ソニー・スティットはチャーリー・パーカーに似ていると言われることが嫌で、アルト・サックスからテナー・サックスに転向したりしたこともあるサックス奏者です。しかし、ある時期からはあまりそうした「外野の意見」を気にしなくなり、両方のサックスを自在に操るマルチ・サックス・プレイヤーとなりました。

彼の特徴は、どちらのサックスでも抜群のテクニックを備え、小気味良くフレーズを吹ききる実力と、音楽が基本的に陽性というか明るいところです。このあたりが、同じパーカー派アルト奏者と言っても、一抹の哀愁を聴き所とするジャッキー・マクリーンなどとの違いでしょう。

最初にご紹介する『スティット、パウエル&J.J.』(Prestig)は、彼のテナー奏者としての代表作です。バップ・ピアノの雄、バド・パウエルと互角に競い合い、一歩も引けをとっていません。そしてもちろん、この演奏はバド・パウエルの絶頂期の記録でもあって、パウエルの名演としても多くのファンに愛されています。ちなみにアルバム・タイトルに表示されたJ.J.ジョンソンは、ご紹介したセッションには参加していません。

最初のアルバムは1949年から50年にかけての録音ですが、次にご紹介する『チューン・アップ』(Cobble Stone)は、それから20年以上も経った1972年の演奏です。ちょうどこの年、チック・コリアの『リターン・トゥ・フォエヴァー』(ECM)が録音され、「フュージョン時代」の幕が切って落とされました。しかし、オーソドックスなジャズを好むファン層も健在で、スティットのこのアルバムなどが「ハードバップ・リバイバル」という名称で大いに人気を博したものです。彼は曲目によって自在に二つのサックスを使い分け、器用なところを見せています。ちなみに、冒頭の《チューン・アップ》と《アイダホ》がテナーで、《言い出しかねて》がアルトですね。

ソニー・スティットはテナー奏者、ジーン・アモンズと2テナーのコンビを組んでいたこともあって、他のサックス奏者との共演は得意。『インター・アクション』(Cadet)はテナーのズート・シムスと絶妙の掛け合いを見せています。どちらもテクニシャンだけにこの勝負五分と五分。完全に左右のチャンネルに振り分けられた録音なので、両者の持ち味の違いが明瞭にわかります。

同じ「掛け合い」をアルト・サックス同士で行ったのが、1980年に録音されたアート・ペッパーとの共演作『グルーヴィン・ハイ』(Atlas)です。アート・ペッパーもまた1970年代以降、オーソドックスなジャズ・スタイルを見直す風潮の中で再評価が進んだミュージシャンです。このアルバムでは、気合充分な両者の白熱のバトルが聴き所。

70年代に録音された『アイ・リメンバー・バード』(Catalyst)は、ウエスト・コースト・ジャズの大物トロンボーン奏者、フランク・ロソリーノを共演者に迎えた2管クインテットによる作品。スティットはその明るいサックス・サウンドがアート・ペッパーはじめ、ウエスト・コースト出身のミュージシャンたちとも絶妙の相性で、このアルバムでも実に快適な演奏を聴かせてくれます。

最後に収録したのは、スティットの原点とも言うべきパーカー曲集、その名もズバリ『スティット・プレイズ・バード』(Atlantic)です。ここでは心置きなくアルトの名演を披露。明るく健康なスティット流パーカー・ナンバーが楽しめます。

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