──8月に配信リリースしたSKE48卒業後初ソロシングル「鍵の在処」に続く、2ndデジタルシングル「Dying liar/幻影」が完成しました。前作ではカップリング曲の「Moonlight parade」で初の作詞に挑戦し、今作でも作詞を手掛けています。「Dying liar」、「幻影」はどのように作り上げていったんでしょうか?

「まず、「Dying liar」では主人公の感情が右往左往していく様を描きたいと思いました。相手から抜け出したいけど抜け出せない矛盾、離れたいけど染まっていく葛藤を愛憎劇のような物語にしたいなって。そう考えた時に、その感情と食べものに対する気持ちって似ているって思ったんです。食べものでも、手を出しちゃいけないとわかっていても食べてしまうことってあるじゃないですか?」

──栄養のバランスを考えたらこればっかり食べてちゃダメなのにとか、今はダイエット中なのにこのお菓子がやめられないとか。

「そうです(笑)。食べすぎたら大変だってわかっているのに、刺激を求めてどんどん辛いものを求めてしまったり。経験からもう結末がわかってるのにやめられないって、苦い恋愛と似ているなって思ったんです」

──それは、古畑さん自身の恋愛観から発想している?

「そういう恋愛観はまったくなくて、ないからこそ自分の中で物語を作ることができるんだと思います。辛いものを食べすぎちゃいけないのは知ってますけど(笑)」

──今話していただいた「Dying liar」のモチーフは、どういうシチュエーションで浮かんだんですか?

「デスソースを見ていたときに思い浮かびました(笑)。韓国ドラマで観たドロドロした人間関係や、その中での女性の強さが結びついて、“恋愛と食べものへの執着って似ているかも?”って感じた気持ちを歌詞にしました」

──歌詞は、日常的に生まれてくるんですか?

「作詞をするって決めてから、それまで以上にいろんなものに興味を持つようになりました。風の匂いや目の前の風景に敏感になったし、日々生まれた感情もスケッチしておこうって」

──「Dying liar」はMVも制作されていますが、闇落ちしたガーリーワールドというか、ダークでグロテスクさもある世界が展開されています。

「“赤い食べものを食べる”とか、“うさぎが出てきて”とか、大まかなアイデアを私から監督に話して、そこからさらに想像力を膨らませて作っていただきました。私は儚さや純粋さと、その内側に秘めている憎しみといった人間のドロドロした部分、グロい部分を融合させたMVが撮りたいと思っていました。監督は、“もっと憎しみを込めた表情で!”とか、いろんな演出で私の闇落ちした姿、グロい部分を引き出してくれたと思います」

──SKE48時代だったら、なかなか撮れない内容ですよね。

「アイドルは、やっぱり人間の明るい部分を見せたいじゃないですか。今回、アイドル時代には表現できなかった世界観をMVに投影できたのは、新たな挑戦だったし、楽しい経験になったなと思います」

──MVの中で、特に注目してほしいシーンは?

「ケーキとかでべちゃべちゃになった手ですかね(笑)。あと、うさぎと一緒に何かしているシーンは全体的に好きです」

──もう1曲の「幻影」は、どのようにして生まれたんでしょうか?

「「幻影」は私の思い、ある時期に芽生えた気持ちをダイレクトに綴った歌です。やっぱり、見えない未来やわからないことについて、漠然と考えて不安になっちゃうことがあったんです。ソロになって自分と向き合う時間が増えて、人生について考えることも多くなって。それまでだったら、不安になっても“大丈夫でしょ”で終わっていたのが、ソロになってからはどんどん深く自分の中に潜り込んで、とことん不安になったりしていたんです。それは初めての経験で、だったら自分のためにも“こういう自分もいたんだ”って、歌詞にして残しておかなきゃって思ったんです。成長するためにも、それが必要だって。漠然としているけど大きな不安を歌にすることで、誰かに寄り添えたらいいなとも思いました。漠然とした不安は誰でも抱えることがあると思うけど、「幻影」を聴いて“この曲の主人公もそうなんだ”、“古畑奈和も自分と同じなんだ”って思ってもらえたら、その人に寄り添うことができる。自分の経験が歌になって、誰かを支えるための力になるなら、すごくいいことだなって思ったんです」

──今、「幻影」のもとになった漠然とした不安は?

