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──まずは、「真夜中のドア?stay with me」をカバーされた経緯からお聞きしたいです。

「すごいぶっちゃけて言うと、松原みきさんの「真夜中のドア?stay with me」は、1979年にポニーキャニオンさんからリリースされたんですよね。その曲が世界的にも注目されているということで、カバーをしましょうという企画が立ち上がって。縁のあるアーティストがいないかとなったときに、過去にポニーキャニオンさんからデビューしていた私達にお声がけいただき、今回やらせていただくことになりました。ただ、私が勉強不足で、曲のことをあまり知らなかったんです(笑)。まだお母さんのお腹にいた頃の曲なので」

──そうなんですね。ここ数年、日本のシティ・ポップが海外で人気があるという現状は知っていました?

「知っていました。周りのミュージシャンもすごく興味を持っていて、“昔の曲が今バズってるってすごくない?”という話をしていたので。最近の曲がバズるというのはあると思うんですよね。洋楽とあまり変わらないようなサウンドで作られていたりするので。でも、昔といいますか、大人達が本気で楽しんでいたJ-POPが海外で受け入れられているというのは、やっぱり嬉しいというか。ちょっと前までは“英語で歌わないと海外では通用しない”みたいな感じだったじゃないですか。でも、こうやって日本語の音楽が海外で聴かれて、それをカバーする方達もいたりして」

──かなり流暢な日本語で歌われている方もいらっしゃいますよね。

「そうなんですよね。日本の文化が好きな方が一定数いらっしゃいますし、日本語でもいけるようになってきたんだなっていう印象があって。私もジルデコでは主に日本語で、わりとメロディアスなものを歌っているので、こういうものをおもしろがってもらえるのであれば、希望が持てるなと思いました」

──海外でも聴かれているという話でいうと、イギリスのApple Music「J-Pop トップミュージックビデオ」で、JiLL-Decoy association feat.BASI(韻シスト)の 「イヤホンを外したら」が1位になったとツイートされていましたよね。

「これはなんだ!?って思いましたね。今までそういうチャートをあまりチェックしていなかったんですけど、見てみたら、なぜか2018年リリースの『Zinger』というアルバムが、アラブ首長国連邦で1位になっていたんですよ(笑)」

──へぇー! でも、何が起こってるんですか?

「それがまだ分からないんですよね。“これか!”っていうのが分かれば頑張れるんですけど、なぜなのかが分からないからやりようがなくて(笑)。何かアラブにアクセスしたことあったかな……。でも、そういうおもしろさはありますね」

──すごいことですよね。世界のどこかで自分達の曲がいきなり発火するっていう。

「元々、東南アジアにジルデコのカバーバンドがいて、YouTubeで観たりしていたんですが、そういう動きが広がっていくと、本当に日本だけじゃないところに発信していけると思いますし、いい時代だなと思いますね」

──マーケットに縛られない自由な感じはいいですね。「真夜中のドア?stay with me」は国内外問わず多くの方々がカバーされていますが、そちらを聴かれたりはされました?

「研究のために聴いたりはしなかったんですが、今回のお話が来る前から、友達のMs.OOJAさんが大々的にカバーしているのを聴いていて、そのバージョンがすごくよかったんですよ!これいいなぁ~と思って。だから、私はどうしようと思ったんですけど、一番自分達らしく演奏することを考えたときに、アレンジもこねくりまわさず、素直に歌うのがいいのかなと思いました」

──ピアノとベースという編成にされたのは、そういった理由からなんですね。

「そうですね。アレンジに関しては紆余曲折あったんですよ。最初は原曲から遠く離れていないほうがいいのかなと思って、その方向進めていたんですが、決め手になったのは、やはりJiLL-Decoy associationという名義で出すとしたら……という部分が大きかったかもしれないですね。これが完全に企画もので「feat.chihiRo」みたいな感じであれば、全然ありだったと思うんです。ただ、やっぱりジルデコを1年半休んでいるというのもあって、次の作品を大事に考えていたので、ジルデコらしさを優先させてもらいました」

──ピアノは竹田麻里絵さん、ベースは岩川峰人さんが担当されていて。旧知の仲でもありますよね。

「竹田麻里絵さんは、私が一昨年にソロ活動を始めたときから相棒みたいな感じで一緒にやってくれていて。岩川さんは元々ジルデコの正規メンバーだったので、もう何も言わなくても分かる関係というか(笑)。何の迷いもなくこの2人にお願いしました」

──レコーディングはどういう形で行なわれたんですか?

