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――2020年の家入レオは、この16thシングル「未完成」で始動するわけですが、その前に2019年を振り返ってみていかがですか?

「そうですね。1月にはシングル「この世界で」をリリースして、4月にはアルバム『DUO』をリリースして、タイトルツアーをして……もちろんそういうわかりやすいトピックスがあったんですけれど、“25歳になる前にいろいろな面で乗り越えなきゃいけないハードルが出てくると思うよ”っていろんな方々が仰っていたのが、“あ、このことだったんだ”って実感するような1年でした。いろんな角度から“あなたはあなたのままで生きなさい”っていうメッセージをもらいましたし。本当、性別も世代もそれぞれ違う方々が私に向き合って、その人なりの言葉で伝えてくださったんですけど、根本的には“怖がらずに自分のままで歩いていいんだよ”っていうことだったんじゃないかって私は受けとめました」

――その解釈は、松任谷由実さんの家入レオ評にも繋がりますね。

「ああ、“あなた、素数ね”ですね。うん、そうかもしれませんね。私、いまを生きることに一生懸命なタイプなので、『DUO』のリリースも2019年の出来事だっていうことはわかっているんですけど、感覚的にはもう3年前の幻みたい(笑)。それくらい濃密な毎日を送ってきたんだなと思うし、10代のころにデビューして社会に出たので、ある意味、ずっと激流のなかに身を置いていたんですね。当初は本当に、目の前にある“それ”を、やるか、やらないか、その場で判断してっていうスピード感で駆け抜けてきたので、“待って!これもう少し考えたいです”っていう言葉を知らなかったんです。でも二十歳を過ぎて、少しずつまわりの環境も変わってきて、ペースも掴めるようになって。24歳のいまでは――いままで裸のままで生きてきたって自分では思っていたけれど――“本当はまだ鎧を着ているよね”っていろんな人から言われて。そうやって指摘してくれていることが愛なんだってわかっているんだけど、それは私にとっては痛みでもあるので……外側だけを整えようとしちゃって、相手を傷つけてしまったこともあるし。でも少し時間を置いて考えると、“ああ、あれは私のことを思っていたからこそ言ってくれていたことなんだな”って気付くことができるようになって。だから最近では、ひとりで頑張り過ぎないようになりました」

――誰かを頼ったり、誰かを信じて待つって勇気が必要だし、心に余裕がないとできないことだと思うんです。

「そのとおりだと思います。こう、両手を組んだときにどっちが心地いいかって人によって違うみたいですけど、私は右手の親指が上になるほうが心地いいんです。でもね、それを相手に見せずに“どっちが心地いいか当ててみて!”って、何て言うんでしょう……ちょっと暴力的じゃないですか?そうじゃなくて、いっしょに生きていくうえで、私はこれが心地よくて、これは不愉快なのって、ちゃんと言葉にして相手に伝えるべきだと思うし、そうやってキャッチボールすることの大切さを改めて学びましたね」

――二十歳になった瞬間に大人になるわけじゃないですし、きっとまだ成熟する過程に身を置いているんですね。

「もちろんです。むしろやっと魂の土台が出来上がったなって感じています」

――そんな家入さんの現在地を指し示すかのようなタイトルですね。「未完成」って。

「私にとって、音楽って、生活してゆく日常の奥にあるものだから。「未完成」も、日々そうやって変化してゆく過程で生まれてきた曲なんだろうなとは思いますね」





――「未完成」は、「もし君を許せたら」に続いて「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」の主題歌に起用されていますが、前作からの繋がり感みたいなものは意識するものですか?

「いいえ。なぜなら『DUO』ですらも私のなかでは古の出来事なので(笑)。1年半前の「もし君を許せたら」は、ことさら遠い記憶ですね。もちろん「絶対零度」の主題歌を歌わせていただいたっていう感謝の気持ちと喜びは鮮明ですけど……。「もし君を許せたら」は自分の中でひとつの作品として完結していて。最近のライブでもセットリストに入っているんですが、歌いだしの“もし君を 許せたら”の部分で思い浮かべる“君”が、レコーディングした当時と、最近では全く違う人物になっていて。それが生きて、生活してゆくってことなんだと思うし。詞もメロディも変わらないけれど、思い浮かべる人の顔は、あの曲を歌う日、時間、場所によって全く変わってしまうから。今回の「未完成」は、自分にとって許せないことだったり、怒り、悲しみ、“なぜあのとき自分はあんな嘘をついてしまったんだろう”っていう後悔……そういうありとあらゆる感情が溢れてその全部をぶつけた楽曲なんですよね。そうやって歌っている対象が変化してゆくことが出会いと別れということだと思います」

――「未完成」も“僕”という一人称で歌われていますが、“僕”も歌うごとに変化してゆくものですか?

