――新曲「たそかれ」はTV アニメ『誰ソ彼ホテル』のために書き下ろした曲です。最初にこのアニメに対して、どんな印象を持ちましたか?
「原作や脚本があるものに曲を添えさせていただくときには、全て読み込んでから作りたいという気持ちがあるので、今回は原作となるゲームをすぐにダウンロードしました。このゲームには様々な分岐があって、その答えごとに物語が変化していくので、全ての分岐を試して、ファンの方たちがどうしたら喜んでくれるのか?を考えて作っていきました。中でも、ゲームを全部クリアしたあとに、別の物語が出てくるんですが、そのお話がグッと来たので、そこから楽曲の世界観を広げていきました」
――ゲームに出てくるキャラクターもすごく魅力的ですよね。
「素敵ですよね。『誰ソ彼ホテル』は“生と死の間にあるホテル”が舞台となっているんですが、登場するキャラクターのみんなは、生前に何か問題を抱えていたり、後ろ髪を引かれるようなことがあったりと様々なエピソードが描かれているんです。それらが少し怖かったり、生々しい部分もあるんですが、だからこそリアルなんですよ。そんな人間模様が描かれているところが、物語としてすごく面白くて、夢中になりました」
――もともとゲームはお好きだったんですか?
「これまで脱出ゲームにはお友達に誘ってもらって行ったことが何度かあったんですけど、みんなが調べている中、私は本当に何もできなくて立ち尽くすことが多くて…。いつもワクワクしながら参加をするんですけど、毎回ものすごい悔しさを抱えながら帰ることが多いです」
――脱出ゲームはタイムトライアルな感じがありますよね。
「そうなんですよ。それを難なくひらめきながら解いていく人たちは“すごいなぁ”と思いながら見ていました。でも、『誰ソ彼ホテル』のゲームは、ヒントを見ながら進むことができるので、わからない時は常にヒントをちらっと見ながら進めていきました」
――TV アニメ『誰ソ彼ホテル』のオープニング主題歌を作るときに、どんなことを一番大事に作っていきましたか?
「TVアニメには“本当のあなたは誰ですか”というキャッチコピーがあるんです。その相手に投げかけた言葉が自分にも向く、という作品・楽曲にしたいと思いながら制作を始めました。自分では忘れようとしたことがあったとしても、それでも忘れられなくてずっと続いている経験って誰にでもあると思うんです。ふとしたタイミングで思い出してしまったり、どうしても解決できないものだったり…。それをアニメの登場人物目線で書いています。聴いていただいた方の人生にも重なるような曲にしたいという思いを込めていきました」
――その深い思いを包む音楽は、とてもドラマティックで素敵ですね。
「ありがとうございます。初めてのアニメタイアップだったので、私の中にある“アニソン像”をどう実現していこう?と考えていきました。オープニング主題歌って、映像がどんどん切り替わっていくようなものが多いですよね。なので、ブロックごとにリズムやキーなどが切り替わり、情景や世界が変わっていくようなことを想像しながら作り上げていきました」
――このシングルには、「たそかれ -ピアノと歌-」ver.も収録されます。全く違う曲のようなアレンジになっていますが、こちらはどういった意味を持つのでしょうか?
「タイアップをいただいてこの曲を作ったので、アニメに捧げた曲のように感じていたんです。だから、もう少し自分のフィールドに寄せた形でも聴いていただきたいと思って、ピアノアレンジでレコーディングしました。BPMもかなり落ちていますし、1つ1つのブロックが切り替わることなく続いていくようなものになっているので、また違った印象を持ってもらえると思います。実は、「たそかれ」は2年前にレコーディングしていたので、自分の中の歌唱の表現も変わっていると思います」
――アーティストさんにとっての2年はかなり大きなものですよね。
「はい。この曲の歌詞も、謎解き要素のあるアニメだからこそ、難解な言葉を散りばめていました。物語が進むにつれて、歌詞が解き明かされて行くようなものにしようと思って作ったんですけど、2年経ったら、作った自分が“これはどういう意味だったっけ…?”と思うことがあったりしていて(笑)」
――あはは。難解な言葉ですが、アニメがわかると点と点が線になるような歌詞になっているんですね。
「そうなんです。なので、当時の制作ノートを見返したら“そうだ、そうだった!”と自分で謎解きを楽しめました(笑)。原作ファンのみなさんも、ハッとしてもらえたら嬉しいです」
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――原作があって楽曲を作るのと、0から曲を作るのではまた違うと思うのですが、どちらも面白さがありそうですね。
「そうなんです。自分の中から出てくる歌は、物語や主人公を自分以外に設定して存在はしているんですけど、どこか自分の琴線に触れるものが出てきます。でも、作品あっての楽曲は、どこか大喜利というか、対象が明確なので素材をどう調理していくと一番おいしくなるのかを考えながら作ります。どちらもすごくやりがいがあるので、すごく好きです。なにより、ゲームやマンガなど、与えられたらすぐにハマってしまうタイプなので、とてもありがたいです」
――これまでタイアップで曲を作ることで自分の中に新たな発見があった曲はどの曲ですか?
