リベラの新作『イフ~もし、私の願いが叶うなら~』がリリースされた。プロデューサーのロバート・プライズマンによるオリジナル楽曲、ラテン語の聖歌、シューベルト作曲「アヴェ・マリア」、村松崇継作曲「ホーム」などを歌っている。レパートリーとしてはいつものリベラだけれど、初期にあたる2001年のアルバム『ルミノーサ』でも歌われた「サクリス・ソレムニス」と「ヴェスペラ」の2曲が再度レコーディングされたことで、誕生から22年、今のリベラの実力、成長ぶりがよくわかるのも大きな魅力だ。5声から7声のハーモニーがとても美しく紡がれているし、透明感溢れる声のソロパートには上質の浮遊感があり、またオーケストラのような緻密なアレンジで歌われたりもしている。

また、今回はインドネシアの軽快な曲「みんなの歌を歌いましょう!」を取り上げていて、ひとりひとりがまるで楽器のように声をコントロールして、生き生きと歌っているのがひとつの聴きどころとなっている。

そのリベラは、ロバート・プライズマンによって創設されたボーイソプラノのグループだ。活動の拠点は、サウスロンドン。今は開発が進み、環境がだいぶ変わっているそうだが、当時は労働者や移民が多く暮らすエリアだったので、リベラのことを初めて知った時、なぜだろうかとそこに興味を持った。彼にインタビューした時も、まずそのことを聞くと、地元に密着していることに意味がある。ロンドン市内の有名な教会の聖歌隊のようにオーディションで全国から歌のエリートを集めるのではなく、地元の子供達が習い事感覚で歌に取り組むのが大切だと言った。

その良さがわかったのが2005年の初来日公演の時だった。いい意味での素人っぽさが新鮮に映った。その後、リベラが話題になったことで、遠い街からの加入希望者が増えたと聞くが、それでも基本方針は変わらず、今も歌を習ったことがない真っ新な状態からレッスンを丁寧に積み重ねていく。そのなかで美しい発音、発声が身に付き、そこから“天使の歌声”とも称されるナチュラルで、ピュアな歌が生まれてくるのだ。

ボーイソプラノは、人生のほんのわずかな時間にだけ許された奇跡の声、だから、神々しくもあり、はかなげでもある。そのなかで変声期が来ると、メンバーの多くが卒業していく。ただリベラの場合は、そこで完全に音楽から離れることなく、音大に進学して正式に音楽を学ぶ人が少なからずいる。新作にアレンジ等で関わったプロデューサーのサム・コーツも、音楽を学んでリベラに戻ってきたひとりだ。

彼のような後継者が確実に育っているので、そこは安心できるが、実は、新作完成から間もなくロバート・プライズマンがこの世を去った。『イフ~もし、私の願いが叶うなら~』が遺作になったわけだが、今回は、彼が珍しくブックレットにコメントを寄せていて、そのなかで「いつもより長い時間をかけました。一連のレコーディング・セッションを完成するには創意と決断が必要でした」と綴っている。そこからも彼の想いが伝わってくる。

彼に初めてインタビューした時から成功した今も、リベラにあまりビジネスの色が感じられない。それが彼に方針というか、音楽の成長のために尽力はしても、ビジネスでの成功を目指しているわけではない。その一貫性がメンバーチェンジを繰り返しても質の高さを保ち、いつでも心癒してくれる理由でもあるだろう。

先が見えない今の時期に、リベラの歌は天上の安らぎを私達に運び、心をゆるやかに開放させてくる魔法があると思う。

(おわり)

取材・文/服部のり子

天使の歌声に導かれ天空に召されたロバート・プライズマン。氏のご冥福を心からお祈りする。

DISC INFOリベラ『イフ~もし、私の願いが叶うなら~』

2021年10月27日(水)発売
LIBE-0013/3,630円(税込)
ウィステリアプロジェクト

リベラ公式サイト

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