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――encoreとしては、初登場なので改めてkoboreのプロフィール的なところも伺いたいんですが、ちなみにドラムの伊藤さん以外は皆さん同じ府中の高校出身なんですね。

佐藤 赳「同じ高校です」

――府中にはバンドシーンはあるんですか?

佐藤「バンドシーンっていうか、バンドをやってる人が多いですね。俺らが結成したのが2015年の5月くらいで。その頃まだ現役だったんで、そこから高校生バンドみたいのが府中でも出始めて、いまもそこからの生き残りがいるぐらいなので、バンドは多い方かもしれないです」

――2014年、2015年頃といえば四つ打ちフェスロックのムーブメント真っ最中ですよね。

佐藤「KEYTALK、KANA-BOON……高校生の時はめちゃめちゃコピーさせていただいて(笑)」





――高校の軽音部だった頃はコピー?

佐藤「みんなコピーでした。オリジナルは一切やってなくて」

――バンドがやりたい一心で?

佐藤「僕はモテたいって言う一心不乱な思いで(笑)。もう中学生の時にギター弾けたんですけど、中学には軽音部がなかったんで、高校入ってちょっと頭角現してやろうかなぐらいで」

――ああ、活躍してるバンドを見ると、いい曲を書いて歌ってたらキャーキャー言われるんだなって思いますよね。

佐藤「ほんとそうっスよ」

田中そら「そういう意味で夢がある」

――そこらへんの先輩バンドたちは、当時の10代にすごく夢を与えたってことですね。

佐藤「コピーしたい!って思わせるのもすごいことだと思いますし、当時の自分たちが夢中になったことは事実なので」

――そこからオリジナルに移行したきっかけはあるんですか?

佐藤「僕が高校卒業して弾き語りでいろんなオリジナル曲をやってて、それをバンドで合わせたいなと思って、当時卒業してた先輩と、高校生だった田中を集めてやろう、みたいな」

田中「その時のイメージとしてはボーカルの赳のやりたいことそのまま反映させる、気持ち的にはサポートじゃなくて、ちゃんとメンバーである自覚はあったんですけど、その時は赳が率先して全部指示とか出してたんで。最初は言われたことをやる、みたいな感じのバンドでしたね」

――日本だと曲の中でも歌詞を聴く傾向が強いじゃないですか。koboreは歌詞がすごく聴こえるので、歌いたいことがあっての曲作りなのかな?と思ったんです。

佐藤「そうですね。おっしゃるとおりです。日常に歌いたいことがあったら歌うっていうイメージで全然合ってますし、そっちの方がたぶん、無限に歌詞が落ちてるとは思いますね。やっぱり経験するっていうよりも自分が過ごしてる日常は生きてる限りは歌えるなと思ったんで、そういうのを歌詞にしてみようかなと思いましたね」

――皆さんの世代だとバンドやる人もいるし、トラックメーカーになるか、ラップをする人もいる?

田中「極端に分かれてますね」

佐藤「最近はジャンルっていうものが確立してきてて、さらにそこから枝分かれする。しかも最近、シティポップとかもあるので(笑)、その中の何かひとつみたいなのにはなりたくないなと思ってて」

――ただロックバンドでいたい?

佐藤「うーん……ロックバンドっていうのにも当てはまりたくなくてっていうのは結構あって。いろんなとこでいろんな人たちと仲間になれるようなバンドにはなりたいなって、自分の中では思ってますね」





――時間をちょっと巻き戻すと最初の自主盤が出て、結構すぐ2017年の「ビクターロック祭り」に出演したんですね。

田中「そうなんです。とんでもない」 ――他のバンドのステージも最後まで見ました?

田中「はしゃぎまくりましたね(笑)」

佐藤「最後のサカナクションでもう“あ、もう辞めようかな”って思いましたもん。“これがバンドか!”と思うと、あの位置に立てる気がしなくなって。サカナクション、いい意味で目指すのは辞めようと思いましたね。僕も大好きで“サカナクションみたいになりてえ!”と思ってたんですけど、あんなの見せられたらもう目指すの辞めようと(笑)」

――サカナクションもジャンルではないところで惹かれていた?

