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2021.02.03

僕のウクレレが生きるための活力や希望になったらいいな――名渡山 遼『#おうち時間のウクレレ』『#眠れるウクレレ』インタビュー

名渡山 遼(なとやま りょう)というウクレレプレーヤーをご存じだろうか?1993年生まれの彼は、11歳でウクレレに触れ、2010年にはジェイク・シマブクロのジャパンツアーでオープニングアクトを務め、フジロックフェスティバルへの出演やハワイのグラミーこと「ナ・ホク・ハノハノ・アワード」の受賞経験もある実力派だ。そんな彼が、最新カバーアルバム2作について、ウクレレと出会い、自作するに至ったユニークなエピソードも語ってくれた。

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――ウクレレとの出会いは名渡山さんが11歳のときに家族で行ったハワイ旅行のときだとか?

「ハワイでは父親がウクレレを購入したんですけど、そのときにお店の人が無料体験レッスンを開いてくださったんです。両親と兄、僕の4人で参加したのですが、僕だけうまく弾けないっていう挫折を経験したんです。でも、それが悔しくて、ホテルに戻ってからも父親のウクレレを借りて弾いたりして。もう、そこからスイッチが入っちゃいましたね(笑)」

――弾けない悔しさによって火がついた、と(笑)。

「そうなんです。でも、その段階ですでに“あれ?楽しいぞ !?”みたいな気持ちにはなっていて。もともと音楽は好きでよく聴いていたんですけど、ウクレレを弾いたことで初めて自分の手から音楽が流れる体験をして、すごく感動したのを覚えています。あと、ウクレレを弾くと、ボディの振動が身体に伝わってくるんですよ。それも心地良くて、音色の虜になってしまいました。当時は朝から夜までソファから一歩も動かず弾き続けるみたいな感じでしたね」

――当時憧れていたプレイヤーはいますか?

「ジェイク・シマブクロさんです。家族旅行に行く前から、母親が家でジェイク・シマブクロさんのCDをよくかけていたんです。それがウクレレで奏でられていることも知らなかったんですけど、ハワイで“この楽器だったんだ!”とわかって、そこからはジェイク・シマブクロさんのCDやDVDを聴いたり、観たりしながら、見よう見まねで弾いてました。立ち方とか、演奏前のチューニングの仕方まで完コピしてましたね(笑)」

――名渡山さんはウクレレも自作していると聞いて驚いたのですが、そこまでウクレレに没頭していたのであれば、作りたくなるのも自然な流れかもしれませんね。

「あ、でも、作ろうと思ったのには理由があったんですよ。父親がハワイで買ったのは、ソプラノウクレレっていう小さいボディのウクレレだったんですけど、弾き続けているうちに、憧れのジェイク・シマブクロさんと同じテナーウクレレが欲しいと思うようになって。もちろん最初は楽器屋さんに探しに行ったのですが、僕が気に入ったのは何十万もする高価なもの。両親もさすがにこの先続けるのかどうかもわからない12、3歳の子供に、そんな高価な楽器は買い与えられないですよね。だからと言って、妥協して安いものを買うのは僕自身がいやで……どうしようと思って、自分で作ることにしました」

――12、3歳の子供が作ろうと思って作れるものでもなさそうですが……。

「作れるっていう大きな勘違いをしちゃったんですよね(笑)。ここでもやっぱり、スイッチが入ったら一直線というモードに入ってしまい、あの何十万のウクレレを、何年掛かってもいいから自分の手で再現しようって。そこからは楽器屋さんに行っていろんなウクレレを眺めたり、手持ちのウクレレをサウンドホールの中まで触って構造を確かめたり。雑誌に載っていたウクレレ工房の記事とかも、隅から隅まで見てました。そうこうしているうちに、世界中の高級な木材が新木場に集まってくることを知って。それで、両親に“1年間お小遣いはいらないから”って頼み込んで買った木材を使い、こうなってるのかな?っていう想像だけで1本作りました」

――それはすごい!

「でも、そうやってなんとか完成させた1本目は、弦を張って1分で壊れちゃいました(笑)。その後も失敗を繰り返しながら作り続けて、中学2年のときに作った4作目のウクレレで、ようやく僕が目標としていた、ちゃんとライブで使えるウクレレが完成しました。今、ウクレレは全部で20本くらいあるんですけど、そのうちの10本が自分で作ったものになります」

――その頃から将来はウクレレプレーヤーになろうと思っていたんですか?

