──新曲「IMMORTAL」の前に、昨年11月リリースのセッションアルバム『『INTERWEAVE 03』』について聞かせてください。『INTERWEAVE』は作り始めたときから第3弾まで作りたいとおっしゃっていたということですが、そもそもこのセッションアルバムシリーズを作ろうと思ったのはどういったきっかけだったのでしょうか?

「僕はもともとOOPARTZとして音楽活動をしていたのですが、20213月に一段落して。これまでユニットとして使っていた時間がごっそりなくなったので、“何をしようか?”と考えて、ソロでやってみることにしました。僕が楽曲提供という形で今まで一緒に仕事をしてきたアーティストさんを、逆に僕から呼んで、僕名義の曲で一緒に作って、僕の名義のもとに集めたら“フェスになるじゃん!”、“めっちゃ人来るやん!”っていうちょっと邪な気持ちもあって(笑)。ただちょうどそのタイミングでコロナ禍になってしまって、ライブどころじゃなくなってしまったんですが、アルバム自体は作れるので作り始めたという感じです。ただコロナ禍が落ち着いた今もまだライブができていないので、やらなきゃいけないなとは、めちゃくちゃ思っています」

──『INTERWEAVE 03』はご自身のルーツに特化した作品だということですが、それはどういった意図からですか?

「基本的にシリーズを通して、エレクトロとヒップホップの2本柱でやっていて、『03』はヒップホップの割合が多くなったという感じで。アルバムごとに音楽性のテーマは設けていないですね」

──一緒にセッションする方との相性などを鑑みて“この曲はこういうふうにしていこう”と決めていく?

「それが…このシリーズでは、コラボするアーティストさんに事前に作った曲を聞いてもらって“これをやりましょう”じゃなくて、何もない状態から話をしていったんです」

──作る段階からセッションを?

「はい。“どういう曲にしましょう?”っていうところから始まるんで、正直、そこが障害になって実現しなかったアーティストさんも何組かいるんです。でもそれは“しょうがないな”と思っていて。“面白いね!”と言ってくださる方と一緒にやりました」

──そこまで、制作段階からの“セッション”にこだわったのはどうしてだったのでしょうか?

「セッションアルバムなので、僕の色とコラボするアーティストさんの色が渾然としていたほうがいいと思っていて。僕スタートだとだいぶ僕に寄っちゃうんです。最初にセッションさせていただくアーティストさんの意見を聞いて、その意見を89割取り入れたとしても、作るのは僕なので、最終的に5:5くらいになるんです」

──なるほど。

「あとは、そのアーティストさんの持っている音楽性ってあるじゃないですか。例えばコレサワさんだったらアコギでバンドサウンドみたいな。だけど僕の名義だったらオートチューンかけたヒップホップとかもできるんじゃない?と思って。“そういうのやってみたかったりする?”という話をしたら“興味はあります”ということだったので、じゃあそういう曲をやってみようよ!と言って出来たのが「kiss me feat. コレサワ」です。そういうものも引き出したいなと思ったので、最初に何もない状態で話をするというのはどのアーティストさんともやりました」

──『INTERWEAVE』シリーズを経て得たことや発見したことがあれば教えてください。

「“混ぜるのがうまいですね”って言われるんですよ。“このアーティストにこんな面があったのか!”というものを引き出すのがうまいって。自分ではいまだに自覚がないんですけど、自分はそれが得意なのかと気づいたので、それは今後も生かしてやっていきたいなと思います。あとは楽曲提供するときにでも、与えられたテーマに忠実に作るんじゃなくて、もうちょっと自由にやってもいいんだなということを、提供じゃない仕事をやることによって気づきました。『INTERWEAVE』シリーズは僕の、僕による、僕のためのプロジェクトなので。“このアーティストにはこういう流れがあって…”みたいなことは関係なく、本当に声やアイデアをお借りして一緒に遊ぶような感覚でできているので、自分の音楽活動の中ですごくいい場所だなと思いました。息抜き…というには息は抜けないんですが(笑)、『INTERWEAVE』シリーズがあるからこそ、他の仕事もできるような感覚があります」

──『INTERWEAVE』シリーズでセッションした方の中で特に印象的だった方や印象的なやりとりはありますか?

