──メジャーデビューアルバム『チェンジ ザ ワールド』(2014年6月18日リリース)を出した頃って、10年後のことを考えていたりされていましたか?
ヤマサキセイヤ「誰も考えてなかったでしょ?」
ヨコタシンノスケ「考えてないかもなぁ」
ヤマサキ「ていうか考えているような雰囲気なかったでしょ、僕ら(笑)」
──まぁ、そうかもしれないです(苦笑)。
ヤマサキ「“明日も分からない!”みたいなライヴをしていましたから」
──ただ、『チェンジ ザ ワールド』に収録されている「ビビった」で、<メジャーに行って1、2年で消えるバンド多過ぎクソワロタ>と歌っていましたけど、“絶対にそうなってたまるか!”という気持ちもあったとは思うんですが。
ヤマサキ「まぁ、裏返しというか。そういう気持ちはありましたけど、“そうなるかもしれないな…”とは思っていましたね。あの歌詞もそうなったときのために書いてたというか」
ヨコタ「保険だよね、どっちかというと」
ヤマサキ「そうそう(笑)。“分かっとったわー!”って言いたいがために。でも、それで消えなかったらおもしろいやん!っていう」
──気持ち的に“そうなってたまるか!”と“保険”と、どっちのほうが大きかったですか?
ヤマサキ「保険のほうが大きかったと思いますね。ギャンギャン吠えて、“ウワー!”ってやっているんですけど、内心はすごく不安だったんで。“絶対に売れる!”っていう確信もなく、ビビっているのを大声で誤魔化してなんとかやれていた感じだったので」
ヨコタ「メジャーデビューのときは、“メジャーに行くとキュウソは変わってしまう”って周りから思われていることだけが気になっていて。だから発表の仕方も、俺ららしい感じというか…むしろ、“メジャーデビューすることをそんなに話題にしないでくれ、いなくなったときに恥ずかしいから!”みたいな(笑)」
──変わってしまうかもしれないと思われていることに対して、気を張っていたりとかも?
ヨコタ「めちゃくちゃ張っていましたよ。メジャーに行くことで、喜んでくれる人よりもがっかりする人のほうが多いんじゃないかな?って当時は思っていたので。あと、メジャーデビューするバンドが周りに多くて、キュウソもその流れに乗っているけど、“お前らは違うだろ!”みたいな」
──いや、さすがにそんな…。
ヨコタ「いや、ほんと、そうでしたよ(笑)。すっごくそのエアーを感じていたんで」
オカザワカズマ「他と違うことをしたいというのは、元々バンドとしてすごくあって。だから上京もしなかったし、ちょっとひねくれたメジャーデビューの発表もしたし、“俺らなりのやり方でやったほうがおもしろいやん”っていう気持ちが、そのときはすごくありました。それがうまく行くのか行かないのかは、大事ではあるんですけど、そこまで重要視していなくて…」
──気を張ってピリピリするときもあったけど、基本的には楽しくやっていた感じなんでしょうか?
ヤマサキ「ここ(バンド内)では全然ピリピリしていなかったよな? 外に向けてというか?」
ヨコタ「見られ方を気にしていたっていう感じでしたね」
オカザワ「うん。お客さんにも他のバンドにも、“つまんない奴らになっちゃったな”って思われたくなかったので。そういう気持ちのほうが強かったですね」
──ソゴウさんも似たような感覚でした?
ソゴウタイスケ「そうですね。あのときは、人と逆を行くことに命をかけるじゃないけど、他のバンドと違うところを見せたいと思って、毎回毎回が戦いみたいな感じでした。普通だったら、何年か先の計画を立てて、“ここに到達しましょう”って動きますけど、そもそもそういうのが苦手なバンドだし、実際にそういうこともあまりなかったので、気づいたら“10年経ってたね!”っていう。だから、よくここまで残っているなぁって感じですね、何の計画もなしに(笑)」
ヨコタ「出たとこ勝負(笑)」
オカザワ「ほんまによく生き残ったよね?(笑)」
ヨコタ「そうそう。生き残ったっていう感覚に近いよな? 何かを成し遂げたというよりは、しがみついていられたっていう感じ」
オカザワ「うん。ずっと戦っている感じがある」
ヤマサキ「“キュウソと同じことをしたい”みたいなフォロワーもあんまおらんし。“キュウソのおかげで始めました”っていうバンドもちょっとだけいるけど、全然違う音楽やってるし…」
ヨコタ「それなのに、イベンターの人とか制作の人から“キュウソの活動の仕方って、飄々としていて、押さえているところは押さえているのにラフな感じがあって。あのバランスってどうやってるんですか?”って言われたりするんですけど、ほんとうに何も考えてないんですよ(笑)。そこに関しての戦略性がひとつもなかったんで」
──でも、羨ましがっているバンドはすごく多いと思いますよ。
ヨコタ「そこは、変わっていないように見えているというのがめちゃくちゃデカいのかな?と思います。嫌な言い方ですけど、“メジャーに行って魂を売った”みたいなのって、インディーズバンドとかお客さんの中には絶対にあって。でも、俺らは物理的にもあまり距離が離れなかったというか。そこに関しての羨ましさはあったかもしれないです。“こいつらやりたいようにやってるな”って見られていると思うので」
──ヤマサキさんも、周りからのそういう目を感じたりします?