「思ってはいたんですけど、中学生くらいまではどうなるか全然わかっていなくて……というのも、家族みんなが柔道をやっていて。僕も小さい頃から父親に柔道を習っていたので、柔道をやらなきゃみたいな気持ちが強くありました。父親から、高校までは柔道をやって、その後は自分の好きなことをやっていいと言われて音楽の大学に進んだのですが、やっぱり柔道も好きだったみたいで(笑)。ウクレレの演奏をしながら母校の高校に練習に行ったり、結局メジャーデビューが決まった2016年まで、柔道を続けていました」

――ウクレレ一本で生きていこうと決意するきっかけは何だったんですか?

「2012年に観た、押尾コータローさんのコンサートです。当時僕は大学生で、お客さんが20~30人くらい入るレストランとかでライヴ活動をしていて。そこにたまたまいらしたお客さんが押尾さんと知り合いの方で、押尾さんのコンサートに誘ってくださったんです。行ってみたら、6000人近く入る国際フォーラム ホールAを、押尾さんはギター1本で満席にしていて。さらに、押尾さんも昔は30人くらいのお客さんの前で演奏していて、そこからこうなったんだっていう話を聞いて、僕もウクレレ1本で大きな会場を満席にしたい!って思っちゃったんです。それまでは同級生たちと同じように就活をして、仕事をしながら演奏を続けられたらと思っていたんですけど、押尾さんのコンサートを見た瞬間、卒業後は迷うことなくウクレレプレーヤーでやっていこうと決めました」

――昨年12月、『#おうち時間のウクレレ』、『#眠れるウクレレ』という2枚のアルバムをリリースされましたが、どちらもYouTubeチャンネル企画から誕生した作品だとか。

「今の時代、YouTubeは音楽を聴く手段として重要なプラットフォームになっている印象があって、そこに自分の動画がないのは、名刺がないのと同じような気がしたんです。なので昨年、僕のことを知ってもらうチャンスになればと思い、週に1度、自分の演奏動画をアップする「Weekly Ukulele」という企画を始めました。そうしているうちに、今度は新型コロナウイルスの影響でツアーやライブイベントが軒並み中止になってしまって……」

――まさかこんなことになるとは!という日々でしたよね。

「本当に。それまでって、なかなかうまくいかないこともあったけど、それでも頑張れば頑張るほどよかったっていう感覚があったんです。それが、頑張りたくても頑張れない状況になったとき、どうしたらいいかわからなくなって。夜も考えごとをしながら寝るので、寝不足になっちゃったんです。そんなときにウクレレをポロンポロン弾いてみたら、ウクレレを始めた頃を思い出したんですよね。あの頃はただただ楽しくてウクレレを弾いていたなって。しかも、弾いているうちに自然と悩みや不安を忘れることができて、ぐっすり眠れるようになったんです。そういう自分自身の経験から、もしかしたらこの状況で自分と同じように不安を感じている方がいるかもしれないし、もしかしたら僕の音色を聴いて、夜ぐっすり眠れる人もいるかもしれないなと思って。それで、自分が寝る前になんとなくポロンポロン弾いているのを、そのまま配信したらいいんじゃないかと始めたのが「眠れるウクレレ」企画でした」

――「眠れるウクレレ」の配信は、あまりの心地良さに最後まで聴けずに途中で寝落ちしてしまう人も多いのだとか(笑)。

「暗闇の中、キャンドルの灯りだけで弾いてるので、眠気を誘うみたいです。実は、弾いている僕も結構眠くなるんですよ。たまに弾きながら寝ちゃうことも……。全然違う音が鳴って、それに自分で驚いて、慌てて演奏を再開するっていう(笑)」

――でも、それだけ人を癒す力があるってことですよね。

「僕も音楽の力はすごいなって思いますし、今回の企画はウクレレの音色だからこそできることだったと思います。あと、YouTubeがあってよかったなって思いました」

――今回の2枚のアルバムは、どちらもカバー曲を中心にした構成ですが、YouTubeで好評だった楽曲を集めたという『#おうち時間のウクレレ』の中で、特に名渡山さんが気に入っている楽曲はありますか?

