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――すっかり時候の挨拶のようになってしまいましたが、和楽器バンドのみなさんはステイホーム期間をどのように過ごされていましたか?

鈴華ゆう子「先にアルバムを制作することが決まっていたなかでステイホーム期間に入ってしまったので、とにかく私は曲づくりをめっちゃしました。それぞれが楽曲を作るというタームでもあったので、メンバーとのリモート会議にデモ曲を出したり……ときどき散歩に出掛けて自分がステージに立っていた姿を思い返したり、そうやって自分を振り返る機会にもなりましたね。それこそデビューからずっと走り続けてきたので。あとはなかなかできなかったこと、ゆっくり本を読んだり、映画を見たりという時間も多かったですね」

――鈴華さんは休みなさいって言われないと休まないタイプじゃないですか?

鈴華「いままではそうだったんですけど、ここ最近、積極的にお休みをとったほうが、よりいいものが作れるってことに気が付きました。とはいえ、休んでいても気持ちが落ちちゃうとき――自然に涙が出てくるような日――もあったんですけど、そういう日は徹底的に悲しい気持ちを受け容れて、誰かとその悲しみを共有できるように大事にしまっておこうって。だって世界中がこんなに平等に悲しい気持ちになる機会ってないじゃないですか。だから落ちちゃう日は、そうやってとことん落ち込んで、でもなるべく一日の最後は明るい気持ちで終わろうって。そんな積み重ねでした」

――休みと言いつつも、YouTubeを中心にいろんなコンテンツをアップしていましたよね?

鈴華「うちのメンバーもそうですが、私もネットやデジタルの世界が大好きなので(笑)。メンバーとリモートで動画を制作したり……生配信では、弾き語りでリクエストに応えて歌ったり。動画は「和楽器バンド風千本桜の歌い方」講座とか、いろんなアーティストさんとのコラボもしましたし、ギターの町屋とリモートでセッションしてアップしたり、とにかくいろんな試みをしましたね。そういう時間もとても楽しく過ごせました。もともと和楽器バンドの始まりってそういう活動スタイルだったので、“やっぱりいいなあ”って思いました(笑)」


和楽器バンド

「和楽器バンド 真夏の大新年会2020 横浜アリーナ ~天球の架け橋~」より
Photo by KEIKO TANABE



――黒流さんはどう過ごしていましたか?

黒流「やっぱりこんな状況なので、表現者としては逆に明るいことをどんどんやっていこうと。今回のアルバムでも曲を書かせてもらったんですけど、それも含めて全部ポジティブな部分を見せようと心に決めて――自分自身のギアを上げて――アウトプットするものをポジティブにしようということだけは常に心掛けていましたね。自粛期間中はずっと曲づくりをしていたので、自分が何を伝えたいのか、それを世に出すにはどうしたらいいのかってことを考えていました。僕は和太鼓奏者なので、家にいると絶対に叩けないんですけど、ありがたいことにRolandさんの電子和太鼓「TAIKO-1」を試す機会をいただけたので、箏のいぶくろ聖志と一度も会わないままに曲を作って、自宅でそれを録って動画で上げてみようと。ひとむかし前……いや、本当にちょっと前まではできなかったことですね。こんな状況だからあれができない!これができない!じゃなくて、だからこそ新しいことをやってみようという時間になりました」

――自分を見つめ直す機会にもなった?

黒流「そうですね。いままであたりまえにできていたことができなくなった反面、ネットやテクノロジーが進化してできることが増えてもいるので。やはり何もしていないと気分も落ちていってしまいますし、そこはギアを上げて、体を鍛えたり、いままで痛めていた部分もきちんとメンテナンスして、いつでも世に出られる状態に自分を保つこと……それが表現者としてのモチベーションになっていたように思います」

鈴華「黒流さん、すごいストイックだから(笑)」

黒流「いや、僕、最年長なんで。なにもしてないとただのおっさんになっちゃうから(笑)。そういう意味で、自粛期間が楽しかったわけじゃないですけど、有意義な時間を過ごすことができましたね」

――なるほど、フィジカルもメンタルもキープする努力を怠らなかった?

黒流「はい。むしろパワーアップしたいなと。できなかったことをできるようにしたり、新しい知識を身に付けたり……さっきの電子和太鼓も試作品を提供していただいたんですが、それを世に出す過程に僕が関わることで、いま太鼓を叩いている若い世代に“そんなことができるんだ!”って感じて欲しいし、それこそが僕らプロの奏者がやるべきことなんだろうなと感じています」

鈴華「電子和太鼓は8月の「和楽器バンド 真夏の大新年会2020 横浜アリーナ ~天球の架け橋~」でも披露したんですが、音色もどんどん変えられたりするのでいろんな可能性がぐっと広がりますよね」

――和楽器奏者という意味では神永さんもやはり自粛中は練習できなかった?

