──pachaeはencore初登場です。最初にバンドの結成の経緯を教えてください。

⾳⼭⼤亮(Vo&Gt)「バンドをやってみたいと思っているときに、一人で公園で歌を練習していたりしていたんです。そこで当時のドラムに話しかけられたことがpachaeの始まりです。といっても、最初はそいつとバンドを組む気はなくて…話しかけられたとき、そいつはベロベロに酔っていて、あとからドラムをやっていることを知ったんです。で、プレイを見に行ったら抜群にうまかったから、バンドに誘いました。そこから残りのメンバーを集めてpachaeを結成して、その後、メンバーの脱退を経て今の3人になりました」

──バンバさんとはどう出会ったんですか?

バンバ(Gt)「そのドラムが高校時代の先輩で、pachaeに誘われました」

──最初にメンバーを集める上で、“こんなバンドにしたい”といった構想はあったのでしょうか?

音山「僕は“唯一無二”とかは無理だと思っているタイプなんですけど、ありふれていない音楽をやりたい、やれると思っていました。フジファブリックとかヒトリエとかって、そこを突いているバンドだなと思って好きだったので、そのあたりを当時はイメージはしていました。当時のドラムもフジファブリックが好きだったので、2人でずっとフジファブリックのDVDを見ていました」

──変な話、そういう音楽性のバンドがやりたいというよりかは、音楽業界で生き残っていくためには?みたいな考え方だったということですか?

音山「どっちも、ですね。もちろんそういう音楽性が好きなのもあるし。ただ、みんなが見えていないだけで、バンドってこの世に信じられないくらい存在していて。でも最初はそこでやっていかないとダメなわけで。なるべく早くそこを抜け出したいというのが大きかったかも知れません。どんな音楽も好きだったので、そこを抜け出せば勝負出来る自信もあったので。どんな音楽をするかは後から考えればいいかな?と思っていたのかもしれないです」

──今、フジファブリックがお好きというお話もありましたが、お二人の音楽的ルーツとして、バンドや楽器に興味を持ったきっかけを教えてください。

バンバ「小学生くらいのときにYouTubeandymoriMVを見て“音楽おもろ!”と思ったのが最初です。調子乗りなんで、“ギターだったら簡単にできそうだな“と思ってギターを始めました」

──andymoriの何が刺さったんだと思いますか?

バンバ「何が衝撃だったのかな?…でもパワーかな。“ちゃんと殴られた”みたいな衝撃がありました」

──では楽器を始めたのは小学生の頃?

バンバ「いえ、ギターを買ったのは中学3年生のとき。でも全然弾けなくて押入れにしまって…高校生のときに軽音楽部に入ってちゃんと練習し始めました」

──軽音楽部ではどんなバンドを?

バンバ「その部活はバンドを組んだら3年間同じメンバーで続けないとダメだったんです。ギターが2人いて、キーボードもいるという編成だったので、オアシスとかGOING UNDER GROUND、フジファブリックあたりのコピーをしていました。僕がディグるの好きだったんで、ほとんど僕の趣味でした」

音山「僕は初めて買ったCDがテツandトモ「なんでだろう」なので、ルーツはテツandトモかも(笑)。楽器はピアノを習っていたんですが、“ピアノが弾けるならギターも弾けるんちゃう?”みたいなノリで中学生のときにギターを買った…んですけど、僕も押入れに(笑)。高校で軽音楽部に入って、最初はキーボードだったんですが、いろいろあって僕がギターを弾くことになり、そのタイミングでギターを練習するようになりました」

──軽音楽部に入ったということはバンドを組みたいという気持ちがあったのでしょうか?

音山「それが、すごい青春的な誘われ方をしたんです。高校の頃、最初はテニス部だったんです。でも部員が2人しかいなくて、毎日同じやつと戦っていたのでそいつには強くなっていくけど、テニスはうまくなっていないなって気付いて(笑)。“やめようかな?”と思っていたときに、フェンス越しに“なぁ!”って話しかけてくる声が聞こえて。“お前ってピアノ弾けんの? 俺らのバンド入ってよ!”って言われたんです。“こんな映画みたいな誘い方あるんだ!?”と思って、テニス部をやめて軽音楽部に入りました」

──その頃、音楽に興味は?

音山「テツandトモ以外には、ミスチルだけ聴いていました。でも当時はミスチルがバンドだっていうことも知らなくて。音楽をやっている大人たちが集まっている、っていう感じで認識していました。軽音楽部に入って、“こういう集まりをバンドって呼ぶんだ”と知りました。そのあと軽音楽部で音楽に触れていくうちに、ボカロとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを好きになっていきました」

──その後、pachaeは結成3ヶ月でmurffin discsオーディションで準グランプリを獲得しました。そのときはどのような気持ちでしたか?

