いい歌でありさえすれば必ずヒットする。
これが歌の本来あるべき姿です。しかし、現実は強力なタイアップが付いていなければ売れない時代です。いかがなものか?と思います。この風潮に私はあえてアンチテーゼを投げかけたい。いい歌は売れるべきだし、たくさんの人たちに聴いてもらいたい。そんな“音楽愛”が私のポリシーです。

音楽評論家の富澤一誠です。
いい歌を見つけて紹介するのが私の仕事です。「演歌・歌謡曲」でもない。「Jポップ」でもない。良質な大人の歌を「Age Free Music」と名づけて私は推奨していますが、湯原昌幸さんのデビュー60周年記念作品「たそがれロマン」はまさに大人のラブソング「熟恋歌」と言っていいと思います。そこで今回は湯原昌幸さんをゲストにお迎えして大人の歌「Age Free Music」の魅力に迫ってみたいと思います。

★ニュー・シングル「たそがれロマン」は珠玉の“大人のラブソング”「熟恋歌」!

湯原昌幸さんの60周年記念作品「たそがれロマン」は正直に言って、最近聴いた歌の中で最もいいと言っても過言ではありません。今なぜこんなに素晴らしい歌ができたのか?60年間を振り返りながら分析してみたいと思います。

とはいえ、ローマは一日にしてならず。そこは60年間というキャリアの積み重ねがあったからこその成果なのだと思います。キャリアの積み重ね、言ってみればキャリアのミルフィーユがあったからこそ、「たそがれロマン」という等身大の大人のラブソング「熟恋歌」が生まれたのです。

私と湯原さんの関係もそうです。10数年前から定期的にお会いするようになりました。新譜CDがリリースされるたびに新聞、雑誌で取材させてもらったり、また、私のラジオ番組にゲスト出演してもらったり・・・こちらもキャリアを積ませていただいた、つまり取材のミルフィーユがあったということです。たくさんのミルフィーユからいくつか紹介したいと思います。

★ラジオ番組によくゲスト出演していただきました。

まずは『湯原昌幸ベストアルバム』のゲストのときは2016年2月8日、9日オンエアでした。

湯原昌幸さんは1964年にバンド界の名門“スウィング・ウェスト”に入団してキャリアをスタートさせました。グループサウンズ(GS)ブームのさなか、司会とボーカルを担当し現在の活動の基礎を築きました。そして70年にソロ・デビューし、デビュー曲「雨のバラード」が大ヒット。歌手活動の一方、バンド時代からの明快な司会のパワーは群を抜いていて、同世代のみならず、老若男女の広いファン層を持ちます。また、荒木由美子夫人との“おしどり夫婦”ぶりも広く知られており、2人揃っての活動も少なくはありません。そして現在、特に力を入れているのはまさに“大人の歌”で、大ヒット曲「雨のバラード」から最新シングル「再会酒」まで全16曲を収録したベスト・アルバム『湯原昌幸ベスト・アルバム』を引っ提げて全国を飛びまわっています。

続いては、「再会酒」のときは2016年8月29日、30日のオンエアでした。

2015年11月に発売され、今やカラオケの定番曲となった湯原昌幸さんの「再会酒」が、なんと西崎緑さんとの“デュエットソング”になり、今年7月に発売されました。男女で歌うことによってこの曲の世界観が明確になり、まるでデュエットのための曲であったかのようです。CDには歌唱のアドバイスが付録されていますので、ぜひ皆さんに歌っていただきたい1曲です。そして8月24日にはニュー・シングル「マッチ」を発売。今回は2曲ともに彼自身が作曲し、カップリング曲の「笑い飛ばせばいい」は、苦しいことを吹き飛ばして楽しくいこうよという前向きな歌。メイン曲「マッチ」は、大人になった人間の持っている心のちょっとした淋しい部分が歌にされていて、人の表と裏が見事に表現された作品となりました。

「カラオケってある種スポーツだと思いますから、足腰を鍛えてしっかり歌っていただきたい」(湯原昌幸)
彼はこの曲を引っ提げ、足腰を鍛えて全国を飛びまわります。

続いては「星になるまで」のときは2019年3月25日、26日オンエアでした。

今年で音楽活動55年を迎える湯原昌幸さんにお越しいただきました。2月22日に新曲「星になるまで」をリリースしたということで、たっぷりとお話をうかがいました。今作は、「人の生きざま」をテーマに挑んだ、同年代に“刺さる”曲だそうです。

「今までいろんなジャンルを歌ってきましたが、やっぱり等身大がいちばん相応しいのではないかと。僕ももう70歳を過ぎてゴールというものをイメージしますと、昔はゴールテープがすごく細く遠く感じたものですが、今は目の前にあるんですよ。そうすると、そこへ前向きに倒れるか、つんのめるか、ヘロヘロで後ろ向きで倒れるか、と考えたらやっぱり前向きだろうと。つまり今回のテーマは、『星になるまでもがき続けて生きてやるんだ』という僕自身の気持ちでもありますね」(湯原昌幸)

湯原さんも意識して作ってくださっているということで、まさに私の提唱する“〈J-POP〉でもない、〈演歌・歌謡曲〉でもない、良質な〈大人の音楽〉”となっていますので、ぜひ皆さんも聴いてみてください。

そして3年間のコロナ禍で飛んで、久しぶりのミルフィーユが今回というわけです。しかも、60周年記念、と喜寿(77歳)のダブル祝賀。まさに「たそがれロマン」のフレーズではないが「とびきりのワインを開けよう」という気分です。

「こんないい歌、聴かなきゃ損!」(音声版)をぜひこの前文を読んでから聴いてみてください。セピア色の思い出がカラフルに蘇ります。

<音声版>富澤一誠のこんないい歌、聴かなきゃ損! 第21回 湯原昌幸さん

湯原昌幸 デビュー60周年記念シングル
昭和のスケール感たっぷり!大人のための "ロマンティック歌謡曲"
リアルで甘い詞と切なく優しいメロディが聞く人の心に深く沁み込む!
TECA-24010 / 定価:¥1,700(税抜価格 ¥1,545) / シングルCD
収録内容
01. たそがれロマン
02. 虹の道
03. 雨のバラード (弾語り・バージョン) ≪ボーナストラック≫
04. Fu・Ta・Ri ≪ボーナストラック≫
05. たそがれロマン (オリジナル・カラオケ)
06. 虹の道 (オリジナル・カラオケ)

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富澤一誠

1951年、長野県須坂市生まれ。70年、東大文Ⅲ入学。71年、在学中に音楽雑誌への投稿を機に音楽評論家として活動開始し、Jポップ専門の評論家として50年のキャリアを持つ。レコード大賞審査員、同アルバム賞委員長、同常任実行委員、日本作詩大賞審査委員長を歴任し、現在尚美学園大学副学長及び尚美ミュージックカレッジ専門学校客員教授なども務めている。また「わかり易いキャッチコピーを駆使して音楽を語る音楽評論家」としてラジオ・パーソナリティー、テレビ・コメンテーターとしても活躍中。現在FM NACK5〈Age Free Music!〉(毎週木曜日24時から25時オンエア)、InterFM〈富澤一誠のAge Free Music~大人の音楽〉(毎月最終水曜日25時から26時オンエア)パーソナリティー。また「松山千春・さすらいの青春」「さだまさし・終りなき夢」「俺の井上陽水」「フォーク名曲事典300曲」「『こころの旅』を歌いながら」「私の青春四小節~音楽を熱く語る!」など著書多数。

俺が言う!by富澤一誠

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