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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN



[section heading="ゲストスピーカー"]

濱田博人(Hiroto Hamada)
株式会社マッシュホールディングス上席執行役員 ファッション事業戦略本部本部長。1965年5月17日生まれ、熊本出身。  大学卒業後、(株)サンエー・インターナショナルにて営業、MD、店舗開発、などを経験しマーケティング本部執行役員に就任。 (株)東京スタイルと(株)サンエー・インターナショナルが統合し設立された(株)TSIホールディングスの取締役を経て、2016年よりTSI傘下(株)ナノ・ユニバースの代表取締役に就任。 2020年2月に代表取締役退任後同社顧問を経て、6月より(株)マッシュホールディングス上席執行役員ファッション事業戦略本部本部長に就任。

[section heading="モデレーター"]

久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。



[section heading="ナノ・ユニバースの社長としての仕事とは"]

──まずは、経営的にかなり厳しい時期のナノ・ユニバースに社長として入られた訳ですが、結果としてはどの様に感じていますか?

「やり切れなかった部分はたくさんありますね。でも、デジタル化、オムニチャネル化の部分で、リアル店舗に頼らないビジネスモデルを作れた事は大きかったと思います。世の中にも社員にも"その道で行くよ"という事を宣言して、退路を断ってやった事で会社全体のデジタル化が非常に進んだという部分は、ここから先、10年20年、事業として継続できる足場は作れたと思っています」

──ナノ・ユニバースを退職された訳ですが、今回の濱田さんのマッシュホールディングスへの転職は、ファッション業界の皆さんにとっても意外で驚かれた方も多かったと思います。

「自分でもビックリです(笑)。ナノ・ユニバースではまだいろいろやりたい事はあって、やり切ったところまではいけませんでしたが、4期やって3期目には最高益も出すことができ、今年の2月末の決算のタイミングで退職しました。オーナー社長ではないので、そこで5年も10年もやる気はなかったですし、ある一定の成果は出したので雇われ社長としての区切りとしてはいいかなと。 当初、退職後は自分の中で働き方を見つめ直したいというのもあって、自分の可能性を違う場所で試してみたい、もっと広くファッション業界で仕事をしたいと思っていたんです。それがコンサルなのか、プロデュースなのか、デジタルマーケティングなのか、事業開発も含めてなのかとか、とにかくそういう会社を作って、もっと業界のフリーランスの人たちとアライアンスを組みながら仕事をしていきたいと。その中でこの先5年10年、どういう仕事をしていくのかを固めていこうと思っていました」





[section heading="コロナ自粛で変化した価値観"]

──マッシュホールディングスから、どの段階でお話があったのでしょうか?

「実は昨年から、社長の近藤(広幸)さんとは個人的に退職後の話をしていたんです。そこで"会社を成長させていくために、近未来に向かって新しいプロジェクトとか事業にチャレンジしたいので、サポートをしてほしい"というオファーを頂いてました。だけど、ちょうど今回の新型コロナウイルスの騒動が始まってしまって──」

──状況が変わったという事ですよね。

「はい。近藤さんとお話を続けていく中で、アパレル、ファッション業界全体が世の中の状況の急激な変化に飲み込まれた事もあり、もちろん近未来の事もあるけれど、目の前の課題に対しても、中に入って足場を固めるサポートをしてほしいというお話を頂いたんです」

──それで入られる事になった?

「正直、悩みはありました。心の中ではしばらくノンビリしたいという自分がいて、海外に行って、ゴルフしてって、そんな生活をしてみたいという夢があったんですよ。どうせすぐに飽きるのですが(笑)。 でも、今回の自粛で強制的にノンビリさせられて、ノンビリの種類がちょっと違ったんですよね。家で自粛生活をしているうちに、普通に会社に行って、普通に自分の仕事があって、皆とチームで仕事をする。当たり前に30何年間やってきた事なんですけれど、無くなってしまうとものすごい喪失感だったんですよね。とにかく価値観が変わりましたよ」

──確かに今回のコロナ禍は、様々なものの価値観が変わりましたよね。

「やはり、日常の中で当たり前に感じられる事に感謝して生きないといけないなと。振り返ってみたら、これから先、倒産とかリストラとか、人が溢れるニュースが入ってくる中で、近藤さんから、そういう形のオファーを頂いたのは非常にありがたかったんですよ。それが緊急事態宣言の後の4月末くらい。結果的に独立の話とはちょっと矛盾してしまいましたが、それはこのコロナ禍があって、価値観が変わったという事に(笑)」

──マッシュでは、会社として何かフィットする部分を感じられたのでしょうか?

「すべてが出来上がっている会社よりも、まだまだこれからという会社、そして感性の若い経営者と一緒に仕事をしたいという気持ちはありましたね。そういう部分から言うと、この会社は社長が40代で、急成長を遂げてきた会社ですし、とても興味がありました。 それに急成長した分、インフラとか組織とか、いろいろな部分でまだまだやれることがいっぱいある。逆に言うとコンパクトにやれている会社なんですよ。社員の皆さんもマルチに動いている方が多いので、そういう活力みたいなものは感じていて、私自身も仕事の範囲を決めずに、社員には"何でも屋だから!"という言い方をしています。」





[section heading="マッシュホールディングスでの仕事とは"]

──ファッション事業戦略本部とはどのような部署なのですか?

