1961年に初来日し、日本中をファンキー・ブームで沸かせたアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズの一行に、リー・モーガンも参加していました。また、1963年に録音され翌年日本にも輸入されたモーガンの『サイドワインダー』(Blue Note)は、ジャズ・ロック・ブームのきっかけを作った人気盤です。ですから60年代ジャズ喫茶では、モーガンの人気は絶大でした。しかし今改めて振り返ってみると、リー・モーガンの魅力は典型的ハードバップ・ジャズマンとしての活躍にあったように思います。

最初にご紹介するアルバム、1967年録音の『ソニック・ブーム』(Blue Note)は、いわゆる発掘盤として1970年代に発売されたものですが、演奏内容は素晴らしく、いまさらながらブルーノートの底力を思い知らされました。この作品は昨年、オリジナル・ジャケットでCD化されましたので入手は容易でしょう。聴きどころはなんと言ってもモーガンの調子の良さで、快調にハイノートをヒットさせています。サイドのテナー奏者ディヴィッド・ニューマンはあまり知られていませんが、悪くない。また、ビリー・ヒギンスのシンプルながらキレの良いドラミングも気持ちよい。

2枚目にご紹介する『シティ・ライツ』(Blue Note)は、ジョージ・コールマンとカーティス・フラーが加わった3管セクステット。ベニー・ゴルソンがアレンジを担当しており、構成の巧みさで聴かせる典型的ハードバップ。デビューからわずか1年目でモーガンはまだ10代ながら、ブルーノートは彼のアルバムを立て続けに出しており、この作品はすでに4作目。彼の早熟振りがうかがわれます。

『ザ・クッカー』(Blue Note)は、バリトン・サックス奏者ペッパー・アダムスと初共演したアルバムで、ゴリゴリと迫力の低音で迫るアダムスと、高音域で吹きまくるモーガンの対比が聴き所。それにしてもモーガンのトランペットの切れ味は素晴らしい。録音は1957年で、ファンキーなタッチで鳴らしたボビー・ティモンズのピアノといい、背後で煽りまくるフィリー・ジョー・ジョーンズのドラミングといい、まさにハードバップ真っ盛り。

ベニー・ゴルソン作の名曲《ウイスパー・ノット》で始まる『リー・モーガン・セクステット』(Blue Note)は、テナーのハンク・モブレイが加わっており、ゴルソンの巧みな3管アレンジがモーガンの演奏を引き立てている。それにしてもこのアルバムはブルーノート、デビューのわずか1ヵ月後に吹き込まれており、レーベル・オーナー、アルフレッド・ライオンのモーガンへの力の入れようがわかります。

意外なことに、リー・モーガンはワンホーン・カルテットのアルバムは『キャンディ』(Blue Note)のみ。ソニー・クラークのピアノがしっかりと脇を固める中、モーガンはのびのびとマイペースです。ブルーノート1500番台の中でも人気が高く、オリジナル盤の価格は今でもかなりなもの。ブルーノートの看板役者、リー・モーガンらしい傑作です。

最後にご紹介するのは、これも有名な作品。シンプルなタイトル『リー・モーガンVol.3』 (Blue Note)は、クリフォード・ブラウンの死後1年を経ずして吹き込まれた名演《アイ・リメンバー・クリフォード》を含むモーガンの代表作。この作品も作曲者ゴルソンが音楽監督の役割を務めています。しかし、美しいメロディを何のけれんみもなく吹き切って、しかもそこにモーガンとしての個性、オリジナリティを感じさせるところなど、やはりモーガンは只者ではない。夭折が惜しまれます。

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