビデオは、撮影も編集も自分でやったんです。簡易的だけど、女の子らしさを出したいし、TikTokでバズるような動画にしたくって、縦型で作りました。ジャケット写真も自分で作ったので、そのジャケット写真で使ったリップをテーブルに立ててみたりしました」

──全部自分でやったんですね!?

「そうなんです!カメラを立てて、自分で撮影して…女の子が見て、ちょっとウキウキするようなリリックビデオになったらいいなと思って作りました。文字も全部手書きで私が書いていて、自分で映像を倍速にしてみたりもして。でも、この撮影、ぱっと見ると、簡易的に作られているのかな?と思えるんですけど、結構、大変でした。飴ちゃん持っているんですけど、撮影終わった後に踏んづけちゃって、ベタベタになっちゃったりとかして…」

──(笑)。

──200万回再生を突破している「泣きたい夜」や「bye bye」はイラストをメインにしたリリックビデオでしたが、それらの楽曲を収録した1stアルバム『#Twenty』以降は、ジャケットや映像を含めて、リスナーとの距離が少し変わってきていますよね。

「そうですね。「泣きたい夜」をリリースした時期はコロナ禍がまだ残っていて、ライブも少なくて…だから、サブスクメインで考えて制作していたんですけど、ライブもようやく出来るようになって、やっぱりライブでみんなが参加できる曲があると絶対に盛り上がるし、みんなとの思い出もどんどん増えていくんじゃないかな?って思って。だから、「Love U」は、SNSバスはもちろん意識しつつ、“ライブでみんなで一緒に盛り上がりたい!”って気持ちで作った曲でもあるんです」

──<むりむりむり>っていう掛け声が入っていたりとか。

「サビ終わりに<Babe I love U>って入れたのも、みんなと一緒に歌えたらなと思って書きました。だから、最近のライブ推し=絶対にセトリに組み込む曲になっています。ライブではみんなが歌ってくれるし、あの振り付けの部分も踊ってくれたりします。ライブで楽しめる曲になっているので、これからもライブはいっぱいしたいし、そっちにも力を入れていきたいな思います」

──ちなみに、ツアー明けてからのリリースに「Love U」を選んだのはどうしてだったんですか?

「『AYANE#TwentyLIVE TOUR 2023』が終わった時に、次に向けて、最初に“AYANEらしさはなんだろう?”って考えたんです。やっぱりAYANEは恋愛をポップな歌詞にして歌いたいって思ったんです。例えば、それがネガティブな気持ちだったとしても、ポップな言葉に乗せて歌うのが自分らしさなんだと思って、「Love U」を選びました」

──やっぱりラブソングでしたか?

「もちろん、いろんなジャンルを歌っていきたいんですけど、やっぱりみんな、恋愛に日常の浮き沈みが左右されるのかな?と思っていて。恋愛だけじゃなくて、“誰かに愛してほしい”って気持ちは誰にでもあると思うんです。“愛”についてはずっと書いていきたいし、これからも恋愛を軸に曲を書いていきたいと思っています」

──そして、昨年12月に“特別な日に大切な人と一緒に過ごすときに流して欲しいなと思って作った曲”だという「Xmas gift」をリリースし、今年1月には「ごめんね」がリリースされました。

「実は昨年から存在してた曲なんですけど、どのタイミングで出すかをずっと迷っていて。歌詞も読んでもらったらわかると思うんですけど、結構、衝撃的というか…」

──そうですね。<うざ>って独り言のように言い放っていますから。

「あはははは。インパクトっていう意味では、2024年の一発目としていいんじゃないかな?と思って。もともとは、“ちょっと病んでいる曲を作りたい”っていうところから始まったんです」

──<ぐちゃぐちゃのこの部屋で>という歌い出しになっています。

「親に“心が乱れているときは、部屋も汚くなるよ”って言われていたんです。実家の部屋を散らかしていたら、“あんた、心が乱れるよ!”ってよく言われて。上京して、一人暮らしを始めて、“確かにな”って実感したんです。自分がモヤモヤしていないときはピシッと綺麗にできるんですけど、気持ちがモヤモヤしたら、やっぱり部屋が散らかってくるんです。この子も彼氏がおうちに来ていた頃は、まだ綺麗にしていたのかもしれない。それがあまり来なくなって、自分の気持ちもぐちゃぐちゃになって、それが部屋とリンクしてるのかな?っていう気持ちで書きました」

──どんな心情といったらいいでしょうか?