音山「それまでに曲をいっぱい作っていたんですけど、30点くらいの状態で活動をするのが怖くて。ある程度の点数が出せるようになってから“僕たちの100点です”って活動したかったので、“いける!”って思えたタイミングが来てからメンバーに曲を聴かせて活動を始動させたんです。ちょうどそのタイミングでオーディションを見つけたので、“ちょうどいいな”と思って応募しました。今は、CDも聴かれない時代だし、いろんなアプローチをしていかないといけないな…と考えていたので、まずはオーディションに応募して、自分たちがどれくらいのレベルなのかを測りたいという気持ちもあって、“とりあえず応募しておくけどいい?”みたいな感じでした…だったんだと思います。実はあまり覚えていないんですけど」

バンバ「なんなら応募したこと忘れてなかったっけ?」

音山「そうそう。気づいたら審査に通っていて“やばい!”って」

バンバ「ビックリしたよな」

音山「しかも、僕が作ったデモで応募したんですけど、それをメンバーのみんなが弾けるかどうかもわかっていなかったので。“これ、人間が弾けるのかな?”とか言いながら頑張って練習しました。ライブしたことないとか、ライブハウスに行ったことないメンバーもいたし」

バンバ「僕はライブしたことなかったです」

音山「だから本当に怒涛でした」

バンバ「でも面白かったです。あんまり覚えていないけどがむしゃらだった気がします」

──そして今年の4月にデジタルシングル「チョウチンカップル」でメジャーデビューをしました。作るうえで、メジャーデビューシングルということは意識されましたか?

音山「僕自身は“メジャーデビューだから”というこだわりはなかったですけど、今まで難しい曲が多かったこともあって、元気な曲を作ろう、ポップな曲を作ろうとは思いました。その中にどうpachaeらしさを残すか? みたいなことをすごく考えました」

──歌詞ではメジャーデビューするバンドの心情を歌っているのかな?と推測したのですが。

音山「そんな風にバンドの心情と捉えてくれたのは初めてです。自分の中では“この曲がメジャーデビューの曲になる”と思って書いたわけではなかったので、そういう気持ちを書いたつもりではなかったんですけど…バンドのことと捉えられるのは嬉しいです。最初は完全に男女の話にしていたんですけど、間口を広くして、新しい世界へ飛び出すみたいな、いろんな捉え方ができるような書き方にしたので」

バンバ「僕もバンドの心情みたいな曲だと思ってたかも…それも含めて、初めて聴いたときはワクワクしました。個人的にはイントロのギターのフレーズが個人的にすごく好きで。弾いていてもワクワクします」

──メジャーデビューして、バンドへの思いや楽曲制作に変化はありますか?

音山「音楽で稼ぐというのは目標だったから、死ぬ前にその土俵に立ててよかったなと思いました。これからは、どこまでいけるかを考えられるので。ただ、そこに対して責任感も生まれました。そういう意味で意識の変化は生まれましたけど、音楽的な面では変化はないです」

バンバ「シンプルに関わる人数が増えました。これまでがふわふわしていたわけではないですけど、細部まで見えて“音楽をやっているな”という感じがよりしてきました。この状況に慣れていかないとダメだという気持ちと、いつまでもフレッシュでいたいという気持ちがあります」

──そして6月12日にはMajor 2nd DIGITAL SINGLE「非友達」がリリースされました。この曲はどのようにできた曲ですか?

音山「「チョウチンカップル」はキャッチーな楽曲に仕上がったので、今度は“pachaeっぽい曲を出したい”と思っていて。“pachaepachaeだよ”って言いたかったというか…“メジャーデビューしてもpachaeとして音楽やっていくんだよ”という気持ちがあったので、“さぁ軽音部の皆さん、弾いてみて!”という、“THE pachae”って感じの曲です」

──“簡単に弾けると思うなよ”みたいな?

音山「はい。むしろ僕たちですらちょっと怪しいくらい難しい曲なんで(笑)」

バンバ「初めて聴いたとき“むずっ!”って思いました。“これ、弾くのか?”って(笑)。実際めちゃくちゃ難しいですし」

──ソロパートのフレーズはメンバーに任せたそうですね。

音山「はい。直感で。ギターソロとキーボードソロが連続で来るので、今回は2人に任せようかなと思って」

バンバ「任されました」

──ギターソロはどのような意識で?

バンバ「これも“パワー”って感じですね。割とクラシカルというか、おじさんをうならせられるようなギターソロにしたいなと思って、往年のギターソロの感じにしました。なぜかと言われるとわからないんですけど…」

──この曲にはそういうギターソロが似合うと思ったと。

バンバ「はい」

音山「デモで僕のイメージはなんとなく伝わっていると思っていたので、2人が作るんだったらどんなものでも受け入れようと思っていたんですけど、実際に2人が持ってきてくれたソロがめっちゃ良くて。任せてよかったなと思いました」

──歌詞は「非友達」というタイトルからもわかる通り失恋ソング。失恋ソングを書こうと思ったのはどうしてだったのでしょうか?