「自分の中で消化できていて、今となってはあの不安が懐かしいなって(笑)。いろんな経験をした方が歌詞の引き出しも増えるし、自分が傷つけば傷つくほど、苦しめば苦しむほど、誰かに寄り添える歌が書けると思います。傷ついても、歌詞を書くことが立ち直るきっかけになるし、その結果として自分が強くなる。だから、どんどん苦しんで、傷ついて(笑)、自分のためにも誰かのためにもなる歌を、これからも作りたいです」

──自分で書いた歌詞を歌うことには、もう慣れましたか?

「自分の言葉がダイレクトにメロディーに乗って誰かに届くということに、最初はちょっと照れがあったんです。でも、「Moonlight parade」を書いてリリースしたあとに、ファンの方に喜んでいただけたり、“この歌詞が好きです”と言ってもらえる機会が増えて、だんだん自分が書いた歌詞を歌うことに対して、照れがなくなっていきました。聴いてくれた人全員に歌詞が届いたら最高だし、究極の理想ですけど、そうじゃなくてもいいんだ、たった1人でも私が書いた歌詞で前向きな感情になったり、支えたりすることができるって分かったことが、すごくうれしくて。今、いろんなタイプの歌詞を書くことに挑戦しているんですけど、そこで自分の内側を見てもらうことで、たった1人でも誰かに寄り添えたら…。そうなれるように、今後も1曲1曲気持ちを込めて、できるだけ届きやすいメッセージにして、みんなのもとに旅立ってくれる歌が書けたらうれしいなと思います」

──「Dying liar/ 幻影」リリース後の12月には、神奈川と名古屋でライブが控えています。

「ライブのタイトルに『REAL』という言葉と使っているんですけど、古畑奈和の心の深層、本性に近いものをステージ上で表現できたらと思っています。今までよりも心の距離を近づけて、さらに古畑奈和を知っていただきたいという思いを込めたライブです」

──ライブが終わった数日後には、新しい年がやってきます。2024年は、どんな1年にしたいと考えていますか?

2023年は、いろんなものが新たに始まって、試行錯誤の中で頑張って、自分がどういう人間なのかわかったり、本当に始まったばかり、やっとスタートラインに立てたという1年でした。2024年は、2023年に得たものや見つけたヒントを自分の中でうまく消化して、より明るい方向に進んでいけたらという思いがあります。具体的には、音楽活動とお芝居でもっと活発な活動ができるように。この2つを軸に、2024年も頑張っていきます!」

──2024年のプライベートでしたいことは?

「釣りに行きたいです。小学校5、6年のときにお父さんと行ったことがあるんですけど、鯛が釣れたりして、すごく楽しかったんです。2024年は、あの興奮をまた味わいたいですね。釣れるまでの時間は、山とかが見える堤防で、スマホも見ないでゆっくりと流れる時間も楽しみながら(笑)」

(おわり)

取材・文/大久保和則
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFORMATION

古畑奈和「Dying liar/ 幻影」

2023年1129日(水)デジタルリリース
収録曲:Dying liar / 幻影
レーベル:blowout Inc.

楽曲はこちらから

LIVE INFORMATION

Furuhata Nao LIVE2023 -REAL-

2023年1217日(日)
会場:神奈川 SUPERNOVA KAWASAKI
<第1部>開場 13:15 / 開演 14:00
<第2部>開場 17:15 / 開演 18:00
2023年1222日(金)
会場:愛知・名古屋 ReNY limited
開場 17:00 / 開演 18:00

Furuhata Nao LIVE2023 -REAL-

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