──MACK JACKは全員が元球児ということですので、最初に、高校時代のポジションとあわせて自己紹介をお願いします。
M.C.L(ミッチェル)「MACK JACKのリーダー、M.C.Lです。“VIBESゴリラ”です。ファーストと外野をやっていました。バッティングが得意です!」
ALI(アリ)「MACK JACKの“VIBESメガネ”、ALIと申します。高校時代はピッチャーをやっていました。コントロールの悪さには自信があります(笑)」
CHAI(チャイ)「MACK JACKの“VIBESチリチリスマイル”、CHAIです。高校時代は外野手をやっていました。バッティング以外が大得意です」
JAGA-C(ジャガシー)「“VIBESヤーマンピーマン”、JAGA-Cです。僕は中学までしか野球はやっていなかったのですが、当時はファーストをやっていました。ランナーコーチが得意で、TikTokでバズりました!」

──高校卒業後、M.C.LさんとALIさんでMACK JACKを結成したということですが、野球部時代、もしくはそれ以降で、音楽に衝撃を受けた瞬間や、音楽を志そうと思ったきっかけはどのようなものだったのか教えてください。
M.C.L「僕はもともと『熱闘甲子園』などで流れるような曲を聴いていたんですが、高校を卒業してから行ったレゲエのクラブイベントに衝撃を受けて…2秒後には“歌いたい!”と思いました。なんか“俺にはできる”と思ってしまったんですよね。野球をしているときからヒーローになりたいと思っていたので、その気持ちが別の形で出てきたんだと思います」
ALI「高校では寮生活を送っていたんですが、親からもらったギターを持ってきていたので、ゆずさんやコブクロさんを弾いていました。卒業後、M.C.Lと一緒にクラブに行ったときに、同じように衝撃を受けて。ずっと野球に打ち込んできていて、それがなくなって、自分のやりたいことがないときだったので“音楽をやりたい”、“レゲエで自分のパーソナルを表現してみたい”と思いました」
CHAI「僕は音楽に頼った瞬間があって。寮生活をしていた高校1年生のとき、ホームシックになったんです。地元の友達に会いたくてしょうがなくなって。そのとき、湘南乃風さんの「See you again」とET-KINGさんの「さよならまたな」を聴いて乗り越えました。それが、“音楽って身近にあってくれるものなんだな”と感じた出来事でした。音楽の道に進みたいと思ったきっかけは、高校卒業後です。ホテルでコックをやっていたのですが、とてもしんどかったんです。そのときに、ストレートなメッセージを持ったジャパレゲがスッと入ってきて…。そんなときにM.C.Lから“一緒に音楽をやろう”と誘われたので“今しかない!”と思って決めました」
JAGA-C「僕は3人と高校は違ったんですが、M.C.Lが寮から地元に帰ってくるたびにレゲエを聴かせてくれていたんです。それまでは流行っている音楽や失恋ソングなどを聴いていたのですが、レゲエの自分自身をさらけだすような生々しい言葉を歌うところに、すごく勇気づけられて。そのあと、M.C.LとALIがMACK JACKを始めたというので、ライブを見に行ったときに、さっきM.C.Lが“なんか自分にはできると思えた”と言っていましたけど、同じような感じで“僕も歌ってみたい”とか“自分にもできるんじゃないか?”という根拠のない自信が出てきて、始めました」
──そうして始動し、その後ジャマイカでの修行も経たMACK JACKですが、MACK JACKとして今、どういう音楽を歌っていきたいと思っているのか教えてください。
ALI「ジャマイカに行って感じたんですけど、ジャマイカでは音楽が生活にものすごく浸透していて。言葉にするとちょっと軽くなっちゃうんですけど、本当に生きていくために音楽を必要としている感じがあって。その感じにものすごく衝撃を受けました。だからこそ、MACK JACKはパワーソングが一番の武器になっていると思っています」
──ルーツミュージックを目の当たりにしたことで、MACK JACKとして歌うべきものが見えたと。
M.C.L「はい。ただ…MACK JACKはレゲエに魅了されて始まったグループではあるので、そのルーツの部分は大事にしていますけど、野球も含めてこれまでの経験が全部あってのMACK JACKなので。だから応援歌も歌いますし、ジャンル関係なく、いろんな人の心に届く音楽を作っていきたいと思っています」