音山「今歌いたいことを書いたらこうなりました。自分の経験から、“一線を越えないと進めないし、でも超えたら戻れないし”という状況です。この曲では人間関係で表現していますけど、人間関係以外にも当てはまることだなと思って、曲にしました」

──<歌うコトで少しでも綺麗に終わらせたいだけ>と歌詞が印象的でした。

音山「そのフレーズ、すっごい好きなんですけど、書いた記憶が全くなくて。僕はあまり感情的なタイプじゃなくて。むしろ“どうやったらこの気持ちが伝わるんだろう?”って事に頭を使うタイプなんですけど、ここだけは本当に記憶がなくて。でも今読み返してみると、確かにそう思うし、思ったことをうまく書けたなとは思います」

──音山さんは、曲にすることで感情が整理できるタイプなのかなと。

音山「それこそ一線を引いているというか…一歩引いているところがあるので、“この曲で俺の気持ちに踏ん切りをつけるぞ”とか、そういうタイプではないです。ただ、“歌うのってずるいよね”っていうことは思っています」

──“歌うのってずるい”?

音山「アーティストってどんなにひどいことをしても、歌にしちゃえば綺麗に終わるじゃないですか。歌詞を書く人はそこに甘えているよなって思うんです。(笑)まぁ僕も歌詞を書いて“…っていう経験は、一つの思い出であり”みたいな形にできちゃうんで、“甘えてるな“って思ってこのフレーズが出てきた…のかもしれないです。覚えていないんでわからないんですけど(笑)」

──「非友達」というタイトルも巧妙もですよね。聞いたことのないはずの単語ですが、意味はわかる、けど読み方のイントネーションもわからないので、やはり存在しない言葉で。

音山「基本的に、他にはない言葉で曲名を作るのが好きなので、今回も変な言葉にしようと思っていました。<友達なんかじゃないよ>と歌っているので、デモの段階でまず「友達じゃない」という名前でこの曲を保存したんです。でも「友達じゃない」っていう曲名はさすがにちょっとすごすぎるから、別のものにしようと思って。でもすぐには思いつかなかったので、一旦英語で保存したんですけど、そうすると「not friend」になって。でも、僕の中で「not friend」は全然カッコよくないから、それをもう一度日本語にしたら「非友達」になりました」

──「チョウチンカップル」、「非友達」と、振り幅の広い2曲をリリースしたところですが、バンドとしての今後の目標や展望はありますか?

音山「いろんな曲を書きたいです。よくライブハウスに行くような人たちの中には、pachaeのような難しい曲に慣れていない人も多いと思うんです。もっとノリやすい曲とか歌いやすい曲とかのほうが、今のライブシーンには合っているのかな?って。だけど、pachaeに限らず、こういうちょっと変わっているバンドも楽しめるような柔軟なシーンになっていったら楽しいと思うんです、少なくとも僕たちは(笑)。だからそういう人たちに認めてもらえるまで頑張りたいなと思うし、お客さんと仲良くなっていきたいです。そのために遠くまで届く、広い世界へ連れて行ってくれる楽曲も歌いたいですね。そういう曲も歌えるバンドだと思っているので。」

バンバ「ライブの話になっちゃうんですけど、とにかくたくさんライブをしていきたいです。そのほうが自分も楽しいし、お客さんも楽しいだろうし、楽しくさせたいし。pachaeの曲は音源で完結させるのはもったいないと思うので。って自分が言うことじゃないですけど、素直にそう思うので、まずは一度ライブを観に来てほしいですね」

──最後に。まさに今バンバさんの手元には文庫本がありますが、pachaeの楽曲には音楽の知識以外の要素も影響をしているのではないかと思っています。お2人が音楽以外に興味のあるカルチャーやエンタメがあれば教えてください。

音山「ゲームとかデジタルなことをやり過ぎていたこともあって、最近はアナログなものにハマっています。特に今はビリヤードとプラモデルが好きです」

──アナログなものを愛でたり作ったりすることは、楽曲制作や音楽活動に何か影響していると思いますか?

音山「特にプラモデルは組み立てて自分で色も塗っているので、感性が育つという意味で曲に影響しているんだろうなと思いますが、何よりもデジタルなものから体を離すということが大事な気がしています。携帯をずっと触っていると“よし、新しい曲書こう”と思いづらいんです。プラモデルを作ったあとのほうが、自然と曲を書こうと思えます」

バンバ「僕はいわゆるサブカルチャーが好きです。そもそも水タバコが好きで、家でもやるんです。だからその片手間でできることが好きですね。映画を見たり、本を読んだり、アニメを見たり…」

──映画や本に共通して“こういう類のものが好き”というものは?

バンバ「それがなくて。音楽もメタルを聴いている時期もあれば、アンビエントを聴く時期もあるし。完全に気分なんですよね。本も、以前は短歌や俳句、詩ばっかり読んでいたんですけど、最近はエッセイや対談ばかり。今読んでいるのも、くどうれいんさんのエッセイです。別に何かに還元するわけじゃないですけど、人の考えていることを得たい時期なんだと思います」

(おわり)

取材・文/小林千絵

RELEASE INFROMATION

pachae「非友達」

2024年612日(水)配信

Streaming & DL

pachae「チョウチンカップル」

2024年4月24日(水)配信

Streaming & DL

LIVE INFORMATION

pachae presents『Trick or Trick』 vol.2

2024年622日(土) 東京 shibuya eggmanw/ SAKANAMONEOW

pachae presents『Trick or Trick』 vol.2

come it !

2024年628日(金) 愛知 名古屋CLUB UPSETw/peeto , Ayllton

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