マルジェラによる芸術的実践の根底には、人間の身体に対する終わりのない探究がある。身体は、視覚的体制と触覚的体制という2つの競合的な枠組みが収斂する、歴史的な負荷を帯びた場として位置づけられる。彼の作品は、古典彫刻から現代美術に至るまで身体表象を形成してきた力学である顕在化と秘匿の狭間、露見と保護の狭間の緊張関係を呼び覚ます。

Martin Margiela, “TOPS & BOTTOMS (Faun / top)”, 2023,composite plaster, 117 x 39 x 39 cm © Martin Margiela. Courtesy of Bernier/Eliades and Taka Ishii Gallery Photo: “We Document Art"

《Tops & Bottoms》(トップス・アンド・ボトムス)と題された彫刻の連作では、ルーヴル美術館に収蔵されている大理石彫刻に基づいて、規範的な裸像が現代の下着の形状で切り出された。下着の本来の機能を反転させ、その内部にあるものを露見させることで、魅惑と疎外の狭間に緊張を生み出す。カーペットやシリコンといった素材が巧みに用いられることで、本展の各作品は特徴的なテクスチャーを帯びており、それが接触の感覚を想起させる。この枠組みにおいて、フェティシズムはコンセプチュアルな戦略として機能している。そこでは、身体の断片や物質的な痕跡は欲望や記憶の場となっており、それによって私たちの注意の対象は、生きた身体から物質の残余へと移行する。

Front: Martin Margiela, “BARRIER Sculpture (white)”, 2024,polypropylene, synthetic fur, 100 x 150 x 150 cm. Back: Martin Margiela, “BARRIER Mural (white)”, 2024, polypropylene,synthetic fur, 100 x 150 x 30 cm © Martin Margiela. Courtesy of Bernier/Eliades and Taka Ishii Gallery Photo: “We Document Art”

シュルレアリスムやポップアートといった歴史的なアートの潮流と共鳴するように、マルジェラは日常的な物体に特別な関心を寄せ、鋭い観察眼に基づいて、日々の生活の中にあるマテリアルを使用している。《Barrier Sculpture》(バリア・スカルプチャー)では、都市の環境で一般的に見られる保護バリケードの形状がフェイクファーで覆われた。こうした再文脈化のプロセスによって、それぞれの物体は通常の機能を超えて引き上げられ、詩的で不可解なアーティファクトとなっている。マルジェラによるミニマルかつ深遠な介入は、ありふれたものを──その慎ましい起源の痕跡を残したまま──異様なものに作り変えることで、丹念な注視や循環的な更新の実践を促す。一連の作品が示すように、物体の生は直線的でも有限でもない。それは常に新たな文脈に置かれることで、変異と再活性化の可能性に開かれている。

断片化は、マルジェラの全作品を通じて反復的に現れる特徴だが、それには常に不完全性の感覚が伴っており、そこから両義性と不可解性に満ちた様々なナラティブが立ち上がる。展示空間の入口近く、石のテーブルに置かれた《Black Nail Polish》(ブラック・ネイル・ポリッシュ)は、爪のような形をしたニンフェンブルク磁器製の焼成用具5点で構成されている。しかし焼成から生み出されるはずの物体は、明らかに不在のままである。同様に、組み立て前のプラモデルを思わせる《Kit (Black)》(キット・ブラック)が促すのは、まだ実現されていない完成形を想像によって投影することである。マルジェラの見えないもの、差し控えられたものへの継続的な取り組みは、鑑賞者を不完全性や沈黙に、そして存在と空虚の狭間の捉えがたい境界に直面させる。この文脈において、秘匿や不在が帯びるのは否定性ではない。それは、作品を想定外の共振や不意の顕在化へと開く、生成的な力として働く。

■マルタン・マルジェラ
会期:2026年4月17日〜5月16日
会場:タカ・イシイギャラリー 京都
住所:〒600-8442 京都府京都市下京区矢田町123
営業時間:木 – 土 10:00 – 17:30
定休日:日 – 水・祝祭日

■「MARTIN MARGIELA AT KUDAN HOUSE」
会期: 2026年4月11日〜29日
会場: 九段ハウス(東京)
料金: 一般2,500円(税込)

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