「短期的な事で言えば、例えば、今回のコロナ禍で過剰になってしまった在庫をどうやって消化していくのか、それを社内の各キーマンたちと話し合ってアドバイス出しをする。マッシュって、店頭のプロパー消化率が高くて、セールまでやったら90%以上消化するんですよ。非常に現場力が強くて、物が残らないという、いい意味で健全な会社なんです。ただ今回の様なイレギュラーな状況においては、在庫を残した事がないので売り方のバリエーションが少ないとも言える。そのバリエーションを世の中の状況とか消費者の行動とかを含めながら、ヘッドクォーターとなってアドバイスをしていく、指示を出すこともあるでしょうが全体的にサポートしていくというのが短期的な部分ですね。 あとは、事業の中身診断みたいなことです。急成長したが故にまだふわっとした部分もある、そういったところを丁寧に一つずつ固めていく感じです。 近藤さんが私に望んでいるのは、評論家ではなくて、しっかりと事業の現場まで見た上で、指示を出したりアドバイスをしてくれる役割だと考えています。 近藤さんがよく"近未来"という言葉を使うのですが、今後、マッシュが成長していく時に、どういうものが会社の継続性とか持続性に繋がるのかを一緒に考えてほしいとは話されましたね」

──デジタル化の部分に関しても、なんらかの動きは見せるのでしょうか?

「デジタル事業に関しては、会社によって取り組み方が違うとは思いますが、やはり食わず嫌いになったらダメだとは思っていて、それを利用するくらいがいいんです。食わず嫌いが、ビジネスにとって一番損をするんですよ。例えば、ナノ・ユニバースの時はアプリ自体がフラッグシップショップだと思っていて、その中で消費者のストレスを拾って課題を解決した商品を毎週きちんと打ち出していく。それがどんどんバズってくれて、いままで1000~2000枚だったものが何万枚になる、みたいな事が起こるったんです。だから、デジタルマーケティングの面白さはすごく感じてますね。 ただこの会社でそういう自分の考えを押しつけようとは思わないですし、もちろんブランドによってどう料理するかは彼らの仕事。僕の仕事は"そういう事例も考え方としてあるよ!"とかのアドバイスを、皆さんに伝えていく事だと思っています」

──現状、マッシュホールディングスという会社をどのように見ていますか?

「この会社は、いい意味で気分で物が作れる会社だと思うんですよ。この業界内で、年商1000億前後の会社で気分で物が作れるって、私の知る限りではほとんどないです。他はだいたいMDやマーケティングありきでクリエイティブが弱いと思うんですよね。マッシュはこの規模になっても、感性でものづくりができている、その商品力は大きな強みだと思います。 近年急激に衰退した旧大手にも見られたような、クリエイティブもない、マーケティングもできない、デジタルもダメという3ダメの会社はいくら大手でも衰退していくしか無い。 そういう意味で言うとマッシュはクリエイティブと販売力が特に強く、ブランド力を高めてここまでの企業に成長したと思うので、インフラの部分をもう少し整備するだけで、まだまだ成長できると思ってます」

──今後、マッシュでどのような動きをしていきたいと考えていますか?

「やってはいけないのは"これが正しい"と、強制的にデジタル化とか、強制的にマーケティングするとかなんですよね。そこは人的リソースと会社のDNAをきちんと見極めた上で提案すべきであると考えます。世の中の正しい事が、この会社での正しい事とは絶対に限らない。アパレルって特にそうじゃないですか。 現場が考えてフィットすればやればいい。だから"こういうのもあるよ"とは言いますが、"これをやった方がいい!"とは言いたくないですね。 昔からの私のマネージメントポリシーとして、"面倒は見るけれど干渉はしない"というタイプで、干渉が苦手なんですよ(笑)」

──ご自身のファッション人生で、レディスからメンズ、そしていままたレディスが中心になりましたが、心の変化みたいなものはありますか?

「率直に言って、メンズが恋しいです(笑)。これは年齢的なものもあるのかもしれません。元々20代、30代の時にレディスの世界観で生きてきて、メンズにはまったく興味がなかったのですが、自分のマインドもどんどん変わってきていますし。いまの自分の役割はクリエイションではないので、インフラとかファッションの根幹のところは解っていながらも、右脳というよりは左脳を使ったビジネスですよね。でも、片側ではもっと服に触れあっていたいと。ちなみに今日着ている服は、"会社に着ていけるTシャツ"と"休みの日に着られるジャケット"というコンセプトで自分で作った服なのですが、こういう事が出来ないのはちょっと淋しいですよね(笑)」

──ラジオで「ファッションは会社ではなく、業界の中でキャリアアップする」というお話をされていましたが、現状、ご自身がそういう状況という事でしょうか?

「これはナノ・ユニバースでも常に社員に言っていたのですが、"会社に依存するな"と。会社に依存したら、この業界では生きていけないんです。ファッション業界は終身雇用もないですし、会社の栄枯盛衰というのも激しい。だから、最初に入った会社にしがみつくのは、自身のキャリアアップにはならないと考えています。会社を利用してでもスキルを磨いて、外にどんどん人脈を作って、自分という人間を一個人で社内でも社外でも売り込まないと、いざという時に生きていけない。 私自身、そこまで聖人君子みたいな人生は送ってはいませんが(笑)。でも、そういう業界の中でもどこにも依存しないで生きたいとは思っていて、心の中でベンチャー精神というか、会社の中にいても自分で何かを仕掛けてやろうみたいな気持ちは常に持っていたいと考えています」





(おわり)

取材・文/カネコヒデシ
写真/遠藤純

カネコヒデシ
メディアディレクター、エディター&ライター、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。「Japanese Soul」主宰。音楽イベントの企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、イベントのオーガナイズ、ラジオ番組制作&司会、選曲、DJなど活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に駆け巡る仕掛人。







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