「アンダーカバー」の高橋盾デザイナーが個展「THEY CAN SEE MORE THAN YOU CAN SEE」を開催

同展のメインとなるのは、高橋デザイナーが2013年から始めた油絵。独学で描き続け、モチーフ選びから完成まで一人でできるその自由な表現の虜になったという。

　その主な題材は彼の人生に大きな影響を与えたミュージシャンや俳優などの肖像画だ。繰り返し描くことで技術が向上し、モチーフを描写する精度が高まっていく反面、物足りなさを感じ始めた高橋デザイナーは、自身の敬愛するミュージシャンの肖像画に着手し始めた。完成したものに手応えはあったが、納得がいかずに肖像画の目を描き直そうと目を潰し、しばらくしてから再度肖像画と向き合ったときに自分が満足できなかったその「何か」を掴んだという。

発表するつもりもなく、あくまで趣味の1つだった油絵。だが、調和と実験を繰り返して辿り着いたこの作品には、完璧や完全なものからは感じられない、彼がキャリアにおいて表現し続けてきた「倒錯した美」が宿っていた。
　自身の美的感性の欠片を油絵の中に見出した高橋デザイナーは、その後も自身が影響を受けた人物を描き続け、彼の油絵は「目の無い肖像画」として進化し続けた。
　描かれた人物自体がボヤけて見えるように額自体にシルクチュールで装飾した作品や、題材となる人物が内面に抱くストーリーを描いた作品など、最新のシリーズで描いた人物たちは、描き手の美しい世界観を際立たせる輪郭のようだ。
　同展では、初公開となる油絵「肖像画シリーズ」を中心に、ブロンズによる造形作品を含む約30点と、高橋デザイナーの新たな創造表現が並ぶ。