――まずは906 / Nine-O-Sixというアーティスト名の由来を教えてください。

「はじめまして。906 / Nine-O-Sixの本田です。自分達は大阪で結成し、現在は東京を拠点に活動している、プロデューサー/シンガーデュオです。トラックメイク、編集を担当する田中宏承と、トラックメイク、歌を担当する本田人士からなるグループです。名前の由来は、結成したタイミングが9月6日で、パソコンに表示されている時間もちょうど9時6分だったのと、0を軸に数は違っても回転させれば形が共通する9と6という数字に魅力を感じたからです」

――トラックメーカー・デュオということですが、おふたりの出会いは?

「出会いは、15年前に僕の幼馴染みがレゲエDJをしていて、当時レゲエのサウンドマンをしていた田中と僕の幼馴染みが現場で仲良くなり、HIP HOPのビートを作り始めたばかりの僕とを繋げてくれたのが始まりです。そして、他の仲間たちと一緒に地元でカラオケのコンテナを使ってスタジオを作ることになり、そこでビートメイクに興味があった田中と2人で、お互い人見知りながら一緒に機材を共有しながら制作しだしたのがきっかけで、今に至ります」

――トラックメーカー/ビートメーカーというアートフォームを選んだ理由は?

「自分は10代の頃、ロックやパンク、ブルースなどが好きでバンド活動をしていたのですが、高校卒業が近づくと共にメンバーが受験勉強などで忙しくなり解散することになりました。そして卒業後にバーでバイトをはじめ、そのお店のオーナーがブラックミュージックが好きで、JAZZやソウルなどをお店でよくかけていました。ある日オープン前の準備中にThe Pharcydeのアルバム『Labcabincalifornia』をかけてくれ、そこに収録されている「Runnin’」を聴いた時に衝撃を受け、オーナーから話を聞くとどうやらビートメーカーという存在がいるということを知り、1人でもこんなに自由で素晴らしい音楽が作れるんか!と思い、某消費者金融に走り借金をして機材を揃えました」

――『LOVE ON THE LUCKS』のコンセプトとリリースまでのストーリーを聞かせてください。

「今回のアルバムまで、過去に3作のアルバムを発表していて、これまでの作品はサンプリングする元ネタのジャンルや年代を出来るだけ合わせて、違和感なく最後まで流れて聴けるよう、まとまりを意識して作品を作ってきました。ですが今回は、自分達のこれまでの集大成とした内容にしたく、ジャンルは関係なく2人が今まで聴いてきて影響された音楽をアウトプットしようと決めて作りはじめました。

その上で、自分はコーヒーが好きで地元の先輩が「COFFEE AND SLOWLANE」というお店をしていて、焙煎士である先輩がコーヒーを焙煎している所を見せてもらっている時に、コーヒー豆は異なる産地や種類、同じ物でも一粒一粒がちがい、それぞれに個性がある事を知りました。それぞれ異なる豆を一杯のカップに落とし、一つの味にまとめるという事が自分達の今回のテーマそのものやなと思い、コーヒーをコンセプトにしました。あとは、単純にコーヒーを飲みながらゆったり聴く人の邪魔にならない寄り添える音楽を作りたいなと思い制作しました」

――この盤で特に思い入れがある曲は?

「今回のアルバムで言うと1曲に絞るのは本当に難しく、それこそ客演に参加頂いた、ZINくん、mabanuaさん、OMSBさん、SUKISHAさんとの曲はどれも自分自信が大好きで特別な思い入れの深い曲です。アルバムのコンセプトでいうと、「non suger」が今回の作品で一番最初に出来た曲で、自由に好きなことをやろうと思えるきっかけになりました。歌詞の内容も自分のだらしないクズな部分を歌えて楽しかったです(笑)」

――制作のアプローチや機材、アイデアスケッチ、REC環境、マスタリングについてはどうでしょう?