「僕が君になっていたり、君が僕になっていたり……たぶん歌うたびに変化するでしょうね。時が経てば経つほど意味合いが変わっていったりという楽しみ方もできると思いますし、聴く人によって、その人のまわりの人物に置き換えられたりするでしょうし、聴く人の数だけ答えが変わってくるんじゃないかな。100人いたら100通りの楽しみ方がある……それが音楽の醍醐味だから。聴いてくれている人に、“家入レオはどういう気持ちでこの曲を書いたんだろう?”って想像してもらえるのはうれしいけれど、聴いてくれている人が、自分の日常の風景をあてはめて、自分の色に塗り替えてもらえたらいいなって」

――確かにね。“家入レオが”じゃなくて自分に置き換えて聴いた方が想像力が掻き立てられます。うーん……ちょっと反省しました。

「あ、こういうインタビューで私の思いを伝えるのも大切なことですし、また違う楽しみ方だと思いますよ。ただ私の言っていることだけが正解というわけじゃないですよという意味ですから(笑)」





――「未完成」の“僕”のように未完成で不安定な時期って、誰の人生にもあると思うんですが、家入さん自身はそういう不安や苛立ちみたいな感情を抱えていたことはありますか?

「うーん……そういう不安定な状態なときもあります。今回のオファーをいただいて、制作しているうちに、自分の生活のなかにも大きな変化があって、曲を書かずにいられないっていうモチベーションになったときに、もういちどプロットと脚本を読み込んだんですけど、登場人物たちは傷ついたり、傷つけあったりしながらも、やっぱり愛に翻弄されているんですよね。そこに自分の姿を見た気がして、これまでの愛に対する記憶や感情がわーっと押し寄せて来て。綺麗ごとだけじゃラストの“「会えて良かった」と君が笑う”というフレーズに辿り着けなかったんです。すごく憎くて、すごく悲しくて、すごく怒りに満ちていて。それくらい相手のことを想っていて。そうやって期待して、でも裏切られて……それって愛してたってことなんだなって。“「会えて良かった」”に辿り着くためには、ちゃんと相手を憎んで、自分の弱さを恥じてっていうプロセスが必要だったんです」

――曲はJazzin' parkの久保田真悟さん、詞はKanata Okajima(岡嶋かな多)さんとの共作です。

「最近は、久保田さんにしても、岡嶋さんにしても、制作するとき、作品に関しての話よりも、その人の人生観をお聞きしたり、価値観を共有したりということに時間を費やします。人生そのものを共有する感じ……特に歌詞はそういう時間を大事にしてます。そうじゃないと私らしい曲にならないと思うんです。私が伝えたいのは心だから。それって相手の方にしてみればすごくヘビーなことだとは思いますけど(笑)。でもそれを受け容れてくれる人でないと曲づくりを共にできないですね」

――ある意味、ちょっとしたセラピーのようなプロセスなんでしょうね。

「セラピー……なのかな(笑)。でもそれくらいの覚悟で臨まなくちゃ。曲なんてそんな簡単にできるはずないもん」

――メロがどうだとか、サビの詞がどうだとか、ディティールよりも大事なものがあると?

「そう!むしろ、最近どんな映画を見てどう感じたかとか、こういう音楽を聴いた、こんな本を読んだとかそういうことがまず大事なんです。岡嶋さんとはいっしょに『ジョーカー』を見に行ったりしました。見終わって、私はこう思った、岡嶋さんはどう思ったってやりとりがあって、気持ちを伝えあうと、何て言うんでしょう……歌詞のタッチも微妙な調節が効くようになるものなんですよ。 “こんなテーマの楽曲が作りたいんです”っていう共有だけだとかっこいい曲はできるかもしれないですけど、それじゃ人の心を動かすことはできないって私は思っていて。感情の部分を共有することで、本当に私にしか歌えない曲ができるんです。そして初めて、声質だったり音域は……って話をするっていう。いっしょに曲作りしている作家さんはみんな本当に私のことを知ろうとしてくれていますから……なるほど、確かにセラピーかもしれないですね。私の意見って少数派過ぎるので、それを最大公約数的にアジャストしてくれるのが作詞家さんなのかなって思うことがありますね」





――カップリングの「Unchain」もとても印象的な楽曲ですね。直訳すると、鎖を解く、開放するといった意味がありますが?

「それはもう皆さんがそれぞれにどう感じとるかなので。詞を共作してくださったHANAEさんは同世代の仲良しで……仲良しっていうのもあれですけど(笑)。もともと事務所が同じでよく話をするようになって、私に似たような部分を感じることがあって。事務所が変わってからも折りに触れて会う機会がありましたし。今回のカップリング曲は最初から書きたいテーマがあって、えーと……クオーターライフ・クライシスって言葉を知っていますか?」

――いや知りませんでした。どんな意味なんですか?