AYANE史上、一番病んでいるというか、一番沈んでる曲になっています。サビに<愛しても愛しても/何で伝わらないのかな>っていう歌詞があるんですけど、好きすぎて、相手にうまく伝えられなかったたりとか、気持ちとは反した行動をしたりしてしまったり、攻撃的な言葉を言ってしまったりする。浮き沈みが激しい女の子なら1回は経験したことがあるんじゃないかな?と思って、そういう心情を表現しました」

──まだ付き合っている2人ではありますよね。重ためな愛ではありますけど。

「そうですね。あえて、“私、面倒くさいよね”って言っちゃってます。相手の男の子からしたら、本当に面倒くさい思うかもしれないけど、実際、女の子はそういうことを思っているんです。綺麗にまとめようとせずに、そのまま書こうと思いました」

──この子はずっとそばにいてほしいタイプの子ですか?

「ずっとそばにいてほしいし、向こうから愛が感じれなかったら不安にもなるし…SNSを見ていても、周りの友達の話を聞いていても、実際にあるあるの話なんですよね。そういう感情をリアルに歌詞にしたかったんです。これだけ<うざ>とか言っちゃってる曲はあまりないのかな?と思ったときに、そういう曲を作りたくなりました」

──相手じゃなく、自分自身に言ってるんですよね。

「私がこんなに愛しているのに、どうしてあなたはわかってくれないの?って相手を攻撃する分、どうして私、こんな面倒くさいことを言っちゃうんだろう…“自分やばっ。うざっ”っていう気持ちになるっていう。そこを綺麗な言葉でまとめるよりは、<うざ>の2文字が多くを語ってくれるような気がして、そのまま<うざ>にしました」

──タイトルになってる「ごめんね」も繰り返してますよね。

「<聞きたいのはsorryじゃない/なんにも分かってないね>は相手を責めているんです。でも、そういう女の子って、相手を責めて責めて、そんな自分に嫌気がさす…“どうして、こんなことしてるんだろ?”って。本当に<ごめんね>って心情です。この流れもリアルに、すっと入ってくる要因の一つなのかなと思っていました」

──ちなみアルバム『#Twenty』に収録されていた「まだ、、」の<ごめんね>とはどんな違いがありますか?

「「まだ、、」は付き合っていく中で、感謝する部分もあるし、“あのとき喧嘩したよね、ごめんね”みたいな比較的、綺麗な別れ方をしています。結果、別れちゃったけど、“ごめんね、バイバイ”みたいな綺麗な<ごめんね>。でも「ごめんね」は、自分もやけくそになっているし、自分の何とも収拾つけれない気持ちもあります。たった4文字の言葉ですけど、ぐちゃぐちゃな感情が全部詰まった<ごめんね>ってイメージです」

──<会いたい>とも言っていますけど、「Love U」の<会いたい>とは全然違うニュアンスですよね。

「そうですね。「Love U」は、ただ好きだから、会いたいし、顔も見たいし、喋りたいしっていう純粋な片思いの気持ちですけど、「ごめんね」の<会いたい>は、会っても今のこの現状が解消されるわけではないんです。でも、そんな中でも、君を求めてしまう…会ったら、あなたのことをちょっと憎く思う部分だってあるかもしれないけど、満たせない気持ちもあるし、会いたいっていう…」

──この子はどうしたかったんでしょう?