ヤマサキ「うーん…そこは僕らのことをあまりよく分かってないっていうところもあると思います。僕らは今も関西にいるし、群れまくってるわけでもないから、謎の雰囲気もちょっとあるというか。いまだに初めて酒を飲んだ人に“セイヤくんってめっちゃ怖い人だと思ってた”とか言われるし、そこはステージのイメージだけ言っている人もいるんやろうなって。でも、そういうのを見て“羨ましい”っていうところに繋がってるなら、ブランディング成功ってことっすよね?(笑)」
──そうなりますね(笑)。
ヨコタ「俺たち完全にガラパゴス化してるんですよ。同じシーンの中ではちょっと変な感じにはなってしまっていて」
ヤマサキ「だからこそジャンルに縛られない活動ができているのかもしれないですね。オールジャンルと戦えるというか。ほんまに不思議なぐらい、いろんなところでいろんな経験させてもらえたので」
ヨコタ「うん。周りに同じような動きをしているバンドがいないので、メジャーデビューしたときのことって、正直あまり思い出せないんですよ(笑)。もし周りの流れに乗っていたら、どこかでスイッチが入っていたと思うんです。武道館でやって、こういう場所に出て…みたいに、ひとつずつスイッチが入っていって、“俺たちは次の目標としてこうしなきゃいけない”って感じになっていたのかもしれないですけど、それがないままここまで来ちゃったから」
オカザワ「そうだよね(笑)。メジャーのレコード会社って、“じゃあ次はこういう曲で、こういうアルバムにしよう”とか、そういうのがあるものだと思っていたんですよ」
ヨコタ「(外部)プロデュースとかね」
オカザワ「そうそう。そこをいい意味で俺らに任せくれていたんです。そこは本当にすごくありがたかったんですけど、もしそういうのがあったらどんな感じになってたんだろう?って思ったりとか」
ヨコタ「そこに反発していたかもしれないしね。“一回やってみたけど、よくないと思って今回はこういう作品になりました”とか。そういうのもなく、毎回自分たちが作りたいものを出してきただけっていう」
──10年間変わらず、自分たちのやりたいことをやって、作りたいものを作り続けて来られた。
ヨコタ「そこに関してはマジで変わってないですね。もちろん何かに影響を受けたり、その都度周りのスタッフが道筋を立てくれてはいるんですけど、基本的には何も変わっていないです」
ヤマサキ「でも、みんな最終的にフェスやろうとし始めるよな?」
ヨコタ「自主フェスね」
ヤマサキ「俺らもやってた未来があったかもしれんよな?」
ヨコタ「もっと早くにね?」
ヤマサキ「ははははは(笑)。デビューのときから一貫して、目標を立てて、“ここに全員連れていくで!”っていうよりも、周りに噛みつき続けてるんですよ。向かってくる奴全員倒していくっていう」
オカザワ「(ライヴに)呼んでもらった人のところで暴れ回って(笑)」
ヨコタ「スケールが小さい(笑)」
ヤマサキ「ほんまネズミみたいなことしてるわ」
ソゴウ「先頭に立ちたくないんですよね」
ヨコタ「そうそう。キュウソネコカミってカウンターのバンドなんで。自分たちでストレートを繰り出すのが得意じゃないんですよ」
ヤマサキ「誰かがパンチしてくれないと動けない(笑)」
──“名は体を表す”といった感じですね。
──では、10周年イヤーにリリースするアルバム『出現!鼠浄土』のお話にいきましょう。1曲目の「ネコカミたい」は、10年前に発表された「ビビった」のセルフオマージュになっていますが、そういう曲はやっぱり“作りたいな”というところから始まったんですか?