神永大輔「はい。いや、そうなんですが……黒流さんのあとだとやりにくいな(笑)」

鈴華「あはは!いちばんおいしいところ持っていっていいから!」

神永「えーと、外向きの出来事でいうと、僕も東儀秀樹さんなど他のミュージシャンとのコラボレーションがあったんですけど、そういう表現者である一方、教える側の立場もあるので、新しい尺八を作ったり、オンラインで講座を設けたり、海外の演奏家のかたと情報交換もしましたね。だから僕は、自粛期間についてはどちらかというと、アウトプットよりインプットに力を入れようと思っていました。ひとつには和楽器バンドの音楽をより深く理解できるように弾き語りの練習をしてみようと。というのも、尺八って、一種のリード楽器なのでどうしても歌に耳が向かないんですね。だからちゃんと歌のことを考えられているのかな?って」

鈴華「やっと気付いてくれた?(笑)」

神永「いや、ちゃんと聴いてはいるんですよ(笑)。でも楽器としての絡み方はどうんなんだろうって思ったんです。僕はもともとピアノを弾いていたこともあるので弾き語りをしながら歌と楽器の関係性を見つめ直したり。あとはここ何年かやれていなかったんですが、たっぷり本を読む、たっぷり勉強する、たっぷりゲームをするということに時間を費やしました」

――神永さんは教える立場でもあるわけですが、そういった機会が失われたり、難しい局面ですよね。

神永「そうですね。尺八でいちばん難しいのは、やっぱり自宅で音を出せるかたが少ないということでしょうね。だからどうやって尺八を続けるモチベーションを維持するかってことを考えています。楽器をやっているかたは皆さん同じだと思うんですが、オンラインでもいいんです。みんなで集まったりして仲間の顔が見えることで安心できるし、そうやって他の人との繋がりを持つことが大事なんだろうなということを考えたりはしていますね」


和楽器バンド


Photo by KEIKO TANABE



――さて、鈴華さんは曲づくりに専念していたということですが、ニューアルバムの『TOKYO SINGING』もマインド的にも少なからずコロナ禍の影響を受けた?

鈴華「今回、私は5曲を書き下ろしているんですけど、そのすべてをコロナ禍の最中に書いています。アルバムタイトルにはTOKYOという言葉が入っていますが、TOKYOって日本の縮図だと思っているし、TOKYOらしさってなんだろう?っていう目線で曲を書いています。たとえば「Tokyo Sensation」にもそのニュアンスが含まれていますが、サウンドとしては、和楽器バンドの原点を、いろんな経験を経たいまの私たちがどうアップデートして表現できるかっていうテーマもあるんです。当時はただアップテンポでひたすら音を重ねて、ともするとごちゃごちゃしていたものが、お互いを知って、それぞれが洗練されているはずなので、いま同じことをやったらどういうサウンドになるか……だから当初は候補曲にアップテンポな曲が多かったんです。でもリモート会議を重ねるなかで“ミディアムバラードが少ないね”ということになって、結果的に私が書いたミディアムテンポの曲が多めになりましたね」

――これも本作の見どころのひとつだと思いますが、「Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE」はエヴァネッセンスのエイミー・リーとのコラボレーションです。

鈴華「2018年かな……エイミーが和楽器バンドのオーケストラ・ライブに興味を持ってくれて、私と町屋がエヴァネッセンスの全米ツアーに招待されたんです。エイミーとはそのときに“いつかいっしょに何かやれたらいいね”という話をして。今年の2月、今度は私たちのライブにエイミーを招待していっしょのステージに立っているんですが、その前後にエイミーと私と町屋の3人でスタジオに入って、セッション方式で曲の大枠を作りました。その直後にコロナ禍に見舞われてしまったので、オンラインのやりとりで完成させたんですが、時差や言葉の壁もありますし、オケの演奏も入っているのでいちばん時間の掛かったレコーディングになりましたね。でも全く新しい挑戦でもあったので“やっと出来上がったー!”という感覚です」

――この曲は、鈴華さんの日本語詞のパートと、エイミーの英語詞のパートがシンクロナイズするユニークな構造ですが、詞のテーマやストーリーもそういったやりとりを経て完成させたんですね。

