「All the Greatest Dudes Tour 2025 "Another One"」東京・恵比寿The Garden Hall公演のオフィシャルライブレポートが到着した。

昨年11月にメジャーデビュー10周年記念ベストアルバム『All the Greatest Dudes』をリリースしたGLIM SPANKY。それを携え全国8都市を回るワンマンツアー『All the Greatest Dudes Tour 2025』を今年2月から3月にかけて行った彼らが、アンコールツアー『All the Greatest Dudes Tour 2025 "Another One"』を、6月27日から全国7ヶ所で開催した。

今回のツアーは、ベストアルバム収録曲の中から「前回やりきれなかった楽曲」を中心にセットリストが組まれている。デビュー以来、オーセンティックなロックミュージックはもちろん、サイケデリックロックやアシッドフォーク、シティポップ、さらには現在進行形のJ-POPまでさまざまな要素を取り入れながら、唯一無二のオリジナリティを獲得してきた彼ら。その懐の大きさ、無尽蔵なまでの引き出しの多さを見せつける圧巻の2時間となった。

筆者が観たのは7月11日、東京都・恵比寿The Garden Hallにて開催された公演。本ツアーが実現するきっかけとなった大阪府・味園ユニバースでの閉店前ラストライブを皮切りに、岡山県・YEBISU YA PRO、福島県・郡山HIPSHOT JAPAN、そして新潟・NIIGATA LOTSを経ての、これが5公演目となる。定刻となり、暗転したステージにサポートメンバーの武並J.J.俊明(Dr)、栗原大(Ba)、杉本亮(Key)とともに、松尾レミ(Vo, Gt)と亀本寛貴(Gt)が姿を現わす。

会場全体を振わせるような大歓声が湧き上がる中、まずは5月12日にリリースされた最新曲「衝動」からこの日のライブをスタートした。クイーンの「We Will Rock You」やジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの「I Love Rock ’n’ Roll」を彷彿とさせる、力強いドラムとアンセムコーラスによって、オーディエンスのボルテージは序盤から一気に上昇していく。

シンプルかつヘヴィなスタジアムロックかと思いきや、意表をつくセクションを途中に挟む「衝動」の緻密なアレンジに唸っている間もなく「TV Show」へ。松尾がトレードマークの赤いリッケンバッカーギターをかき鳴らし、人力ブレイクビーツともいうべき独特のドラミングと抑揚の効いたメロディラインが、サビのカタルシスを一層引き立てるライブの定番曲である。

咽び泣くような亀本のエレキギターに導かれ、疾走感あふれるロックナンバー「不幸アレ」のイントロが繰り出されると、オーディエンスは拳を振り上げながら大きな掛け声で応える。サビはリズムが倍になったり半分になったり、まるで軌道の外れたローラーコースターで爆走しているかのようだ。

奇しくも同じキーを持つ楽曲が3曲並び、それによってGLIM SPANKYワールドへと一気に引き込まれたところで「サイケデリックコーナー」へ。松尾が自身の趣味を炸裂させたという「BIZARRE CARNIVAL」は、跳ねるようなリズムに乗り、入り組んだコード進行とファルセットを駆使した彼女のボーカルがふわふわと舞う。続く「The Flowers」は、ベースがペダルノートを用いた浮遊感あふれる楽曲。アシッドフォークやスワンプロックのエレメンツも随所に散りばめられており、聴くたびに新たな発見がある。ギブソンSGを抱えた松尾と、同じくギブソンのレスポールを抱えた亀本が、向き合いながらギターを奏でる様子にも胸が熱くなった。

初期ディープパープルの持つサイケデリアを現代にアップデートさせたような「THE WALL」は、まるでインド音楽のラーガをも彷彿とさせるメロディが肝。一転して雄大なランドスケープが広がるアーシーなサビとの鮮やかなコントラストも魅力的だ。音源ではLOVE PSYCHEDELICOとコラボを実現した「愛が満ちるまで」は、パーカッションのリズムに乗せ松尾のアコギと亀本のスライドギターが絡み合う、ザ・ローリング・ストーンズの「Sympathy for the Devil」を思わせる、サイケで呪術的なアレンジ。曲の後半では亀本がステージ中央の縁に立ち、体を弓のようにしならせ速弾きギターソロを放つとフロアは大歓声に包まれた。