ヤマサキ「構想はありました。メンバーにも話をして、デモを作ったんですけど、最終的には結構変わったんです。それがすごく良くて。最初はもっと「ビビった」と離れてたんですけど、“これはもう寄せに寄せたほうがおもろいんじゃないか!?”って、ワイワイガヤガヤ作っていきました」
オカザワ「「ビビった」のときよりも確実にレベルアップしているので、アレンジの成長も見れるし、ほんとうに好き放題やったので、作っていてとにかく楽しかったです」
──「ビビった」のキメも使われていますけど、最初はそこも全然違っていたんですか?
ヨコタ「若干似せてはいたけど、もっと寄せました。セイヤがちょっと外してくれていたんですよ。“さすがにそのままなのはちょっとアレやろ?”って。でも、“ここはもうまんまでいいんじゃない?”とか」
ヤマサキ「誰かの曲のオマージュを感じたとしても、そのまま行けー!みたいな。“それはそういうことやー!”みたいな感じで」
──それは2番のBメロのことですかね。
オカザワ「ははははは(笑)」
ヨコタ「一切隠してないですからね」
──どう聴いても〇asisという(笑)。
ヤマサキ「僕らが先にこの曲出して、その後に〇asis復活やからタイミングばっちり!」
ソゴウ「関係ないけどな(笑)」
ヨコタ「まあ、〇asisも俺たちと似たようなバンドやし。カウンターのバンドやから」
オカザワ「どこがや(笑)。めちゃめちゃメインストリームや」
──歌詞も最初の段階からは変わっているんですか?
ヤマサキ「変えました。最初はもっと悲しい曲だったんですよ。“キュウソがなれなかった未来”みたいな」
ヨコタ「リアルな部分が強かったんです。“キュウソって10年頑張ってきたよね”って、意外と周りから言ってもらえるんですけど、自分たちだけの感覚で言ったら、さっき言ったみたいに、“成し遂げられなかった”っていうのが自分たちにとってのリアルだったんですよね。だから、“もし上京していたら”とか、“こういうことをしていたらどうなっていたのか?”とか、“そういうことをやっていた人たちすげえな”とか、そういうことを思うようになっていたので、そっち方面の歌詞になっていたんです」
ソゴウ「でも、この曲でMVを撮るってなったときに、映像監督の(加藤)マニさんが“歌詞を変えたら?”みたいなことを言ってくれたんですよ。僕らの中でマニさんの言葉ってすごく重要で、もうひとりのメンバーみたいな感じで、いつも方向を示してくれる人なんですけど」
ヤマサキ「言いたいことを言う監督なんです。“これはおもしろくないです”とか(笑)。今回も“これでもうキュウソは終わるんですか?”って」
ヨコタ「終わりの曲に聴こえたらしいです」
オカザワ「“解散するんですか?”って」
ヤマサキ「たしかにそう聴こえるな…と思ったから、そっちじゃなくて、現状に噛みついていく歌詞にしていこうかって。それで、サビは元々あったんですけど、1Aと2Aはがっつり変えました。“変わっていく世界についていけていない俺たち”から、“変わった世界とどう戦うか!”みたいな。そういう方向にしたらすごく熱い曲になって」
──そうですよね。「ビビった」の歌詞を踏まえながら、いま自分たちが思っていること、それこそどう戦って行こうとしているのかが書かれていて。
ヤマサキ「だからすごく率直な、いい意見でしたね」
ソゴウ「今まで出会った人を包み込むような歌詞にもなったから、すごくいいなって思います」
──本作には「BACK TO THE NATURE」というインスト曲も収録されています。インストは「ネコ踊る」振りですか?
ヨコタ「そうなんです。インディーズで出したとき振り」
──なぜ今、やろうと思ったんですか?
ヨコタ「めちゃくちゃ時間がなかったんですよ。レコーディング期間が、前半5曲はわりと時間をかけられたんですけど、後半5曲は1ヶ月半で曲を作って仕上げるところまでやらないといけなくて。セイヤもデモをいっぱい持ってきてくれていたんですけど、“もしかしたら足りなくなるかも?”と思って、僕もデモを作ったら、“これをやろう!”ということになって。ただ、ここから歌詞をつけるのはちょっと難しいなと思ったのと、前から“インストをやろう”っていう話も出ていたので、ちょうどよかったです」
──タイトルはどういうところから?