「アルバム全体でいうと、『01』で歌ってもらった人に『02』で歌詞を書いてもらったり、そういう違った角度で参加してもらうことで、その人の仕事ぶりや仕事の仕方の違いが見えたのは面白かったです。例えばおかもとえみちゃんは『01』では歌ってもらっていて(「Do Or Do Not feat. おかもとえみ」)、『02』では歌詞を書いてもらいました(「ミラールージュ feat.Liyuu」)」

──確かにそれは面白そうですね。

「あとは歌ったことがないとおっしゃっていた方や普段歌っていない方とのセッションも面白かったです」

──第1弾で参加された中尾明慶さんは特に話題になりました(「パパだから feat. 中尾明慶」)。

「中尾さんには“歌ですか!?”、“なんで俺が?本当にいいんですか?”って何回も聞かれたんですけど(笑)。“中尾さんが普遍的な家族愛を歌う、ということをやりたいんですけど歌いたくないですか?”って聞いたら“歌いたくなくはない”と言われたので、じゃあやりましょう!と。それが今は自分に返ってくるんですけど(笑)」

──ご自身が歌うことになったから?

「はい。僕のソロ歌唱のきっかけも“歌いませんか?”という提案をしてもらったことなんですけど、僕自身が、歌ったことない人に歌わせておいて、自分は歌えませんはナシだよなって(笑)」

──最初に『INTERWEAVE 03』のお話からさせていただいたのは、まさにJUVENILEさんの初ソロ歌唱曲(「NEW WORLD」)が『INTERWEAVE 03』に収録されているからだったんです。ソロ歌唱に挑戦してみようと思ったのはどうしてだったのでしょうか?

「すみません、実はリリースのタイミングとしては「NEW WORLD」のほうが先なんですが、曲としては「IMMORTAL」のほうが先にあるんです」

──そうだったんですね。

「はい。歌唱に挑戦したのは、スタッフさんから“歌いませんか?”と提案されたからなんです。1年半前くらいかな、『INTERWEAVE 02』を作っている途中くらいです。最初は“歌ですかとりあえず預かります”みたいな感じで返答したんですが、少し頭の中を整理してみると、“俺、めっちゃ歌わせてるやん!”と思って(笑)。あとは同世代の音楽プロデューサーが、楽曲提供のほかに自分で歌うということも増えていて。tofubeatsさんとかShin SakiuraくんとかSTUTSくんとか。そういう流れに乗ってみるのもいいのかな?って。何より、キャリアを重ねると周りから“やりませんか?”ということをなかなか言われなくなるんですよね」

──作家、プロデューサーとして確立されていますしね。

「そうなんです。作家ってそういうもの、みたいな考え方あるじゃないですか。本当はそんなことないんですよ。そんなことないはずなんですけど、自分でも気づかないうちに歌わないのが当たり前になっていて。でもせっかくそう言っていただいたんだから“いやいや”と断っちゃうのももったいないなというのが一番大きくて。求められることは何でもやったほうがいいなと思ってやってみました」

──ただ、キャリアがあるからこそ、新しいことにチャレンジすることに不安や怖さがあったりしませんか?

「ありますね。実際、何回も歌い直しました。でもみんなそうなんじゃないかな。今、第一線で活躍されている方も最初はすごく不安だったと思うし、それこそ僕は初めて歌う新人さんや、それまで歌うことのなかった俳優さんや声優さんの初めてのレコーディングなどを見てきているので。だから自分も続けていけば、ちゃんと歌えるようになるんだというのはなんとなく想像していました」

──ではそんなソロ歌唱曲「IMMORTAL」について聞かせてください。「IMMORTAL」はTVアニメ「望まぬ不死の冒険者」のオープニングテーマです。「望まぬ不死の冒険者」のどのようなところからインスピレーションを受けて作っていったのでしょうか?

「これまでアニメのオープニングというのは何曲か作らせていただいているので、音楽的な特徴として89秒という尺のなかで起承転結を作るとか、そういうお作法はもちろん守りつつ、自分の音楽性や自分の思想も入れるようにしました。誰でもいいんだったら僕じゃなくてもいいじゃないですか。そうじゃなくて、僕の曲なんだから自分を乗せなきゃいけない。ただ、原作の小説と漫画を頂く前に資料を見させていただいたときは、僕とは違う感じだなと思っていたんです。冒険者の話ですけど、僕は東京の青年なので。でも何か自分とリンクするところを見つけたいなと思って原作を読み始めたら…見つけようと思わなくても、主人公の気持ちがめちゃくちゃ自分と近かったんです」

──どういうところでしょうか?

