──2枚目のアルバム『旅人算』を挟み、シングルとしては1年ぶりとなる通算12枚目のシングル「後でわかること」を最初に受け取ったときの感想から聞かせてください。
西條 和「タイトルが綺麗だなと思いました。私達の曲って「ムズイ」とか、インパクトあるタイトルが多かったんですけど、文字面で見たときにすごく綺麗だなと思ったし、お気に入りのタイトルです。曲としては、今のナナニジの雰囲気をよく表していて…私は“シャバシャバしてる”って言ってるんですけど、シャバシャバしていて、涼しげでさっぱりしている曲かなと思います」
──“シャバシャバ”感はメンバーには伝わっています?
相川 奈央「<恋人たちの水槽>とか、<心の水族館>という歌詞があるので、水なんじゃないかな?って」
西條「うんうん。水っぽい歌詞がよく入っているし、ダンスも波打っていたり、全体的にウヨウヨしているんです。ウヨウヨしていて、シャバシャバしてる…ふふふ、ちょっと伝わりづらいかな?」
四条 月「でも、確かにウヨウヨしています」
西條「ちゃんとウヨウヨしてるんです。あと、久しぶりに表題曲でセリフがないのも特徴的で。今まではセリフでナナニジっぽさを出せていたので、セリフがない分、ナナニジの曲だって感じてもらうためにどうしたらいいんだろうな? って考えていて。なので、レコーディングでは、よりメンバーの声を聞きながら歌うことを心がけていました」
──ダンスではハートも作っていますよね。セリフなしで、可愛いフリもあるけど、“今のナナニジの雰囲気をよく表している”曲になっているんですね。
西條「以前だったら、サビ頭からハートなんて出てこなかったなと思って。フリ入れの一発目は大体サビからやっていくんですけど、“まず最初にハートで”って言われて、“…おぉ”って思いました(笑)。昔は「シャンプーの匂いがした」を踊るのすら抵抗あったぐらいなので、サビの一発目からハートにちょっとひるみつつも、グループ自体の雰囲気がなだらかになっている感じがするので、ハートも頑張れました」
相川「しかも、最後のサビの前は、それぞれが自分で好きなハートを作るっていうフリがあるんです」
西條「そうなんですよ。そういうのはちょっとまだ苦手で…」
四条「奈央ちゃんは反対側にいるから、ちゃんと見たことなかったな」
相川「私、元気にやってるよ。指ハートで、足を開いて、“うえーい”ってやってる(笑)」
四条「私は正統派で、1番2番と全く同じにやっています。和さんはどうしてるの?」
西條「私は限りなくハートに見えないように、グーを合わせてるようにしています」
相川「どこかのライブで逆ハートみたいに時代を感じるやつをやって欲しいな〜。(手と手を合わせて)“あれ? 昭和生まれかな?”って思うようなハートを1回だけでもいいのでお願いします!」
──(笑)四条さんと相川さんも今のグループの雰囲気に合っている曲だと感じていますか?
四条「前のアルバム曲「君とどれくらい会わずにいられるか?」も可愛らしいダンスが多かったので、それに続いているなっていう印象があります」
相川「私もダンスは可愛らしいと思ったんですけど、衣装はちょっとシックな感じで、最初の音には切なさもあって。可愛さに全振りっていう感じではなく、それこそ、シャバシャバしているような冷たい感じをちょっとだけ纏っています。サビは笑顔で可愛く踊る感じなんですけど、AメロBメロでちょっと流れるように踊る感じはあまり見たことがない、新しいナナニジの側面かなって思いました」
四条「イントロはカッコよく踊っていて、サビで可愛く踊って。2番の奈央ちゃんたちが歌っている<ほんの些細な温度差と思って/引き留めなかった僕のせいさ>のところはみんなで一つの固まりを作って、ゆっくり大きな生物のように動いてるんです。いろんな表情が見えるっていうところでは、1人1人の個性がある私達に合っているのかもしれないです」
──巻き戻しみたいな音のところはどう感じました?
相川「“巻き戻すんだ〜”って思いました(笑)。それも今までになかったし、面白いなって。しかも、1サビ前だけだっていうのも面白いですよね。その部分を振付師さんがしっかりと取り入れてくださって、サビ前に巻き戻しのような振りが入っていて、曲全体を通しても、一番最初にやったフリを最後にもう1回やるみたいな感じで、結構キーポイントになってるんじゃないかな?って思っています」
──歌詞は失恋ソングでいいんですよね?