ヨコタ「これはマジで意味がなくて(苦笑)。“何かタイトル考えなきゃ…”と思っていたときに、たまたま映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をやっていて。タイトルとしては“自然に還れ”みたいな意味ではあるんですけど、いまってSNSとかでみんな疲れてるじゃないですか。でも、そういうのは一回置いといて、これを聴いているときは難しいことを考えるのをやめようみたいなイメージでつけたました。あと、セイヤは英語のタイトルをつけないから、字面的にそういうのが1曲ぐらいあったほうがアルバムっぽいなって思って」
──なるほど。SNSのお話がありましたが、「わや」や「正義マン」は、そういったものが取り巻くいまの日本について歌われていて。
ヤマサキ「「わや」は結構具体的に言っていますね。珍しく社会的なことを歌っています。本当はこういう曲を聴いて、いろんな人に気づいてほしいんですけど、この曲でMVを撮る勇気はないというか(苦笑)。でも、そこに対して思っていることはやっぱりあるんです。みんなこの話題ってあんまり触れないようにしてるじゃないですか」
──そうですよね。
ヤマサキ「特に僕らみたいな表に出る人間って、ちょっとでも社会的なことを発言すると、壁というか、薄いフィルターみたいなものを張られて、“あ、そっちになりましたか”みたいな。でも、そんなこと言ってたら日本ヤバくね?っていうことを、自分も思ってはいるっていうことをアルバムの1曲として入れておきたかったんです。特に「わや」は触れにくいことですけど、いつまでもそれで全員大丈夫なのか?っていう」
ヨコタ「本来音楽作っている人って、やっぱり曲にしてナンボというか。SNSのほうが言いやすいし、バズるけど、自分が思っていること…こういう怒りを曲に落とし込むのは、俺はいいことだなと思います。俺も、SNSでこういうことを言っていたら、“いや、ミュージシャンなんだから曲にしてよ”って思っちゃう派なので、こうやって曲で出しているほうが自然だよなって思います」
──ヤマサキさんは、昔からずっと世の中に対して思うことを曲にしてきたと思うんですけど、フィルターをかまさずに言ってしまってもいいんじゃないか?という気持ちが強くなっていたりします?
ヤマサキ「そうですね。前も「囚」っていう曲で社会的なことを歌ったんですけど、やっぱり思っていることはSNSじゃなくて、曲にしたほうがアーティストとして健康的というか。“ああ、そっちに行っちゃったか”って見られずに、自分の意見を言えると思います」
──そういった楽曲もありつつ、「エキゾチックアニマル」も同じく感情の発露ではあるんですけど、またそれとは異なる感じといいますか…。
ヤマサキ「やっぱり心が動いたときに曲ができることが多くて。久し振りにペットを飼ったんですけど、ほんとはもう嫌だったんですよ。別れがあるから。それで、別れが来てしまったときに、もう本当につらくて。でも、つらいからといってすぐに書けるわけじゃなく、亡くなってから1年後にこの曲を書きました。心が動いたことをちゃんと曲に残したいから、“いつか曲にしたいな”ってずっと思っていて、書けたのが1年後でした」
──この曲をバンドでやりたいっていう気持ちもあったんですか?
