高崎晃、二井原実に聞く80年代のLOUDNESS

この11月に発売を迎えるLOUDNESSの『THUNDER IN THE EAST 30th Anniversary Edition』が、早くも話題を集めている。1985年に生まれ、世界に向けて放たれたこの通算第5作目にあたるアルバムを、実際のところ当事者たちはどのように位置づけているのだろうか。全米ツアー(10月15日に開幕)に向かう直前の高崎晃と二井原実をつかまえ、話を聞くことが出来た。まず高崎は、次のように語っている。

「あのアルバムは、欧米とかでは自分らの代名詞というような感じになっているんで。海外ツアーに行っても一番リクエストが多いし、やっぱり俺らの代表作やねんな、というのは海外ツアーに行くたびに実感させられてますね。あのアルバムの曲を中心にしたツアーをやってくれないか、というようなリクエストがあったりもするし」

この発言を受けて二井原が補足する。

「ちょうどあの作品から今年で30年になるんで、あのアルバムの中から多めにやるコンサートを日本でもやろうということになったら、じゃあこっちでもそういうのをやってくれ、と。そういうオファーが相次いだんです」

LOUDNESSというバンド名から世界の誰もがまず最初に連想するのが、『THUNDER IN THE EAST』。そうした現実が確実にあるのだ。高崎は、次のように話を続けている。

「サインしてくれって差し出されるのは、やっぱり大概あのアルバムのジャケットなんですよ。実際の話、LOUDNESSのアルバムのなかで累積では一番売れてると思うんだよね。サウンドシティ(この作品が録られたロサンゼルスの名門スタジオ)の壁にもそのプラチナ・ディスクが飾られてたりするんで。あとはアルバム・ジャケットの印象がすごく強い。クラシック・ロックのファッションの一部のようになってるというか。LOUDNESSをあんまり知らなくてもあれがカッコいいからという理由でTシャツを着てくれるような若い子もいるし、それはバンドにとっては喜ばしいことやしね」

今回の30周年記念作品には、奇跡的に発掘された当時の秘蔵映像がふんだんに収録されている。これぞまさにあの当時、日本のファンが喉から手が出るほど欲していたものだといえる。それこそ「LOUDNESSに全米が熱狂!」などと報じられても、その様子をリアルには体感できない苛立ちをファンはおぼえていたはずだが、それが実に30年の年月を隔てて解消されるわけである。

二井原が「レポートと写真だけでは臨場感までは伝わらなかったでしょうからね」と言えば、高崎も「当時の様子は音楽専門誌とかに載せてもらえてはいいたけど、今と違ってインターネットもなかったから、やっぱりタイムラグがあって」と振り返っている。

そして当時の全米ツアーのハイライトともいえるのが、M?TLEY CR?Eのスペシャル・ゲストとして、ニューヨークの殿堂、マジソンスクエアガーデンのステージに立ったという事実だ。やはりそこには特別な感慨があったはずだが、高崎に尋ねてみると「やっぱり70年代、マジソンのスポーツバッグが流行ったんでね(爆笑)。だいたい中学生男子の半分くらいはあれを持ってたんちゃうかと思うんで」と昭和テイストのジョークを飛ばしてきたが、その横で笑いながら、二井原は次のように話していた。

「LED ZEPPELINの映画でさ、メンバーを乗せた車が螺旋状の階段を昇って楽屋に向かうシーンがあるじゃないですか。あれと同じように我々もリムジンに乗って、楽屋に向かって。ああこれはZEPPELINと一緒やな、と。ただ、個人的にはあまりにも“雲の上の場所”という感じで、ちょっとピンとこなかったですね。ホントに慌ただしかったから……。あのコンサート1本だけだったら逆に感動的な思い出として残ってたかもしれないけど、あの前後に同じレベルの会場とかもっとデカい場所でもやっていたから、広さ的にもべつに驚くような話でもなかったし」

2万人収容規模のアリーナ。そうした会場での演奏は、特筆すべきものではなくごく日常的なものだったというわけである。さらに高崎は、同公演の当日、意外にも緊張がなかったことを認めている。