鈴華「はい。実はこの曲は、エイミーの来日時にスタジオに入った時点ではいまとは違うテーマがあったんです。でもその後の世界の状況を見ながら、私たちは会えないけれど繋がっていることを描こうと決めました。詞の内容は、医療の最前線で戦っている人たちがモチーフになっているんです。タイトルはSAKURAで――もちろんいまの季節じゃないんですが――春が来て、また会えたらいいねという気持ちも込めて……エイミーの部屋に桜の絵が飾ってあったり、そういうすべてのピースがかちっと収まって完成しました」

――エイミー・リーが客演した「和楽器バンド Premium Symphonic Night Vol.2~ライブ&オーケストラ~ in大阪城ホール2020」の「Bring Me To Life」を聴くと、エヴァネッセンスのオリジナルとの差分というか、和楽器バンドのアレンジ力の高さが伺えるんですが、ライブアレンジや各パートのアレンジはどういうアプローチなんでしょう?

鈴華「ここ数年は、大枠のマスターアレンジを町屋が作って、そこから各パートのアレンジを決めていくという手法をとっています」

神永「そうですね。もちろん、「Bring Me To Life」の場合だと原曲も聴きこみつつ、それを活かしながら、どうやって和楽器バンドらしさを加えていくのかをそれぞれが考えるわけですが、町屋さんがある程度の役割りを与えてくれるのでやりやすいですね」

――そういう作業もまた楽しそうですね。

黒流「楽しいですよ。さっきも言っていましたけど、初期の僕らって、とにかく重ねて重ねて……楽しそうだからどんどんやってみようというスタンスでしたから。いまの和楽器バンドは、町屋が音楽的な設計図を描いてくれるので、すっきりしているというか、すごくきれいなサウンドなんですね。だって、僕ら8人もいて、さらにオーケストラが加わったり、すごく音数が多いのに、全員の音がちゃんと聴こえてくるってすごいことだと思いませんか?今回のアルバムには「reload dead」、「ゲルニカ」とか久しぶりに激しい曲があるんですけど、以前とは音の積み上げかたが違うし、きちんと棲み分けができているので――特にゆう子ちゃんと大輔は感覚で暴れるタイプですけど(笑)――棲み分けができているなかで自由に暴れられる」

神永「確かにきちんと棲み分けが決められているんですけど、窮屈な感じは全くないですね」

鈴華「「Sakura Rising」のエイミーとのコラボでは、歌う場所を分け合うというよりも、絡み合っている感覚がありましたね。サビメロは私が書いて、Aメロはエイミーが書いて、じゃあこんな裏メロにしようって話し合いながら作ったので、いっしょにスタジオに入った意味があったと思います」

――詞もサウンドも、すごく情報量が多いのに混みあっている感じはしないですね。

鈴華「ミックスも工夫してL/Rの振り分けを決めたので、ステレオの定位で聴いてもらえると、きっと私たちのライブと同じ立ち位置からそれぞれの楽器が鳴っているのがわかるんです。エイミーと私の声も実際の立ち位置から聴こえるはずですからそういう部分も楽しいと思います」

黒流「和楽器を取り入れているバンドや楽曲ってもうめずらしくないと思いますけど、みんな和楽器に忖度してるっていうか……前面に出過ぎてしまうことが多いような気がしていて。和楽器バンドはボーカルも含めて、本当に全員の音が対等に聴こえてくるように作っていますから」

――では黒流さん作の「オリガミイズム」の推しポイントは?

黒流「さきほども言いましたが、自分らしく、ポジティブなものを出していきたいなという気持ちで書きました。ダークな曲も、バラードも好きですけど、和楽器バンドのなかにある明るいニュアンスを見せようという意識はありましたね」

鈴華「みんな口に出しては言わないですけど、メンバーそれぞれがなんとなく役割りを認識してるんです。例えばバラードだったら私、ライブ映えする「オリガミイズ」みたいな曲は黒流さん、ゴリゴリにかっこいい曲は町屋、キャッチーなメロなら亜沙なのかな……って。和楽器バンドってひとことで言ってしまうとミクスチャーなんでしょうけど、バンドのなかにいろんなジャンルを内包しているんです」

――ちなみに『TOKYO SINGING』というアルバムタイトルは曲が出揃ったあとに?