佐藤「ジャンルレスなバンドだし、ほんとにすごいなと思います。あそこまで突き抜けられるって。ジャンルってなんだ?って聞かれたら、ちょっと答えられないです。エレクトロなのかギターロックなのか。いやもうかなりの知識幅だしレンジが広すぎるバンドだなと思いますね」

田中「バンドを始めたての僕たちがポンって出てしまったので、いい意味でも悪い意味でも刺激はたくさんもらいましたね。落ち込んだり、やっぱり憧れたり」

――でも当時リリースした「ヨルノカタスミ」へのリアクションは高くて、未だにミュージックビデオの再生回数は伸びていたり。

佐藤「そうなんですよね」

――しかもコメントを読むと、いろんな世代の人が聴いてるようだし。

田中「いろんなコメントがある。koboreの代名詞っていうか“ヨルノカタスミ”っていうバンドなんじゃないか?ってぐらい(笑)」

佐藤「ほんと、世代を超えて愛していただいてるような曲ができてよかったなあと思うな。ちょうど「ビクターロック祭り」の前ぐらいにできた曲で。12月でドラムが脱退するってなって、伊藤克起が入って、その時作った曲をもう1回作り直そうって。3月のロック祭りが決まったんで、まだ4回目ぐらいだったんですよ、あそこのステージでやったのも。いまでもこうやって聴いていただけてるのはすごいうれしいですね」

――曲にリアリティがあったということなんでしょうね。

佐藤「結構生々しいですね。僕らからしたら」

――失恋を歌うバンドは多いし、最近、失恋の歌そのものが多い気がしません?

田中「ずっと失恋してますよね」

佐藤「あれすごいなと思いますけどね。誰かの経験に基づいてるのか、経験しまくってるのか」

田中「失恋させたがってる?」

佐藤「失恋=エモいみたいな(笑)。ちょっとよくわからない感じも出てきてるんで、それちょっとエモいとかじゃないんだよねっていうのも僕ら的にはあって。なんかすぐ“エモい”って言うじゃないですか。この曲のどこがエモいの?みたいな感じにはなったりするんで、みんながみんな、流行りっていうか、そっちに行っちゃい気味かなっていうのは思います」





――koboreの場合、身近なテーマではあるけど、曲ごとに違う内容にフォーカスされていますよね。

佐藤「いろんな人に聴いて欲しいんで、こっちから発信して行こうかなと」

田中「確かに赳は身近なものを全部歌詞にしていきますね」

佐藤「だから結構、日々歌いたいことも変わっていくし、こういう歌詞もいいなってことも気づかされることがあったりとか、そういう毎日ですね。はっと気づいたら歌詞を書いて、っていう感じで。最近ずっと変わらず」

――今回の『風景になって』は楽曲自体は結構前に揃っていたそうですね。

佐藤「そうですね。12月、こういう状況になるちょっと前ぐらいには仕上げとこうって話になって、みんなでスタジオに入りつつって感じで。楽曲はほぼまとまってましたね」

――じゃあざっくり言うと、2019年に佐藤さんが感じていたことが曲になっている?

佐藤「うーん……まあ、2019年もそうですし、ちょっと今年になって書き換えた歌詞とかもあったりするんで」

田中「それって「イヤホンの奥から」?」

佐藤「そうそう!ネットだったり、そういう世界をね」

――今回はなかなかバンドとして集まれなかったり、データのやり取りもあったかと思うけれど、どういうプロセスを踏んで曲にしていくんですか?

佐藤「スタジオで僕がサビを持ってきて展開をみんなで作っていく感じで割とシンプルに作ります」

田中「逆に時代遅れじゃないんですけど、たぶんいまの人たちってもっとDTMを駆使してると思うんで」

佐藤「音とかも“こういう感じで行きたいんですけど”とかやるんですけど、僕らかなりアナログで。ギターをジャカジャカ弾いて、ボイスメモ録って。後は家でやって。勉強はしてるんです。ギターの安藤太一も宅録とかいろいろ勉強してて、できるっちゃできるんですけど、なんかアナログなスタイルは変えたくないっていうか、やっぱ4人で曲作りたいし、僕ひとりで曲作ってもレンジが狭まっちゃうんで。曲にレンジを持たせるためにも4人の意見が必要だったりするんで、このスタンスはずっとやっていきたいかなと思ってますし。今回みたいなやり方は“こういうのもあっていいかな”ってことで」

