「サイドマンのスター」というのは少し矛盾した言い方ですが、ジャッキー・マクリーンはまさにサイドマンのスターなのです。似た言い方に、「サイドマン聴きシリーズ」にも登場した「名盤の陰にトミフラあり」の名脇役、トミー・フラナガンがいますが、この二人の立ち位置はちょっと違う。

ピアノとアルトの違いもありますが、トミー・フラナガンは主役のホーン奏者をひき立て、結果として「名盤作り」に貢献しているわけですが、ジャッキー・マクリーンは彼ならではの個性的アルト・サウンドを聴くために、マクリーン・サイド盤をチェックするファンが多いのです。

結果として、必ずしも名盤ではなくとも、マクリーンの存在に的を絞れば楽しめるアルバムや、意地の悪い言い方ですが、主役やアルバム・コンセプトはいまいちでも、マクリーン・フリークなら楽しめるマニアック盤も今回は登場です。

トップバッターはドナルド・バード。彼もまたハードバップのスターで、マクリーン、バードの二人に、低音域で重石の役目を果たすバリトン・サックスのペッパー・アダムスが加わった豪華3管アルバム『オフ・トゥー・ザ・レイシス』(Blue Note)は、どなたにもオススメの好盤です。冒頭の名曲《恋人よ我に帰れ》が気持ちよい。

ジャッキー・マクリーンといえばハードバップのイメージが強いのですが、彼はオーネット・コールマンと共演したことでもわかるように、フリー・ジャズへの関心も強かった。2番手に登場するトロンボーン奏者、グレシャン・モンカー3世は、フリー・ジャズというより“60年代新主流派”に括られるミュージシャンですが、こうしたちょっと“新しめのサウンド”でも、マクリーンの存在感は確かです。共演のボビー・ハッチャーソンのヴァイブがいかにも新主流派的。

ドラム奏者、アート・テイラーの隠れ好盤『テイラーズ・ウェイラー』(Prestige)の、そのまた裏側、アナログ時代B面に収録された、ドナルド・バード、チャーリー・ラウズらとの3管セッションは、何の説明も要らないハードバップ好演。《クバーノ・チャント》のエキゾチックな曲想が心地よい。

次は極め付きマル・ウォルドロンの『レフト・アローン』(Bethlehem)です。伝説の歌い手、ビリー・ホリディ晩年の伴奏者を務めたマルが、ホリディに捧げた名曲《レフト・アローン》をマクリーンがホリディに成り代わり切々と歌い上げます。

ジャズではほんとうに珍しいチューバを吹く、レイ・ドレイパーの『チューバ・サウンド』(Prestige)は、正直名盤とは言いかねるのですが(リーダーのソロが少々タイクツ)、われらがマクリーンに的絞れば充分楽しめる。まさに「サイドマンのスター」の本領発揮的アルバムです。プレスティッジ時代のマクリーンは、ちょっと黄昏た気分が聴きどころでもあります。

一方、オルガン奏者ジミー・スミスと組んだ『オープン・ハスス』(Blue Note)でのマクリーンは、アーシーでソウルフルな側面を見せ、芸風の幅の広さを実感させてくれます。どんな楽器と組み合わせてもマクリーン節は健在なのです。そして最後、ハンク・モブレイの『ハイ・ヴォルテージ』(Blue Note)では、トランペットのブルー・ミッチェルと共にガッチリとモブレイを支えている。このアルバムは作曲者としてのモブレイの持ち味も聴きどころです。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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