「お客さんはみんなM?TLEY CR?Eを観に来てるんやろうと思ってたから、俺らは結構気楽でね。逆にM?TLEYの側は初のマジソンということで結構ナーバスになっていて、普段あんまり来たりもしないのにLOUDNESSの楽屋にも顔を出したりして(笑)。向こうではオープニング・アクトにあんまり興味なかったら、みんな会場の外に出て酒呑んでたり喋ったりしてるじゃないですか。でも実際は、LOUDNESSが始まる頃になったらもうほぼ満員に近いぐらいの状況で。その頃は「CRAZY NIGHT」もMTVでかなり流れてたし、ラジオでもヘヴィ・ローテーションになっていて、“日本のバンドってどんなんやろ?”というのがあったんだろうと思う。確かあのツアーでは、俺らの持ち時間が45分ぐらいやったかな。だからそんなに長くはないんだけど、その短い時間の中にかならずドラム・ソロとギター・ソロを入れていて(笑)。それがあの頃の特徴やったな。そこはちょっといわゆるL.A.メタルとは違うところやったと思うね。しかもドラム・ソロもウケてたしね。“もっと曲やったほうがええんちゃうか?”と言うと、樋口(宗孝/2008年に他界したドラマー)さんが“曲よりドラム・ソロの時のほうが歓声デカいやんけ”みたいなことを言ってきて(笑)。すると今度はギター・ソロも長くなる、みたいな(笑)」

バンド内でプレイヤー同士が火花を散らす。まさにLOUDNESSらしい逸話だが、こうしたツアーにつきものなのは、ツアー・バスに揺られ続ける生活の辛さだ。当時、何がいちばん辛かったかを尋ねると、高崎からはやはり「移動そのものやな」という答えが返ってきた。彼は次のように言葉を続けている。

「ライヴをやることについては、俺らも好きでやり始めたことだし、夢に向かってやってるわけだから、それはもう幸せな時間で。だけど移動の時間というのが大変なんですよね。ただ、俺らの場合はデカいツアー・バスを2台チャーターしてもらえてたんです。スタッフ用とメンバー用。1台だけだと、スタッフの時間に合わせて動くことになるんで、そこで贅沢に2台押さえてもらえてたのは恵まれてましたね。ただ、それでも走る時間は一緒なんで(笑)。毎日8時間とか10時間とかは当たり前で」

二井原はさらに、次のように付け加えている。

「しかもアメリカの場合、今日は真夏だと思ってたのに翌日目覚めてみたら雪が降ってる、みたいな(笑)。それぐらいの距離をバスで走るからね。国内で時差もあるし。あとは食事の問題。僕らの場合、ツアーの途中で炊飯器と米を買い込んで、なんとかご飯と味噌汁の食事をできるようにして……。そうじゃないとずっとピザとハンバーガーが続くでしょ。それはさすがに厳しいね、と」

しかも二井原の場合には、バンドのスポークスマンとしての重責があった。そうしたバス移動中にも、各国からの電話取材などに応えなければならなかったのだ。もちろんすべて英語で、通訳を介さずに、である。

「夜中に起こされて、イタリアのラジオ用のインタビューだ、とかね。そのためにバスを停めて取材に応えるんだけど、当然みんなは眠ってるんです(笑)。次に向かう街のラジオ用のインタビューとかが急に入ったり。もう容赦なしに2時間おきぐらいに起こされるんですよ」

高崎もこの発言を受けながら「あれはもうホンマには大変やったと思うな。ラジオに生でニイちゃんが出てくれたり、ほんまにスポークスマンとして働いてくれて。だけど、そんだけの経験を積んでるから、彼は今も英語、バリバリですからね」

二井原は「いやいや、そんなことないですよ」と謙遜してみせるが、実際、彼にしても元から英語が堪能だったわけではない。他のメンバーたちよりも先にアメリカに渡って英会話の特訓を受け、インタビュー対応の練習を重ねていたからこそ、そうしたことが可能になっていたのだ。

そして、そうした30年前の精力的な活動が、今になってふたたび大きく開花しようとしている。次回は、50代半ばを迎えている彼らの現在について、訊いてみることにしよう。
(つづく)

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聞き手/増田勇一(ますだ・ゆういち)
音楽雑誌『BURRN!』副編集長、『MUSIC LIFE』編集長を経て、現在フリーライターとして活躍中。制作を手掛ける雑誌『MASSIVE』Vol.20(表紙巻頭特集=THE MORTAL)が10月13日に発売される。

“YOUNG

『THUNDER IN THE EAST』リリース直前の彼ら
「YOUNG GUITER 1985年1月号」(シンコーミュージック)の記事より



 

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LOUDNESS『THUNDER IN THE EAST 30th Anniversary Edition』
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四六判/224ページ(予定)
ISBN978-4-8456-2717-2
発行リットーミュージック
http://www.rittor-music.co.jp/books/15313001.html

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