第四回
ギター・コレクションの世界(後編)

前回、自らを“ギターバカボン”と呼んだ野村氏だが、8月26日に世良公則氏とのユニット、音屋吉右衛門名義によるライヴアルバム『オトコノウタ』をリリースしたばかりだ。
「音屋吉右衛門って僕と世良さんが10年ぐらい前からふたりでやってるアコースティックのユニットなんですけど、実は全然“アコースティック”じゃないんですよね(笑)。どちらもバンドマンの弾き方なので、今回のアルバムも“アーコースティックアルバムでしんみり”なんていうのはほとんどなくて、ただのロックアルバムです。世良さんの弾くギターは本当に男らしくて、僕とは全然違うギター弾き。音屋吉右衛門は、世良さんのサポートができればいいなって気持ちなんですけど、楽しんで弾いてます」

映像とセットにしたライヴDVDが全盛の時代に、音だけをパッケージしたライヴアルバムを制作した真意とは何だったのだろうか。
「音を聴いてライヴを想像してもらう??そこに一回戻ろうよっていう意味もあるんじゃないかと思います。だって、僕らが音楽を聴き始めた頃は、例えばレッド・ツェッペリンなんかも映像がないまま聴いて、こんな長い間奏の間、(ヴォーカルの)ロバート・プラントは何やってるのかな? 引っ込んじゃうのかな?とか考えたわけじゃないですか(笑)。で、後から映像を見て、引っ込んでなかったってことを知るとか。そういうのを想像するだけでライヴが好きになるし、バンドのことが好きなるってことがあると思うんですよね。今回の僕らのアルバムも、録ったまま。間違えてるところも、そのまま(笑)。いいのかな?ってくらいですけど、それよりも、ライヴの雰囲気が伝わればいいなっていうところで、敢えてそんなふうにしてます」

野村氏によると、世良氏は「ギターのことをちゃんとわかってる人」だという。ただ、そんなふたりが揃ってもギター談義に華を咲かすということは、そんなにないそうだ。なぜなら「世良さんが今、ハマってるのは陶芸」だから。一緒に過ごしているときの会話も「陶芸7割、ギター2割、残りの1割が曲順とか(笑)」と笑う。
「僕、ギター以外にハマったものはないんです。ギターは、わからないことがたくさんあるのが、いけないですね(笑)。一般的には、例えばレスポールだったら、普通にカッコいいよねとか、1952年から発売されたとか、最初は全部金色で1958年の途中からサンバーストが出てきたとか、そういう情報は、皆さん持ってると思うんですよ。でも、僕の場合は、なぜこのギターが生まれたかとか、そのときの会社の状況は、工場の状況はどうだったのかとか、そっちのほうが好きで……面白いんですよ、歴史が。歴史と言ってもエレキの歴史はまだそんなに長くないので、辿ろうと思えば辿れますし。そういうのをどんどん調べていっちゃうんです」

プレイヤーとしてはもちろん、研究家のごとき探究心を、たっぷりの愛情とともにギターに注いでいる野村氏。最後はそんな野村氏が密かに抱く願いで締めくくりたい。
「もっとたくさんの人に楽器屋さんへ足を運んでもらいたいんです。楽器屋さんが僕を育ててくれたと思っているので、『野村義男の“思わず検索したくなる”ギター・コレクション YOSHIO NOMURA GUITAR COLLECTION』も、楽器屋さんへの恩返し用に作った本と言っても、過言ではないので。人前に出るときにいろんなギターを持って出るのも、ギターに興味を持ってくれる人がちょっとでも増えるようになってくれたらって思うから。あのギターと同じのが欲しい!って、楽器屋さんに行ってくれると嬉しいです」
(おわり)

音屋吉右衛門

世良公則氏とのユニット、音屋吉右衛門。野村氏曰く「世良さんに二言はない」というその理由は音声版で!