「ドラマ『架空OL日記』の主題歌「月曜日戦争」を作ったときに、OLが“月(=月曜日)”と戦う宇宙戦争というテーマが浮かんだんです。それが完成してすごく皆さんに喜んでいただけましたし、さらにドラマを観ていくうちに、歌詞の意味に気づいた方々が感想を伝えてくれた時は、快感でした!」
――「月曜日戦争」にも、宝さがしの要素を入れたんですね。
「はい。「たそかれ」は、TVアニメではワンコーラスしか流れていないのですが、2番以降にも宝物のような要素をたくさん詰め込んだので、1曲通してしっかり聴いてもらえたら嬉しいです」
――そして田村芽実さんに楽曲提供した「舞台」のセルフカバーも収録されます。
「この「たそかれ」がパッケージとしてリリースすると決まった時に、もう1曲何を入れようか?と考えたんです。その時に、最近はこれまで楽曲提供した曲をセルフカバーするようになっていたので、この「舞台」を思い出したんです。「たそかれ」の世界観に合っているのかな?と思ったんですよ」
――具体的に、どんな世界観でしょうか。
「少しおどろおどろしさがある所だったり、切実さ、さらに少しの苦しさがあるようなところがリンクしました。実際に自分で歌ってみたら、とても難しい曲で…(苦笑)。田村芽実さんは本当に素敵に歌い上げていたのでさすがだなと思いました」
――提供する方を思い浮かべながら作る曲は、また違った作り方となると思うのですが…。
「そうですね。楽曲提供は、オートクチュールで作らせていただくので、歌われる方が何に一番心を動かされるのか?ということを考えながら、話し合いながら作っていきました。“田村芽実さんが舞台に出演したときに、何をお客さんに示したいか”という質問をしたら、“深く突き刺したい”とおっしゃっていたことから、「舞台」が生まれました。私も、曲を作りライブで披露するときに、いつも自分ではない誰かになる時間がすごく楽しいんですよね。その自分と役をひとつにする、そのプロフェッショナルな仕事に結びつく感覚を思い起こしながら歌いました」
――まさにこの曲のラストにある<あなたに命を私に名前を/確かに宿して舞台を生きている>というフレーズは、とてつもない強さを感じました。
「このフレーズは、自分が歌う前提だったら書けなかった言葉だと思います。“この舞台を生きている人の曲を書こう“という想いから生まれた言葉ですし、”彼女のための言葉を送りたい“と思ったときに出てきた言葉だったので、私もすごく気に入っています」
――さらに、初回限定盤には、キリスト品川教会 グローリア・チャペルで開催されたライブ『旅する魔女』が収録されています。振り返ってみて、どんなライブでしたか?
「このツアーは、教会や能楽堂、美術館だったりといろんな場所で歌わせてもらったんです。中でもこのチャペルは、歌っていると声が降り注いでくるような感覚があってすごく面白かったんです。さらに、ツアーの中盤だったので、いい状態になりつつ、新鮮さもあり、喉の調子も絶好調だった最高のライブなので、是非みなさんに見てもらいたいです」
――さて、2025年が始まりましたが、今年はどんなことに挑戦したいですか?
「今年は海外でライブをする機会(※)をいただいたので、いろんなところで歌えたらいいなと思っています」
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――会場は香港となっていますが、なぜこの国なのでしょうか?
「実は、初めて海外に行ったのが香港だったんです。その時にものすごく面白い場所だと思いましたし、街の活気あふれる感じにすごくドキドキして、「ニュー香港」という曲を作ったんです。10周年イヤーということもあり、香港でこの「ニュー香港」を歌いたいと思い、実現することになりました」
――最高ですね!
「最高です! これを機に、いろんな国で歌えたら嬉しいです!」
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(おわり)
取材・文/吉田可奈
RELEASE INFROMATION
LIVE INFROMATION
夢で会えたってしょうがないでショー
2025年4月20日(日) 日比谷野外大音楽堂
時間:開場 17:00/開演 17:45
チケット料金:グッズ付き前方指定席:11,000円(税込) / 指定席:8,800円(税込)
【バンドメンバー】
ゴンドウトモヒコ(Bandmaster, Horns, Sequence)
伊澤一葉(Keyboard)
弓木英梨乃(Guitar)
伊賀航(Bass)
伊藤大地(Drums)
【各プレイガイド先行】
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