四条「失恋ソングなのかな?」
相川「恋人たちを横目に1人で歩いてるもんね…つらっ!! しみじみと出ちゃった」
四条「(笑)私はこの曲を聴いていて、2番のサビの<僕が永遠に愛し続けられる人よ>っていうところが一番印象的だったんです。“僕”と“君”を思い描きながら聴いていたんですけど、<僕が永遠に愛し続けられる人よ>って言われた時に、また別の女の人の顔が浮かんできて、一気にリアルさを感じて、“ああ…”って。すごく現実的に感じたのが、“やっぱりナナニジだな〜”と思いました」
──僕ともう1人の女性はどういう関係をイメージしましたか?
四条「きっと“僕”は、好きだった女の子を思いながら水族館を歩いていたと思うんです。年月を経ているうちに、他の女の子にちょっとよそ見しちゃったことがあったんじゃないのかな?って思って。他の女の子も気になったけど、やっぱり永遠に一番好きなのは“君”なんじゃないかってことに、後でわかったんだろうなって思いました」
──それが「後でわかること」なんだ。
相川「一般的には恋愛ソングに聴こえると思うんですけど、私は“君”を“夢”にしても同じことが考えられるのかな?って思っています。難しい夢は諦めてしまいがちだと思うんですけど、それを諦めてしまったからこそ、もう戻れないって感じているのかなって。恋人を夢と想定したときに、自分は好きだったけど、それが本当にやりたいことだと気づけずに大人になってしまったとか…。そういう時って、1人でため息をつきながら出歩きたくなると思って。私はこの歌詞って、そういう見方もできると思いました」
──西條さんはどう捉えましたか?
西條「私は愛とか恋人とかって言われるとちょっと共感しにくいんですけど、この歌詞を見たときに、小学校5年生のときに卒業式で卒業する6年生が歌っていた合唱曲を思い出しました。“大切なものは、普段は当たり前と決めつけていて、気にも留めていない”みたいな歌詞の合唱曲だったんです」
相川「「大切なもの」じゃなくて? <♪大切なも〜の〜に気づかない〜僕がいた>じゃないの?」
西條「ごめん、違う(笑)。タイトルを忘れちゃったな…。でも、その時に、“後で後悔したくないからちゃんと大事にしよう”って思っていたんです」
相川「ませてるな〜」
──小学5年生で当たり前の大切さに気づくってすごいですよね。
西條「「後でわかること」にも<若さ>っていう単語が出てくるんですけど、その合唱曲にもあったんです。5年生ながら、“今からだったら間に合うかな?”と思っていました。今、考えれば全然間に合うんですけど(笑)、10歳11歳ぐらいの頃に、“今からじゃ遅いかもしれないけど、今から目の前の当たり前を大切にしよう”と思っていたんです。でも、やっぱり過ぎ去ってみないと実感しにくいっていうことが小学生の頃から今まで、続いていたんです。でも、この曲の歌詞に<後でわかるんだ>、<思い出だけは変わらない>ってあって。過ぎ去った後に、あの時のあれが幸せだったんだなとか、あれが楽しかったんだなって後で感じたりする…もっと大事にしておけばよかったと思うかもしれないけど、それも含めて一つの思い出なので、“後でわかる”っていうのは悪いことじゃないなって。そんな想いと、小学校5年生の頃を思い出しながら歌いました」
──西條さんの話を聞きながら、突然、相川さんが涙を流していますが…。
相川「家族のことを思い出してしまって…。最近、遠征があったときに、1人でホテルに4日間ぐらいいたんです…ほんとに寂しくて。家にいたときは、そんなことを感じたことがなかったので、“家族の存在って大切だったんだな”って思ったら…涙が…もう、この話はやめます」
西條「ふふ、じゃあ、やめとくね」
相川「ああ…アホすぎるー(涙)」
──アホじゃないですよ。失恋した男が1人で歩いていて、幸せそうなカップルを見ながら後悔している曲だと思っていた方が浅いというか…改めて、いろんな捉え方ができる曲なんだってわかりました。
相川「「後でわかること」っていうタイトルが染みてきますよね。この曲、友達の結婚式で流れたら泣くかもしれない…そんな曲じゃないけど」
──(笑)dance videoは水族館で撮影していますね。