「一緒にいるだけでは、相手から愛を感じなかったら不安になると思うんです。やっぱり出会った頃に戻りたい、あの頃がずっと続けばよかったと思っちゃう。ただ、変わったのは相手だけじゃなくて。ずっと一緒にいると慣れも出てくるだろうし、この<ごめんね>には自分が強く言い過ぎてしまった部分とか、後悔している部分もあります。だから、そういうのが積み重なって、相手の気持ちが離れていっちゃったんだと思います。2番では、<変わったのはそう私もかもね>って言っているので、お互いが少しずつ変わっていっちゃってたんですよね」

──この気持ちに解決はないですよね。

「歌詞でも<もうあの頃に戻れないの tell me why>って聞いているんですけど、すぐに<けど I know どうせ上手くいかないこと>って言っています。この子も、また会ったところでうまくいかないこともわかっているし、結局は別れるだろうってこともきっとわかってると思うんです。別れなきゃ幸せになれないんだけど、まだ離れたくないし、あなたを責めてしまうし、自分も責めてしまう。客観的に見たら、“もう別れた方がいいよ、離れた方がいいよ”と思うけど、そこの気持ちに寄り添える曲にしたいと思って書きました」

──そこの気持ちというのは?

「やっぱり、解決策をパッと言われるよりは、私もこういう気持ちになったことあったっていう共感っていう部分だけで救える気持ちもあるのかな?って思っていて。だから、“わかるわかる。私だけじゃないんだ”っていうだけでいいんだと思うんです。今はしんどいけど、こういう気持ちをみんな知っているのなら、ちょっと頑張って乗り越えてみようかな?って思うきっかけになれば嬉しいです」

──そして、2月14日のバレンタインデーに「lonely girl」?

「バレンタインにリリースがかぶったのは偶然なんです(笑)。私、この2年くらい、〆切の1週間前くらいのギリギリにメロを作って、その時に書きたいことを書くっていうスタンスでやっていて。その時に表現したいものを書くタイプで、最短を探ったら、バレンタインーだったっていうだけなんです」

──サウンド的には歌声にオートチューンがかかったトラップビートのR&Bポップになってまいすね。

「ロンリーガールといっても、すごく沈んでるわけでもなくて…ちょっと世の中に対して、“別に誰も私のことに興味ないし”って呆れている部分もあるんですけど、でもやっぱり“私を見てほしい”っていう切なさもあったりする。切なくてポップな感情は歌詞にもサウンドにも出ているのかな?って思います」

──歌詞はどんなテーマで書きましたか?

「日常を生きていて、表では笑って、仕事をこなして、ちょっといけてるふうに見えているかもしれないけど、やっぱり裏では満たされない部分があったり、“自分って1人なのかな?”って孤独に思う瞬間って、きっと誰もがあると思うんです。そういうときの気持ちをそのまま書いた曲です。そういうときに聴いて、味方ソングになるようにって書きました」

──孤独は自分だけじゃないんだと思うことで、救われる部分がありますか?

「そうですね。救われる部分もあると信じて書きました。全部の曲に通じることなんですけど、私は共感してもらうのが一番救われるんです。何かの解決方法を言われるよりも、病んだ気持ちにちょっとでも手を差し伸べられたらなと思って曲を書いています」

──「Love U」、「ごめんね」、「lonely girl」と、ここ3曲はギャルっぽい雰囲気もありますね!

「そうですね。可愛くてポップな曲でもギャル要素は絶対に外したくなくって。「Love U」の“you”を“U”にしたのもそうですし、<え、待ってやば、マジ、むり!!>とかもちょっとギャルっぽいじゃないですか。私は自分でマインドギャルだと思っていて、今の子の中でマインドギャルな子はいっぱいいると思うんです。そういう、いつも聞いているような身近な言葉で歌詞を書いた方がすっと入ってくると思うし、そういう子の方が表では笑ってるけど、1人になるとちょっと寂しい気持ちになったりしていると思うんです。そんなみんなの日常にすっと溶け込むような音楽を作れたらなと思って、ギャル要素は外さずにこれからも書いていきたいです」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ

RELEASE INFORMATION

AYANE「Love U」

2023年1115日(水)配信

AYANE「Love U」

AYANE「ごめんね」

2024年117日(水)配信

AYANE「ごめんね」

AYANE「lonely girl」

2024年214日(水)配信

AYANE「lonely girl」

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