──ここからは、4月30日にリリースされた最新曲「Run The Tune」についてお伺いします。今作はベリーグッドマンのRoverさんプロデュースですが、Roverさんにプロデュースしてもらうことになった経緯を教えてください。
M.C.L「MACK JACKは夢として“甲子園球場でのワンマンライブ”を掲げているのですが、それをRoverさんが知ってくれていて。ベリーグッドマンも甲子園球場でのライブを目標に掲げて、実際に叶えられたから、同じところを目指すMACK JACKを気にかけてくださっていたんです。そこで、Roverさんのラジオ番組に呼んでくださったのが始まりです。番組内で“飲みに行こうや”と言ってくれて。その時は“本当かな? ありえへん”と思っていたんですけど、本当にその1週間後くらいに飲みに行かせていただきました。そこでMACK JACKが今抱えている悩みや不安を赤裸々に語らせてもらったら、“俺でできることやったら、何か…曲を一緒に作るとか、やってみたいかも”と言ってくださったんです」
ALI「それもまた僕らは“飲みの場の冗談かな?”と思っていたんですけど…」
M.C.L「本当にRoverさんのスタジオに呼んでくれたんです! 3日後くらいにはトラックが届きました。それは「Run The Tune」ではない曲になったんですけど、改めて“曲の話をしようや”と言って事務所に呼んでいただいて、また別の曲のトラックを聴かせてくれました。そこからやり取りが始まったのが「Run The Tune」です。途中で飲みに行ったりもしながら(笑)」
ALI「“5人で練り上げている感”がものすごくありました。Roverさんは僕らの今年1月のUMEDA CLUB QUATTROでのワンマンライブにも駆けつけてくれて、実際にMACK JACKのライブを見てくださって、“今のMACK JACKに必要な部分でこういうものなんじゃないか?”という要素も「Run The Tune」に落とし込んでくださいました」
M.C.L「そもそも「Run The Tune」というタイトルも、“レゲエで『曲をかける』とか『始まるぞ』のニュアンスの言葉ってどういうものがあるの?”ってRoverさんが聞いてくれて。“『Run The Tune』って言いますね”と言ったことから、それをテーマに作ってくださいました。難しいテーマでしたけど…」
ALI「Roverさんに“自分たちにとって『曲をかける』、『曲を走らせる』というのはどういうことなのかを根の根まで掘り下げて考えてほしい”って言葉をいただいて。CHAIは何回もバース書き直したよな?」
CHAI「うん。6回くらい書き直した。メモを見たら10パターンくらい考えていました。“Roverさんを唸らせたい”、“先輩に対してカマしたい”という気持ちが強すぎて。でもそのおかげで成長できました」