「すごく簡単に言うと、主人公のレント・ファイナはうだつのあがらない冒険者。そんなレントが早々にラスボスみたいな存在(龍)に出会って喰われちゃうんです。そこから復活するんですけど、スケルトンの状態になってしまって。言ってしまえば見た目はすごく醜くなってしまうんですけど、一方でめちゃくちゃ強くなっていることに気づいて。望んでいない姿になってしまったけど、でも能力を手に入れて生きていくことになる。それって言ってみたら“本当はこうなりたいけど、求められているのはこっちで、こっちの道でやっていく”ということなのかな?って。それってみんなあることだと思うんですよね。例えば僕は野球が好きなんですが、大谷翔平さんみたいに野球がうまくなりたかったけどなれなかった。ミュージシャンになりたいけどなれない人もいるし、僕はミュージシャンにはなれましたけどマイケルジャクソンみたいな大スターにはなれていない。でも求められたところで頑張っている。そういうところで、すごくリンクしました。だから、サウンドはお作法も含んだファンタジーっぽい曲調で、歌詞の内容はもっと自分に近いところになっています」

──音楽家としてキャリアも地位もきちんと築いているJUVENILEさんから<走り続けろ 辿りつけるまで>という歌詞が出てくることが正直意外だったのですが、今のお話を伺って納得しました。

「いやいや、うまくいかないことは多いですよ。嫉妬まではいかないですけど、リリースのニュースとか見て“何で、これ俺じゃないんだろう?”って思うことは本当によくあります。でもそういうのってタイミングだし、逆にその人は僕の仕事をやりたかったかもしれない。だから自分に与えられたものをちゃんと見なきゃいけないなと思います。“ああなりたい、こうなりたい”じゃなくて、レントのように醜い姿になっちゃっても、その分強くなれたし、そんな自分をちゃんと肯定しようって」

──そんな想いを込めた「IMMORTAL」をご自身で歌唱されています。生声とトークボックスを使い分けていらっしゃいますが、その使い分けも含めてボーカルで意識したことを教えてください。

「“歌いませんか?”と言っていただいたことでこの曲は始まったので、トークボックスより生声のほうを多くしたいって思いました。トークボックスが得意ですし、トークボックスを多くしたほうが気持ち的には楽なんですよ。でもそこで楽な方を選んでもしょうがないと思って。若干の負荷は常に自分にかけておきたいので、歌は多めにして、トークボックスやボコーダーはサブボーカルのように使いました」

──トークボックスやボコーダーは、曲に入れることによってどのような効果を生み出せるのでしょうか?

「声がロボットっぽいので、例えばすごくクサイことを歌っても、そんなに重くならないんです。人の声って良くも悪くもすごくパワーがあるので、何を言うか何を言わないかがすごく重要になるんですが、トークボックスは楽器のような要素があるので、何を言ってもさらっとさせられるという良さがあります。あとは単純に、自分の声では出せないような高い声もしくは低い声でも完璧なピッチで出せるので、音楽的にはすごく助かります。ただ、今回作ってみて思ったのは、自分の生声のパワーやインパクトは、トークボックスよりも全然あるんだなということ。これまでは他のアーティストさんの歌声に自分のトークボックスを合わせる形だったのでそこまで気づかなかったんですが、自分の声で直接対決させると、僕の歌のうまいへたに関わらず、その力があるんだなと気づきましたね」

──改めて「IMMORTAL」完成してみていかがでしたか?制作の順番で言うと、初のソロ歌唱曲になるわけですが。

「歌い直したいなと(笑)。でも別にマイナスな意味じゃないです。いつも思うことなんです。“もっとよくできる”って。でも録り直したからって良くなるかはわからないし、その時点ではベストのものを出しているので」

──達成感というか、満足度みたいなのはありますか?

「それはもちろんあります。やってよかったなと思います」

──それがあったから、きっと次にもう一曲歌唱されているわけですしね。(「NEW WORLD」)

「はい。記念じゃないんで。1曲しかやらなかったら“あれ、あったかな?”という感じになってしまうと思うんです。だからこれからも続けていくことに意味があると思います」

──ということは今後もどんどん、ご自身が歌う曲も作っていく?

「そうですね。でも“自分が歌う曲しかやりません”ということではなくて。“この曲はこの人に歌ってほしい”というのもあるだろうし、“自分で歌ったほうがいい”と思うこともあるだろうし。これまでは自分が歌うと思うことすらなかったので、その選択肢が増えた感じです」

──2024年の最初のリリースが「IMMORTAL」になりますが、今年はこの他にどのような活動を予定していますか?

「最初にライブができていないという話をしましたが、そろそろやらなきゃなと思っています…というか、コロナ禍も落ち着いてきて、自分で歌う曲も作って、やらない理由がない(笑)。なのでライブをやりたいなと思っています」

(おわり)

取材・文/小林千絵
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFORMATION

JUVENILE「IMMORTAL」

2024年19日(火)配信
PONY CANYON

JUVENILE「IMMORTAL」

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