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――緑黄色社会の音楽って、J-POP的な分かりやすさと、4人それぞれが受けてきた影響が素直に出ていてユニークですね。

小林壱誓(Gt/Cho)「僕ららしさって、結構、王道を突き詰めることなんじゃないかなっていうのはすごく思いますね。みんないろんな音楽を聴くんですけど、音楽の入りがすごいポップでメジャーなものだったので、自分たちが作っていくものもそこに照準が当てられていくって感覚があって。王道を攻めるっていう」

――小林さんにとっての王道とは?

小林「僕はYUIさんや、バンドだったらBUMP OF CHICKENさんとか聴いてて。耳馴染みのよいメロディに乗った歌詞を、上手なボーカリストが歌い上げるっていうスタイルがまずあって。だけどよく聴くとすごい変なことやってたり、面白いことやってたりっていう仕掛けみたいなことも含めて、それが王道なんじゃないかなと思ってます」

――いま、小林さんがおっしゃったようなことは4人で共有できていますか?

長屋晴子(Vo/Gt)「共有っていうより根付いてますね。あまりそれについて話し合いはしないんですけど、みんなその感覚や認識はもともと持ってたというか」

――みなさんの好みはバラバラだそうですが、絶対的なルーツになってるものってありますか?

Peppe(Key/Cho)「私は、母が80年代の洋楽好きで、クルマでほんとによく流れてたんですよ。それが何の曲かというより、“洋楽だ”ぐらいにしか思ってなかったんですけど、いちばん、自分に入ってるなと思うのは、バックストリート・ボーイズとか、聴きやすい感じの洋楽が結構ルーツになってて。その後、自分でテイラー・スウィフトとか聴くようになって、そっち系の洋楽は染み付いてるし、日本でも西野カナさんとかSMAPさん、ドリカムさんとか、大きなステージに立たれる方のライブにずっと行ってたんで、そういうポップな部分が基盤にあります。特に作曲面では影響が出てると思いますね」

小林「僕は母親がダンスの先生なので、幼い頃からダンスやってて。主にジャズダンスなんですけど、クラシックバレエ、コンテンポラリー、ヒップホップとかいろいろかじってるんです。その影響で日本のポップスと言われるものとか、洋楽のポップスと言われるものを自然に聴いて、体を動かしてたんで、なんか誰がどの曲を歌ってるとか結びついてなくても、そういう音楽が体に染み付いてるって意識はあって。だからそれがルーツなんじゃないかなと思います」

――長屋さんはいかがですか?

長屋「私は物心ついた頃から、歌うことが大好きだったんですよね。いろんな音楽がクルマとかテレビで流れてくるなかで、耳に入ってきたのが、女性シンガーが多くて。特に好きだったのが大塚 愛さんといきものがかりさんで、よく歌ってましたね。なので、たぶんそれがルーツなのかなと思います。ただちょっと私の性格的にひねくれた部分があって、中学校ぐらいの時に人と違うことをしたい気持ちとかあるじゃないですか。その時にバンドに興味持ち始めて、その頃はちょっとネガティヴな要素がある歌詞だったりとか、アレンジやサウンドの凝った楽曲を聴いてましたね。その時好きだったのはPeople In The Boxさんとか。作曲面ではちょっとそういう要素も入ってるのかなという感じです」

――穴見さんは?

穴見真吾(Ba/Cho)「これ、ギターの小林の話と繋がる部分もあるんですけど、僕のお母さんもクラシックバレエの先生で。クラシック音楽をずっと聴いてて。プラス、父親がめっちゃ音楽好きで、80年代のニューウェイヴ、パンク、ソウル、ファンクとかを無意識に聴いて育ったんです。で、自分で聴こうと思った時にいちばんハマったのが東京事変とレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。もうそこが僕の軸になってますね」



小林壱誓(Gt/Cho)

長屋晴子(Vo/Gt)



――今回のリード曲、「あのころ見た光」はバンドにとって大きな曲になったんじゃないでしょうか。これはどういうふうにできたんですか?

peppe「これは2年前ぐらい、20歳過ぎた頃にはもう曲があったんです。まだ大学を卒業する前で、まわりが就活を始める時期で、私も未来のことをちゃんと考えるようになった時に、“明るい未来がいいな”っていうぼんやりした思いなんですけど、光を見たくて、明るくて、未来が開けるような曲を作りたいなと思ってできたのがこの曲なんです。そのあとに壱誓が、そういう気持ちを踏まえて歌詞をつけてくれたんです」

――大学時代はもう音楽をやっていくことは決めていた?

長屋「決めてはいたんですけど、明確に何をしたらいいかとか、ぼんやりし過ぎていて、夢はあるけどどうしたらいいのか?っていう時期でしたね。その20歳、21歳っていう時は。なのにまわりは企業も決めて、こういう種類の職に就きたいっていうのがどんどん確立してるのがかっこよく見えて、ほんとにもどかしい時期ではありましたね」

――そこから今の歌詞になるまで時間があったと。

長屋「最初の歌詞は、小林が21歳の時に書いてくれたんですけど、それは21歳の目線過ぎたんですよね。だから現状の不安とか葛藤でしかなかったんですよ。それだとあまりにも狭いというか、広く届かないなと思って、一回置いておいて、ちょっと時間が経ったいまの私たちの視点で、小林と私で歌詞を書き直したんですね。21歳を乗り越えた視点でもあるので、さらに広い歌詞になったなって思います」

――面白いなと思ったのが「視線」なんですけど、Aメロはトラップっぽいビートですが、あれは誰の発想ですか?