「この曲をジルデコらしくするためには、やっぱり生演奏でライヴ感のあるものがいいんじゃない?ということになって、よしきた!と。それで、1部屋で、みんなの音がかぶってやり直しが効かない状態で、一発で録りました。音源も動画も一緒に(笑)」

──動画も同時にですか!?

「もう超大変だったんですよ! 一回でも間違えたら最初からやり直さなきゃいけないですし、動画も撮っているから歌詞もガン見できないですし(笑)。もう最後のほうはヘロヘロになってました」



──想像しただけで胃が痛いです(笑)。あと、ドラムのtowadaさんはレコーディングとミックスを担当されていて。プレイヤーではなく、いわば裏方という形で参加されてますね。

「もちろんtowadaはドラマーですが、元々プロデューサー気質の男なんですよ。ドラムだけを叩いていたいというわけではなく、みんながハッピーになるにはどうしたらいいのかと、全体的なことを考えているので。だから“ドラム?いらない”っていう感じでしたね(笑)」

──録るにあたっていろいろ相談もされたんですか?

「そうですね。このバージョンで行こうということになったのは、この1年で培ってきたものの集大成みたいなところもあるんです。コロナ禍に入って、これからミュージシャンとしてどうしていこうかと考えたときに、みんなの安全を考えて何もしないのも正解ではあると思うんです。でも、やっぱり音楽家として音楽を発信し続けることも使命だと思っていたので、私達はオンラインライヴをどんどん重ねていったんですよね。失敗もいっぱいして、心がベコベコにヘコんだ日もありましたけど、もっともっと音をよくしたいと思って、色々なマイクを買ったり、機材を揃えたり、いろんな研究をしながらやってきて。会えなくてもリスナーとのコミュニケーションを守り続けるために作ってきた自分達の大事なものをそのまま作品にしようというところもありましたね」

──歌うにあたって心がけていたことはありました?

「たとえば、自分で歌詞を書いて、このメッセージを伝えたいと思ったら、しゃべるように、語るように歌ったりすることもあるんです。ただ、今回は人の曲で、人の言葉で、しかも職業作家さんが書いていらっしゃる歌詞なので、歌い手との距離を感じるというか。そこは、松原みきさんが実際に思っていることというよりも、松原さんがその主役を演じている素晴らしさがあると思うんです。なので、私も感情をすごく込めて歌うというよりは、演じるというか、ちょっと客観的な距離感で歌おうとは思っていました」

──歌詞に出てくる女性の心情をイメージしながら、曲に入っていく感じというか。

「そうですね。私が生まれた頃の女性ってどんな感じだったんだろうと思うと、昔のトレンディドラマの女性みたいな感じを想像しちゃうところはあるんですけどね。あとは、このドアはどっちから叩いたんだろうとか。この部分っていろいろ言われてますよね?」

──そうですね。サビの<真夜中のドアをたたき/帰らないでと泣いた>というところに関して。

「内側から叩いたのであれば、そのまま追いかければいいじゃんっていう。そういう話もありますけど、そうはいかない時代感というか。もちろんLINEなんてないし、そこで“行かないで!”と言って追いかけなければ、たぶんそのまま終わってしまうんでしょうし。そういうドラマ感というんですかね。なんていうか、今の歌詞ってわりと現実的なところがあるじゃないですか」

──なんかこう、余白が少ないというか、ツッコむ隙をあまり与えないというか。

「そうなんですよね。やっぱり80年代の歌詞ってそういう隙間がありますよね。“いや、追っかければいいじゃん”みたいなツッコミもできるんだけど、いや、そこはドラマの世界ですから、という。そこは夢があってかっこいいと思いますけどね」

──あと、今回は「真夜中のドア?stay with me(English ver.)」という英詞で歌われているものも配信されています。

「英詞はこのために書き下ろしてもらったので、他では誰も歌っていないんですよ。知り合いのシンガーで友達のKelpieにお願いしたんですが、日本語の歌詞をそのまま英訳すると、字数が全然足りなくなるところに苦戦していたんです。でも、意味を変えずに、彼女なりにニュアンスをちょっと足して書いてくれたんですよね」