──ではせっかくなので、それぞれご自身のバースに込めた思いを教えてください。
ALI「僕は冒頭のバースと3番を書かせてもらいました。SNSなどを見ていると、今ってマイナスなことや暗い話題がすごく多くて、ちょっと生きづらい世の中になっているような気がしていて。だけど音楽を聴いたり、自分が音楽を表現している時間は、そういうものがなくなって息ができると感じています。だけど、コロナ禍ではイベントもできなくなったりして…。そういう時期のことを思うと、“今の状況も当たり前じゃなんだ”ということも感じて。曲を書けることへの感謝みたいなものを歌いたいと思いました。ずっと音楽と一緒に走り続けてきているので、つい慣れちゃいそうになるんですよね。だけどスタッフさんの支えや、皆さんの応援があるからこそできること。そういうことを意識して、これからも表現をしていきたいと思いました」
JAGA-C「僕のバースは8小節くらいですが、最初に16小節分くらいバッと書いて、そこから厳選していったんです。でも、そのときに“自分が言いたかったことは何か?”と考えたら…周りの目を気にしすぎて一歩踏み出せない人に向けての言葉でした。自分の人生を振り返ってみると、僕自身が周りの目をすごく気にしていたんです。そういうことを考えていたら<めんどくせぇ>って言葉が出てきて。“周りの目なんて気にせず、好きなことをやっちまえよ”ということを伝えようと思いました。<最後は行く天国へ>というフレーズは、最初<逝く>という漢字を使っていたのですが、梅田サイファーのKOPERUに相談したら“絶対にポジティブな言葉だけにしたほうがいいよ”と言われたので<行く>にしました」
M.C.L「僕は<asiaの悔しさが導火線>と書いたのですが、去年の夏、MACK JACKとしての形が見えてきて、どのライブでもカマせるという自信が出てきたタイミングで、東京のclubasiaで、梅田サイファー、CHICO CARLITO、T-STONE、Oleが出てるイベントに出演したんです。そのとき、自分たちはもちろんめちゃくちゃカマしたライブをしたんですけど、そのあとに出てきた梅田サイファーのライブをステージ袖から見て…自分たちの自信が崩れてなくなるような気持ちになったんです。すごく良いライブでした。自分としては“梅田サイファーのライブから得られるもん得たろ”という気持ちで見ていたんですけど、途中から悔しくて見られなくなって…。自分たちの楽屋に戻ったら、JAGA-Cも“見れんくなった”って言って戻って、しかも泣いていて。さらにCHAIもALIも戻ってきて、みんなで楽屋で号泣したんです。“そんな悔しさも「Run The Tune」したら一瞬で蘇る”、“だからこそ絶対に売れてやる”という覚悟を込めました。いや〜、あのときの絵は今でも忘れられないですね」
CHAI「僕は<一心不乱に>のところを担当しました。僕の役目は畳み掛けるラップだと思っているので、畳み掛けることでできる盛り上がりを作りたいと思って、リズムから考え始めました。さっき6回書き直したと言いましたけど、最終的に最初に書いたものが採用になったんです。なんならRoverさんが気に入ってくださって、一回サビにしてみました。でも、サビにして全員で歌ってみたら“なんか違うな…”ってなったんですけど(笑)。個人的に気に入っているのは<「よく頑張ったで賞」なんかよりも欲しいのは「NO.1」でしょ?>。なんか、マラソン大会とかで、1位の人よりも最後の人のほうが拍手が大きいことってありませんか? 僕はあれがあまり好きじゃなくて。必死に頑張って1番とった人が1番評価されないのって悔しいじ
──実際、MACK JACKとしては、やっぱり”NO.1”が欲しいですか?
CHAI「欲しいです」
ALI「高校時代にNO.1になれず、甲子園に行けなかった悔しさが今もあるので。それを昇華するためにも、甲子園球場に立ちたいですし」
──つまり、例えば何かのランキングで1位を獲る、というこことではなく、MACK JACKとしては“甲子園球場に立つ”ということが、NO.1であると。
M.C.L「う~ん…もちろん甲子園球場でワンマンライブをするという夢を叶えるのはNO.1ですけど、トップチャートも狙っています」
ALI「甲子園でワンマンライブをするためには、いろんなところでNO.1にならないといけないと思うので。そのために頑張りたいです」
──Roverさんとの制作で気付いたことや得たことがあれば教えてください。
CHAI「それについて話したかったことがあります! 僕の<一心不乱に〜>のところのレコーディングでの出来事なんですけど、このパートは自信がありましたし、Roverさんにカマしたいという気持ちもあったので、ピタピタに練習していったんです。で、レコーディングしてみたらRoverさんに“なんか違うな”って言われて…。“プリプロのときとノリが違う”、“ラフに歌った最初のノリが一番よかった”と言われて、戻す作業をしたんですけど、それは自分の中ですごく衝撃的でした。“練習をすればするほど良くなるということでもないんやな”って。実際、レコーディング後の飲みの席でもRoverさんに“フレッシュな1回目の良さってあるから”って言われて。それは僕の胸に刻まれました」
M.C.L「“喉の体力とかもあるから、何回も録らなくていい”と言われたことも衝撃的でした。俺らにとっては初めての考え方でした。今までは何回も何回も歌ってきたけど、今回はそれぞれ3〜4回くらいしかテイクを重ねなかったですし」
ALI「そこまでにRoverさんとの信頼関係ができているから“RoverさんがO.K.なら”っていうので自分でもO.K.にできたというのもありますね。そういう関係性も含めて、いい状態でレコーディングに挑むことができたと思います」
M.C.L「あと、ハーモニーも今までMACK JACKとしてやったこなかったようなものを引き出してもらいました。JAGA-Cがこれまで歌ってこなかった高いキーを歌ったり。そういうのはRoverさんとだったからできたものですね」
JAGA-C「ふざけて出すくらいのキーだったので、“これって使えるのかな?”と思いましたけど、それを使うという判断をしたRoverさんには、学ばせてもらいましたね」
M.C.L「実際に聴いてみたら、今までのMACK JACKにはない雰囲気が出せて“これ、武器だな”ってなりました」
ALI「“何事も試行錯誤なんだ”と教えてもらいました」

──そんな様々な挑戦を経て完成した「Run The Tune」、MACK JACKにとってはどんな1曲になりましたか?
M.C.L「甲子園球場に導いてくれる曲です。もう、甲子園ライブの最後にこの曲を歌っている絵は見えているんです。Roverさんが最初に“甲子園で最後に歌うような曲にしたいねん”と言ってくれて、みんなの共有認識として、それが頭の中にある状態で作ったので。実際、曲を聴いたファンの方から“大きいステージが見えました”という意見も届いていたりして。それくらい大事な、僕たちの決意や覚悟が詰まった、MACK JACKの軸になる曲です」
──終始“甲子園でワンマン”という話が出ていますが、MACK JACKとしての今後の目標や展望を教えてください。
M.C.L「“甲子園、甲子園”とは言いつつも、まずは今あるステージをどんどん広げていかないといけないと思っています。現状、大阪や神戸ではワンマンライブをしているのですが、九州や東海、関東でもワンマンライブができるように、そうやって全国のマイメンを増やしていけるように動いていきたいです」
ALI「MACK JACKのライブ、めっちゃ良いんで!」

(おわり)
取材・文/小林千絵
撮影:YUTA KIHARA(KYC)