――安藤さんはいわゆるシューゲイザー的な背景も持ってる人なのかな?とか、確かにギターサウンドの幅がありますね。

佐藤「彼は今回のアルバムに関してはギターの音にすごくこだわってて。録ってはメンバーに送って“この音、この曲に合ってると思う?”みたいに事細かく聞いてきてくれたんで、たぶんこだわりはいちばん強いよね?」

田中「うん、こだわってた」

――「二人だけの世界」もこの世なのか?みたいな幻想的な音像だし。

佐藤「あの感じの曲にあの音をぶつけるのは結構チャレンジャーだと思うんですよね。でもそれが少数派だったとしても、曲に対してこういうアタックもあるんだなって思ってくれる人がいるしたら、安藤は結構喜ぶんじゃないかなと思います(笑)」

――そしてすでに配信されている「FULLTEN」は、メジャーデビューするにあたっての思いを全部ここで言ってる感じですかね?

佐藤「まあそうですね。余計なことは俺の口からは言わないみたいな。MVを見てもらえれば最後に発表してるんで(笑)」

田中「コロムビアのロゴ……」

佐藤「バッて出てくるんで、後はお願いしますぐらいの感じなんで(笑)。あの曲に関しては結構スパン!と終わらせて」

――ビートは2ビートというかブラストビートです。

田中「難しかった(笑)。これめちゃめちゃ練習しました」

佐藤「僕もやってみて思いましたけど、速え!(笑)」





――田中さんはルートを弾くよりメロディアスな歌メロの裏にあるようなベースの方が好きなんですか?

田中「そうですね。僕はそうです完全に。ルート弾きの単調なかっこよさもわかるんですけど。だから言っちゃえば「HEBEREKE」も一応同じビートなんです。最初ちょっと苦手な類――曲を聴くこと自体も――なんですけど、やっぱ制作期間中でに向き合うじゃないですか。それで、やってて好きになっていくんですよね(笑)。だから最終的には「HEBEREKE」とかこのアルバムの中でも好きな曲というか、思い入れがあるというか……「FULLTEN」も結果いちばん向き合った曲ですね。“あー、マジわかんねえ!”ってこのビートを延々練習してた時間は忘れない(笑)」

――ははは!「HEBEREKE」のサビ始まりの歌詞の符割は謎ですね。

佐藤「謎ですね。俺もわかんないです。ただハマりはいいからノリで歌ってて……マジで感覚です」

――トーキングボーカルというかメロラップなのか?と思ったんですが。

佐藤「最終的にそういう感じになっちゃっただけで、言葉遊びというか、入れて行って最終的にこうなった感じです」

――歌詞の内容はずばり、バンドマンの日常なんですか?

佐藤「もう日常です。“わかんなくなっちゃうんだよね”っていうのを表現したいのがあって。聴いてるうちになんかわかんなくなってくるんだよな……とか、一発目からドラムインでサビってヤバすぎでしょ?みたいな感じを曲でも出したくて、もう最後の方に小さい声で“疲れた”って言っちゃってます(笑)」

――そしていまのような状況になって歌詞も少し変えたという「イヤホンの奥から」ですが、これは佐藤さんの本気を感じます。

佐藤「うん。あれは本気……本気っていうか、もやもやした気持ちを歌詞にした感じです」

田中「言いたいこと全部言ってる。この歌詞を見た時、僕ら3人からしたら“言うねえ!”みたいな。“大丈夫?これ……”みたいな」

――でも実際、この状況になって以降、他人に追い詰められて人が死んじゃうってことが増えたと思うんです。

佐藤「いやほんとに人が人を見えないのに殺せちゃうってすごいことじゃないですか。僕はもう“殺せちゃう”ってイメージなんですけどね。なんかそういう言いにくいようなところとかも表現者としては口に出していきたいなっていうのがやっぱりあって。イヤホンの奥から人も殺せちゃうし、逆に言ったら……っていうのも結構表現したくてそのタイトルにしたっていうのはあります」





――koboreの一面だけを好きな人にとっては今回のアルバムは多面体?