──歌詞の内容を崩さずに言葉を付け足しつつ、なおかつ韻も踏んでいくという。

「もはやただの英訳ではなく、すごくクリエイティブな作業をしてくれたので、こちらとしてはその思いも一緒に歌いましたね」

──英語バージョンは日本語バージョンとは別でレコーディングされているんですよね。オケはそのままで、歌だけ差し替えたというわけではなく。

「そうすればよかった……って、後からすごく後悔しました(笑)。なんで一発録りにしちゃったんだろう……って。日本語バージョンはクリックを聴かずに録ったんですけど、英語のほうはクリックを聴きながら、それぞれで録っていますね」

──日本語で歌うのとはまた違うよさがあります?

「そうですね。やっぱり気持ちがいいです。原曲の「真夜中のドア?stay with me」も、もし英語で歌われていたら、サウンド的にはかなり洋楽みたいな感じじゃないですか。なので、洋楽を歌っているような気分はあったんですが、出来上がってみると、やっぱりJ-POPのメロディなんだなとも思いましたね。日本人の好きなちょっと哀愁のある感じで」

──すごく単純な感想にはなってしまうんですが、聴いていて、改めてchihiRoさんっていい声だなと思いました。

「最近そう言われるのが一番嬉しいです。たぶん、こういうメロディが私はちょっと得意なのかもしれないですね。AORも好きだし、大きなメロディを歌うと喜んでいただける傾向があるなって、最近ちょっと自覚しているところもあって。特に今回はシンガーの友達に「ハマるね」ってすごく言われたので、ちょっと参考にしようかなと思ってます」

──それを踏まえて生まれてくる曲も楽しみにしてます。chihiRoさんとしては、一昨年からchihiRo-Decoyとしてソロワークをスタートさせていて、昨年は『Jenga』というアルバムも発表されました。ソロとして活動することで、どんなことを感じました?

「ソロのときは、ジルデコとは全然違う曲の作り方をしていたんですよね。ジルデコの場合は、たとえば私が曲を作ったとしたら、ジャズのコードを付け直して、アレンジも完全に変えて、ジルデコのサウンドにするという過程があったんですが、ソロでは私が作ったほとんどそのままの状態で曲にして、ストレートに発信するということをメインにしていたんです。ただ、やってみると、全然違うようで同じだったというか。今、ジルデコの活動としてはアルバムを制作しているんですけど、表現の形は違うけれども、自分が歌いたいこと、みんなでハッピーになりたいねという気持ちとか、ちょっとでも世の中を良くしたいねというメッセージとか、そういったものは全然変わらないんだなと思いました」

──自分の根幹にあるものを改めて深く知ることができたと。

「たぶん、ソロ活動をしていなかったら、ジルデコの音楽を全部自分のものとして消化できなかったかもしれなかったというか。私は複雑なメロディじゃなくて、もっとシンプルなものを歌ったほうがみんなに喜ばれていたかもしれないという気持ちが、もしかしたらこれまでどこかにちょっとだけあったのかもしれないんですよね。それこそ「真夜中のドア?stay with me」みたいな曲を歌うと喜んでいただけるのはわかっていたので、私のボーカルをもっと活かせるもののほうが、もしかしたらいいのかもしれないと思っていて。それをソロで表現できて、これはこれでありだなと。だけど、やっぱり私はジルデコで表現したいものがまだまだあるなという気持ちになりました」

──先ほどお話にも出てきましたが、現在は新生ジルデコとしてアルバムを絶賛制作中なんですね?

「はい。これまでは3人でバンドという形で作品を作り続けてきたんですが、音楽を作る上で大役を担ってきたkubotaが脱退したことが、やはり私達には大きくて。ドラムとボーカルのユニットになってしまったので、2人で演奏すると、ものすごくアバンギャルドになるじゃないですか(笑)。なので、これからのジルデコは、バンドというよりはプロジェクトチームになるんだねという話をしていまして」

──なるほど。

「ただ、これまでもそうなんですが、今まで本当にたくさんのミュージシャンがジルデコに関わってくれましたし、それもあって最後に“association”とつけていたんですよね。これをつけておくことで、今まで一緒にやってきた仲間達も自分達と上がっていけるからという気持ちでつけていたんですが、それが今頃になって効いてくるというか(笑)。今回はデビュー前から関わってくれているミュージシャンが、入れ替わり立ち替わりスタジオに来てくれたり、曲も作ってくれたりしていて。だから、ジルデコと愉快な仲間たちというようなチームで作っていますね」

──どんな雰囲気の作品になりそうですか?

