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SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第20回のゲストはKEITA MARUYAMAの丸山敬太さん
2010年代最後であると同時に20年代に向けた最初の提案となった今シーズン。コレクション直前、長年シャネルを手がけてきたカール・ラガーフェルドが死去したことも話題となった。
そうした中で、パリコレクションやトレンドをリードするラグジュアリー系ブランドでは、原点回帰やクラシックと革新がキーワードに浮上。テディガールをテーマにしたディオールを始め、伝統の象徴であるチェックやフローラルモチーフ、反逆の象徴であるサブカルチャーやロック、パンクなどが登場した。
コレクション会期中にもデモの影響で交通規制が行われ、一部の駅が閉鎖されるような状況はコレクションにも影響を与えている。「ジレジョーヌ(黄色いベスト)運動」を目の当たりにし、自分の若かった頃、デモに参加し抗議運動の中いたことを思い出し、自分たちで身を守るカモフラージュ柄やケープを提案したというミウッチャ・プラダのミュウミュウなどメッセージ性の強いコレクションも目を引いた。
様々な時代や様式の美を組み合わせたジバンシィなどマスキュリンとフェミニン、ミリタリーやテーラードと繊細なレースやスパンコールを駆使したドレスなど、相反する要素の組み合わせや、様々な時代軸や年代軸をミックスさせたスタイルなども続いている。大きな肩やオーバーサイズのシルエットなどを使った80年代を思わせる力強い女性像を見せたサンローラン。テーラードジャケットとプリーツスカートを組み合わせた70年代スタイルで新しいシルエットを見せたセリーヌ。デジタル時代にアナログのコミュニケーションが見直されたり、絵画が修復されるようにクラシックを再構築したロエベなど様々な時代のスタイルを自由に選んで、楽しめるような提案が増加。色も黒や白、赤などのベーシックカラーと原色の美しい色、ゴールドまでが使われた。
また、革新的なスタイルを得意としてきた日本人デザイナーのブランドでは、自然と未来、原点回帰などがキーワードになっている。イッセイミヤケは自然からのインスピレーションを、バッグブランドのバオ バオ イッセイミヤケなどとも共通する日本の最新技術を駆使した素材やテクニックで表現。ヨウジヤマモトはデザイナーという職業が生まれる前の時代のカッティングやディテール、子供のような絵を取り入れることで、服作りの原点を模索した。サカイもデザイナー自身が若い頃にビンテージドレスの上にキッズの服を着ていたことに戻り、Aラインをシェイプさせたデザインや、色を抑えリアリティーを追求したデザインなどを見せた。アンリアレイジもここ数年続いたハイテク素材に変わり、日常的なアイテムを非日常に仕上げるというブランドの原点に回帰。ビューティフルピープルはコムデギャルソンのパタンナー出身であるデザイナーのキャリアとブランドの原点に戻り、トラディショナルでもアバンギャルドでもない服にチャレンジした。その他のブランドも日本的なモチーフやデザイナーの得意とするデザインを追求したコレクションが目立った。
その他の若手や注目デザイナーでも、日常やリアル、ストリート、スポーツなどと、SMを彷彿させるフェティッシュ、クラシックなどのキーワードをリミックスしたスタイルが目を引いた。マリーンセルはファーを使ったゴージャスなデザインやチェックのクラシックスタイルとボンデージや未来的なムードを組み合わせ、コーシェはスポーツとクチュールやストリートを融合。マニッシュアローラはインスタグラムで受けそうな東京のかわいい、都会的なスタイルやアフリカをリミックスした独特のスタイルに呪術的なムードをプラスして見せた。
デザイナーたちは伝統や自然など原点に立ち返りながら、相反する要素を融合したり、世界情勢へのメッセージや未来に向けた提案をプラスしたりすることで、2020年代へのステップを踏み出そうとしているようだ。
取材・文/樋口真一