穴見「この曲は久しぶりにスタジオでみんなで作った曲で」

長屋「ふだんは各々家でパソコンで作って、データのやり取りって感じなんですけど、最初、それでやってて、どうもやりすぎちゃってたところがあって、アレンジに手を加えすぎてたんですよね。なんかピンとこない部分があって、行き詰まって、じゃあ1回、昔みたいにスタジオでいっしょにやってみようよって、一旦、シンプルにやってみたらすごくハマって、そこから進めていった感じです」



Peppe(Key/Cho)

穴見真吾(Ba/Cho)



――そしてミニアルバムのタイトルに繋がってるのかな?と想像するのが「サボテン」なんですが。これは長屋さんはどういうふうに?

長屋「自分の話だったり、まわりの話だったりとかを聞いていると、自分の恋愛観っていうのは気持ちを注ぎすぎてうまくいかなくなる恋愛なのかな?と。結構サボテンに似てるなと思って、そこから始まったんですけど。サボテンって育てやすいイメージがあると思うんですけど、意外と繊細で、水をやらなくてもダメだし、やりすぎても枯れちゃうみたいで、そういうのを恋愛にあてはめて作った曲ですね」

――ここで想いと水をイコールでつなぐとアルバムタイトルにも繋がってくるのかな?と思って。

長屋「そうですね。水を注ぎすぎてダメになったかもしれないんですけど、でもその気持ち自体は間違ったことじゃなかったっていう、私の個人的な考えなんですけど、それは音楽にも言えることなのかなということで、タイトルにもそのニュアンスを入れています。私たちの音楽に対する気持ちとか、私たち4人だと4パターンとか、いろんな考え方があるんですけど、それはひとつひとつ絶対無駄じゃないし、間違いでもないしっていう。溢れてもいいから、どんどん広がっていけばいいかなっていう気持ちですかね」





――穴見さんが書いた「Never Come Back」は異彩を放ってて、かっこいいですね。

穴見「ありがとうございます。僕のミクスチャー愛がふんだんに入っております(笑)。ほんとに初めての感じで。ま、そうなった理由は、作詞作曲がメンズふたりの初タッグっていう。各々作ってたんですけど、僕と小林の組み合わせは初めてでした。それがいちばん出てると思う」

――アコギのカッティングはエスニックな感じで、ビートはダンスミュージックなのも新鮮です。

小林「真吾が上げてきたデモの時点で、そのアコギのカッティングから始まってて、僕はこの曲がどうしてもやりたいな、このままストックの中に埋まってて欲しくないなって曲だったんです。緑黄色社会で長屋晴子が歌うと絶対面白くなると思って、“歌詞書かせて”って言ったら“いいよ”っていう形で進んで。で、長屋に歌ってもらったら案の定面白いものが出来上がって、やってよかったなってすごい思ってます」

――そして「Bitter」は女子タッグの詞曲なんですよね。男子が甘いもの好きな設定になってるのはなぜですか?

長屋「歌詞は私が書いたんですけど、私が甘いもの結構苦手っていうのもあったんですけど(笑)。人間的にも人に甘えられないタイプだったりするので、ちょっと甘い女の子に憧れた歌詞でもあって。あとは、曲調とか歌詞の言葉選びの感じは――先にpeppeの曲があってあとで歌詞をつけたんですけど――ちょっとpeppeぽさを意識しました」

――同じ方向を向いてる同士でやるバンドとまた違ってて面白いですね。でも皆さんにとってはそれが当たり前になってる?

穴見「なんか同じジャンルの音楽やりたい人たちが集まったらつまらないかもしれないって、最近思うんですよ。最近音楽始めたとして、いま、バンドを始めるってなったら、音楽の趣味が合う人や、やりたい音楽がいっしょの人を探すじゃないですか。それだと“こういう音楽やるよね”って見えちゃってて、なんか投げかけがないというか……」

――影響された音楽を超えられない?

穴見「そうですね。だからこの4人でいるのかなというか。いまのところ“緑黄色社会といえばこれだよね”というのが、いい意味であんまりないというか……そこが僕らにとって、ずっと新しいものを作っていきたい気持ちに繋がってると思います」

――いま、J-POPってひとことで言うのが難しい時代だと思うんですが、緑黄色社会にはひさびさにJ-POPの定義を更新してくれそうな予感がしています。ところで直近の目標はなんですか?

小林「“直近に実現させたい目標”でもいいですか?(笑)だとしたら、武道館のライブ。やっぱり夢です。後は「緑黄色夜祭」って僕らの企画イベントがあるんですけど、今まで8回やってて、15回目ぐらいにはスタジアム規模でやりたいですね(笑)」

――緑黄色社会って名前のインパクトも強いし、“緑黄色といえば?”みたいになりつつあるのかも。

長屋「それは結構、昔から言ってて、検索キーワードとかで、緑黄色の次に出てくる言葉が“野菜”じゃなくて、あたりまえに“社会”って出てくるような存在にはなりたいですね(笑)」

(おわり)

取材・文/石角友香
写真/柴田ひろあき



■緑黄色社会ライブツアー「溢れた音の行方」
12月8日(土)BIGCAT(大阪)
12月15日(土)cube garden(北海道)
12月21日(金)マイナビBLITZ赤坂(東京)

■MERRY ROCK PARADE 2018
12月24日(月)ポートメッセなごや(愛知)

■COUNTDOWN JAPAN 18/19
12月31日(月)幕張メッセ国際展示場(千葉)

■KOZA RIOT2019
2019年1月26日(土)ミュージックタウン音市場(沖縄)





緑黄色社会『溢れた水の行方』
2018年11月7日(水)発売
ESCL-5118/1,852円(税別)
エピックレコードジャパン




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