「基本的には生楽器の演奏を、いい音でお届けしたいというのがあるんですけども、ジルデコらしいジャジーな感じ……とは言ったものの、今のところスウィングの曲がないですね(笑)。スムースジャズとか、ちょっと昔懐かしい感じの雰囲気を今やるとおもしろいかもしれないなと思って取り組んでいたりもしていて。前作の『ジルデコ9?GENERATE THE TIMES?』は、「これがジルデコのジャズです!」という感じだったので、今回は益々ジャンルに囚われないジルデコっていう感じかもしれないですね。人が聴いてすぐに“ジャズだね”って言うものではないかも……いやぁ、説明するのが難しい!これはもう聴いてもらったほうが早いですね」

──楽しみにしてます。そして、デビュー日の前日である6月6日に、渋谷ストリームホールでデビュー15周年を記念したスペシャルライヴを開催されます。

「ホーンセクションも入れたバンド編成でのライヴが1年半ぶりなので、自分達もどうなるのかちょっとわからないところもあるんです。ただ、今までのジルデコとネクストウェーブみたいなところをしっかりと刻み込めるといいなと思っていますね。今の世の中の状況的に、この先ライヴをバーッ!とやっていけそうな感じでもないので、これからガンガンいくよ!という雰囲気になりにくいところもあるじゃないですか」

──また少し難しい方向に進んでいますし。

「はい。ただ、ここから再始動と決めたライヴですし、ジルデコの活動が全然ないのにずっと応援し続けてくれている方々もいるので、まずは報告といいますか。大丈夫ですよ!と。ちゃんと前に進んでいることを報告できるライヴになるといいなと思っています」

──デビュー15周年イヤーとして、他にもいろいろと企画を考えられているんですか?

「6月に東京でライヴをやった後、名古屋、大阪、札幌、福岡も廻るんですが、ただ、みなさん同じだと思うんですが、先の予定を組みにくい状況ではあるんですよね。でも時代と向き合いながら柔軟にやっていこうと思っています。デビュー15周年ですし、来年は結成20周年なので、2年にわたってじわじわとやっていこうかなと思っています」

(おわり)

取材・文/山口哲生





JiLL-Decoy association

JiLL-Decoy association(ジルデコイ・アソシエーション)
2002年結成。メンバーはchihiRo(vocal)とリーダーのtowada(drums)。2006年メジャーデビュー。ジャズ、ポップス、ロックをベースにしたオリジナリティあふれる楽曲、愛に満ちた歌が多くのファンを魅了している。2013年にはアルバム『ジルデコ5』が「第55回日本レコード大賞」の優秀アルバム賞を受賞。A-HAの「Take on me」をジャズアレンジしたMVが話題を呼び、海外のテレビでも紹介される。ビルボードライブ東京、東京ジャズや日本全国のジャズフェス、国内最大級のロックフェスRISING SUN ROCK FESTIVALにも出演し、その存在を確かなものに。デビュー15周年を迎える2021年、『ジルデコ10~double~』をリリース。



■ジルデコ デビュー15周年 スペシャルライブ ジルデコ10 “double” at SHIBUYA STREAM Hall
2021年6月6日(日)@渋谷ストリームホール

激動の2020年を経て、10枚目のアルバム『ジルデコ10”double”』リリースとともに、新体制で再始動。デビュー15周年記念日の前夜となる6月6日、1年半ぶりのライブを開催。







JiLL-Decoy association
JiLL-Decoy association「真夜中のドア?stay with me」
2021年3月31日(水)配信
ポニーキャニオン
JiLL-Decoy association
JiLL-Decoy association「真夜中のドア?stay with me(English ver.)」
2021年4月14日(水)配信
ポニーキャニオン






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