鈴華「ユニバーサルミュージックに移籍して、第1弾のアルバムを2020年にリリースすることが決まっていて、オリンピックもあることだし、世界中が東京に注目しているであろうということで東京をテーマにしたアルバムにしようということも決めていました。コロナ禍のなかで収録曲が出揃って、東京から世界に向けて歌いたいという思いがあったので『TOKYO SINGING』という名前になった……というストーリーです」


和楽器バンド


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――最新のライブイベントである「真夏の大新年会2020」は、あらゆる意味でチャレンジングなライブだったと思います。たとえば和楽器バンドのライブでは大きな見どころのひとつであるドラム/和太鼓バトルもさまざまな工夫を凝らしていましたね。

黒流「お客さんのレスポンスが期待できないなかでしたからね。ある意味ずっと滑り続けてる感じ(笑)。でもやりづらくはなかったですよ。これ、いろんなミュージシャンの人に聞かれるんですけど、歓声がないことも気になりませんでしたし。これが無観客だったら全然違うんでしょうけど。まあ、動画撮影OKという新しい試みもありましたし。それもライブ会場に足を運んでくださったからこそできたんだと感じていただけたらいいなと思います。10月、11月の東名阪ツアー「和楽器バンド Japan Tour 2020 TOKYO SINGING」にも特別な体験を用意していますので期待してください」

――もうひとつ「真夏の大新年会2020」で、鈴華さんがMCで語っていた「誰にもわからない未来、会場にいるみなさんひとりひとりの決断があって実現したライブ」という言葉や、不安な胸の内を吐露した言葉が逆に会場を、配信を見ているみんなを勇気づけたと思うんですが、その言葉をすぐ近くで聞いていた神永さん、黒流さんはどう感じましたか?

黒流「あの日、横浜アリーナのステージに立つまでにいろんな苦労がありましたし、僕らはゆう子ちゃんにどんな葛藤があって、どういう覚悟であの日を迎えたのか、全部見てきていますから。なにより支えてくれているスタッフみんなの気持ち、ライブを見てくれているファンの気持ちがすべて集約されていることへの責任もある。それを受けとめて言葉にして発しなきゃいけない。僕はその姿を後ろから見ていて、言葉をかけてあげることはできないけど、ゆう子ちゃんのその気持ちに応え、支えるつもりで演奏しようと思っていましたね。正直、僕はあんなふうに素直に打ち明けることはできないですけど、ゆう子ちゃんはリーダーとしてその場にいる人たちにそれを伝える責任を果たしてくれたと思います」

神永「何て言うんでしょう……和楽器バンドってもともと非現実を見せてきたバンドだと思うんですけど、ゆう子さんがあのステージで正直な感情を曝け出したことで、あの日僕らがライブをやった意味、あの場所にみんなが集まってくれた意味……さまざまなことが現実の世界で繋がったような気がしていて。そういうゆう子さんだからこそこれからもいっしょに音楽をやりたいなとあらためて思いましたね。この半年の出来事を乗り越えたことでバンドとしてもより深みを増したように感じましたし」

鈴華「横浜アリーナの2デイズのあと、スタッフさんに“ほっとしましたか?”って聞かれたんですけど、正直ほっとした気持ちにはなっていなくて、ただこの状況下でライブを開催するという前例にはなったかなという思いだけで……でもいまこうやって初めて直にメンバーの感想を聞けてすごくほっとして泣きそうになりました。こうやってインタビューしていただくことが、自分自身を見つめ直すきっかけになったり、お互いをどう思っているのか確かめ合う機会になったりするので。今日、ソロじゃなくて、バンドでよかったなって再認識しました。だから次のツアーはもっと強い気持ちでライブに臨めると思います」

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)





■「和楽器バンド Japan Tour 2020 TOKYO SINGING」ローソンチケット
10月24日(土) ガーデンシアター(東京)
10月25日(日) ガーデンシアター(東京)
11月14日(土) 大阪城ホール(大阪)
11月28日(土) 日本ガイシホール(愛知)

■「和楽器バンド Japan Tour 2020 TOKYO SINGING」東京公演 有料配信(e+Streaming+、LINE LIVE-VIEWING、PIA LIVE STREAM、ZAIKO)
10月25日(日) 東京公演e+Streaming+LINE LIVE-VIEWINGPIA LIVE STREAMZAIKO

和楽器バンド

※ライブ、イベントの内容は開催当日までに変更される場合があります。必ずアーティスト、レーベル、主催者、会場等のウェブサイトで最新情報をご確認ください。




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和楽器バンド『TOKYO SINGING』
2020年10月14日(水)発売
初回限定映像盤(CD+Blu-ray)/UMCK-7073/6,000円(税別)
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