佐藤「あ、ほんとそうだと思います。ルービックキューブみたいにいろんな面で色の違う俺らを見られるみたいな」

――とはいえやはり夜の情景が出てくる「夜に捕まえて」という曲もあって。koboreにとっての夜って何のメタファーなんでしょうね?

佐藤「でもやっぱ日常なんで。それは夜も出てくるしって感じですかね。みんなはそんなに夜を出すなっていうけど(笑)。俺は別にそんな感覚なくて、自分の歌詞を書いてる時が夜だからっていうのもあるし、僕自身はそんなに気にしてないですね」

――自分の中に潜る時間でもあるし。

佐藤「そうですね。夜は潜ってる瞬間だったりするんで、そこでしか見つけられない歌詞だったりが多いかなと」

――今回のアルバムタイトルにちなんだ歌詞が出てくるのが「ボクタチノアシタ」ですね。koboreの音楽が誰かの風景になって欲しいですか?

佐藤「なって欲しいですね。なんか聴いたことある、でもいいんですよ。曲名思い出せないけど聴いたことあるって、結構僕は好きな感覚で。“わー、懐かしいけど思い出せない”って感覚って意外と僕はムズムズしないというか、いいなと思うし。なんかその曲よりも人とか風景の方が思い出しやすいというか。“あ、この人、この曲聴いてたな”とか“この風景の時、こういう曲聴いたな”とか、そういうことの方が逆に音楽を思い出しやすい。みんなにとっての音楽もそうであって欲しいなっていう願いは込めてたりするんです」

――koboreのアルバムタイトルって、いまのところ2枚とも『××になって』じゃないですか?

佐藤「はい。『零になって』と『風景になって』」

――これはなぜなんですか?

佐藤「これは“名前だけでも覚えて帰ってください”っていう気持ち(笑)。ゼロから風景になって、次どうなるのかな?って、リスナーにワクワクしてもらいたいっていうのもあるし。まあ感じ方は人それぞれなんですけどね」





――そして9月からはついにツアーが始まるわけですが、現状を見ていると何を信じて何を絶対としてやっていくかは難しいところもあるかと思います。

田中「気持ちは100パーセントやるつもりで」

佐藤「負けたくないですよね。見えないヤツらに負けたくないなっていうのもあるし、誰かになんか言われてやめるようなバンドにはなりたくないなっていうのはいちばんある」

田中「プラスになったらいいんですけど。この逆境が」

佐藤「いまで良かったとは思わないけど……いや、でもいまで良かったなと思う。高校生とかだったらいやだな――僕がいちばん戻りたい過去は高校生なので(笑)――こんな1年を過ごしたくないなっていうのはあるし」

田中「バンドやってなかったかもね。5年前にいまの状況が来てたら」

――いまはある程度何をどうしたらいいかわかる年齢だし、キャリアも積んでいるし?

田中「そうですね。ただ暇で毎日過ごしてるわけじゃないので(笑)」

佐藤「ライブができないバンドとライブを観に行けないお客さんって、悲しさ的にはいっしょだと思います。“やれないバンドの方が辛いよ”じゃなくて、そこはいっしょ。俺らが高校生だったとしても好きなバンドのライブ観に行ってたはずなんで、どちらにせよ悲しい。だからいまを生きる方法を考えるしかないし、そこだけは負けたくないなっていうのはありますね。今後も」

(おわり)

取材・文/石角友香
写真/桜井有里



■2020年8月3日~(月)~8月9日(日)の「C-43 MUSIC&TALK WAGON ~音バナ~ “音ナ図鑑”」はkobore!(music.usen.com)

kobore

※2020年7月現在、USENでは、新型コロナウイルス感染症の予防措置として、スタジオ内の換気、遮蔽版の設置、設備と手指のアルコール消毒等を行っています。また、DJ、ナレーター、ゲスト等の音声は一部リモート収録した音源をもとに制作、編集しています。





kobore
kobore『風景になって』
2020年8月5日(水)発売
COCP-41229/2,800円(税別)
日本コロムビア




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