ここで、ファンへのアンケートで上位に入ったという「吹き抜く風のように」を披露。3rdアルバム『BIZARRE CARNIVAL』のリード楽曲で、ささくれ立つギターのアルペジオに絡む抑揚を抑えたメロディが、サビで一気に跳躍する。〈どこにもない 縛られるものなどない/宗教や戦争も 僕にはないのさ〉〈転がる石の様に 吹き抜く風の様に/ブレやしない魂を 握りしめていく〉という歌詞は、今のこの世界情勢の中で聴いているとまるで「祈り」のようにさえ聴こえる。杉本が歌うサビのハーモニーが、この美しいメロディを立体的に引き立てていたのも印象的だった。

ライブの鉄板曲「怒りをくれよ」で最初のクライマックスを迎え、ここからはGLIM SPANKYのポップス面を強く打ち出す楽曲を続けて披露していく。まずは、恋愛バラエティ番組『恋のLast Vacation 南の楽園プーケットで、働く君に恋をする。』のために書き下ろした「ラストシーン」。メジャー7thコードの響きや、どこかシティポップやニューミュージックのエッセンスを内包するメロディなど、GLIM SPANKYとしては異色でありながら「らしさ」もしっかり感じさせるのはさすが。松尾はマイクを手に持ち、ステージを歩きながらオーディエンス一人ひとりに語りかけるように歌っている。さらに、跳ねるような栗原のベースと歪みまくった杉本のエレピがベックの「The New Pollution」にも通じる「HEY MY GIRL FRIEND!!」、アコギの弾き語りから始まるフォークロックな「話をしよう」と、バラエティ豊かな楽曲でオーディエンスを魅了した。

「ポップなGLIM SPANKY」から一転、ここからは彼らのマニアックな側面をフィーチャーするライブイベント『Velvet Theater』の世界観を再現する、松尾いわく「ヴェルヴェット・“ミニ”・シアター」を展開。稲垣足穂の『一千一秒物語』やマックス・エルンストの版画にインスパイアされつつ、インクレディブル・ストリングス・バンド的なブリティッシュトラッドを下敷きに作られた名曲「闇に目を凝らせば」から、照明をぐっと落とし、まるで夜明け前のひっそりとした孤独感や寂寥感を音像化したかのような「ストーリーの先に」と繋げ、彼らが作り出すサウンドスケープの深層に触れた後は、「うだる夏の熱帯夜」をイメージしたという「Hallucination」へ。ラテン風味のビートに乗せ、松尾が「パヤパヤスキャット」を歌い上げると、フロアはハンドウェーブが巻き起こった。

ここからライブはラストスパートへ。ヘヴィなリズムとギターリフに乗せた、GLIM SPANKYの決意表明ともいる歌詞を歌い上げる「The Goldmine」、疾走感あふれる「Fighter」、そして『ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編― 』の第4話エンディングテーマとして書き下ろされた、どこかオリエンタルな響きが彼らの新機軸ともいえる「赤い轍」とたたみかけ、「最後に雄大な宇宙の旅へ出かけましょう」と松尾が呼びかけ、「Circle Of Time」を演奏して本編は終了。アンコールでは、GLIM SPANKYがデビュー時からずっと歌い続けてきた代表曲「大人になったら」と、〈どこへ逃げても 追い掛けてくる影を/振り返らず光へ進めよ〉〈輝いた目に この世界は美しい〉と歌う、これもまた今の時代だからこそより胸に響く「リアル鬼ごっこ」を披露し、この日のライブを締めくくった。