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同じくギターコレクターである波多野光男氏との対談はマニアならではの濃い内容(『野村義男の“思わず検索したくなる”ギター・コレクション YOSHIO NOMURA GUITAR COLLECTION』より)

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野村氏所有のギターの中でも相当な価値のある2本のヴィンテージ(『野村義男の“思わず検索したくなる”ギター・コレクション YOSHIO NOMURA GUITAR COLLECTION』より)

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こちらはちょっと変わり種のギター。左上のアコギは「1840年代(!)のもの」とのこと(『野村義男の“思わず検索したくなる”ギター・コレクション YOSHIO NOMURA GUITAR COLLECTION』より)

『野村義男の“思わず検索したくなる”ギター・コレクション YOSHIO NOMURA GUITAR COLLECTION』
『野村義男の“思わず検索したくなる”ギター・コレクション YOSHIO NOMURA GUITAR COLLECTION』
リットーミュージック
2,200円(税別)

音屋吉右衛門(世良公則×野村義男)『オトコノウタ』
音屋吉右衛門(世良公則×野村義男)『オトコノウタ』
MUCD-1325
DREAMUSIC・
2,857円(税別)



?SPECIAL PRESENTS?
ガールズバンドのギタリスト

最近、人気と実力を備えたガールズバンドが増殖中。男性より小柄で体力が劣るにもかかわらず、パワフルなサウンドを響かせる彼女たち。そんなガールズバンドのギタリストに、ギターに関するあれこれを伺いました。



from Yuko(FLiP)

質問1)ギターを始めたきっかけは?

小さい頃歌うことが大好きで、なにか身近な音楽がやりたいと思い、高校で軽音部に入りました。ギターを見たのも触ったのもこの時が初めてです。最初は歌う為にギターを始めたのですが、バンドサウンドの洋楽に出会いギターの魅力を知れば知るほどギターという楽器にのめり込んでいきました。
数あるギターのモデルとアンプの種類の中から、自分のギタリストとしての個性をより引き出してくれる組み合わせ。その音をもって6弦×21フレットの音数の中から、どんなフレーズをビートに乗せていくか……。より個性が際立つこの楽器の魅力は、表現したいことを自分の選んだ音で具現化できるということです。
ギターに出会って11年。まだまだ足りない表現力。だからこそギターは飽きません。

質問2)いちばん最初にコピーした楽曲 その理由と感想

Mr.Bigの「To Be With You」
高校の軽音部の最初の課題曲でした。苦労したのはやっぱりバレーコード! 先輩にコツを聞いても「とにかく弾けるようになるまで弾け」と言われたのでひたすら練習しました。約3か月後、あの達成感は一生忘れられない。

質問3)好きなギタリストとその理由

John Frusciante
Red Hot Chili Peppersの9th AL『Stadium Arcadium』を初めて聴いた時、衝撃が走りました。28曲全部ギターだけ聴いていたい。ギター1本とは思えない表現力。Johnというギタリストはアイディアの固まりだと思いました。それもソロプロジェクトを聴いて納得。Johnは自分の音楽の限界を追い求める”研究者”とも受け取れるほど幅広い表現。一生を音楽と共に過ごしていくんだろう。私もギターを通して音楽というものを少しでも理解したい。
高校3年生の時からJohn Fruscianteが私のギターヒーローです。




from Sachiko(FLiP)

質問1)ギターを始めたきっかけは?

私がギターを弾きたいと思ったきっかけは、自分で作った曲を自分の演奏で歌いたかったから。
「両手からダイレクトに感情を伝い、心のなかのものをおもむくままに歌える。」
それが私にとってのギターの魅力かな。

質問2)いちばん最初にコピーした楽曲 その理由と感想

バンドで一番最初にコピーした曲はAvril Lavigne「My Happy Ending」。中学生時代から好きなアーティストだし、ストレートなROCKにエモーショナルな言葉とメロディが格好良く、バンドで歌いたくて選びましたね。
シンプルな曲だからこそ、白たま音符の長さやニュアンスが難しかったのを覚えています。

質問3)好きなギタリストとその理由

好きなギタリストは、Noel Gallagher。
Noelのギターフレーズや音色は永遠に聴いていられる心地良さがある。曲に対して余計なアプローチをギターでは決してしない気がする。作曲しているからこそ、曲を一番理解しているのが伝わってくる。そういう意味で尊敬しているひとりです。

FLiP

FLiPの4人。右からYuko (Electric Guitar & Chorus)、Yuumi (Drum & Chorus)、Sachiko(Vocal & Electric Guitar)、Sayaka (Electric Bass & Chorus)

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