相川「(明るく元気に)はい! 私、水族館が大好きなので、ただただ水族館に行けて楽しかったです! ははは」
四条「私も水辺が好きで、海や水族館が大好きなんです。普段は割とおっとりしていて、マイペースな方だと思うんですけど、サメだけの水槽があって…」
相川「あった! でっかいサメ!!」
四条「本当に大きいサメだけが泳いでいて。アクアワールド茨城県大洗水族館だったんですけど、サメの水槽の前で、はしゃいじゃいました。その姿を、気づかないうちに麻丘真央ちゃんに後ろから動画で撮られて…恥ずかしかったですけど、本当に美しい場所で、楽しかったです」
相川「楽しかったね!」
西條「私はそんなに水族館に興味はないんですけど、クラゲの水槽の前でシルエットを撮る時間があったんです。クラゲは水族館の中でも割と好きな方なので、クラゲの写真を撮っていたんですけど、Dメロでみんながポーズをするシーンがあって、私が撮影していないときに、モニターを見ていたら、(月城)咲舞ちゃんのシルエットが綺麗な蝶々になってて。私のSNSの公式マークが蝶々なんですけど、咲舞ちゃんに内緒で写真に収めておきました。私はまだdance videoの完成版をちゃんと見ていないんだけど、蝶々は映ってた?」
四条「映ってなかったよ」
西條「じゃあ、あれは私が個別に写真を出します。咲舞ちゃん、目鼻立ちがくっきりしているので顔の輪郭も綺麗に出ていて、めちゃくちゃ美しかったです」
相川「蝶々じゃなくて、カニをやっていたのかもよ?」
西條「もう、やめてー(笑)」
──(笑)少し駆け足になりますけど、今回のカップリングはユニット曲ではなく、全てが全員曲となっています。それぞれが好きな曲1曲ずつあげてもらってもいいですか?
四条「全員一致で好きなのは「春雷の頃」です。ナナニジで「雷鳴のDelay」っていう曲があるので、「春雷の頃」というタイトルを見た時に、「雷鳴のDelay」のようにカッコいい系かな? と思って聴いたら、ちょっと優雅な感じがして。春を感じて素敵だなって思ったのと、「後でわかること」にセリフがなかったので、この曲がセリフで終わるところが私は好きです」
相川「私は「無関心ヒーロー」なんですけど、天城(サリー)さんと歌割りが一緒だったんです。とにかくカッコよくしたい2人だったので、“<フェイクニュース>をめちゃめちゃカッコよく言おうね!”って話し合って。セリフで、私が「ねえ、こんな世界のままでいいの」って言った後、サリーさんが「言葉ではうまく言えないけど」って言ってくださるんですけど、そこの世界観をゴリゴリに2人で練りました。私がお姫様で、窓際で外を見ながら「ねえ、」って言うようにやるので、サリーさんは下から剣士みたいにやるわって話していて」
──ここ、ロミオとジュリエットだったんですか?
相川「(笑)カッコいいのが好きなので、世界観をゴリゴリに詰め込んでみました! だから、すごく楽しいレコーディングでした。あと、和さんの「ヒーローは僕らのことだ」っていうセリフには「覚醒」を思わせる感じのカッコ良さがあるんです。フリはまだついていないんですけど、望月りのちゃんとか、麻丘さんとか、カッコいい曲が似合う人が多いので、すごく見応えのあるパフォーマンスになるんじゃないかな?って、今からすごい楽しみです。ナナニジのカッコいい要素がいっぱい詰まっているので、早くみんなと一緒にパフォーマンスしたい曲です」
──西條さんはそのセリフをどういう思いでレコーディングしましたか?
西條「最初、そのセリフを見た時に、「ヒーローは僕らのことだ」って言ってるけど、“いや、私じゃないな”と思ったんです。でも、歌詞を読み進めていくと、結構、リアルで物々しくて…」
相川「SNSに対するアンチテーゼっぽいですよね」
西條「だから、<ヒーロー>っていう単語は私にはちょっと眩しすぎるんですけど、この曲の中の<ヒーロー>だったらちょっと言いやすいかなと思いました。あまり、いい意味でのヒーローとしては言わなかったんです。言ってるときの感情としては「何もしてあげられない」の<傲慢に生きてきて>に近いかも知れません。ちょっと申し訳なさというか、懺悔を入れながら言いました」
──自分を責めてる感じもあるんですよね。そんな西條さんの推し曲は?