ライブ中のMCでも2人が述べていたように、この『All the Greatest Dudes Tour 2025 "Another One"』は、前回のツアーで「こぼれ落ちた」楽曲を中心にセットリストを組んだ、いわば「B面集」のような内容だ。にもかかわらず、前回ツアーに全く引けをとらないベスト・オブ・ベスト的な選曲となっており、冒頭で述べたようにGLIM SPANKYの音楽性の幅広さを見せつけるようなステージだった。彼らは現在、次のアルバムに向け制作の真っ最中だという。初の公式ベストアルバムをリリースし、メジャーデビューから10年の歴史を総ざらいしたGLIM SPANKYが、新たなる章でどんな景色を我々に見せてくれるのか。今から楽しみでならない。

黒田隆憲


全国7都市で開催した「All the Greatest Dudes Tour 2025」が各地SOLD OUTや過去最大動員を記録し、アンコールツアー「All the Greatest Dudes Tour 2025 "Another One"」も大好評で幕を閉じたGLIM SPANKY。

全国ツアー最終公演の京都磔磔でメンバーから発表があり、今年12月〜来年1月にかけて東名阪対バンツアー「All the Greatest Buddies Tour 2025-2026」の開催が決定した。

対バン相手は後日発表。チケットはオフィシャルファンサイト「FREAK ON THE HILL」会員限定で最速先行予約受付中。今回も完売が見込まれる会場もありそうなので、お見逃しなく。

「All the Greatest Buddies Tour 2025-2026」

2025年12月02日(火)下北沢シャングリラ

2025年12月21日(日)大阪ゴリラホール

2025年12月25日(木)名古屋DIAMOND HALL

2026年01月17日(土)Zepp DiverCity TOKYO

イベント詳細・チケット申し込みはこちら:https://www.glimspanky.com/

GLIM SPANKYの解き放つロック魂は、さらに全国に響き渡るに違いない。

<セットリスト>

2025/07/11 恵比寿The Garden Hall

「All the Greatest Dudes Tour 2025 "Another One"」

01. 衝動

02. TV Show

03. 不幸アレ

04. BIZARRE CARNIVAL

05. The Flowers

06. THE WALL

07. 愛が満ちるまで

08. 吹き抜く風のように

09. 怒りをくれよ

10. ラストシーン

11. HEY MY GIRL FRIEND!!

12. 話をしよう

13. 闇に目を凝らせば

14. ストーリーの先に

15. Hallucination

16. The Goldmine

17. Fighter

18. 赤い轍

19. Circle Of Time

<encore>

01. 大人になったら

02. リアル鬼ごっこ

【商品情報】
●GLIM SPANKY10周年記念ベストアルバム
『All the Greatest Dudes』 (オール・ザ・グレイテスト・デューズ)
発売日:2024年11月27日(水)
ご購入はこちらから
https://glimspanky.lnk.to/atgdPR

※GLIM SPANKY メジャーデビュー10周年 特設サイト http://glimspanky.com/10th/
※ベストアルバム『All the Greatest Dudes』全曲試聴映像
https://youtu.be/J6wbWSZFTsE

【GLIM SPANKY(グリム・スパンキー)プロフィール】
長野県出身の男女二人組ロックユニット。ハスキーでオンリーワンな松尾レミの歌声と、ブルージーで情感深く鳴らす亀本寛貴のギターが特徴。特に60〜70年代の音楽やファッション、アート等のカルチャーに影響を受けており、それらをルーツに持ちながら唯一無二なサウンドを鳴らしている。
2007年結成。2014年メジャーデビュー。2018年日本武道館ワンマンライブ開催。同年、「FUJI ROCK FESTIVAL」GREEN STAGE出演。昨年6月にメジャーデビュー10周年を迎え、アニバーサリーを記念した自身初のベストアルバム『All the Greatest Dudes』発売。
劇場版「ONE PIECE FILM GOLD」書き下ろし主題歌「怒りをくれよ」をはじめ、ドラマや映画、アニメなどの主題歌を多数手掛ける他、ももいろクローバーZや上白石萌音、DISH//、野宮真貴、バーチャル・シンガーの花譜など、幅広いジャンルでアーティストへの楽曲提供も精力的に行なっている。

GLIM SPANKY オフィシャルサイト

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