「私もネットで見つけたんですが、どんな意味があるんだろうと思って調べてみたところ、20代後半から30代前半にかけて、自分が何のために生まれてきたのか?っていうことを自問自答して、不安になったり、焦りを感じたりする時期のことみたいなんです」

――なるほど、人生の約4分の1くらいの年齢でそういう心理状態になっちゃうってことですね。

「まさにそのとおりで。たとえば大学を出て就職して、3、4年が過ぎて、いっぱいいっぱいだった時期を乗り越えて、ちょっと余裕が出てきて、後輩も入って来て……っていうタイミングで、自分は何がしたいのか?っていうダイレクトなメッセージが突き付けられるんですよ。実はつい先日、婚姻届けを出す同級生がいて、私、生まれて初めてその保証人になったんですけど」

――さらっと言いますね(笑)。いや、なかなかのトピックスじゃないですか。

「びっくりですよね(笑)。まあ、よく考えたら、お母さんになっている友だちも何人かいるし、24、25ってそうやって新しい役割りを探し始める年齢ではあると思うんです。だからそういう人たちへのメッセージを込めるにはどういう曲がいいのかなって探していたんですけど、須藤 優さんが書いてくれた「Unchain」が素敵だなって思って。で、以前、HANAEさんと、“やっぱり新しい役割りを見つけたいよね”っていう、クオーターライフ・クライシスと根底の部分が通じるような話をしたのを思い出して“いっしょに作らない?”って声をかけてみたんです。まず、私が書きたいことをLINEで送っておいて、会ったときに“私、いまこういうことを考えていて、それを歌にしたいと思っているんだよね”って話をしながらふたりで書き進めました」

――カジュアルな感じがいいですね。まずはLINEってところがいまどきだし。

「ですよね(笑)。「未完成」も「Unchain」も、私のなかで、描きたいストーリーが見えていたので、そういう私の思いに、お洋服を着せてくれるのが岡嶋さんやHANAEさんなのかな……って。いま「Unchain」の前半部分を読み返してみると、言葉の選び方とかすごくいい刺激をもらいました」

――そして須藤 優さんのトラックはJ-POPぽくないですよね。どことなく洋楽的な佇まい。音数はあまり多くないし、シンプルな構成なんだけど、ボーカルが乗るとすごく説得力がある。

「そう、洋楽っぽい。抑揚が抑え気味で、起承転結がはっきりしてないからですかね。須藤さんはアルバム『TIME』でも曲を書いてくれていますけど、ツアーもいっしょに回っていて、やっぱり同じ空間でいっしょに音を出すって、おしゃべりする以上に本能に触れる部分があるから“あ、私の思いをそんなふうにかたちにしてくれるんだ”って感じますね」





――洋楽といえば、以前のインタビューでは、サム・スミス、アデル、シーアといった海外のアーティストの名前を上げてくれました。最近、シーアの名前はいろんな女性アーティストがフェイバリットに挙げていますが、家入さんの心を打ったのは彼女のどんな部分?

「うーん……怨念って目に見えるものなんだって。すごく怖い。怖いんだけど、それがいい。逆に彼女自身はすごく愛に溢れた人なんだろうなって思います。そういえば「シャンデリア」は、大原櫻子ちゃんもライブでカバーしてましたよね。最近だとトーンズ・アンド・アイをよく聴いてます」

――声が特徴的ですよね。掠れ気味のダミ声なんだけどすごくチャーミングだし。

「この……サビに行くところ!“Ooh, I see you, see you, see you every time”のメロの持ってきかたがすごい!」

――家入さん、いまカバー曲のリクエスト企画をやっているじゃないですか?

「あ!洋楽のリクエストが来たらどうしよう(笑)」

――「Hello To The World」のカップリングで歌ったシンディ・ローパーだったり、「5th Anniversary Live at Zepp」の山口百恵さん、中森明菜さんのカバーみたいなサプライズがまたあるかもしれないってことですね。

「そうですね。どういうかたちで発表するかはまだ秘密なので、期待していてください」

――では最後に2020年の家入レオのビジョンを聞かせてください。

「うーん……2019年は自分にとって大事なものは何かということがわかった1年だったので、2020年はそれをちゃんと大事にする人になろうと思います。私はただ歌う人でありたいので、まずは自分としてちゃんと生きてゆく……その経験があるからこそ歌えると思うので、あたりまえの生活をあたりまえに送る。自分が満足できる自分であり続けたいですね。満足したその先にまた新しい壁があったとしても、自分が大きく羽ばたける場所はどこなんだろう?っていう冒険をしてゆくんだろうなと思っています」

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)
写真/柴田ひろあき





■家入レオ 16thシングル「未完成」リリース記念スペシャルフリーイベント
1月30日(木) @池袋サンシャインシティ アルパ B1F噴水広場(東京)
2月1日(土)@プライムツリー赤池 1Fプライムホール(愛知)
2月2日(日)@神戸ハーバーランド スペースシアター(兵庫)





家入レオ「未完成」
2020年1月29日(水)発売
初回限定盤A(CD+DVD)/VIZL-1719/1,800円(税別)
Colourful Records
家入レオ「未完成」
2020年1月29日(水)発売
初回限定盤B(CD+DVD)/VIZL-1720/1,800円(税別)
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家入レオ「未完成」
2020年1月29日(水)発売
通常盤(CD)/VICL-37518/1,200円(税別)
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