ヤマサキ「この曲、最初は弾き語りで披露したんですよ」
ヨコタ「俺らもこの曲のことを知らなかったんです。弾き語りライブを観に行った人たちが、SNSで“今日やってた新曲がよかった”ってつぶやいてるのを見て、“どんな曲なんやろう?”と思っていたら、この曲…!?って」
オカザワ「タイトルが「エキゾチックアニマル」だから、どんな曲なんやろう?と思った」
ヨコタ「この曲のデモは、まだアルバムの構想が一切なかった頃にはもう既にあったんです。でも、確かに分かるんだけど、次に作りたいのがこの曲となると、どんなアルバムやねん!?と思って。だから、アレンジをどういう方向にするのかはかなり考えました。すごく切なくて、感情を揺さぶる感じのほうがいいのか、それともそこをやりすぎずにガンガン押していくほうがいいのか…」
ソゴウ「今回のアルバムの中でもかなり悩みましたね。それこそお客さんがのれるようなアレンジにしていいのか。でも、この歌詞だとお客さんとしては“聴きたい”が勝つと思うから、“ワー!”ってならないんじゃないかとか…」
ヨコタ「最初に、“もしかしたらこの歌詞だと自分のこと過ぎて伝わらないんじゃないか?”っていう話も出たんです。出会いと別れみたいなことで言うのであれば、もっと広い範囲の話にもできるじゃないですか。だからもう少し抽象的にしたほうが広く伝わるんじゃないか?っていうアイデアも一瞬出たんですけど、結局はセイヤと1匹の話だから、そこのストーリーを大事にしようって。一般的にいう“泣かせる曲”みたいなものではなくて、自分が思うなりのストーリーを考えようっていう話をした記憶があります」
──たしかに、泣かせようという感じは一切ないですね。ご自身の気持ちをただ率直に歌っているという。
ヤマサキ「お涙頂戴にしたかったら、<人のエゴで飼われて>っていう言葉は出さないと思うんですよ」
──そうですよね。
ヤマサキ「でも、そこを歌いたかったんです。ペットって親を選べないじゃないですか。そういうペットと人間の関係のヤバさみたいなところとか、“そんなことを歌わないでよ”っていうところもちゃんと歌いたかったんです。だから<人のエゴ>で始まるサビにしましたし、でも、“すごく愛していたよ”っていうのが伝わったらいいなと思って」
──めちゃめちゃ伝わりました。「一喜一憂」の歌詞もいいですね。普通であれば一喜一憂しないほうがいいと言われるけど、一喜一憂していたいと歌っていて。
ヤマサキ「“一喜一憂するのは生きてるからでしょ?”みたいな。“だから、生きていたい”みたいなことですよね、一喜一憂したいっていうのは。本当は“憂”がないほうがいいんですけど(笑)」
ヨコタ「この曲、阪神タイガースの中継番組(「MBSベースボールパーク」2024テーマソング)のタイアップで作っているから、ほんとは“憂”がないほういいんですよ、ファン目線でいうと(笑)」
ヤマサキ「でも、今年はめっちゃ一喜一憂のシーズンやったやろ?」
ヨコタ「まぁまぁ(笑)」
オカザワ「でも、ワクワクしようぜ!ってことなのかなって」
ヨコタ「それも楽しもうよ!っていうね」
オカザワ「そうそう。そういうのがメッセージとしてあるよなって」
ヤマサキ「タイアップではあるんですけど、結構自分たちの曲でもあるんですよね。<生き様で果たし合って>とか<またここで会いたい>っていうのも、キュウソネコカミのライヴを思い起こさせる曲になってるんじゃないかなって」
──きっかけはタイアップかもしれないけど、根本は「ネコカミたい」と同じですよね。10年経ったバンドの今が出ているし、だからこそ言葉に重みや強さがあるし。
ヤマサキ「こういう曲もちゃんと作れるようになっているというか…」
ヨコタ「うん。曲としてはこっちのほうがどストレートやもんね」
──最後の「やってみようぜヒーロー」も優しい曲だなと思いました。<目に映るモノ全てにマルとバツと時にはサンカクを>というのも、それこそ「わや」や「正義マン」にはない考え方を、最後の曲で歌っているのも素敵だなって。
ヤマサキ「まぁ、サンカクの範囲が一番広いんですけどね。“もう分からん! 全部サンカクや!”みたいな(笑)」
──ははははは(笑)。確かに。
ヨコタ「たとえば「わや」みたいに、自分にも向けて言っているときは、わりと厳しめの言葉を言うんですよね。でも、<やってみようぜ>って言うことに関しては、逃げ場所を残しておくというか、余地をちゃんと作るのがらしいなって。言い切ることに対して、どこかで絶対にブレーキをかけるっていう」