「『#おうち時間のウクレレ』は、僕自身も自宅でウクレレを弾いている感覚を大事にしていて、聴いてくださった方にも、なんだかおうち時間が豊かになったと思ってもらえたらいいなと思っていたんです。なので、敢えて音数を少なめにして、ウクレレ一本で弾くことを意識してアレンジしました。その中でOfficial髭男dismさんの「Pretender」は、楽曲の世界観も維持しつつ、ウクレレらしさも出したいとなったとき、多重録音をしてみようっていうアイデアが浮かんで。アレンジを進めるうちにどんどん増えて、最終的に気付いたらウクレレ7台で弾いた仕上がりになっていました(笑)。使っている楽器はウクレレだけなんだけど、鳴っている音は比較的原曲が忠実に再現されているはず。僕だからこそできる「Pretender」のアレンジになっていると思うので、ぜひ聴いていただきたいです」

――原曲が持つドラマチックな世界観が見事に表現されていて、ウクレレだけでもこれだけのことができるんだと驚きました。

「つい、オリジナルのようなバンドの音を入れたくなっちゃうんですけど(笑)。今回は、それをやりたくなるところをグッと抑えて。ウクレレだけでやったからこその新しいアレンジができたので、自分でも気に入ってるんです。また、これは「Pretender」に限ったことではないのですが、ウクレレの場合、ベース音がないといったこともあるので、打楽器的な要素としてボディを叩いたり、カッティングを入れたりする工夫はしています」

――アルバムにはオリジナルの楽曲も、それぞれ1曲ずつ収録されています。『#おうち時間のウクレレ』収録の「Tune of Hope」は「新型コロナウイルス予防 くまもん啓発告知CMソング」として制作された1曲です。

「制作の方とお話ししていた中でキーワードとなったのが、“希望”だったんです。啓発告知とはいえ、聴いている人が不安にならないように。むしろリラックスできて、最後には希望の光が見えるような楽曲がいい、と。それがすごくいいなと思って、言われたことを意識して作っていきました。僕のウクレレの音色で少しでも希望が見えたり、明日生きるための活力になったりしたらいいなという想いで弾いています」

――一方、『#眠れるウクレレ』に収録されているのは「Good Night Ukulele」。この楽曲が生まれた経緯は?

「これは「眠れるウクレレ」の生配信でできた楽曲です。配信は45分間ノンストップなんですけど、撮影している僕のカメラが、そのままにしておくと30分で電源が切れちゃうんです。でも、途中でカメラに触れれば、そこからまた30分延長されるので、いつも配信から25分くらい経ったところでカメラに触ってたんです。そのときに片手で弾けるものとして弾いていたハーモニクスが、いつしか観ている人の間で“必ず25分でチャイムみたいな音が鳴るよね”ってなって、チャットがいちばん盛り上がるキーワードになって(笑)。なので、YouTube企画と同じ『#眠れるウクレレ』というアルバムを出すからには、あのチャイムがないとダメだよなと思って、サプライズの意味も込めて、それをモチーフにした楽曲を作りました」

――ちなみに、「Tune of Hope」と「Good Night Ukulele」とでは、違うウクレレを使われているんですか?

「同じウクレレを使っています」

――そうなんですか !?全然違う音色に聴こえますね。

「今回のアルバムに収録されている全22曲、すべて同じウクレレで弾いているんですけど、実は「Tune of Hope」と「Good Night Ukulele」はチューニングを変えているんです。「Good Night Ukulele」がノーマルなのに対し、「Tune of Hope」のほうは半音上げていて。それによって弦の張力が変わり、ちょっと甲高い音になるというか……」

――ウクレレって奥が深いんですね。

「そうなんです。チューニングを変えることで、同じウクレレでも全然違う感じの響きになるので。面白いですよね」

――最後に名渡山さんの2021年の抱負を教えてください。

「まずは何より、この状況が早く収束して、みなさんの前で演奏できる、みなさんも安心して音楽を楽しめる日が来てほしいと願っています。個人的なところでは、今年はメジャーデビュー5周年を迎えるほか、先日28歳になり、20代もいよいよラストスパートなので、今までできなかったことにどんどんチャレンジしていきたいと思っています。特にウクレレに関しては、よりエキサイティングなもの、よりアグレッシブな音楽を表現していけたらなって。ウクレレの音色は本当に耳心地が良く、癒しの楽器です。さらに弾き方によって、かっこいい一面も持ち合わせている表情豊かな楽器だということをたくさんの方に知って欲しいです」 (おわり)

(おわり)

取材・文/片貝久美子





■眠れるウクレレ(Ryo Natoyma YouTubeチャンネル)
※YouTubeライブ配信(不定期)

名渡山 遼

※ライブ、イベントの内容は開催当日までに変更される場合があります。必ずアーティスト、レーベル、主催者、会場等のウェブサイトで最新情報をご確認ください



■Weekly Ukulele LIVE(Ryo Natoyma YouTubeチャンネル)
※ライブ配信(毎週水曜日 20:00~)

名渡山 遼

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