西條「「もう少し生きてみないか?」です。これこそ、私の中でナナニジらしさを感じる曲で、こういう秋元さんの歌詞がすごく好きなんです。本当に生々しいんですよね。「命の続き」と言う曲もあるんですけど、私達の曲のこういう歌詞は、意外とズカズカ、割とそのまんま言葉にしちゃってて。私はそういうふうにオブラートに包んでいないところが好きです。しかも、この曲では、“死んでいい”や“生きて”じゃなくて、<生きてみないか?>ってちょっと猶予を与えてくれてる感じが、個人的にはすごく安心できます。歌詞が一番好きだなと思って聴いていました」
四条「私も「もう少し生きてみないか?」に“?”があるのが好きです。私の中でのナナニジの曲のイメージは、強い意思を持っているけど、誰かに話しかけている感じではなかったんです。社会に対して、もやもやした気持ちがあるんだけど、それを主張する感じではなかったので、誰かに向かって“みないか?”って語りかけている感じが、いつもとちょっと違うかも?って印象的でした」
──この曲もライブで聞くのが楽しみですね。萌さんはいつもの萌さんのままですし。
相川「可愛いですよね、「だけどもしかして 何か奇跡が待ってるかも…」っていうセリフ。本当に奇跡が待ってそうでした」
四条「私、この曲は萌さんと<細い腕は>っていう部分を一緒に歌っているんですけど、萌さんの腕が本当に細くて。一緒に2人でレコーディングブースに入って歌ったんですけど、萌さんの綺麗な腕を見ながら歌っていました」
西條「ふふふ。カップリング曲は個性が強い曲ばかりです。今まではユニット曲で冒険することが多かったんですけど、今回は全員曲だけど遊んでいて、割と伸び伸びやっています」
相川「いつも言ってるんですけど、いつも以上に“かっこいい”と“元気”と“せつなさ”と“かわいい”が混じっている、本当にいろいろなナナニジの表情が見えるシングルだなって思っています。今までナナニジを追っかけてきてくださった方でも、“こんな曲は聴いたことなかった”とか、“こんな歌も歌うんだ”っていう驚きや発見のあるシングルになったと思っています」
──12枚目のシングルが完成して、夏にはライブが決まっています。魔法学園をテーマしたコンセプトライブですね?
相川「私達は東京ドームという夢を掲げているんですけど、自分たちが本当に思っていることを役に入れ込むことによってより伝えやすくなると思っているので、今回はどんな脚本になるのかが楽しみです。ストーリー仕立てで、Act1とAct2で異なる演目とストーリーになるって思うと、今からわくわくしていますし、セトリにはこのシングルの曲が全部はいるのかな? 私は踊るのが大好きなんで、早くフリ入れをしたいです。どんな魔法学園になるんだろう…みんな、箒を持つのかな?」
四条「私はライブが大好きなので、たくさんの方に足を運んでほしいです。今年は春のツアーがなかったので、“るぅちゃんのライブが好きだよ!”って言ってくださるファンの方々は特に楽しみに待ってくださっていると思うんです。だから、思い切りかましていきたいな! という気持ちと、四条月はあまり“魔法学園♡”っていうキャラじゃないんですけど、一之瀬蛍ちゃんは“ピカピカ”って言うし、お似合いだなと思うので、蛍ちゃんに手伝ってもらいながら、うまく作り上げていきたいです」
西條「私は前回のアニバーサリーライブ(『22/7 LIVE at EX THEATER ROPPONGI ~ANNIVERSARY LIVE 2023~』)でストーリーチックなライブをやったときに、ほぼ寝ているキャラだったんですけど、それでも結構、段取りを覚えるのが大変だったんです。今回、どういうキャラになるかはまだわかっていないんですけど、セリフがあったらどうしようかな?って思って…」
相川「全部、寝言で喋るキャラかも知れない(笑)」
西條「ふふふ、演技パートが心配ではあるんですけど、この方(相川)も舞台をやったりとか、後輩メンバーも演技に挑戦し始めているので、心強いメンバーが増えています。前回はサリーちゃん、(河瀬)詩ちゃんくらい?」
相川「あの時は、詩さんはお休みされていたので、サリーさんだけでした」
西條「そっか。頼れるメンバーが増えたので、演技できる人にバンバン演技してもらって、私はちょっと魔法で消していただこうかなと思っています(笑)。影を潜めて頑張ります!」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑 慧嗣
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION
22/7 Summer Live 2024 『Magic School Days -Act1-/-Act2-』
<7月公演>
22/7 Summer Live 2024 『Magic School Days -Act1-』
会場:ヒューリックホール東京
日程:
7月22日(月) 開場18:15/開演19:00
7月23日(火) 開場18:15/開演19:00
7月24日(水) 開場17:45/開演18:30
<8月公演>
22/7 Summer Live 2024 『Magic School Days -Act2-』
会場:ヒューリックホール東京
日程:
8月29日(木) 開場18:15/開演19:00
8月30日(金) 開場18:15/開演19:00
8月31日(土) 開場16:15/開演17:00