ヤマサキ「ここは<やってみようぜ>にしておかないと。これが行きすぎてしまうと“正義マン”になるんですよね。だから、肩の力を抜いて、助けられるときは助けてあげてね?ぐらいの感じです。俺も普段はできていないけど、もし困っている人がいたら、自分に余裕があるときは手を差し伸べられる人になろうぜっていう。咄嗟の判断をするときに、この曲を聴いたことで5秒かかるところが2秒縮まればいいな、みたいな感じです。自分でもこの考え方は持っておきたいなって」
──個人的にいいなと思ったのが、<善人ぶってねぇよ もしくれるんならお礼も貰うぜ>というところで。
ヤマサキ「財布を拾って、届けて、別に“10%くれ”とは言わないけど、“あげる”って言われたら“もらうよ?”っていうことですね(笑)」
──まさにですね(笑)。そういうのって不純だとか、邪(よこしま)だとか思われがちだけど、そういう気持ちって誰しもあると思いますし。
ヤマサキ「そういうのも全部書いちゃうんですよね。書かないと嘘な気がするんで」
──素敵だと思います。
──本作のリリースツアーも決定していますが、来年3月20日には、神戸ワールド記念ホールにてメジャーデビュー10周年メモリアルイベント『極楽鼠浄土』を開催されることになっていて。
ヨコタ「さっき言ってた自主フェスですね! みんなやってるやつ!」
ヤマサキ「俺らもやらせてくれ!」
ヨコタ「ほんとはもっと前から“やったら?”って言われていたんですけど、俺たちが“やらん!”ってずっと言い続けてたんです。でも、今回は記念なんでやろうかな?って」
ヤマサキ「やるとなると、枠が足りなさすぎる。呼びたい人がいっぱいいるから。今回も“なんで呼ばねえんだよ”って思っている奴らもいっぱいいると思うし…」
ヨコタ「実際に何組かに言われたしね(笑)。でも、今回はすみません! もちろん呼びたかったんですけど!」
オカザワ「今回は“同世代”っていうのがあったんで」
ヨコタ「さっきも言った通り、“生き残れた!”っていう気持ちが強くあって。そういう中で、今回呼んでいるのは、デビュー時期が同じだったり、同じシーンでやってきた仲間であって、いろんなことがあったのをお互い間近で見てきた同士なんです。そういう中から呼んだメンツなので、正直どっちに転ぶか分からないんですよ。エモくなるのか、めちゃくちゃ楽しかった!みたいになるのか。そのどっちもあると思うんですけど」
オカザワ「そうだよね。“キュウソのイベントだから盛り上げなきゃ!”って思っているかもしれないし」
ヨコタ「“あれ? 意外とそういう雰囲気なの?”とかね。俺らのライヴもそうなんですよ。マジでどっちになるか分からない。最後、トリで出たときに…俺らトリやるんかな?」
ヤマサキ「やれや! 出てくれるバンドも自分らがトリやるとは思ってないやろ」
ヨコタ「頼む! ブルエン(BLUE ENCOUNT)頼む!」
ソゴウ「ライヴのハードルをどんどん上げていくバンドばかりだし、みんなすごいライヴをするだろうから、その中で最後にやるっていうのは…なかなかね(笑)。大変だと思います」
──バシっとトリを務めてもらうことを楽しみにしつつ(笑)、2025年は結成15周年でもありますので、そちらも期待しています!
ヨコタ「まだやりまくりますので、いろいろと!」
(おわり)
取材・文/山口哲生
写真/野﨑 慧嗣
RELEASE INFROMATION
キュウソネコカミ『出現!鼠浄土』
2024年10月9日(水)発売
初回限定盤A(CD+Blu-ray)/VIZL-2353/6,920円(税込)
初回限定盤B(CD+DVD)/VIZL-2354/6,480円(税込)
通常盤(CD)/VICL-65997/3,400円(税込)
LIVE INFORMATION
キュウソネコカミALリリースツアー「DMCC REAL ONEMAN TOUR 2024 -めざせ!鼠浄土-」
10月14日(月・祝) 札幌 PENNY LANE 24
10月24日(木) 東京 Zepp DiverCity(TOKYO)
10月27日(日) 高松 オリーブホール
11月2日(土) 石川 金沢EIGHT HALL
11月9日(土) 広島 LIVE VANQUISH
11月10日(日) 山口 周南RISING HALL
11月14日(木) 宮城 仙台darwin
11月15日(金) 秋田 club SWINDLE
11月24日(日) 福岡 DRUM LOGOS
12月3日(火) 愛知 名古屋DIAMOND HALL
12月5日(木) 大阪 なんばHatch
メジャーデビュー10周年メモリアルイベント「極楽鼠浄土」
2025年3月20日(木・祝) 兵庫 神戸ワールド記念ホール
開場/開演:OPEN11:30 / START12:30
【出演アーティスト】
キュウソネコカミ / KANA-BOON / ゲスの極み乙女 / SHISHAMO / BLUE ENCOUNT / ヤバイTシャツ屋さん