「今回、自分は歌に専念したくて、ほとんどの曲のビートの土台を田中が作り、そこに僕がサンプリングを足して色づけしたりしました。後は2曲目のベースをLUCKEY TAPESのkeity君に演奏してもらい、寺井裕一さんに5曲ほどサックスを演奏していただきました。機材はAKAI MPC2500や、BOSS SP-303などを元々使っていたんですが、今はほぼiPadでビートを作っています。REC環境は伊豆大島の自宅です。Protoolsでビート、ボーカルを併せミックス作業を行っています。マスタリングは大阪にいた頃からお世話になっている、大輪真三さんに立ち会ってもらっています」

――ゲスト陣の参加の経緯を教えてください。

「本作はマンハッタンレコードからのリリースで、担当の粟倉さん、僕のマネジメントを担当しているU-YAさんと共に制作しましたが、自分達が絶対やりたいと思った方々を見事に実現していただきました。それぞれの方が、時代や時間などに囚われない素晴らしい音楽をされているので、一緒に作品を作れた事が本当に幸せです」

――メロウなフロウからの切れ味あるラップが特徴的ですが、リリック面も含め、気をつけていることは?

「基本的に、ビート発信でリリックを書き始めるのですが、メロディーもラップも、ビートのドラムのグルーヴを意識して大事に書いています。自分はいつもリリックが抽象的、風景的な内容が多いんですが、今回客演した方々と一緒に曲を書かせていただき、リリックのメッセージ、具体性、パンチライン、意表をつく面白さなど、本当にめちゃくちゃ刺激を受けたし、糧になって、この先また違った書き方もできると思います」

――ご自身のフェイバリット、影響されたアーティスト、ルーツミュージックは?

「自分も相方も元々ロックや、レゲエなどそれぞれ好きだったんですが、今の音楽スタイルに2人とも大いに影響を受けたのが、madlib、J Dilla、MF DOOMなどのミュージシャンです。自分のルーツで言うと、優歌団、細野晴臣さんが音楽をやる上での向き合い方、気持ちの面での支柱になっています」

――近年のシーンについて感じていることはありますか?

「音楽シーンに関しては、だんだんジャンルのボーダーが良い意味で無くなってきたように感じます。ジャンルとかの縛りにあまりこだわらずかっこいい音楽を鳴らすことにフォーカスを当てているミュージシャンや、曲が増えているなと思います。近年はサブスクなどが広がり、たくさんのかっこいいアーティストや曲が次から次にどんどん出てきて、目まぐるしく流れていくなと感じるのですが、決して悪いことではなく、むしろサブスクがなかったら出会えなかった曲やアーティストに出会えたり、過去の素晴らしい作品に簡単に出会えたり、とても刺激があると思います。音楽を作る側としても、今まで聴いてもらう事が難しかった人たちに届きやすくなったので、本当にやりたい事に集中して、どんどん曲を作っていける環境かなとおもいます」

――今後の活動予定と展望、リスナーへのメッセージを。

「最後まで読んでいただき、ありがとうございます。2月からリリースツアーが始まるので、各地の人たちに会ってライブが出来るのが本当に楽しみです。制作面に関してはやりたい音楽をどんどん追求して楽しみながら、たくさんの音源をリリースしたいと思います。そして、ずっと目標だったブルーノートで必ずライブします!自分達の音楽が、皆さんのひと時に少しでも寄りそえるように、これからも続けていくのでアルバム聴いてね!」

(おわり)

取材・文/内堀泰太

LIVE INFO906 / Nine-O-Six "LOVE ON THE LUCKS" RELEASE TOUR

2月3日(金)With The Style(福岡)
2月3日(金)The Voodoo Lounge(福岡)
2月4日(土)10 COFFEE BREWERS(大分)
3月4日(土)Club NEO(福島)
6月4日(日)恵比寿NOS(東京)
……and more!

DISC INFO 906 / Nine-O-Six『LOVE ON THE LUCKS』

2022年11月30日(水)配信/2022年12月16日(金)発売
LEXCD-22008/2,200円(税込)
MANHATTAN RECORDINGS

MANHATTAN RECORDS

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